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最終話
ありがとう
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シモンが父であるモルトダーン王と面談してから二週間ほどが経った。
詳しい事はさっくりとしか聞いてないけど、お父さまがシモンの身辺で起こり出した事を調べていた時に、優秀なウチの暗部がルチア様のご実家、リトレイジ侯爵家のありとあらゆる不正や悪事を芋づる式に見つけちゃったらしい。
それをシモンとの面談の時にモルトダーン王に
耳打ちし、ご注進したらしいのだ。
シモンが言うには父王の顔色が赤くなったり青くなったりしたと言っていたから相当なものだったのかしら。
その他の有力諸侯のもチラホラと出て来たらしく、あるものはリトレイジ侯爵家の分と一緒に
モルトダーン王にご注進、そしてあるものは今後の外交に使えると、お父さまの“切り札バンク”に温存される事になったらしい。
怖いわね……
お父さまの“切り札バンク”……
どんなものが保管されているのか、わたしは知りたくないわ……。
結果、リトレイジ侯爵家は爵位没収。
今はルチア様のお母さまのご実家の伯爵家に
身を寄せておられるそうだ。
当然マイセル殿下との婚約も破談になり、プライドの高いルチア様には耐えられないのだろう。
学園は自主退学された。
でもあの勝ち気な性格なら、きっとこれからいくらでも巻き返していずれ返り咲いて来られるのではないかと思っている。
ルチア様に対してはあまり良い印象はないけれど、頑張って欲しいとは少しだけ思ってるかな。
シモンは絶対に渡さないけどね!
シモンがモルトダーンに戻る事を拒否したため、
やはり第二王子のマイセル殿下がその後立太子された。
頼りないと評されるマイセル殿下だけど、次に婚約者となられた辺境伯令嬢がとても優秀で誠実な方との事で、その方の内助の功があれば
きっと賢王となるべく精進されるのではないかと思う。
ていうかシモンの憂いがなくなるようにしっかりして貰わねばわたしが困る。
心配していた暗殺の脅威も去り、学園に暗部を配置しなくても良くなったのだけれども、あの体格で実は何事も慎重な熊ックスは念のためこっそり暗部を残しているのだとか。
でもそれが生徒に扮しているのか教員に扮しているのかは教えて貰えない。
まぁ知らない方がいいかもね。
こうして全ての事に決着がつき、わたしとシモンはまた穏やかな学園生活に戻る事が出来た。
もちろん、シモンは寮生活をやめて城に帰って来ましたよ。
面談の時シモンの覚悟を目の当たりにした
お父さまは、もう大丈夫だろうとそう思われたそうだ。
そしてイコリス王女とモルトダーン第一王子の婚約を正式に発表、婚約式を兼ねた夜会が開かれる事になった。
イコリスの貴族たちはもちろん、モルトダーンの貴族や各国の要人、そして学園の知人たちを招いての大々的なものになるらしい。
貧乏国だって、やる時ゃやるんですよ。
そうしてなんやかんやと過ごしているうちに、その婚約披露パーティーなるものが開催される当日となった。
わたしは朝からチュウラをはじめとする侍女達に取り囲まれ、頭の先から足の先まで
磨きあげられ、人生初の化粧を施され、今日のために誂えられたドレスを着せられた。
本当はこう言う時は婚約者の瞳の色のドレスを見に纏うそうなんだけど、
真っ赤なドレスはわたしのイメージに合わないだろうと女性陣の意見が満場一致。
結果、淡い朱色のシフォンドレスが良いだろうという事になった。
そして今、わたしはその淡い朱色のドレスに身を包んでいる。
ティアラやイヤリング、そして首元を飾るネックレスはまんまシモンの瞳の色のルビーやガーネットだ。
これは……
なんか全身シモン色!って感じでかなり恥ずかしい……!
わたしの顔まで赤くなったらまさに全身真っ赤になってしまう。
(あ、ドレスは真っ赤ではないか)
ドアがノックされ、会場入りの時間だと知らされる。
自室を出て夜会会場へと繋がるホールへ降りる
階段の下に愛しの我が婚約者様の姿を見つけた。
カッ、カッコいい……!
シモンは黒の王族の正装姿で、髪を後ろに撫で付けてなんだか大人っぽい印象だった。
今日もフレッシュにシモンに惚れ直していると、ふいに目が合った。
シモンがこちらに気付く。
ん?どうしたのかしら?
大きく目を見開いたまま固まって動かないわ。
もしかして緊張してる?
シモンも案外可愛いとこあるのね。
わたしはシモンの緊張を解いてあげようとゆったりと微笑みながら階段を降りてゆく。
するとシモンがはっと我に返って慌てて階段を駆け登って来てわたしの手を取りエスコートしてくれた。
「とっても似合ってるわシモン、カッコ良すぎて惚れ直しちゃった」
わたしがそう言うとシモンはそっぽを向いたまま、
「それはこちらのセリフだ」と
ぽつりと呟いた。
二人並んで会場入り口の扉の前に立つ。
会場の中ではどうやらお父さまが国王として列席してくれた賓客たちに挨拶をされているらしい。
そして扉が開かれる。
わたしはシモンにエスコートされながら会場へと足を踏み込んだ。
シモンが手配してくれたマナーの勉強の成果が今こそ発揮されますよ!
わたしは優雅な(多分)足取りで歩いて行く。
すると会場内の賓客たちから感嘆の声が上がった。
シモンが素敵過ぎるからね、わかる!わかるわ!
でも「お似合いのお二人だ」と誰かが囁いたのはバッチリ聞こえましたよ!
うふふ、嬉しい。
こうして婚約披露パーティーが始まった。
まずはわたしとシモンのファーストダンスから。
何度もダンスレッスンで一緒に踊っているけど、
こうやって公の場でダンスをするのは初めて。
緊張して足が絡れそうなったけど、シモンが上手くリードしてくれて助かった。
さすがはわたしの癖もリズムも全て理解してくれているパートナーだ。
ダンスが終わると各国から訪れた招待客たちと
順々に挨拶を交わしてゆく。
もう多すぎて誰が誰だかわからない。
こんなに沢山の方々がお祝いに駆けつけて下さったの?
わたしはとても嬉しくて、とても誇らしかった。
みんながわたし達を認め、祝福してくれている。
こんなに嬉しい事はない。
ふと隣を見ると、シモンと目が合った。
なんとなく今、シモンも同じ事を思っていたとそう感じた。
学園の友人、コレットとダズも来てくれていた。
コレットのドレス姿は初めて見るけど、な、なんという美しさなのだ……!
思わず膝をついてコレットにプロポーズを
してしまいそうになった。
ダズの盛装した姿も素敵でうっかり忘れていたが、彼が公爵家の令息であった事を思い出させてくれた。
でもなんだかコレットとダズ……お似合いじゃない?
今日はダズがコレットをエスコートして来たらしいけど、二人が婚約者同士だと聞いても驚かないくらいにしっくりきてる。
やっぱり同じ釜の飯(学食)を食ってるから?
パーティーもどうやら盛況のうちに終わりそうだ。
ダンスをして、沢山挨拶をしてすっかり喉が渇いてしまった。
わたしがこっそりシモンに耳打ちすると、シモンはドリンクを受け取りながらわたしをテラスへと連れ出してくれた。
冷たい果実水が喉を滑り落ちてゆく。
「ふぅ……」
わたしはやっと人心地ついた気分だった。
今夜は最高の夜だ。
きっと生涯忘れないんだろうな。
わたしが飲み干したグラスをシモンが受け取り、テーブルへ置いた。
「「………」」
心地よい沈黙がわたし達を包む。
何も喋らなくても側にいるだけで心が満たされる。
そんな相手に巡り会えた事を全ての人に感謝したい。
「……ニコ……」
シモンがふいにわたしの名を呼んだ。
「なぁに?」
わたしは微笑みながらシモンに向き直る。
「……俺はまだ、一番大事な事をお前に
告げてない」
……はて?何かしら?
「その前に……まぁなんだ、今日のお前は……本当に綺麗だ。最初見た時、あんまり綺麗で言葉を失ったんだ。本当なら一番はじめに褒め称えるのがパートナーの特権なのに……」
「え!ホント?ホントに綺麗だと思ってくれたの?」
「ああ」
「嬉しい!全身シモン色なのよ」
「……ああ」
シモンが照れてる!
きゅん。
「ニコ……二年前……」
「え?」
「二年前、俺のために一生懸命になってくれてありがとう。
俺に居場所を作ってくれてありがとう。
いつもそばにいてくれてありがとう。
家族と言ってくれてありがとう。
優しくしてくれて、
こんな俺にいっぱい好きだと言ってくれて……
本当にありがとう……」
「シ、シモン……」
「俺がイコリスを自国だと思えるようになったのはニコルがいたイコリスだからだ。お前がいなければ、きっと今でもモルトダーンへの未練を断ち切れずに苦しんでいただろうな」
「……」
シモンは大きな手で、わたしの両手を包み込んだ。
「ニコ、俺はお前が好きだ。多分、出会って間もない頃から好きになっていたんだと思う」
「シモン……」
シモンがわたしの手を握ったまま跪く。
「ニコル姫。政略ではなく俺個人として申し込みたい。どうか俺と生涯を共にして欲しい。
必ず一生をかけて守り抜く。女王となった暁には陰日向なく支え抜く。だからどうか……どうか俺の妻になってくれ」
次の瞬間、
わたしはシモンの首に手を回し飛びついていた。
ドレスが汚れるなんて気にしなかった。
嬉しさのあまりそうしないと空に浮いて飛んで行ってしまいそうだったから。
涙が止まらなかった。
お礼を言いたいのはこちらの方だ。
「うっ…うっ…シ"モ"ン"……!
も"、も"ちろんお受けしまず……!
シモン、こちらこそ"ありがどうっ……
イコリスに来てくれてありがとう、
イコリスを好きになってくれてありがとう、
わたしが悪い時は叱ってくれてありがとう、
いつも鞄を持ってくれてありがとう、
わたしが泣かされたら怒ってくれてありがとう、
そして、そして、わたじを選んでぐれで、
わだじを好ぎになっでくれでありがどう!」
最後の方は泣き声でぐじゃぐじゃになってしまったのが悔しいけど、わたしは懸命に想いを伝えた。
シモンは強く抱きしめ返してくれる。
大きな体がすっぽりとわたしを包み込んでくれた。
心が温かく、安心感で満たされてゆく。
ふとシモンの腕が緩くなり、どうしたのだろうと少し見上げるとすぐ近くにシモンの顔があった。
わたしは優しく口付けをされた。
最初は唇に、その次は額に、それから両頬、鼻、そして最後にもう一度唇に口付けをされた。
あぁ……
これはホントに忘れられない夜と
なってしまった……
好きな人に触れられる事がこんなにも幸せで心満たされる事なんてわたしは知らなかった……。
それからの日々はまた愛おしい日常の繰り返しだった。
わたしとシモンは毎日片道45分かけて通学する。
馬車の中でわたしは喋り通しで、シモンは適当な返事を返してくるけれど、ホントはちゃんと聞いてくれている事をわたしは知っている。
学業は大変だけど、国境付近のポイントの見回りも、畑作業の手伝いも街の清掃も手を抜かない。
どれも大切なわたしの暮らしの一部だから。
シモンも生徒会執行部の仕事と、騎士団との演習、そしてこの頃はお父さまの政務のお手伝いも始めて超多忙な日々を送っているのだ。
アルノルトとジュダンも、そんなシモンを支えてくれている。
もうすぐ一年が終わり、二年生になってもこの生活は変わらないんだろうなぁ。
でも結婚式まで一年を切るわけだから、
わたしはウェディングドレスのデザインを決めたり、採寸したりと、そちらの方でも何かと忙しくなりそうだ。
でも相変わらずドタバタしちゃうのだけは治らないらしく、時々シモンからはポンコツ呼ばわりされた上の脳天チョップを頂く。
ほら…………
そして今も……
「おいコラ、ニコル"ァ!お前、今日の分の課題はどうしたっ!?」
「えっ……?アレ……?畑から帰ったやろうかなぁと……」
「畑仕事に行くなとは言わん、でもせめてやるべき事をやってから行けっ!自分達の畑仕事の所為で自国の姫が課題を忘れて教師に叱られたなんて知ってみろ、民が泣くぞっ!」
「ヒ、ヒェェ…ご、ごもっとも……!」
「オ"ラ"来いっ!」
「キャーーっ!」
わたし達のその様子をお父さまとゼルマンが見ていた。
「あーぁ、ニコの奴また怒られてるよ」
「でもシモン殿下のおかげで姫様も無事に学園を
卒業出来ますでしょうな」
「ホントだね」
「卒業まで一年、そしたらすぐに婚儀だ」
「忙しくなりますな」
「そうだね、案外孫の顔も早く見れそうで楽しみだよ。初孫は男の子かな?女の子かな?」
「……どちらにせよお可愛らしいお子であらせられましょうな」
「うん、そうだね」
お父さま達がそんな話をしているなんてつゆ知らず……。
まぁ実際に学園卒業後、
すぐに結婚式を挙げたわたしとシモン。
そしてわたしはすぐに懐妊、元気な王女を生んだ。
(シモンはチビニコルと評した)
そのあともぽんぽんと双子の王子を生み、
我が家はお父さまを入れて6人家族となった。
そしてもう楽隠居がしたいと生前退位した
お父さまの跡を継いで、
わたしは28歳でイコリスの女王となる。
その時、もちろん隣には王配となったシモンの姿があり、さらにその隣には可愛い可愛いわたしの子ども達も並んでいた。
わたしはこれからもこのイコリスで生きてゆく。
この国に生まれた事を、
この国で生きてゆける事を、
この国で大切な人に出会えた事を感謝したい。
そしてその大切な人がいつも隣にいてくれて、
いつも微笑みかけてくれる事に感謝したい。
ありがとう。
「シモン、ありがとう。これからも変わらず
ずっと大好き!一生大好き!先に謝っておくわね、こんなに好きでごめんなさい。でもまぁ諦めてネ」
わたしがそう言うとシモンは、
「望むところだ」と微笑んでくれた。
おしまい
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これにて完結です。
最後までお付き合いありがとうございました。
感想もお気に入り登録も本当にありがとうございました!
どれだけ更新の励みになった事か……
これぞ、『全わたしが泣いた』です!
そして相変わらず誤字脱字が多くて申し訳ないです。
チェックしてるのに気が付かないなら
チェックの意味ないですね。(汗)
これからも出来る事なら
また皆さまの目に留めて頂けるような
物語を書いてゆきたいと思います。
本当にありがとうございました。
キムラましゅろう
詳しい事はさっくりとしか聞いてないけど、お父さまがシモンの身辺で起こり出した事を調べていた時に、優秀なウチの暗部がルチア様のご実家、リトレイジ侯爵家のありとあらゆる不正や悪事を芋づる式に見つけちゃったらしい。
それをシモンとの面談の時にモルトダーン王に
耳打ちし、ご注進したらしいのだ。
シモンが言うには父王の顔色が赤くなったり青くなったりしたと言っていたから相当なものだったのかしら。
その他の有力諸侯のもチラホラと出て来たらしく、あるものはリトレイジ侯爵家の分と一緒に
モルトダーン王にご注進、そしてあるものは今後の外交に使えると、お父さまの“切り札バンク”に温存される事になったらしい。
怖いわね……
お父さまの“切り札バンク”……
どんなものが保管されているのか、わたしは知りたくないわ……。
結果、リトレイジ侯爵家は爵位没収。
今はルチア様のお母さまのご実家の伯爵家に
身を寄せておられるそうだ。
当然マイセル殿下との婚約も破談になり、プライドの高いルチア様には耐えられないのだろう。
学園は自主退学された。
でもあの勝ち気な性格なら、きっとこれからいくらでも巻き返していずれ返り咲いて来られるのではないかと思っている。
ルチア様に対してはあまり良い印象はないけれど、頑張って欲しいとは少しだけ思ってるかな。
シモンは絶対に渡さないけどね!
シモンがモルトダーンに戻る事を拒否したため、
やはり第二王子のマイセル殿下がその後立太子された。
頼りないと評されるマイセル殿下だけど、次に婚約者となられた辺境伯令嬢がとても優秀で誠実な方との事で、その方の内助の功があれば
きっと賢王となるべく精進されるのではないかと思う。
ていうかシモンの憂いがなくなるようにしっかりして貰わねばわたしが困る。
心配していた暗殺の脅威も去り、学園に暗部を配置しなくても良くなったのだけれども、あの体格で実は何事も慎重な熊ックスは念のためこっそり暗部を残しているのだとか。
でもそれが生徒に扮しているのか教員に扮しているのかは教えて貰えない。
まぁ知らない方がいいかもね。
こうして全ての事に決着がつき、わたしとシモンはまた穏やかな学園生活に戻る事が出来た。
もちろん、シモンは寮生活をやめて城に帰って来ましたよ。
面談の時シモンの覚悟を目の当たりにした
お父さまは、もう大丈夫だろうとそう思われたそうだ。
そしてイコリス王女とモルトダーン第一王子の婚約を正式に発表、婚約式を兼ねた夜会が開かれる事になった。
イコリスの貴族たちはもちろん、モルトダーンの貴族や各国の要人、そして学園の知人たちを招いての大々的なものになるらしい。
貧乏国だって、やる時ゃやるんですよ。
そうしてなんやかんやと過ごしているうちに、その婚約披露パーティーなるものが開催される当日となった。
わたしは朝からチュウラをはじめとする侍女達に取り囲まれ、頭の先から足の先まで
磨きあげられ、人生初の化粧を施され、今日のために誂えられたドレスを着せられた。
本当はこう言う時は婚約者の瞳の色のドレスを見に纏うそうなんだけど、
真っ赤なドレスはわたしのイメージに合わないだろうと女性陣の意見が満場一致。
結果、淡い朱色のシフォンドレスが良いだろうという事になった。
そして今、わたしはその淡い朱色のドレスに身を包んでいる。
ティアラやイヤリング、そして首元を飾るネックレスはまんまシモンの瞳の色のルビーやガーネットだ。
これは……
なんか全身シモン色!って感じでかなり恥ずかしい……!
わたしの顔まで赤くなったらまさに全身真っ赤になってしまう。
(あ、ドレスは真っ赤ではないか)
ドアがノックされ、会場入りの時間だと知らされる。
自室を出て夜会会場へと繋がるホールへ降りる
階段の下に愛しの我が婚約者様の姿を見つけた。
カッ、カッコいい……!
シモンは黒の王族の正装姿で、髪を後ろに撫で付けてなんだか大人っぽい印象だった。
今日もフレッシュにシモンに惚れ直していると、ふいに目が合った。
シモンがこちらに気付く。
ん?どうしたのかしら?
大きく目を見開いたまま固まって動かないわ。
もしかして緊張してる?
シモンも案外可愛いとこあるのね。
わたしはシモンの緊張を解いてあげようとゆったりと微笑みながら階段を降りてゆく。
するとシモンがはっと我に返って慌てて階段を駆け登って来てわたしの手を取りエスコートしてくれた。
「とっても似合ってるわシモン、カッコ良すぎて惚れ直しちゃった」
わたしがそう言うとシモンはそっぽを向いたまま、
「それはこちらのセリフだ」と
ぽつりと呟いた。
二人並んで会場入り口の扉の前に立つ。
会場の中ではどうやらお父さまが国王として列席してくれた賓客たちに挨拶をされているらしい。
そして扉が開かれる。
わたしはシモンにエスコートされながら会場へと足を踏み込んだ。
シモンが手配してくれたマナーの勉強の成果が今こそ発揮されますよ!
わたしは優雅な(多分)足取りで歩いて行く。
すると会場内の賓客たちから感嘆の声が上がった。
シモンが素敵過ぎるからね、わかる!わかるわ!
でも「お似合いのお二人だ」と誰かが囁いたのはバッチリ聞こえましたよ!
うふふ、嬉しい。
こうして婚約披露パーティーが始まった。
まずはわたしとシモンのファーストダンスから。
何度もダンスレッスンで一緒に踊っているけど、
こうやって公の場でダンスをするのは初めて。
緊張して足が絡れそうなったけど、シモンが上手くリードしてくれて助かった。
さすがはわたしの癖もリズムも全て理解してくれているパートナーだ。
ダンスが終わると各国から訪れた招待客たちと
順々に挨拶を交わしてゆく。
もう多すぎて誰が誰だかわからない。
こんなに沢山の方々がお祝いに駆けつけて下さったの?
わたしはとても嬉しくて、とても誇らしかった。
みんながわたし達を認め、祝福してくれている。
こんなに嬉しい事はない。
ふと隣を見ると、シモンと目が合った。
なんとなく今、シモンも同じ事を思っていたとそう感じた。
学園の友人、コレットとダズも来てくれていた。
コレットのドレス姿は初めて見るけど、な、なんという美しさなのだ……!
思わず膝をついてコレットにプロポーズを
してしまいそうになった。
ダズの盛装した姿も素敵でうっかり忘れていたが、彼が公爵家の令息であった事を思い出させてくれた。
でもなんだかコレットとダズ……お似合いじゃない?
今日はダズがコレットをエスコートして来たらしいけど、二人が婚約者同士だと聞いても驚かないくらいにしっくりきてる。
やっぱり同じ釜の飯(学食)を食ってるから?
パーティーもどうやら盛況のうちに終わりそうだ。
ダンスをして、沢山挨拶をしてすっかり喉が渇いてしまった。
わたしがこっそりシモンに耳打ちすると、シモンはドリンクを受け取りながらわたしをテラスへと連れ出してくれた。
冷たい果実水が喉を滑り落ちてゆく。
「ふぅ……」
わたしはやっと人心地ついた気分だった。
今夜は最高の夜だ。
きっと生涯忘れないんだろうな。
わたしが飲み干したグラスをシモンが受け取り、テーブルへ置いた。
「「………」」
心地よい沈黙がわたし達を包む。
何も喋らなくても側にいるだけで心が満たされる。
そんな相手に巡り会えた事を全ての人に感謝したい。
「……ニコ……」
シモンがふいにわたしの名を呼んだ。
「なぁに?」
わたしは微笑みながらシモンに向き直る。
「……俺はまだ、一番大事な事をお前に
告げてない」
……はて?何かしら?
「その前に……まぁなんだ、今日のお前は……本当に綺麗だ。最初見た時、あんまり綺麗で言葉を失ったんだ。本当なら一番はじめに褒め称えるのがパートナーの特権なのに……」
「え!ホント?ホントに綺麗だと思ってくれたの?」
「ああ」
「嬉しい!全身シモン色なのよ」
「……ああ」
シモンが照れてる!
きゅん。
「ニコ……二年前……」
「え?」
「二年前、俺のために一生懸命になってくれてありがとう。
俺に居場所を作ってくれてありがとう。
いつもそばにいてくれてありがとう。
家族と言ってくれてありがとう。
優しくしてくれて、
こんな俺にいっぱい好きだと言ってくれて……
本当にありがとう……」
「シ、シモン……」
「俺がイコリスを自国だと思えるようになったのはニコルがいたイコリスだからだ。お前がいなければ、きっと今でもモルトダーンへの未練を断ち切れずに苦しんでいただろうな」
「……」
シモンは大きな手で、わたしの両手を包み込んだ。
「ニコ、俺はお前が好きだ。多分、出会って間もない頃から好きになっていたんだと思う」
「シモン……」
シモンがわたしの手を握ったまま跪く。
「ニコル姫。政略ではなく俺個人として申し込みたい。どうか俺と生涯を共にして欲しい。
必ず一生をかけて守り抜く。女王となった暁には陰日向なく支え抜く。だからどうか……どうか俺の妻になってくれ」
次の瞬間、
わたしはシモンの首に手を回し飛びついていた。
ドレスが汚れるなんて気にしなかった。
嬉しさのあまりそうしないと空に浮いて飛んで行ってしまいそうだったから。
涙が止まらなかった。
お礼を言いたいのはこちらの方だ。
「うっ…うっ…シ"モ"ン"……!
も"、も"ちろんお受けしまず……!
シモン、こちらこそ"ありがどうっ……
イコリスに来てくれてありがとう、
イコリスを好きになってくれてありがとう、
わたしが悪い時は叱ってくれてありがとう、
いつも鞄を持ってくれてありがとう、
わたしが泣かされたら怒ってくれてありがとう、
そして、そして、わたじを選んでぐれで、
わだじを好ぎになっでくれでありがどう!」
最後の方は泣き声でぐじゃぐじゃになってしまったのが悔しいけど、わたしは懸命に想いを伝えた。
シモンは強く抱きしめ返してくれる。
大きな体がすっぽりとわたしを包み込んでくれた。
心が温かく、安心感で満たされてゆく。
ふとシモンの腕が緩くなり、どうしたのだろうと少し見上げるとすぐ近くにシモンの顔があった。
わたしは優しく口付けをされた。
最初は唇に、その次は額に、それから両頬、鼻、そして最後にもう一度唇に口付けをされた。
あぁ……
これはホントに忘れられない夜と
なってしまった……
好きな人に触れられる事がこんなにも幸せで心満たされる事なんてわたしは知らなかった……。
それからの日々はまた愛おしい日常の繰り返しだった。
わたしとシモンは毎日片道45分かけて通学する。
馬車の中でわたしは喋り通しで、シモンは適当な返事を返してくるけれど、ホントはちゃんと聞いてくれている事をわたしは知っている。
学業は大変だけど、国境付近のポイントの見回りも、畑作業の手伝いも街の清掃も手を抜かない。
どれも大切なわたしの暮らしの一部だから。
シモンも生徒会執行部の仕事と、騎士団との演習、そしてこの頃はお父さまの政務のお手伝いも始めて超多忙な日々を送っているのだ。
アルノルトとジュダンも、そんなシモンを支えてくれている。
もうすぐ一年が終わり、二年生になってもこの生活は変わらないんだろうなぁ。
でも結婚式まで一年を切るわけだから、
わたしはウェディングドレスのデザインを決めたり、採寸したりと、そちらの方でも何かと忙しくなりそうだ。
でも相変わらずドタバタしちゃうのだけは治らないらしく、時々シモンからはポンコツ呼ばわりされた上の脳天チョップを頂く。
ほら…………
そして今も……
「おいコラ、ニコル"ァ!お前、今日の分の課題はどうしたっ!?」
「えっ……?アレ……?畑から帰ったやろうかなぁと……」
「畑仕事に行くなとは言わん、でもせめてやるべき事をやってから行けっ!自分達の畑仕事の所為で自国の姫が課題を忘れて教師に叱られたなんて知ってみろ、民が泣くぞっ!」
「ヒ、ヒェェ…ご、ごもっとも……!」
「オ"ラ"来いっ!」
「キャーーっ!」
わたし達のその様子をお父さまとゼルマンが見ていた。
「あーぁ、ニコの奴また怒られてるよ」
「でもシモン殿下のおかげで姫様も無事に学園を
卒業出来ますでしょうな」
「ホントだね」
「卒業まで一年、そしたらすぐに婚儀だ」
「忙しくなりますな」
「そうだね、案外孫の顔も早く見れそうで楽しみだよ。初孫は男の子かな?女の子かな?」
「……どちらにせよお可愛らしいお子であらせられましょうな」
「うん、そうだね」
お父さま達がそんな話をしているなんてつゆ知らず……。
まぁ実際に学園卒業後、
すぐに結婚式を挙げたわたしとシモン。
そしてわたしはすぐに懐妊、元気な王女を生んだ。
(シモンはチビニコルと評した)
そのあともぽんぽんと双子の王子を生み、
我が家はお父さまを入れて6人家族となった。
そしてもう楽隠居がしたいと生前退位した
お父さまの跡を継いで、
わたしは28歳でイコリスの女王となる。
その時、もちろん隣には王配となったシモンの姿があり、さらにその隣には可愛い可愛いわたしの子ども達も並んでいた。
わたしはこれからもこのイコリスで生きてゆく。
この国に生まれた事を、
この国で生きてゆける事を、
この国で大切な人に出会えた事を感謝したい。
そしてその大切な人がいつも隣にいてくれて、
いつも微笑みかけてくれる事に感謝したい。
ありがとう。
「シモン、ありがとう。これからも変わらず
ずっと大好き!一生大好き!先に謝っておくわね、こんなに好きでごめんなさい。でもまぁ諦めてネ」
わたしがそう言うとシモンは、
「望むところだ」と微笑んでくれた。
おしまい
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これにて完結です。
最後までお付き合いありがとうございました。
感想もお気に入り登録も本当にありがとうございました!
どれだけ更新の励みになった事か……
これぞ、『全わたしが泣いた』です!
そして相変わらず誤字脱字が多くて申し訳ないです。
チェックしてるのに気が付かないなら
チェックの意味ないですね。(汗)
これからも出来る事なら
また皆さまの目に留めて頂けるような
物語を書いてゆきたいと思います。
本当にありがとうございました。
キムラましゅろう
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すみません、質問です。
最初の方、叩き起こされ引き回されたムコ殿王子がお茶の葉の…の所、収穫なのか荷物発送の手伝いなのかと思いまして…。
収穫なら「朝摘み」発送の手伝いなら「朝積み」ではないかと…。
どちらでしょうか?
そこまで細かく考えておりませんでした💦
ゴメンなさーい🙇🏻♀️⸒⸒💦
収穫の方ですね。朝摘みです。
訂正してお詫び申し上げます💦
全読者が泣いたエンディングです!
続きが読みたいのは勿論のこと、コミカライズや書籍化もして欲しい!動くニコルちゃんが見たい!シモンとのコメディタッチな場面も見たい!
作家活動は大変だと思いますが、次回作や番外編など期待しております^^
そう言っていただけて全ましゅろうが泣いております✨
嬉しいお言葉🥰✨どこかコミカライズしてくれないかなーー( *ˊꇴˋ)エヘッ
ありがとうございます💕これからも頑張る所存ですのでよろしくお付き合いくださいませ💕
今の『泣き虫令嬢』の話を読んで、ニコルとシモンの物語をもう一度読みたくなり、読みに来ました。
ニコルがシモンを救った感じで前は読んでいましたが、二人の出会いが、二人を大人にしていったと思います。
ニコルの父の引き出しが怖いですね。それは、今の王族にも引き継がれているのでしょうか?
『泣き虫令嬢』では、シモンが捨てた、モルトダーンのお話で、ライオネルがイコリスにち注視しているので、気になります🤔
またお読みいただきありがとうございます🥰
「泣き虫令嬢」は舞台が逆になりましたね。
さて、モルトダーンとイコリス、両国で何が起きているのか、あ、これ向こうのお話だった😆
作者のお気に入りのひとつ、ニコルとシモンにお付き合い頂きありがとうございます💕