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挿話 ポンコツ妻GGL本を読む
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知恵熱を出して寝込んだユニカ。
熱は下がったものの、まだ無理をしてはいけないと部屋から出る事を禁じられた。
そうでもしないと畑仕事をしたり、散歩に出かけたりするからだ。
しかし何もせずにずーっと部屋の中いるというのも退屈で死にそうになる。
かと言って読みたい本もなし、編み物や刺繍をする気分にもなれない。
そんなユニカにルナが言った。
「シシー先生のGGL本……お貸ししましょうか?」
「え?あの、お爺さんとお爺さんの……?」
「はい。奥様、興味を示されていたでしょう?」
「そうね……読んでみようかしら」
「ふふふ……では早速お持ち致しますね」
そう言ってルナは本を数冊持って来た。
「やはり先生の代表作、
『終の住処、グループホームの中心で愛を叫ぶ』は絶対に読まなくてはいけません!
そして次に読むなら、余命幾ばくも無い恋人を余命幾ばくも無い主人公が支える愛を描いた『ワシとわしの事情』、もしくは80年ぶりに再会した幼馴染との恋の駆け引きの物語『そのトゥンク、不整脈ではありません☆』この3作品が激推しです!」
相変わらずの熱弁っぷりに気圧されながらもユニカは本を受け取った。
「じゃあ……シシーの代表作から……」
と言いながら、『終の住処、グループホームの中心で愛を叫ぶ』を手にする。
そしてユニカはページをめくり始めた。
最初は静かに読み進めていたユニカ。
それがいつしか、
「きゃー……」とか
「い、入れ歯の歯列をなぞるって……」とか
「年季の入った熱い楔って……!」とか
「ああっ!文字通り腰が抜けてしまうなんて」とか
「一つの容器で入れ歯を一緒に浸け置きするなんてロマンティック……」とか口にしながら物語に没頭していった。
日も傾き夕暮れが差し迫る頃、
ユニカはようやく一冊を読み終える。
「……ふぅ……」
部屋の魔石ランプを点けにきたルナが感想を尋ねた。
「如何でしたか?」
「……なんというか……人生観が変わったわ……」
「でしょう!」
「どうしてもっと早く読まなかったのかしら!」
「ですよね、そう思いますよね!」
「お爺さんとお爺さん……アリね」
「アリでしょう!!」
「じゃあ次は『そのトゥンク、不整脈ではありません☆』を読むわ」
ユニカは新たな本を手にした。
それをクロエが横からすっ……と取り上げた。
「いけませんユニカ様、一度読みながら鼻血を出されていたではありませんか、また知恵熱を出されるおつもりですか?」
「……はい」
素直に返事をしながら、ユニカは鼻に詰めていたティッシュを取り出した。
しかしユニカは今日、確実に新たな扉を開けたのだった。
熱は下がったものの、まだ無理をしてはいけないと部屋から出る事を禁じられた。
そうでもしないと畑仕事をしたり、散歩に出かけたりするからだ。
しかし何もせずにずーっと部屋の中いるというのも退屈で死にそうになる。
かと言って読みたい本もなし、編み物や刺繍をする気分にもなれない。
そんなユニカにルナが言った。
「シシー先生のGGL本……お貸ししましょうか?」
「え?あの、お爺さんとお爺さんの……?」
「はい。奥様、興味を示されていたでしょう?」
「そうね……読んでみようかしら」
「ふふふ……では早速お持ち致しますね」
そう言ってルナは本を数冊持って来た。
「やはり先生の代表作、
『終の住処、グループホームの中心で愛を叫ぶ』は絶対に読まなくてはいけません!
そして次に読むなら、余命幾ばくも無い恋人を余命幾ばくも無い主人公が支える愛を描いた『ワシとわしの事情』、もしくは80年ぶりに再会した幼馴染との恋の駆け引きの物語『そのトゥンク、不整脈ではありません☆』この3作品が激推しです!」
相変わらずの熱弁っぷりに気圧されながらもユニカは本を受け取った。
「じゃあ……シシーの代表作から……」
と言いながら、『終の住処、グループホームの中心で愛を叫ぶ』を手にする。
そしてユニカはページをめくり始めた。
最初は静かに読み進めていたユニカ。
それがいつしか、
「きゃー……」とか
「い、入れ歯の歯列をなぞるって……」とか
「年季の入った熱い楔って……!」とか
「ああっ!文字通り腰が抜けてしまうなんて」とか
「一つの容器で入れ歯を一緒に浸け置きするなんてロマンティック……」とか口にしながら物語に没頭していった。
日も傾き夕暮れが差し迫る頃、
ユニカはようやく一冊を読み終える。
「……ふぅ……」
部屋の魔石ランプを点けにきたルナが感想を尋ねた。
「如何でしたか?」
「……なんというか……人生観が変わったわ……」
「でしょう!」
「どうしてもっと早く読まなかったのかしら!」
「ですよね、そう思いますよね!」
「お爺さんとお爺さん……アリね」
「アリでしょう!!」
「じゃあ次は『そのトゥンク、不整脈ではありません☆』を読むわ」
ユニカは新たな本を手にした。
それをクロエが横からすっ……と取り上げた。
「いけませんユニカ様、一度読みながら鼻血を出されていたではありませんか、また知恵熱を出されるおつもりですか?」
「……はい」
素直に返事をしながら、ユニカは鼻に詰めていたティッシュを取り出した。
しかしユニカは今日、確実に新たな扉を開けたのだった。
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