1 / 21
プロローグ ① 私一人の子どもだから!
しおりを挟む
「ジュ……ジュリア……そ、その子、は……」
見られた!
知られた!
彼にだけは、クリスにだけは知られたくなかったのに!
彼を見限って出て行った私を、
きっと彼も早々に見限って、
あの何とかというご令嬢と幸せになっているはずのクリスにだけは絶対に知られたくなかったのに……!
私は私の最愛の息子、リューイをぎゅっと抱き締めてクリスに言った。
「この子が何?あなたには関係ない子よ」
「だけどっ……その髪色も瞳も、俺と一緒じゃないかっ……」
「だから?この子はね、私が一人でお腹の中で育てて、一人で生んで、これまた一人で育ててる私だけの子なのっ。あなたとは何の関わり合いもない子なのっ!」
「ジュリア……」
訳がわからない。
どうしてあなたがそんな泣きそうな顔してるのよ。
泣きたいのはこっちよ。
誰のために全てを捨ててこの知らない土地で歯を食いしばって……とまではいかないけど頑張って生きてると思っているのよ!
とにかく……
私はじっと目の前に対峙しているクリスの顔を見た。
……少し痩せただろうか、目の下のくまが酷い。
仕事が大変なの?でも出世コースで充実した日々を過ごしてるんじゃないの?
とにかく逃げなければ。
お互いのために、息子のために、もう二度とこの男と関わるつもりはないんだから。
でもどうしよう。
どういう訳かクリスは一瞬たりとも私たち母子から目を逸らさない。
視線だけで捕らわれているような、逃げ場なんてどこにもないような、そんな気持ちにさせられる。
たけどその時、タイミングよく後ろからクリスに声を掛けた女性がいた。
あのご令嬢ではない見知らぬ女性。
一瞬、その女性の方へと視線を移したクリスの隙を私は見逃さなかった。
「っ……ジュリア!!」
私がリューイを抱いて転移魔法で転移する瞬間、焦燥感を顕にしたようなクリスの声が聞こえたが構わず転移んだ。
一度転移で移動して足が接地した瞬間またすぐに転移する。
何度も転移を繰り返す事で後を辿り難くするためだ。
追跡阻害魔法が使えればそんな苦労は要らないのだが、あいにく私はそこまで魔力は高くない。
そうやって必死で再びクリスの前から姿を晦まし、私は這う這うの体で家へと帰りついた。
流石に魔力は空っぽに近い。
私はフラフラになりながらリューイをベビーサークルの中に入れた。
リューイは嬉しそうに高速ハイハイでお気に入りのオモチャの元へと行く。
その様子を眺めながら、私は腹の底から深く大きなため息を吐いた。
「……どうしよう……リューイの存在を知られた……」
完璧主義者のクリスの事だ。
自分の子が人知れず生まれ育っているなんていい気はしないだろう。
今後なんらかのリアクションを取ってくるかもしれない。
先程の転移魔法で上手く撒けていればいいのだけれど。
「もうほっといてよ……いいじゃない、自分の幸せを優先させなさいよ……」
私はそうひとり言ちて、
またひとつ、大きなため息を吐いた。
─────────────────────────
始まりました新連載。
よろしくお願いします。
複数投稿のため感想欄閉じてます。
最終話後に解放しますので、それまでお待ちくださいませ。
申し訳ないです(´;ω人`)ゴメンナサイ
次回、プロローグ② ジュリアのドリア屋です。
見られた!
知られた!
彼にだけは、クリスにだけは知られたくなかったのに!
彼を見限って出て行った私を、
きっと彼も早々に見限って、
あの何とかというご令嬢と幸せになっているはずのクリスにだけは絶対に知られたくなかったのに……!
私は私の最愛の息子、リューイをぎゅっと抱き締めてクリスに言った。
「この子が何?あなたには関係ない子よ」
「だけどっ……その髪色も瞳も、俺と一緒じゃないかっ……」
「だから?この子はね、私が一人でお腹の中で育てて、一人で生んで、これまた一人で育ててる私だけの子なのっ。あなたとは何の関わり合いもない子なのっ!」
「ジュリア……」
訳がわからない。
どうしてあなたがそんな泣きそうな顔してるのよ。
泣きたいのはこっちよ。
誰のために全てを捨ててこの知らない土地で歯を食いしばって……とまではいかないけど頑張って生きてると思っているのよ!
とにかく……
私はじっと目の前に対峙しているクリスの顔を見た。
……少し痩せただろうか、目の下のくまが酷い。
仕事が大変なの?でも出世コースで充実した日々を過ごしてるんじゃないの?
とにかく逃げなければ。
お互いのために、息子のために、もう二度とこの男と関わるつもりはないんだから。
でもどうしよう。
どういう訳かクリスは一瞬たりとも私たち母子から目を逸らさない。
視線だけで捕らわれているような、逃げ場なんてどこにもないような、そんな気持ちにさせられる。
たけどその時、タイミングよく後ろからクリスに声を掛けた女性がいた。
あのご令嬢ではない見知らぬ女性。
一瞬、その女性の方へと視線を移したクリスの隙を私は見逃さなかった。
「っ……ジュリア!!」
私がリューイを抱いて転移魔法で転移する瞬間、焦燥感を顕にしたようなクリスの声が聞こえたが構わず転移んだ。
一度転移で移動して足が接地した瞬間またすぐに転移する。
何度も転移を繰り返す事で後を辿り難くするためだ。
追跡阻害魔法が使えればそんな苦労は要らないのだが、あいにく私はそこまで魔力は高くない。
そうやって必死で再びクリスの前から姿を晦まし、私は這う這うの体で家へと帰りついた。
流石に魔力は空っぽに近い。
私はフラフラになりながらリューイをベビーサークルの中に入れた。
リューイは嬉しそうに高速ハイハイでお気に入りのオモチャの元へと行く。
その様子を眺めながら、私は腹の底から深く大きなため息を吐いた。
「……どうしよう……リューイの存在を知られた……」
完璧主義者のクリスの事だ。
自分の子が人知れず生まれ育っているなんていい気はしないだろう。
今後なんらかのリアクションを取ってくるかもしれない。
先程の転移魔法で上手く撒けていればいいのだけれど。
「もうほっといてよ……いいじゃない、自分の幸せを優先させなさいよ……」
私はそうひとり言ちて、
またひとつ、大きなため息を吐いた。
─────────────────────────
始まりました新連載。
よろしくお願いします。
複数投稿のため感想欄閉じてます。
最終話後に解放しますので、それまでお待ちくださいませ。
申し訳ないです(´;ω人`)ゴメンナサイ
次回、プロローグ② ジュリアのドリア屋です。
170
お気に入りに追加
3,861
あなたにおすすめの小説
永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)
〖完結〗もうあなたを愛する事はありません。
藍川みいな
恋愛
愛していた旦那様が、妹と口付けをしていました…。
「……旦那様、何をしているのですか?」
その光景を見ている事が出来ず、部屋の中へと入り問いかけていた。
そして妹は、
「あら、お姉様は何か勘違いをなさってますよ? 私とは口づけしかしていません。お義兄様は他の方とはもっと凄いことをなさっています。」と…
旦那様には愛人がいて、その愛人には子供が出来たようです。しかも、旦那様は愛人の子を私達2人の子として育てようとおっしゃいました。
信じていた旦那様に裏切られ、もう旦那様を信じる事が出来なくなった私は、離縁を決意し、実家に帰ります。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全8話で完結になります。
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる