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そして伝説のプロポーズとなったそうな
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避けに避けまくっていたハルトにとうとう
見つけられてしまったアミシュ。
覚悟を決めて婚約解消に応じようと思いきや、
「どうしても聞いてほしい事があるんだっ……!色々誤解しているようだが、俺は……俺はっ、変わらずキミの事だけを愛してるっ!!!」
と、王宮の西翼棟の屋上から思いも寄らない
愛の告白を受け、アミシュはわけが分からず呆けてしまっていた。
「…………え?」
その間にこの騒ぎを聞きつけた城勤めの者達が
わらわらとアミシュの周りに集まり、
同じように地上からハルトを見上げていた。
ハルトは衆人環視に晒されている事など
全く意に介した様子もなく、一心にアミシュだけを
見つめている。
〈え?え?ハルトは今、なんて言ったの?
わたしの事を愛してるって言ってなかった?
王女様でなく?それともわたしの聞き違い?
願望が聞かせた幻聴!?〉
わけが分からず狼狽えるアミシュに
ハルトが屋上から声を大にして語りかけてくる。
「アミシュ!聞こえているかっ?」
それに対しアミシュも大声で返事をする。
「き、聞こえてるわっ!」
「俺はキミに聞いて欲しい事がある!」
「な、何を!?」
アミシュの後ろでは城勤めの人間達が、
「一体何が始まるんだ?」
「屋上にいるのは近衛騎士のコルベール卿だよな?」
「さっき愛してるとかなんとか言ってなかった?」
などと思い思いに話しているのが聞こえる。
普段一定のテンションで表情を変える事もない
コルベール卿が、屋上から大声で魔術師に向かって何やら叫んでいる……これは只事では無いぞと野次馬が次々とやって来ていたのだ。
「アミシュっ!!俺が第二王女殿下に求婚したという噂が王宮内で広まっているが、それは全て出鱈目だからなっ!!」
「「「「「「「「え!?」」」」」」」
ハルトの言葉を聞き、
アミシュを含めその場にいた者全員の声が重なった。
「当然だろうっ!!俺にはキミという婚約者がいるというのに、なぜ他の女性に求婚しなくてはならないんだっ!!」
驚きながらもアミシュが聞き返す、
「で、でもそれは王女殿下と恋に落ちたからじゃ……!?」
「落ちてないっ!!」
「落ちてないの!?じゃあどうしてタイミングよく王太子殿下の騎士に!?王女殿下と婚約を結び直す為なんでしょう!?」
「それは殿下に精霊魔術をご教示する際に実力を認められての事だっ!!それに、王女殿下の専属のままではいつまで経ってもアミシュと結婚出来ないからだよっ!!」
「そ、そうなの………?」
噂の当事者本人から語られる真実に
野次馬たちが騒めいているのが聞こえたが、
もはやアミシュはそれどころではなかった。
今のハルトの言い方では、
王女殿下には求婚していない。
専属騎士を辞したのは自分と結婚したいが為だと
言っている様に聞こえる。
そ、そういう解釈で合っているのだろうか……。
自分の都合のいいように、自分がそう思いたいから聞こえているのではないだろうか……?
「ハ、ハルト……で、でも王女殿下はハルトと愛し合ってると言っていたのよ!?」
「そんなわけないだろうっ!!
俺は子どもの頃からキミだけを想ってきたというのにっ!!王女宮の侍女の発言もっ、レティシア殿下の発言も全て嘘だっ!!」
「ま、またわたしの事を愛してるって言った………」
アミシュは呆然として呟くように言ったのに、
ハルトの耳にはちゃんと届いていたようだ。
「何度でも言うよ。一生言い続ける。
アミシュ、キミを愛してる。キミだけを、アミシュだけを愛してるんだ。だから噂や王女殿下の言う事ではなく、俺を信じて欲しいっ……!」
「ハルト……」
〈本当に?本当にハルトがわたしの事を?〉
でもこんなに沢山の人の前で、いや、例え二人きりだったとしても、彼がこんな嘘を吐くような人ではないとよくわかっているはずではないか。
〈じゃあ……本当に?
本当にハルトは王女殿下ではなく、わたしを?〉
アミシュの目の前の景色が滲んでいく。
この世で一番大好きな人から、
一番欲しかった言葉を言って貰えたのだ。
これが泣かずにいられるか。
ハルトはアミシュの目から涙が溢れ出すのを見つめながら、王宮中の誰もが魅了されるような優しい
微笑みを浮かべた。
「アミシュ、3年も待たせてすまなかった。
俺はもう我慢の限界だよ。今すぐ結婚しよう。
もう絶対に離れない、だからどうか、どうか俺の妻として、これからの人生を共に生きて欲しい……!!」
あんなに騒然としていたアミシュの周りの
野次馬たちが、沈黙して二人を見守る。
アミシュがどう返事をするのか、
彼女の一挙一動が注目されていた。
当のアミシュはもう涙腺が決壊して大洪水を起こしているのにも関わらず、溢れる涙を拭う事もなくただ一心にハルトを見つめていた。
ハルトが熱のこもった眼差しでアミシュを見つめ返す。
「アミシュ、返事は?」
その言葉を聞き、アミシュはぶんぶんと首を縦に振った。
その際に被っていたフードがずり落ちる。
アミシュの艶やかな赤い髪が露わになった。
「うんっ……!うん、ハルトっ!結婚するっ!
今すぐハルトと結婚するっ!!」
アミシュがそう返事をした途端、
後ろの野次馬たちから一斉に歓声が沸き起こった。
「「「「「「ヤッター!!」」」」」」
「「「「おめでとうっ!!」」」」」
「「「これは伝説のプロポーズだ!」」」
拍手喝采、指笛や口笛がピーピー鳴り響く。
そして屋上も俄に騒がしくなっていた。
「よく言った!!漢だコルベールっ!!」
「よっ!色男っ!!」
「やったなコルベール!!」
何を隠そうこっそりと屋上の片隅から覗いていた
王太子シルヴァンや仲間の近衛騎士たちが
ハルトの元へと駆け寄っていたのだった。
そしてハルトを揉みくちゃにしていた。
その様子は下からではあまりよく見えなかったが、
みんなが自分たちの事を祝福してくれているのがわかり、アミシュは嬉しかった。
嬉しい。
みんなありがとう。
ありがとう。
アミシュはとうとう堪えきれずに顔を押さえて
号泣し出した。
嬉し涙が次から次へと溢れ出る。
それに気付いたハルトが慌てて屋上から飛び降りた。
西翼棟は三階建だが、風の精霊の補助を受けられるハルトにとってはなんて事ない高さだ。
ハルトはアミシュの元に駆け寄り、
力強く抱きしめた。
そして深く、安堵のため息を吐く。
「やっと……やっと触れられた……」
その言葉を聞き、アミシュはまたまた泣けてきた。
3年、言葉にすれば簡単だが、自分達は3年も
互いを恋しく想いながらも離れて生きてきたのだ。
しかもここ一年は近くに居ながらも接する事が出来ない、遠い遠い存在だった。
それがようやくこうやって互いを抱きしめる事が
出来る。
互いの体温を、呼気を、心臓の音を間近に感じる事が出来る。
それが何よりも尊くて、何よりも嬉しかった。
アミシュとハルトがそうしている間に、
今度は王太子シルヴァンが屋上から
今回の噂は王女宮の侍女の故意に流したデマで間違いない事を皆に告げてくれていた。
当事者のハルトと、王太子が真相を語った事で、
噂が出鱈目であったとその場にいた誰もが信用した。
とめどなく涙が溢れるアミシュの瞼を
ハルトが優しく口付ける。
野次馬がいようがどうでも良かった。
愛しくてたまらない、その気持ちが優っていた。
アミシュは自身の髪色と変わらないくらいに顔を真っ赤に染め上げ、ハルトの口付けを受け止めていた。
しかし、やっぱりアミシュはカワイイな、
とハルトが顔を綻ばしたその時、
背中にいきなりドンと何かがぶつかって来た。
「……!?」
驚いて後ろを振り向いたハルトだが、
自身の背中を見て更に驚く事になる。
第二王女レティシアが
ハルトの背後から、
その背中に抱きついていたのだから。
見つけられてしまったアミシュ。
覚悟を決めて婚約解消に応じようと思いきや、
「どうしても聞いてほしい事があるんだっ……!色々誤解しているようだが、俺は……俺はっ、変わらずキミの事だけを愛してるっ!!!」
と、王宮の西翼棟の屋上から思いも寄らない
愛の告白を受け、アミシュはわけが分からず呆けてしまっていた。
「…………え?」
その間にこの騒ぎを聞きつけた城勤めの者達が
わらわらとアミシュの周りに集まり、
同じように地上からハルトを見上げていた。
ハルトは衆人環視に晒されている事など
全く意に介した様子もなく、一心にアミシュだけを
見つめている。
〈え?え?ハルトは今、なんて言ったの?
わたしの事を愛してるって言ってなかった?
王女様でなく?それともわたしの聞き違い?
願望が聞かせた幻聴!?〉
わけが分からず狼狽えるアミシュに
ハルトが屋上から声を大にして語りかけてくる。
「アミシュ!聞こえているかっ?」
それに対しアミシュも大声で返事をする。
「き、聞こえてるわっ!」
「俺はキミに聞いて欲しい事がある!」
「な、何を!?」
アミシュの後ろでは城勤めの人間達が、
「一体何が始まるんだ?」
「屋上にいるのは近衛騎士のコルベール卿だよな?」
「さっき愛してるとかなんとか言ってなかった?」
などと思い思いに話しているのが聞こえる。
普段一定のテンションで表情を変える事もない
コルベール卿が、屋上から大声で魔術師に向かって何やら叫んでいる……これは只事では無いぞと野次馬が次々とやって来ていたのだ。
「アミシュっ!!俺が第二王女殿下に求婚したという噂が王宮内で広まっているが、それは全て出鱈目だからなっ!!」
「「「「「「「「え!?」」」」」」」
ハルトの言葉を聞き、
アミシュを含めその場にいた者全員の声が重なった。
「当然だろうっ!!俺にはキミという婚約者がいるというのに、なぜ他の女性に求婚しなくてはならないんだっ!!」
驚きながらもアミシュが聞き返す、
「で、でもそれは王女殿下と恋に落ちたからじゃ……!?」
「落ちてないっ!!」
「落ちてないの!?じゃあどうしてタイミングよく王太子殿下の騎士に!?王女殿下と婚約を結び直す為なんでしょう!?」
「それは殿下に精霊魔術をご教示する際に実力を認められての事だっ!!それに、王女殿下の専属のままではいつまで経ってもアミシュと結婚出来ないからだよっ!!」
「そ、そうなの………?」
噂の当事者本人から語られる真実に
野次馬たちが騒めいているのが聞こえたが、
もはやアミシュはそれどころではなかった。
今のハルトの言い方では、
王女殿下には求婚していない。
専属騎士を辞したのは自分と結婚したいが為だと
言っている様に聞こえる。
そ、そういう解釈で合っているのだろうか……。
自分の都合のいいように、自分がそう思いたいから聞こえているのではないだろうか……?
「ハ、ハルト……で、でも王女殿下はハルトと愛し合ってると言っていたのよ!?」
「そんなわけないだろうっ!!
俺は子どもの頃からキミだけを想ってきたというのにっ!!王女宮の侍女の発言もっ、レティシア殿下の発言も全て嘘だっ!!」
「ま、またわたしの事を愛してるって言った………」
アミシュは呆然として呟くように言ったのに、
ハルトの耳にはちゃんと届いていたようだ。
「何度でも言うよ。一生言い続ける。
アミシュ、キミを愛してる。キミだけを、アミシュだけを愛してるんだ。だから噂や王女殿下の言う事ではなく、俺を信じて欲しいっ……!」
「ハルト……」
〈本当に?本当にハルトがわたしの事を?〉
でもこんなに沢山の人の前で、いや、例え二人きりだったとしても、彼がこんな嘘を吐くような人ではないとよくわかっているはずではないか。
〈じゃあ……本当に?
本当にハルトは王女殿下ではなく、わたしを?〉
アミシュの目の前の景色が滲んでいく。
この世で一番大好きな人から、
一番欲しかった言葉を言って貰えたのだ。
これが泣かずにいられるか。
ハルトはアミシュの目から涙が溢れ出すのを見つめながら、王宮中の誰もが魅了されるような優しい
微笑みを浮かべた。
「アミシュ、3年も待たせてすまなかった。
俺はもう我慢の限界だよ。今すぐ結婚しよう。
もう絶対に離れない、だからどうか、どうか俺の妻として、これからの人生を共に生きて欲しい……!!」
あんなに騒然としていたアミシュの周りの
野次馬たちが、沈黙して二人を見守る。
アミシュがどう返事をするのか、
彼女の一挙一動が注目されていた。
当のアミシュはもう涙腺が決壊して大洪水を起こしているのにも関わらず、溢れる涙を拭う事もなくただ一心にハルトを見つめていた。
ハルトが熱のこもった眼差しでアミシュを見つめ返す。
「アミシュ、返事は?」
その言葉を聞き、アミシュはぶんぶんと首を縦に振った。
その際に被っていたフードがずり落ちる。
アミシュの艶やかな赤い髪が露わになった。
「うんっ……!うん、ハルトっ!結婚するっ!
今すぐハルトと結婚するっ!!」
アミシュがそう返事をした途端、
後ろの野次馬たちから一斉に歓声が沸き起こった。
「「「「「「ヤッター!!」」」」」」
「「「「おめでとうっ!!」」」」」
「「「これは伝説のプロポーズだ!」」」
拍手喝采、指笛や口笛がピーピー鳴り響く。
そして屋上も俄に騒がしくなっていた。
「よく言った!!漢だコルベールっ!!」
「よっ!色男っ!!」
「やったなコルベール!!」
何を隠そうこっそりと屋上の片隅から覗いていた
王太子シルヴァンや仲間の近衛騎士たちが
ハルトの元へと駆け寄っていたのだった。
そしてハルトを揉みくちゃにしていた。
その様子は下からではあまりよく見えなかったが、
みんなが自分たちの事を祝福してくれているのがわかり、アミシュは嬉しかった。
嬉しい。
みんなありがとう。
ありがとう。
アミシュはとうとう堪えきれずに顔を押さえて
号泣し出した。
嬉し涙が次から次へと溢れ出る。
それに気付いたハルトが慌てて屋上から飛び降りた。
西翼棟は三階建だが、風の精霊の補助を受けられるハルトにとってはなんて事ない高さだ。
ハルトはアミシュの元に駆け寄り、
力強く抱きしめた。
そして深く、安堵のため息を吐く。
「やっと……やっと触れられた……」
その言葉を聞き、アミシュはまたまた泣けてきた。
3年、言葉にすれば簡単だが、自分達は3年も
互いを恋しく想いながらも離れて生きてきたのだ。
しかもここ一年は近くに居ながらも接する事が出来ない、遠い遠い存在だった。
それがようやくこうやって互いを抱きしめる事が
出来る。
互いの体温を、呼気を、心臓の音を間近に感じる事が出来る。
それが何よりも尊くて、何よりも嬉しかった。
アミシュとハルトがそうしている間に、
今度は王太子シルヴァンが屋上から
今回の噂は王女宮の侍女の故意に流したデマで間違いない事を皆に告げてくれていた。
当事者のハルトと、王太子が真相を語った事で、
噂が出鱈目であったとその場にいた誰もが信用した。
とめどなく涙が溢れるアミシュの瞼を
ハルトが優しく口付ける。
野次馬がいようがどうでも良かった。
愛しくてたまらない、その気持ちが優っていた。
アミシュは自身の髪色と変わらないくらいに顔を真っ赤に染め上げ、ハルトの口付けを受け止めていた。
しかし、やっぱりアミシュはカワイイな、
とハルトが顔を綻ばしたその時、
背中にいきなりドンと何かがぶつかって来た。
「……!?」
驚いて後ろを振り向いたハルトだが、
自身の背中を見て更に驚く事になる。
第二王女レティシアが
ハルトの背後から、
その背中に抱きついていたのだから。
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