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愛しい日々をあなたに 〜魔法省特務課の事件簿〜
エピローグ あなたと共に咲き綻ぶ人生を
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菫は夢を見ていた。
あの日の夢だ。
父が処刑され、李亥家の使いの者からレガルドとの婚約を破棄する旨を認められた書状を受け取った時の夢。
あの時感じた悲しみと喪失感。
大切なものが手から零れ落ちてゆくのに何も出来ない無力な自分を嘆いた。
辛く、虚しく、只々悲しい。
そんな中、心に思い浮かぶのは縁を絶たれた愛しい存在。
もう会えない、もう共に笑い合う日なんて来ない、そう思っていたのに……。
「菫………」
大好きな声に名を呼ばれ、その声に導かれるように菫の意識は浮上した。
「レガルド様……」
目を開けると今自分の名を呼んだ愛しい人がそこにいた。
夜の寝室で心配そうに菫の顔を覗き込み、不安げな双眸を向けている。
「……どうした?涙を流して、悪い夢でも見たのか……?」
「え……?泣いて……?」
気付けば頬に温かな何かを感じた。
菫はそこに指で触れ、それが自身が流した涙であると知る。
「ふふ、昔の夢を見て泣くなんて……私、子どもみたいね……」
菫がそう言うとレガルドは菫の半身を引き起こしそして抱きしめた。
「大丈夫だ菫、俺がついてる。どんな時でも俺が必ず守るから」
夫の腕に抱かれ、菫は心から安心できた。
その声がこの温もりがいつも菫を包み込んでくれる。
菫は一度は諦めたのに、彼は決して諦めず二人の未来を守ってくれた。
そうして今の暮らしがある。
大切で可愛い子どもたちも、周りにいる温かな人たちもみんなみんなレガルドのおかげで手にする事が出来たのだ。
この手から零れ落ちたものと同等の物をこの手に与えてくれた。
菫はそう感じた事をレガルドに告げると、彼は菫の大好きな屈託のない笑顔で答えてくれる。
「違うぞ菫。それは菫自身が辿り着き、手にしたものだ。俺はその手伝いをしただけだよ」
「レガルド様……」
その言葉を聞き、菫は改めて思った。
きっと……二人だったからだろうと。
二人で互いを想い合い、繋いだ手を離さずにいたからここまで歩んでこれたのだろう。
レガルドへの想いを全て込めて彼の頬に口付けをした。
「レガルド様、大好きです。私、あなたと出会えて本当に良かった……」
「菫……」
「これからもずっと側にいてくださいね」
「っ……もちろんだっ!!菫!俺も大好きだぞっ!!」
「きゃあっ!」
菫の言葉に感極まったレガルドに押し倒された。
やはり、のお約束的展開……と思いきやこれまたお約束で、側で眠っていたのばらが泣き出したのだった……。
菫はこの後、のばらが四歳になり王立幼児園に入園したのを機に魔法省へと復職した。
とはいっても軽く数時間のみのパートのようなものだが。
それでも気のおけない仲間と共に仕事が出来る事が嬉しかったのだ。
心配性で過保護な夫が常に目を光らせている職場ではあるが……。
第二子長女ルルカを出産したハルジオの妻ミルルも、いずれは復職したいと言っていた。
彼女の足は完全に元通りというわけにはいかないが、それでもリハビリの積み重ねにより歩き方もさほど違和感を感じないほどになっている。
歩く事を諦めなかったミルルの努力の賜物だ。
そう。歩き続ければきっと道は開ける。
あの日、東和を出国するために港へ向かって二本の足を動かし続けたように、ただ前に向かって歩き続けるのだ。
時には立ち止まり休んでもいい。
雨が降り出したなら道を逸れて雨宿りをしてもいい。
ただその後も必ず歩き続ける。
そうすればいずれ目的地に辿り着くから。
その道を示してくれたレガルドに、菫は心から感謝しているのだ。
そして今は二人。
子ども達とも手を繋ぎ歩いている。
いずれ子ども達の手は離れ、それぞれ自分達の道を歩いて行くのだろう。
だけどレガルドとは一生手を離さず共に歩いて行きたい。
愛し愛され、花の咲き綻ぶ人生を共に歩いて行きたいのだ。
「レガルド様」
菫が夫の名を呼ぶ。
彼は振り返り、優しげな眼差しを向けてくる。
「菫、愛してるぞ」
「ふふ。私もです」
菫は花が綻ぶように微笑んだ。
終わり
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とりあえずこれにて本編は完結とさせていただきます。
まだ書きたいエピソードは幾つかありますが、このままだとダラダラと締まりがなく、終わるタイミングを逃しそうだなと思い本編をきちんと終える事に致しました。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました!
そして引き続きオマケのエピソードをお楽しみ頂けますと幸いです。
あともう少しよろしくお付き合いくださいませ。
ヨロチクビ~♡
あの日の夢だ。
父が処刑され、李亥家の使いの者からレガルドとの婚約を破棄する旨を認められた書状を受け取った時の夢。
あの時感じた悲しみと喪失感。
大切なものが手から零れ落ちてゆくのに何も出来ない無力な自分を嘆いた。
辛く、虚しく、只々悲しい。
そんな中、心に思い浮かぶのは縁を絶たれた愛しい存在。
もう会えない、もう共に笑い合う日なんて来ない、そう思っていたのに……。
「菫………」
大好きな声に名を呼ばれ、その声に導かれるように菫の意識は浮上した。
「レガルド様……」
目を開けると今自分の名を呼んだ愛しい人がそこにいた。
夜の寝室で心配そうに菫の顔を覗き込み、不安げな双眸を向けている。
「……どうした?涙を流して、悪い夢でも見たのか……?」
「え……?泣いて……?」
気付けば頬に温かな何かを感じた。
菫はそこに指で触れ、それが自身が流した涙であると知る。
「ふふ、昔の夢を見て泣くなんて……私、子どもみたいね……」
菫がそう言うとレガルドは菫の半身を引き起こしそして抱きしめた。
「大丈夫だ菫、俺がついてる。どんな時でも俺が必ず守るから」
夫の腕に抱かれ、菫は心から安心できた。
その声がこの温もりがいつも菫を包み込んでくれる。
菫は一度は諦めたのに、彼は決して諦めず二人の未来を守ってくれた。
そうして今の暮らしがある。
大切で可愛い子どもたちも、周りにいる温かな人たちもみんなみんなレガルドのおかげで手にする事が出来たのだ。
この手から零れ落ちたものと同等の物をこの手に与えてくれた。
菫はそう感じた事をレガルドに告げると、彼は菫の大好きな屈託のない笑顔で答えてくれる。
「違うぞ菫。それは菫自身が辿り着き、手にしたものだ。俺はその手伝いをしただけだよ」
「レガルド様……」
その言葉を聞き、菫は改めて思った。
きっと……二人だったからだろうと。
二人で互いを想い合い、繋いだ手を離さずにいたからここまで歩んでこれたのだろう。
レガルドへの想いを全て込めて彼の頬に口付けをした。
「レガルド様、大好きです。私、あなたと出会えて本当に良かった……」
「菫……」
「これからもずっと側にいてくださいね」
「っ……もちろんだっ!!菫!俺も大好きだぞっ!!」
「きゃあっ!」
菫の言葉に感極まったレガルドに押し倒された。
やはり、のお約束的展開……と思いきやこれまたお約束で、側で眠っていたのばらが泣き出したのだった……。
菫はこの後、のばらが四歳になり王立幼児園に入園したのを機に魔法省へと復職した。
とはいっても軽く数時間のみのパートのようなものだが。
それでも気のおけない仲間と共に仕事が出来る事が嬉しかったのだ。
心配性で過保護な夫が常に目を光らせている職場ではあるが……。
第二子長女ルルカを出産したハルジオの妻ミルルも、いずれは復職したいと言っていた。
彼女の足は完全に元通りというわけにはいかないが、それでもリハビリの積み重ねにより歩き方もさほど違和感を感じないほどになっている。
歩く事を諦めなかったミルルの努力の賜物だ。
そう。歩き続ければきっと道は開ける。
あの日、東和を出国するために港へ向かって二本の足を動かし続けたように、ただ前に向かって歩き続けるのだ。
時には立ち止まり休んでもいい。
雨が降り出したなら道を逸れて雨宿りをしてもいい。
ただその後も必ず歩き続ける。
そうすればいずれ目的地に辿り着くから。
その道を示してくれたレガルドに、菫は心から感謝しているのだ。
そして今は二人。
子ども達とも手を繋ぎ歩いている。
いずれ子ども達の手は離れ、それぞれ自分達の道を歩いて行くのだろう。
だけどレガルドとは一生手を離さず共に歩いて行きたい。
愛し愛され、花の咲き綻ぶ人生を共に歩いて行きたいのだ。
「レガルド様」
菫が夫の名を呼ぶ。
彼は振り返り、優しげな眼差しを向けてくる。
「菫、愛してるぞ」
「ふふ。私もです」
菫は花が綻ぶように微笑んだ。
終わり
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とりあえずこれにて本編は完結とさせていただきます。
まだ書きたいエピソードは幾つかありますが、このままだとダラダラと締まりがなく、終わるタイミングを逃しそうだなと思い本編をきちんと終える事に致しました。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました!
そして引き続きオマケのエピソードをお楽しみ頂けますと幸いです。
あともう少しよろしくお付き合いくださいませ。
ヨロチクビ~♡
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