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プロローグ
廃嫡された王子
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「くっ……シモン殿下っ……無念です、
なぜ殿下がこのようなっ……!」
「言うな」
「しかしっ……あんまりだ!」
「言うな!」
「っ……!」
「これも運命だ、受け入れるさ」
「殿下……」
「俺のこれからの身分はどういったものになる?
ただのモルトダーンの元王子か?」
「……いえ、事実上の廃嫡となりますが、形式上は縁談のためにイコリス王家に入る、という事になります。なのでご身分は婚義が済むまではモルトダーンの第一王子のままです」
「そうか。たしか次期女王の王配だったな」
「……はい」
「ジュダン」
「なんでしょう」
「俺はもちろん、このままで終わるつもりはない。イコリスが弱小国なら、モルトダーンに負けないくらい強い国をにしてやるさ」
「殿下……!」
「それにはまず、伴侶となる女王、今はまだ第一王女か、その者を意のままに操らなくてはならないな」
「殿下なら必ず成し遂げられるでしょう」
「王女の名は?」
「たしか、イコリス・オ・リリ・ニコルという御名であったと記憶しますが」
「ニコルか……弱小国の姫だ、どうせ何も知らない世間知らずのか弱い女なんだろうな」
彼の名はモルトダーン=・オジリル・シモン。
今まさに廃嫡され、祖国から追い出されようとしている薄幸の美少年だ。
濡れたように輝く黒髪と燃えるような赤い瞳。
生まれながらに備わった王者としての品格も生母とその後ろ盾を失った今、無用の長物と化していた。
昨年儚くなった母の代わりに第二王子を産んだ側妃が王妃になった事により、彼の立場は盤石なものでは無くなったのだ。
もともと長子相続制度を取っていないモルトダーン王国。
隣国イコリスの次期女王との縁組という体を取り、第一王子をお払い箱にしようという魂胆であった。
しかし、彼はこのような所で終わるような器ではない。
この縁組を知らされ、暗に廃嫡を突きつけられてからというもの、いつか必ず巻き返し、自分を捨てた奴らを見返してやる事を己の至上命題とした。
〈そのためには自分の伴侶をも利用してやるさ〉
王配として女王を陰で操り、モルトダーンと渡り合ってやる。
シモンは志を固く決意し、生まれ育った城と祖国を離れる。
この後に生涯忘れられない出会いが待っている事を彼はまだ知らない。
なぜ殿下がこのようなっ……!」
「言うな」
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「言うな!」
「っ……!」
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ただのモルトダーンの元王子か?」
「……いえ、事実上の廃嫡となりますが、形式上は縁談のためにイコリス王家に入る、という事になります。なのでご身分は婚義が済むまではモルトダーンの第一王子のままです」
「そうか。たしか次期女王の王配だったな」
「……はい」
「ジュダン」
「なんでしょう」
「俺はもちろん、このままで終わるつもりはない。イコリスが弱小国なら、モルトダーンに負けないくらい強い国をにしてやるさ」
「殿下……!」
「それにはまず、伴侶となる女王、今はまだ第一王女か、その者を意のままに操らなくてはならないな」
「殿下なら必ず成し遂げられるでしょう」
「王女の名は?」
「たしか、イコリス・オ・リリ・ニコルという御名であったと記憶しますが」
「ニコルか……弱小国の姫だ、どうせ何も知らない世間知らずのか弱い女なんだろうな」
彼の名はモルトダーン=・オジリル・シモン。
今まさに廃嫡され、祖国から追い出されようとしている薄幸の美少年だ。
濡れたように輝く黒髪と燃えるような赤い瞳。
生まれながらに備わった王者としての品格も生母とその後ろ盾を失った今、無用の長物と化していた。
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隣国イコリスの次期女王との縁組という体を取り、第一王子をお払い箱にしようという魂胆であった。
しかし、彼はこのような所で終わるような器ではない。
この縁組を知らされ、暗に廃嫡を突きつけられてからというもの、いつか必ず巻き返し、自分を捨てた奴らを見返してやる事を己の至上命題とした。
〈そのためには自分の伴侶をも利用してやるさ〉
王配として女王を陰で操り、モルトダーンと渡り合ってやる。
シモンは志を固く決意し、生まれ育った城と祖国を離れる。
この後に生涯忘れられない出会いが待っている事を彼はまだ知らない。
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