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第一幕

スパルタ教師爆誕

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シモンがイコリスの一員になって、ひと月が経った。

シモンはこの頃、騎士団に混じっての鍛錬や従者権教育係のジュダンとの勉強が忙しくてなかなかわたしの用事に付き合ってくれない。

まぁわたしの用事といえば農作業や街の清掃だったりするんだけどもさ。

国境付近のもそろそろ紹介したいのに。

まぁ勉強も鍛錬も大切よね。

わたしはしないけども。

そう思いながら今日も街へ出るべく城外に向かっていたら、背後から後ろ襟をぐいっと引っ張られた。

「……おいニコル"」

「わっ!シモン、びっくりしたぁ」

後ろ襟を掴まれたまま顔を少し後ろに向けると、
そこには婚約者のシモンがいた。

「俺は前々からお前に聞きたかった事がある」

「え?なになに?」

「毎日毎日、農作業や何やらと忙しく働いている様子だが、お前はいつ、勉強やマナー教育を受けているんだ?」

「へ?」

「王族としての教育を、一体いつ学んでいるんだ?」

「えっと……?一般的な基礎教育は先生のお墨付きの下、終わっているのよ……?」

「王族が一般教育しか身につけないでどうするつもりだ!」

「ぎゃふんっ」

シモンがわたしの脳天にチョップを入れた。

「再来年には俺たちはフィルジリアにある上級学園に入学するんだぞ!お前、そこでもポンコツぶりを披露するつもりか!?」

「で、でも……上級学園はとりあえず一般教育課程を終えてたら誰でも入れると……」

「バカかお前はっ!」

「ぎゃん」

またまたシモンのチョップが入る。

「俺の婚約者がこんなポンコツとバレて、俺まで
侮られるのが我慢ならないんだよ!いいか!?
今日から俺がみっちり勉強を叩き込んでやる。
入学までには、どこに出しても恥ずかしくない王女に、意地でもなって貰うからなっ!」

「ひえっ!?」

「早速たった今から勉強の時間だ、来いっ!」

「いやぁぁ!職人街での井戸の掃除の手伝いがぁぁっ……!」

「やかましいっ」

そう言いながら、シモンはわたしの後ろ襟を掴んだまま、わたしを引きずって行く。

「チュウラ~!わたしの代わりに井戸掃除頑張って来てぇぇ~!」

わたしは一緒に行くはずだった侍女のチュウラに全てを託す。

チュウラはバケツを振りながらわたしを見送ってくれた。

「は~い、姫さまお任せください!姫さまはお勉強を頑張ってくださいませね~」







「ははは!それじゃあこれからはニコルの先生は
シモン殿下が引き受けてくれたのかい?」

「そうなのお父さま、これがもうスパルタで……
わたし、早くも挫折しそうだわ」

わたしはお父さまの執務室のソファーに突っ伏したまま言った。


「いいじゃないか、今まで勉強が嫌いだーっと
誰憚る事なく豪語していたニコルも、とうとう年貢の納め時が来たという事だよ」

「そんなぁぁ……」

わたしが困り果てた顔で体を起こすと、お父さまはくすりと笑ってわたしの頭に手を置いた。


「でもね、ニコは将来女王となって、この国を守って行かなければならない身だよ。それは守る方法じゃなく、あらゆる方法を用いて国を守り、人々の暮らしの安寧を保たなくてはならない。その為に学ぶ事はとても必要な事だ」

「そうだけど……」

「それに、シモン殿下の言うことも一理ある。
フィルジリア上級学園には、各国の王族や上位貴族の令息令嬢が集まるんだ。そこで無能だと侮られる事は、後々の外交問題でも不利な事に繋がる事もあるんだよ」

「ウチの国はもともと侮られてるじゃない……」

「それは一部の心無い国だけだよ。小さな国といえど、我が国は大陸最強の騎士団と、永い歴史の中で認められた永世中立国という立場がある。
それを誇りに学園で頑張ってほしいんだ」

「……わかりました」

わたしがそう言うとお父さまはニッコリと優しく微笑んでくれた。

お父さまの笑顔は不思議と力をくれる。
幼い頃からずっとそうだ。

「シモン殿下はかなり優秀な方だそうじゃないか、そんな人に無料ただで教えて貰えるなんて、家庭教師代が浮いてラッキーだね♪」

やだお父さまったら悪い顔で笑ってらっしゃる。

こうしてわたしは農作業の合間に、シモンと従者のジュダンから、あらゆる分野の学問を頭に叩き込まれる事になった。

時々シモンからは脳天チョップで物理的にも叩き込まれた。

ス、スパルタすぎる……。
















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