上 下
38 / 56
愛しい日々をあなたに 〜魔法省特務課の事件簿〜

お花ちゃんとカワイコチャン

しおりを挟む
「いらっしゃいませ。いつも主人がお世話になっております。レガルドの妻の菫です」

「っ!?はわっ…はわわわわわわわっ……!」

ハルジオの妻ミルルが初めて訪れたリー家の玄関で菫の姿を見た瞬間、彼女は壊れたオモチャのようになってしまった。

「ミルル?」

ハルジオがそんなミルルの顔を覗き込む。

「は、は、は、は、はるさんっ……!」

ミルルはハルジオの服を縋るようにそっと掴み、そしてこう言った。

「花の天女さまがいるわっ……!」

「「え?」」(菫とハルジオ)

「花の天女っ!まさにっ!ミルルちゃん至言っ!!」


菫の美しさに我を忘れたミルルが発した言葉にレガルドが激しく同意する。


初対面で、ミルルは菫たんインパクトを体験した。





◇◇◇◇◇


「ト…トリミダシテ、ゴメンナサイ……」

落ち着きを取り戻し、次に恥ずかしさで居た堪れなくなったミルルにハルジオが言った。

「大丈夫だよミルル、スミレさんはそんな事で気を悪くするような人ではないからね」

ハルジオのその言葉に大いに頷きながらレガルドも言う。

「そうだよミルルちゃん、菫は菩薩のような女性ひとだから。それに褒めてくれたのに気を悪くする訳がないよ」

「そうそう。スミレさんはお前のような無茶苦茶な旦那でもいつも広い心で全てを許し包み込んでくれる懐深い女性ひとだからな」

「なにおぅ」

「ふふふ。ミルルさん、ありがとうございます。花の天女だなんて光栄です」

菫がお茶を差し出しながらミルルにそう告げた。

「や、優しい……!」

菫の言葉に感激するミルルにハルジオが言った。

「ミルル?目がハートになってない?」

「ぷっ……ハルジ、お前を見つめる時よりもミルルちゃんの目がハートになってるぞ」

「うるさい。今のスミレさんの表情も、お前を見ている時よりも優しげだぞ」

「え、菫ちゃん?」

「ぷ、ふふふ」「ふふふ」

夫たちのやり取りを、菫とミルルは可笑しげに笑う。

そしてテーブルの椅子に座るミルルが居ずまいを正して菫に告げた。

「改めまして菫さん、はじめましてミルル=バイスです。いつもレガルドさんには本当にお世話になっております」

「こちらこそ。私もハルジオさんには本当にお世話になったの。でもふふ、ハルジオさんが懸命に守ろうとされるのも頷けるわ。ミルルさんは本当に可愛らしい方だもの」

「ハルおじさま、おかおがあかいわ」

菫のお手伝いで焼き菓子をテーブルに置く蕾がハルジオの顔を見て言った。

「蕾、ハル小父さんはな、お腹の中は真っ黒だがたまにお顔が赤くなる事もあるんだぞ」

「お前の顔色は青褪めさせてやろうか?」

「なにおぅ!」

「めっ!なかよち!」

レガルドの膝の上に乗っていた楓が歪み合う父親とハルジオに仲良くしろと叱った。

それを見たミルルがまたまた壊れる。

「きゃ、きゃわわわわわわっ……!つ、蕾ちゃんも楓くんも、お話に聞いていたよりずっと可愛いわっ……きゃわわわ♡…あ!ワタシッタラマタ…ゴメンナサイ…」

ミルルの忙しいそのテンションが微笑ましく、みんなでまた笑ったのだった。



せっかくなので、という事でレガルドはハルジオと共に子ども達を連れて公園へと行き、
菫とミルルはゆっくりとお茶を飲みながらお喋りを楽しむ事が出来た。


「でも本当に会えて嬉しいわミルルさん」

「私もです。ふふ、お会い出来るようにレガルドさんにお願いして良かった」

「旦那様たちよりも仲良しになりましょうね」

「もちろん!ハルさんたちに負けていられません」

「ええ」


その後は東和の話になったり夫たちの話になったり……
菫とミルルは初めて会ったとは思えないほどすぐに打ち解けて楽しいお喋りに花を咲かせた。


そしてその後、公園から戻ってきたハルジオが皆に告げる。


三ヶ月後に本省に移動となり、このアパートメントポワンフルに戻って来るという事を。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

彼氏が留学先から女付きで帰ってきた件について

キムラましゅろう
恋愛
キャスリンには付き合いだしてすぐに特待生として留学した、ルーターという彼氏がいる。 末は博士か大臣かと期待されるほど優秀で優しい自慢の彼氏だ。 そのルーターが半年間の留学期間を経て学園に戻ってくる事になった。 早くルーターに会いたいと喜び勇んで学園の転移ポイントで他の生徒たちと共に待つキャスリン。 だけど転移により戻ったルーターの隣には超絶美少女が寄り添うように立っていて……? 「ダ、ダレデスカ?その美少女は……?」 学園の皆が言うことにゃ、どうやらルーターは留学先でその美少女と恋仲だったらしく……? 勝気な顔ゆえに誤解されやすい気弱なキャスリンがなんとか現状を打破しようと明後日の方向に奮闘する物語。 ※作中もンのすごくムカつく女が出てきます。 血圧上昇にご注意ください。 いつもながらの完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティなお話です。 重度の誤字脱字病患者が書くお話です。 突発的に誤字脱字が出現しますが、菩薩の如く広いお心でお読みくださいますようお願い申し上げます。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

婚約者が肉食系女子にロックオンされています

キムラましゅろう
恋愛
縁故採用で魔法省の事務員として勤めるアミカ(19) 彼女には同じく魔法省の職員であるウォルトという婚約者がいる。 幼い頃に結ばれた婚約で、まるで兄妹のように成長してきた二人。 そんな二人の間に波風を立てる女性が現れる。 最近ウォルトのバディになったロマーヌという女性職員だ。 最近流行りの自由恋愛主義者である彼女はどうやら次の恋のお相手にウォルトをロックオンしたらしく……。 結婚間近の婚約者を狙う女に戦々恐々とするアミカの奮闘物語。 一話完結の読み切りです。 従っていつも以上にご都合主義です。 誤字脱字が点在すると思われますが、そっとオブラートに包み込んでお知らせ頂けますと助かります。 小説家になろうさんにも時差投稿します。

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】

霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。 辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。 王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。 8月4日 完結しました。

初恋の呪縛

緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」  王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。  ※ 全6話完結予定

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

処理中です...