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愛しい日々をあなたに 〜魔法省特務課の事件簿〜
その男を怒らせてはいけない
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「阿保らし。やめだやめだ。俺は帰るぞ」
十日に渡る異空間結界を展開してまで警護していた殺人事件の重要な証人であるリエンヌ=ノリスとその侍女カーラが、最愛の妻である菫を貶める発言をした事にキレたレガルド。
職場を放棄して帰るような言を発した事に、侍女のカーラが慌ててレガルドに言う。
「なっ……!?帰る?帰るとはどういう事なのですかっ?まさかお嬢様を見捨てて帰ると仰るのですかっ?」
「仰るのですよ脳内お花畑侍女さん。脳内お花畑令嬢の警護なんてクソ阿呆らしくてやってられなくなったんですよ」
「「脳内お花畑侍女」令嬢っ?」
脳内お花畑の二人か声を揃えて言う。
リエンヌが慌ててレガルドに縋る。
「ど、どうなさったのリー様っ、どうして急にそんなっ……今まで私達、仲良く寄り添ってきたではありませんか」
「仲良くも寄り添ってなんかもねぇ。気色悪い事言うな」
「きしょっ!?」
「無礼なっ!お嬢様に向かってなんて口の利き方をっ……それに、職務放棄なんて許されませんよっ!あなた!職務規定違反や証人保護義務違反を犯されるおつもりですかっ!」
平時でさえ甲高く鼓膜に響く声であるのに、更にヒステリックな声を上げてレガルドに言った。
耳を穿りながらレガルドが答える。
「誰が仕事を放棄すると言った?俺はただ帰ると言っただけだ」
「お嬢様を放置して帰るというのなら職務放棄と一緒でしょっ!!」
キンキンとまるで金属音のような声でがなり立てるカーラに、レガルドは何やら術式めいたものを呟いた。
「っ!?」
すると途端にカーラの口は閉じ、まるて縫い付けられているかのように開かなくなった。
「煩い、黙ってろ」
レガルドの言葉も聞かずに、カーラはなんとかこじ開けようと必死にもがいている。
その様子を見たリエンヌが顔色を悪くしてレガルドに言った。
「リー様っ……なぜ?なぜ急に怒り出しの?私何かあなたの気に障るような事を言った………?」
媚びるような上目遣いでリエンヌがレガルドを仰ぎ見る。
しかしレガルドの返す視線は氷のように冷たかった。
「俺の菫ちゃんの悪口を言いやがって……お前らが男なら顔の形が変わってたぞ。女に生まれた事に感謝するんだな」
「そんなっ……悪口だなんてっ、私はただあの人が冷たいって本気で思っ…フガッ」
リエンヌの主張は最後まで言う事は叶わなかった。
レガルドに口を掴まれたからだ。
「菫が冷たい?阿呆かお前は。菫は菩薩のような女性だぞ?いや、もはや如来と呼んでもいい。そんな菫を悪く言いやがって……本当なら殺人犯に引き渡してやりたいくらいだ」
レガルドのその言葉を、レガルドに口を掴まれたまま、リエンヌは涙目になりながら小刻みに震えて聞いていた。
「でもな、俺は職務に忠実な男だ。家族を養っていかねばならんしな。だから仕方ないからあんたを守ってやる。だがな、それは別にここでなくてもイイ訳だ」
「……?」
「そうだよ、なんで今まで思いつかなかったんだ。魔術干渉を受けているなら、それが及ばない場所へ飛ばせば良かったんだ」
レガルドはリエンヌから手を離し、亥の方角…北北西に向かって告げた。
「おーい、亥羅守~!聞こえてるかぁ?」
ややあって、レガルドの呼び掛けに答える声があった。
どこから聞こえてくるのかは分からない。
空間全域から聞こえるような気もするし、地の底、或いは天上から聞こえてくる気もする。
『ドウシタ小僧、モット空間ガ欲シイノカ?』
「ヒィッ!?」
唸るような低く重たい声を聞き、リエンヌとカーラは身を寄せ合って怯えていた。
「ちょっと異物を二つばかり預かって欲しいんだけど」
『人間ヲカ?……人間ヲ我ノ世界ニ入レルノカ?別ニ構ワンガ、耐エラレルノカ?』
「さあ?まぁ大丈夫なんじゃないか?亥羅守の眷属獣に喰われないようにだけ見といてくれ。あとは基本放置でいい。そんなに日にちは掛からないと思う。その間にこっちで犯人をふん捕まえるから」
『マァ好キニシロ。ソノ代ワリ、マタ菫ニ合ワセロ。顎ヲ撫デテ貰イタイ』
「なっ……?くそイノシシめっ、味を占めやがったな」
『菫ノ手ハ心地ヨイ。頼ンダゾ』
「菫がいいって言ったらな。彼女は身重で大変なんだ」
『小僧、貴様マタ孕マセタノカッ、儂ノ可愛イ野花ニナンテ不埒ナ事ヲッ!!』
「煩えっ!菫は俺の嫁だっつーのっ!助平心を抱いたら牡丹鍋にして食っちまうぞっ!とにかく頼んだからなっ」
そう言ってレガルドは召喚しているこの空間の主、亥羅守との会話を絶ってリエンヌ達を見た。
今の話を聞けば、あの恐ろしい声の主の元に送られるのは自分たちだと嫌でも理解出来る。
この男を怒らせたばかりに………哀れだが自業自得である。
「ヒッ……!」「っ……!」
リエンヌとカーラが竦み上がる。
レガルドは二人に言った。
「特別な空間に送ってやるから、こっちが片付くまで大人しくそこで待ってろよ?言っとくが変な事をしたら眷属に喰われるからな。大人しくしてろよ?」
「い、嫌……やめてっ……」
「なぁに、三日もありゃ片がつくんじゃないか?じゃあ達者でな?」
そう言ってレガルドは二人の足元に術式陣を展開させた。
逆召喚の陣で、召喚するのではなく逆に送りつける、そんな役割を果たす陣だ。
「嫌よっ!行きたくないっ!やめてリーs……
「っ~~~………
泣き叫ぶ声が途中で途絶え、リエンヌとカーラの姿も消えた。
亥羅守の住まう世界へと飛ばされたのだ。
「向こうに行ってる間に思い出しておけよ?
……さてと…面倒くせぇが課長に報告に行くか、あ、ノリスの家令にも華麗に伝えておくか。お嬢様は暫く戻らないってな♪」
レガルドはそうひとり言ちて、異空間結界を解いた部屋を出た。
魔術干渉は引き続き続いているが標的であるリエンヌがこの世界から姿を消し、意味を持たない無用の長物と化している。
そうしてレガルドは諸々の後処理をして、
犯人の捜査も大詰めを迎えているウォーレンに告げた。
「俺はもう今から絶対に何が何でも家に帰るぞ!十日不休で働いたんだっ!暫く休みを貰いますからね!!よっっぽどの事がない限り呼び出しには応じないっ!以上!!」
と言い残し、レガルドはかつて自分が付けた“印”の元へと転移した。
その時、菫は近所の公園で蕾を遊ばせていた。
実家である弓削の兄から蕾へと送られてきた小さな可愛らしい鞠で、蕾は楽しそうに遊んでいる。
その鞠が蕾の小さな手から滑り落ち、てんてんと転がってゆく。
「あーまりぃがー」
蕾が鞠を指差すそれを菫は視線で辿る。
すると鞠は大人の男の足先に当たり、そこで止まった。
そしてその足の持ち主が片手で鞠を拾い上げた。
その鞠に視線を留め、菫の視線も上がってゆく。
「………ぁ…」
菫は小さく声をあげ、鞠を拾い上げた人物を呆然と見つめた。
驚いたというよりも……
この感情をなんと言葉に表していいのかわからない。
菫はゆっくりと立ち上がる。
「とーたまっ……」
蕾が父に…レガルドに気付き、小さな足を懸命に動かして駆け寄って行く。
レガルドは駆け寄る娘に向かってしゃがんで手を広げ、その名を呼んだ。
「ちゅぼみっ!」
「とーたまっ」
蕾は父親の胸に飛び込んだ。
レガルドも小さな体を抱きしめ優しく包み込む。
「とーたま……とーたまぁ……」
蕾がふぇんとべそをかく。
蕾もずっと寂しかったのだ。
父親の不在を、幼いながらにも我慢していたのだ。
「ちゅぼみ……いい子にしてたか?」
「うん」
「そうだな、ちゅぼみはいつだっていい子だ」
「とーたまっ……」
菫はゆっくりと二人の元へと歩いて行った。
その姿を認め、レガルドは蕾を抱いたまま立ち上がる。
そしてこれ以上ないほど優しげな声で言う。
「……菫、ただいま」
「おかえりなさい……レガルド様」
「うん。ごめんな、心配しただろ」
「でも……信じていたから」
「ありがとう。菫、会いたかったぞ」
「っ私も……」
菫はそう言って蕾を抱いていないレガルドの反対の肩に額を付けた。
レガルドは片手で蕾を抱き、もう片方の手で菫の頭を抱く。
菫が小さく嗚咽を漏らす。
誰よりも何よりも大切な二人にこんな辛い思いをさせた事に、レガルドが堪らない気持ちになった。
「ごめんな二人とも……ごめん」
菫は顔を上げて首を横に振った。
「違うの。不安だったけどそれだけじゃなくて……顔が見れてほっとして……嬉しいの、無事に戻ってくれて、嬉しいの」
「菫……」
レガルドは菫に軽く触れるだけの口づけをする。
「ちゅぼみもー」
蕾が父親の頬にちゅっとその小さなさくらんぼの唇をくっつけた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レガルド氏、ご褒美貰えましたね。
十日に渡る異空間結界を展開してまで警護していた殺人事件の重要な証人であるリエンヌ=ノリスとその侍女カーラが、最愛の妻である菫を貶める発言をした事にキレたレガルド。
職場を放棄して帰るような言を発した事に、侍女のカーラが慌ててレガルドに言う。
「なっ……!?帰る?帰るとはどういう事なのですかっ?まさかお嬢様を見捨てて帰ると仰るのですかっ?」
「仰るのですよ脳内お花畑侍女さん。脳内お花畑令嬢の警護なんてクソ阿呆らしくてやってられなくなったんですよ」
「「脳内お花畑侍女」令嬢っ?」
脳内お花畑の二人か声を揃えて言う。
リエンヌが慌ててレガルドに縋る。
「ど、どうなさったのリー様っ、どうして急にそんなっ……今まで私達、仲良く寄り添ってきたではありませんか」
「仲良くも寄り添ってなんかもねぇ。気色悪い事言うな」
「きしょっ!?」
「無礼なっ!お嬢様に向かってなんて口の利き方をっ……それに、職務放棄なんて許されませんよっ!あなた!職務規定違反や証人保護義務違反を犯されるおつもりですかっ!」
平時でさえ甲高く鼓膜に響く声であるのに、更にヒステリックな声を上げてレガルドに言った。
耳を穿りながらレガルドが答える。
「誰が仕事を放棄すると言った?俺はただ帰ると言っただけだ」
「お嬢様を放置して帰るというのなら職務放棄と一緒でしょっ!!」
キンキンとまるで金属音のような声でがなり立てるカーラに、レガルドは何やら術式めいたものを呟いた。
「っ!?」
すると途端にカーラの口は閉じ、まるて縫い付けられているかのように開かなくなった。
「煩い、黙ってろ」
レガルドの言葉も聞かずに、カーラはなんとかこじ開けようと必死にもがいている。
その様子を見たリエンヌが顔色を悪くしてレガルドに言った。
「リー様っ……なぜ?なぜ急に怒り出しの?私何かあなたの気に障るような事を言った………?」
媚びるような上目遣いでリエンヌがレガルドを仰ぎ見る。
しかしレガルドの返す視線は氷のように冷たかった。
「俺の菫ちゃんの悪口を言いやがって……お前らが男なら顔の形が変わってたぞ。女に生まれた事に感謝するんだな」
「そんなっ……悪口だなんてっ、私はただあの人が冷たいって本気で思っ…フガッ」
リエンヌの主張は最後まで言う事は叶わなかった。
レガルドに口を掴まれたからだ。
「菫が冷たい?阿呆かお前は。菫は菩薩のような女性だぞ?いや、もはや如来と呼んでもいい。そんな菫を悪く言いやがって……本当なら殺人犯に引き渡してやりたいくらいだ」
レガルドのその言葉を、レガルドに口を掴まれたまま、リエンヌは涙目になりながら小刻みに震えて聞いていた。
「でもな、俺は職務に忠実な男だ。家族を養っていかねばならんしな。だから仕方ないからあんたを守ってやる。だがな、それは別にここでなくてもイイ訳だ」
「……?」
「そうだよ、なんで今まで思いつかなかったんだ。魔術干渉を受けているなら、それが及ばない場所へ飛ばせば良かったんだ」
レガルドはリエンヌから手を離し、亥の方角…北北西に向かって告げた。
「おーい、亥羅守~!聞こえてるかぁ?」
ややあって、レガルドの呼び掛けに答える声があった。
どこから聞こえてくるのかは分からない。
空間全域から聞こえるような気もするし、地の底、或いは天上から聞こえてくる気もする。
『ドウシタ小僧、モット空間ガ欲シイノカ?』
「ヒィッ!?」
唸るような低く重たい声を聞き、リエンヌとカーラは身を寄せ合って怯えていた。
「ちょっと異物を二つばかり預かって欲しいんだけど」
『人間ヲカ?……人間ヲ我ノ世界ニ入レルノカ?別ニ構ワンガ、耐エラレルノカ?』
「さあ?まぁ大丈夫なんじゃないか?亥羅守の眷属獣に喰われないようにだけ見といてくれ。あとは基本放置でいい。そんなに日にちは掛からないと思う。その間にこっちで犯人をふん捕まえるから」
『マァ好キニシロ。ソノ代ワリ、マタ菫ニ合ワセロ。顎ヲ撫デテ貰イタイ』
「なっ……?くそイノシシめっ、味を占めやがったな」
『菫ノ手ハ心地ヨイ。頼ンダゾ』
「菫がいいって言ったらな。彼女は身重で大変なんだ」
『小僧、貴様マタ孕マセタノカッ、儂ノ可愛イ野花ニナンテ不埒ナ事ヲッ!!』
「煩えっ!菫は俺の嫁だっつーのっ!助平心を抱いたら牡丹鍋にして食っちまうぞっ!とにかく頼んだからなっ」
そう言ってレガルドは召喚しているこの空間の主、亥羅守との会話を絶ってリエンヌ達を見た。
今の話を聞けば、あの恐ろしい声の主の元に送られるのは自分たちだと嫌でも理解出来る。
この男を怒らせたばかりに………哀れだが自業自得である。
「ヒッ……!」「っ……!」
リエンヌとカーラが竦み上がる。
レガルドは二人に言った。
「特別な空間に送ってやるから、こっちが片付くまで大人しくそこで待ってろよ?言っとくが変な事をしたら眷属に喰われるからな。大人しくしてろよ?」
「い、嫌……やめてっ……」
「なぁに、三日もありゃ片がつくんじゃないか?じゃあ達者でな?」
そう言ってレガルドは二人の足元に術式陣を展開させた。
逆召喚の陣で、召喚するのではなく逆に送りつける、そんな役割を果たす陣だ。
「嫌よっ!行きたくないっ!やめてリーs……
「っ~~~………
泣き叫ぶ声が途中で途絶え、リエンヌとカーラの姿も消えた。
亥羅守の住まう世界へと飛ばされたのだ。
「向こうに行ってる間に思い出しておけよ?
……さてと…面倒くせぇが課長に報告に行くか、あ、ノリスの家令にも華麗に伝えておくか。お嬢様は暫く戻らないってな♪」
レガルドはそうひとり言ちて、異空間結界を解いた部屋を出た。
魔術干渉は引き続き続いているが標的であるリエンヌがこの世界から姿を消し、意味を持たない無用の長物と化している。
そうしてレガルドは諸々の後処理をして、
犯人の捜査も大詰めを迎えているウォーレンに告げた。
「俺はもう今から絶対に何が何でも家に帰るぞ!十日不休で働いたんだっ!暫く休みを貰いますからね!!よっっぽどの事がない限り呼び出しには応じないっ!以上!!」
と言い残し、レガルドはかつて自分が付けた“印”の元へと転移した。
その時、菫は近所の公園で蕾を遊ばせていた。
実家である弓削の兄から蕾へと送られてきた小さな可愛らしい鞠で、蕾は楽しそうに遊んでいる。
その鞠が蕾の小さな手から滑り落ち、てんてんと転がってゆく。
「あーまりぃがー」
蕾が鞠を指差すそれを菫は視線で辿る。
すると鞠は大人の男の足先に当たり、そこで止まった。
そしてその足の持ち主が片手で鞠を拾い上げた。
その鞠に視線を留め、菫の視線も上がってゆく。
「………ぁ…」
菫は小さく声をあげ、鞠を拾い上げた人物を呆然と見つめた。
驚いたというよりも……
この感情をなんと言葉に表していいのかわからない。
菫はゆっくりと立ち上がる。
「とーたまっ……」
蕾が父に…レガルドに気付き、小さな足を懸命に動かして駆け寄って行く。
レガルドは駆け寄る娘に向かってしゃがんで手を広げ、その名を呼んだ。
「ちゅぼみっ!」
「とーたまっ」
蕾は父親の胸に飛び込んだ。
レガルドも小さな体を抱きしめ優しく包み込む。
「とーたま……とーたまぁ……」
蕾がふぇんとべそをかく。
蕾もずっと寂しかったのだ。
父親の不在を、幼いながらにも我慢していたのだ。
「ちゅぼみ……いい子にしてたか?」
「うん」
「そうだな、ちゅぼみはいつだっていい子だ」
「とーたまっ……」
菫はゆっくりと二人の元へと歩いて行った。
その姿を認め、レガルドは蕾を抱いたまま立ち上がる。
そしてこれ以上ないほど優しげな声で言う。
「……菫、ただいま」
「おかえりなさい……レガルド様」
「うん。ごめんな、心配しただろ」
「でも……信じていたから」
「ありがとう。菫、会いたかったぞ」
「っ私も……」
菫はそう言って蕾を抱いていないレガルドの反対の肩に額を付けた。
レガルドは片手で蕾を抱き、もう片方の手で菫の頭を抱く。
菫が小さく嗚咽を漏らす。
誰よりも何よりも大切な二人にこんな辛い思いをさせた事に、レガルドが堪らない気持ちになった。
「ごめんな二人とも……ごめん」
菫は顔を上げて首を横に振った。
「違うの。不安だったけどそれだけじゃなくて……顔が見れてほっとして……嬉しいの、無事に戻ってくれて、嬉しいの」
「菫……」
レガルドは菫に軽く触れるだけの口づけをする。
「ちゅぼみもー」
蕾が父親の頬にちゅっとその小さなさくらんぼの唇をくっつけた。
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レガルド氏、ご褒美貰えましたね。
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