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わたしの一日 (アミシュ目線)

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わたしの一日は騎士団の朝練のから始まる

早朝にも関わらず、
騎士たちの朝練を見ようという者はチラホラいる。

そういう者は大概、
わたしと同じように王宮の敷地内にある騎士や魔術師、メイドや侍従のための寮(有料)で生活している者だ。

朝練の見学者はメイドさん達や
時々早起きする令嬢。
お目当ての騎士見たさに早起きして
その間ずっと秋波を送り続けている。
ホントご苦労な事だ。

ま、わたしもだけどネ。
秋波は送ってないけど。

でも彼女たちのおかげでわたしは悪目立ちする事なく朝練の様子が見れるのだ。

彼女たちを盾にして魔術師団のローブを目深に被り
遠く鍛錬に勤しんでいる婚約者のハルトを見守っている。

あぁ…ハルト……今日も好き……!

昨日も好きだったけど今日も好き。
きっと明日も好きに違いない。

3年前にコルベール領を立ってから
さらに背が伸びて体格も良くなったみたい。
もうどこからどう見ても大人の男の人ね。

はぁ堪能した。

今朝のハルト浴(日光浴みたいなもの)を済ませてから王宮内の食堂へと急ぐ。

早く食べてしまわないと汗を流した後の騎士たちが
押し寄せて来る。

その中にハルトが居て、鉢合わせでもしたら大変だ。

食堂に行くと大概は魔術師団の同期のマクシムと
ポピーが席を取っていてくれるのだ。

ほら、今朝も……

「アミシュ!ここよ!」

ポピーがテーブル席から手を振って呼んでくれる。

「おはようポピー、いつも席をありがとう」

「いいのよ、アミシュと一緒に食べたいもの」

「ふふ」

わたしとポピーが微笑みあう。
そんなわたし達を見ながらマクシムが言った。

「今朝の場所取りは俺がしたんだけどな」

「「あらそう」」

「お前らな……」

「アミシュ、フードを取ったら?
どうしていつも被っているの?」

「……髪色が目立つのが嫌だから」

「え~、キレイな髪色なのに。
むしろ目立つ方がいいじゃない」

「わたしは嫌なの」 

「え~もったいない~」

わたしは赤毛だ。それも鮮やかな赤。
べつに嫌いというわけじゃないけど赤毛は目立つ。
ハルトに見つかっちゃう危険性も高くなる。
用心にこした事はない。

そうやって賑やかに朝食を済ませ、
魔術師団の詰め所へと向かう。

そこで今日の任務内容を聞くのだ。

魔術師たちは班単位で行動をする。

大体一班7人制。
班長、副班長、医療魔術師と平の班員四人で構成されている。

新入りのわたしはもちろん平の班員だ。
ポピーとマクシムも同じ班。
それで仲良くなった。

わたしの班は今日は討伐ではなく巡回だ。
魔物の出没が多い地域を巡回して、異常がないかを
確認する。
もし魔物が出現したら、即時討伐。
巡回班は機動力がものを言う。

巡回先は国中で、
集団転移魔法の魔道具を用いて転移する。
便利だ。

午前中の巡回を終え、昼食を食べたら暫しの昼休憩となる。
午後からの英気を養うために魔術師の昼休憩は他の部署より長い。
侑に2時間はあるだろう。魔力の消費を補うにはそのくらいの時間が必要なのだ。
その間、昼寝をしたり読書をしたりと皆、思い思いの時間を過ごす。

わたしはもちろん………

ハルトウォッチングだ。

この時間、王女殿下はお気に入りのテラスで
昼食を召し上がる。
王女殿下は朝が弱いらしく、
大抵10時頃まで寝ておられるそうなので、
ブランチ…といったところなのかしら。

そのテラスが丸見えのポイントがあるのだ。

王女殿下は騎士たちとブランチを共にされる。
一人で食べてもつまらないのだとか。

あぁ…食事をするハルトも素敵……!

王女殿下付きになってマナーも学んだんだろうな、食事の所作がとってもキレイだ。

だけど次の瞬間、うっとりしながらハルトを見ていたわたしに衝撃が走った。

「!!」

ハルトの口の端にわずかにソースが付いていたんだろう、それを王女殿下がご自分の指で拭い、舐めたのだ……!

な、な、なんてハレンチな……!
わたしだってハルトにそんな事した事ないのに!!

ハルトはそれに対して何も反応せず、
何やら言葉を発している。
離れているので何を言っているのかはわからないけど、多分お礼を言ったんだろう……。

……そりゃ~あんな事ばかりやってたら
周りからアレコレ噂されるわよ……。

何よあれ、未婚の王女様があんな事していいの?

しかもなんて絵になる光景なんだ!
美女ってズルい……。

今のは結構ショックだった……
でもそろそろ休憩時間も終わりだ。
戻らなきゃ……

フラフラしながら回れ右をして、
来た道を戻る途中で人とぶつかってしまった。

ドンッ「きゃっ」

「っと、失礼」

ぶつかった衝撃で後ろに倒れそうになったわたしを
その人が支えてくれた。

一瞬、その人と目が合う。

ぶつかった相手は騎士だった。

わたしは騎士とはあまり関わらないように心掛けているので被っていたローブを目深に被り、
不自然じゃない程度に俯いた。

騎士がわたしに言う。

「ごめんね?こんな庭園の端に人がいるなんて思わなくて前をよく注意してなかった。ケガはない?」

「はい、大丈夫です。
こちらこそすみませんでした、それでは」

「あ、ちょっと待ってよ」

立ち去ろうとしたわたしをその人が引き止めた。

「なんですか?」

「キミ、そのローブは魔術師?魔術師団の団員なのかな?」

「……そうですけどそれが何か?」

「名前を教えてよ。
ぶつかったお詫びに食事でも…「あ!遅刻!」

わたしはその人の言葉を遮った。

「すみません、昼休憩が終わったので急がないと。これで失礼します!」

そう言ってわたしは逃げた。
騎士と知り合いなんかになったら大変だ。

「あ、ねぇちょっと……!」

後ろから騎士の人の声が聞こえたけど
わたしは構わず走り続けた。

危ない、危ない。

……また嫌な光景をみちゃうかもしれないし、
さっきの騎士に出くわしても困るので今後この場所
でのハルトウォッチングはやめておこう。

なんて事を考えながら、
わたしは魔術師団の詰め所へと急いで戻った。



◇◇◇◇◇


その日の任務を終えて帰寮すると、
寮母さんから手紙が届いていると告げられた。

「ハルトからだ……!」

でもこの手紙、少しタイムラグがあるのだ。

ハルトはわたしが王宮内にいるとは知らないから、
手紙はコルベール領の実家の方へと送ってくれている。

その手紙を今度は父がわたしの住んでる寮まで送り直してくれているのだ。

なので逆もまた然り。

わたしはハルトへの手紙を一度実家に送り、
コルベール領からハルトの元へと送って貰っているのだ。

ウチの方での手紙の行き来はなるべくタイムラグを
短くするために高速郵便を使っているが。

ハルトからの手紙には
何度も書かれている、結婚を待たせている事への
お詫びとわたしが体を崩さず元気でやっているかと
気遣う言葉が綴られていた。

わたしは手紙を抱きしめる。

ハルトは騎士団の男子寮に住んでいるので実際は
近くにいるのに、途轍とてつもなく彼が遠く感じる。

会いたい。

直接ハルトに会いたい。

会って抱きしめて貰いたい。


でもそれが出来ないジレンマを、わたしはハルトへの手紙へとぶつける。

そして今回の手紙も、
大長編スペクタクルになるのだった。



























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