懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい

キムラましゅろう

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番外編

お腹の子の能力

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ユニカは妊娠八ヶ月を迎えた。

腹部もかなりふっくらとし、全体的に丸みを帯びた体型がなんとも愛らしいと、セドリックは密かに思っていた。

「……全然ひそめいていませんからね?全身から奥様が可愛くてたまらないオーラが滲み出てますからね?」

久々に公爵家の屋敷に来たルナが、主に冷静に告げる。

「………」

コホン、とひとつ咳払いをしてからセドリックはルナからアパートの経理報告が書かれた書類を受け取った。

「それで?アパートの方は変わりないか?」

「はい。奥様が時々、ホンモノのシシー先生目がけて突撃してくるくらいですかね?」

「……ユニカがあんなにもGGLにハマるとは予想外だった……」

セドリックがため息を吐きながら書類に目を通す。

「ご不快ですか?」

ユニカにGGL本を布教した張本人が尋ねた。

「不快とまではいかないが、お爺さん×お爺さんなどと……どこがいいのか理解できん」

その言葉を聞き、ルナはニヤリと笑って言い返した。

「そんな事言って。奥様の為に図書室にいろんな作家さんのGGL本を揃えたって聞きましたよ?」

「……ユニカが楽しいならそれはそれで素晴らしい事だからな」

「ご馳走様でございます」

ルナはわざとらしいくらいに深々と首を垂れた。

「それにしても奥様のお腹、大きくなられましたね」

「ああ。男の子だからな、やはり骨格が大きいようだ」

性別をさらっと言うセドリックに対してルナは目を丸くして尋ねた。

「えっ?どちらがお産まれになるかわかっておいでなのですか?」

「ああ。魔力の波長からわかった」

「それで若君であらせられると。お世継ぎ誕生ではありませんか!おめでとうございます!」

「ありがとう。その事も含めてには知り得なかった事がわかった」

「といいますと?」

ルナが問うと、セドリックは持っていた書類を机の上に置いてルナの方に視線を向けた。

「生まれて来る子はかなりの高魔力保持者だという事だ。おそらく“王家の至宝”を受け継いで生まれてくる可能性が高い」

「王家の至宝……一生に一度だけ時間を操れるという王族の血を引く方が時折持って生まれてくる能力ですね」

「そうだ。不思議に思っていたんだ。何故ユニカだけが、中途半端な形で前回の記憶を持って戻ったのだろうと」

「確かに……」

ルナは前回の記憶を予知夢として認識して話すユニカの姿を思い出した。

「ククレもクロエも、前回の巻き戻りに関わった人間は皆、時を戻した俺以外は誰も何も覚えていないのにも関わらずだ」

「!それがお腹の中の坊ちゃんの魔力の影響だったと仰るのですね!」

「そうだ。ユニカと共に巻き戻りをしたお腹の子が無意識の内に、本能的に母体の記憶に影響を及ぼしたのだろうな」

その言葉を受け、ルナはウルっと瞳を涙で滲ませた。

「……っママ、ボクのコト忘れないでっ……って感じだったんでしょうか……」

「そうだったのかもしれないな……」

セドリックはルナに背を向けて窓の外を見た。

一度目は最愛の妻と同じく守れなかった我が子の命。

今度こそもうじき会える。

生まれてきたら、ユニカと共に二生分の愛情を注いで育てるのだ。

セドリックは胸の奥から言葉では表現出来ないほどの温かい感情が湧き上がるのを感じていた。


そこでセドリックはふと、ある事に気付く。

「………ルナ」

ルナは涙を拭きながらセドリックに答えた。

「なんでございましょう?」


「………ユニカは毎日GGL本を読んでいるが、アレは胎教に問題はないのか?」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





オマケのシシー先生のGGL本のあらすじ紹介コーナーです☆


今回の作品タイトルは
『ワシとわしの事情』
余命幾ばくも無い恋人を余命幾ばくもない主人公が支えるお話です。

とある読者様が、その幾ばくも無い余命というのは病気などではなく寿命ですよね?と仰っていましたが、全く以ってその通りです!!

これはアルファポリスでいうところのショートショート。

1話完結の短い物語です。



◇◇◇◇◇


とある王国に10代の頃に職人の見習い同士として出会った主人公ソニー(85)とマイケル(85)という二人のお爺さんカップルがいた。

同性愛を認めない厳しい国の国民として暮らす二人は、互いを生涯のパートナーと胸に秘め、表向きは職人ギルドの共同経営者同士として共に暮らしていた。

腕の良い職人でもあった二人。
ギルドの経営と共に数多くの弟子も取り、その育成にも当たってきた。

そんなソニーとマイケルも八十を過ぎ、そろそろ余生をのんびり暮らそうじゃないかと二人で決めて、ギルドを一番弟子だった者に譲り引退をする。

このままこの国で、同性愛者だという事を隠したまま生きていくのだと思っていたソニーとマイケル。

けれど戸籍が一緒でないと、同じ墓には入れないこの国。
せめて墓は隣に建てようなと話していた。

そんな時にギルドの元客の一人から、とある話を聞いた。

「ハイラント王国なら同性同士の結婚も認められて、一緒の墓に入る事にも寛容なんだそうだよ」と。

その話を聞き、
ソニーとマイケルは決意する。

「マイケル……わしはやっぱり、キミと本当の家族になって、一緒のお墓に入りたいよ」

「ソニー……ワシも同じ気持ちだ。
行こう、ハイラントへ。人生最後の日々を最高に幸せなものにするためにハイラントへ移住しよう!」

「ソニー……!」
「マイケル……!」

♡♡♡♡

こうして二人は、積めるだけの荷物を荷馬車に積め込んで、ハイラントへ向けて旅立った。

穏やかな天候の日ばかりではなかった。

腰や膝が痛む日もあった。

悪路のために入れ歯が外れて、馬車から落ちて探し回る日もあった。

特にマイケルは頭痛持ちで、長旅による疲れの所為で更に悪化してしまう。
しかしソニーはそんなマイケルをより良く支えた。

肩や首のマッサージをしたり、頭痛に良いとさせるハーブティーを淹れたり。

そしてそうやって互いを励まし合い、やがて二人はとうとうハイラントへ辿り着く。

苦労した甲斐あって、二人は直ぐに移住を認められハイラント国民となる。

新しく家も構え、ソニーはマイケルの籍へと入り、二人は本当のパートナーとして幸せな日々を過ごした。

……たった二年間だけだったが。

ある寒い寒い冬の日に、マイケルはソニーに見守られながら穏やかにその生涯を閉じた。

それからまるで後を追うように、ソニーも自宅で眠るように息を引き取ったのだった。

そして二人、今は望み通りに一つの墓で眠っている。


二人の墓にはこう刻まれていたという。

“これぞ我らの終の住処。本当のスィートホーム。ソニーとマイケル、今も手を握り合ってこので眠る”と……。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アレ?不覚にも書きながらウルっとしたぞ!?

日本でもまだ同性婚を認めている自治体とそうで無い所の差がありますよね。

全ての人が好きな人との幸せな暮らしを望むのは当然だと思うんですよね。
同性でも異性でも愛があるならそれで良いと思うのですが……。
互いを想いあい、大切にし合う家族が増える。素晴らしい事だと思います。
それがきっと、争いのない穏やかな社会を作っていくのではないかと思いました。


でもこれはあくまでも作者個人の考えです。
違うご意見の方も当然多数いらっしゃると思います。
その方は、どうかスルーをお願い申し上げます。




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