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別れた夫に復縁を迫られています
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しおりを挟む『カレン。お前の結婚相手に、ハルクなんてどうだろう?』
ある日突然、兄のグレイドにそう尋ねられた。
『……え?』
『近頃、ハルクとよく会っているそうじゃないか。家令やメイドから聞いたぞ』
『よく会っているだなんて……たまたまよ。たまたま出先でよくハルク様と出会すだけよ』
『ふぅん……たまたまねぇ』
『な、なによっ……?』
思わせぶりに笑みを浮かべる兄をカレンは睨めつける。
『いや?それにしてもいつの間にファーストネームで呼び合う仲になったんだぁ?』
『……いつの間にかしら?』
『あいつは人の懐に入り込むのが巧いからな。で?どうだ?ハルクに嫁ぐか?』
唐突に結婚の話を切り出され、しかも諸々の経緯の説明もなく返事だけを迫る兄に、カレンは反発心を抱いた。
『私ももうすぐ十八。お兄様が私の結婚相手を求めるのはわかります。半年後にはお兄様もご結婚されますから、いつまでも婚約者すらいない小姑を家に置いておけないのも理解できますわ。でもだからといってなぜ突然ハルク様なんです?』
普段仲の良い兄妹だからこそ、他人行儀な敬語を用いることでカレンがどれほどご立腹なのかわかる。
グレイドは眉尻を下げて肩を竦めた。
『僕が結婚するからお前を嫁に出したいわけじゃないことはわかっているだろ?……そしてそれとは関係なく、お前もそろそろ結婚相手を見つけないといけないということも』
『ええ、そうですわね』
『なのにお前、どちらかというと社交界も男も苦手だろう』
『ええ……そうですわね』
『だけどハルクとはファーストネームを呼び合うほど自然に接することができている』
『……ええ。そう、ね』
『ハルクは良い奴だよ』
『ええ。そうね……』
『惚れてるんだろう?』
『……』
『僕の記憶が正しければ、初恋だよな?』
『っ……ええそうよ!不思議と顔を合わせているうちに好きになったのよ!だけど私の一方的な気持ちだけで相手に縁談を押し付けるわけにはいかないでしょうっ?』
『貴族ならべつにおかしなことじゃない。ハルクは三男だが子爵家の者だ。……それにな、あいつは二つ返事で快諾したよ』
『何を?』
『カレンとの婚約をだよ』
『えっ』
『第二王子の公務の内容により、勤務時間や休日が確定しない。それでもお前がいいのなら是非にと乞われたよ。最初はこちらからの打診だったのにな』
『ハルク様が……』
逆に望まれたという話に、カレンは頬に熱が集中するのを感じた。
そんな妹を見て、グレイドが笑みを浮かべてカレンに言う。
『それで?』
『それで、とは?』
『ハルクに嫁ぐか?』
グレイドに答えを促される。
カレンはほんの少し思いを巡らせ、そして……
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