上 下
104 / 144
ミニ番外編

報告会

しおりを挟む
「学園内に潜伏しているマフレイン家の間者は恐らく二名ネ。いずれも用務員を装っているみたいヨ」

カメリア・ランバートに付き纏うマフレイン侯爵令息アーバンから、カメリアを守る会のメンバー同士の報告会が放課後の医務室で行われていた。

その中でのメロディからの報告がそれだ。
メロディがルシアン・ワイズ親衛隊の面々にも協力を要請し、交代制でカメリアの周辺を見張った結果の報告だ。

「メロディちゃんに、その二名の用務員がやたらとカメリア先輩の周囲にいる事が多いと聞いて、父さんに頼んで秘密裏に調べて貰ったんだ。そうしたらその二名の用務員は微妙に時期をずらしてはいるけれどそれぞれとある職業斡旋所の紹介で学園に採用されたらしい。その斡旋所の職員が、マフレイン侯爵家の息のかかる者だそうだよ」

ルシアンからの報告にメロディがすかさず言う。

「あらやだそんな事まですぐにわかっちゃうの?ワイズ家門の影だって充分怖いわネ~」

「相手が家の力を使うならこちらも同等のレベルくらいで対応しないとね」

「るっしーったらすっかりオトナになって……!」

感激しているメロディの隣の席でカメリアが眉を下げて皆に告げる。

「申し訳ない……ランバート家の者にも何かさせるべきなのに……」

「ハイラム王国はアデリオールから遠いですし、ランバート領はそのさらに最奥の地です。転移魔法を使えばすぐですが、わざわざ呼び寄せる必要はないと思います。アデリオール国営の学園にあまり他国の影を入れたくない、と父が言っていましたしね。カメリア先輩は付き纏いの被害者なんですから気にせず頼ってください。それよりその後、マフレイン侯爵令息の接触はありましたか?」

ルシアンの言葉に、カメリアは感謝の気持ちを告げてから答えた。

「本当にありがとう。あれから一人になる事がないからな、おかげさまで話しかけられたりもしないよ」

「そりゃそうだよ!ランバート先輩には必ず俺かルシが側でガードしてるんだから」

ルシアンの親友であるノアが胸をどんと叩いて言った。

「本当にありがたいよ。これからもよろしく頼む」

カメリアがノアにも礼を言うと、人差し指を揺らしてメロディがカメリアに指導を入れた。

「ダメヨ、カメチャン!話し方がまた堅くなってるワ!そーいう時は“ありガーターベルト♡によろちくび♡”って言うのヨ!」

「はい!そうでした!ノア・ジャクソン子爵令息!ありガーターベルト♡これからもよろちくび♡!」

ル・ノ「「…………」」

「イイ感じ~♡」

「やだ嬉ちくび~♡」

師匠と弟子できゃいきゃい盛り上がる側で、ノアがこっそりとルシアンに言った。

「……ルシ、ランバート先輩って医務室の大魔神メロディ先生と同じ人種の人だったんだな。ルシから話は聞いていたけど、いざ目の当たりにすると度肝を抜かれるぜ。よろちくびって何だ?嬉ちくびって何だよ」

「そのうち慣れるから」

「ルシ~ってば達観してんな~」

「とにかく、まずはその用務員の排除からだよね」

皆にそう告げるルシアンにカメリアが訊ねた。

「どうやって学園から追い出すの?」

「相手はプロだからね、そいつらの相手はこちらでやるって父さんが」

「え、るっしーのパパンが出張って来んの?ヤダ学園に血の雨が降っちゃう~」

メロディが大仰に大陸国教会の十字架をきる仕草をする。
それを見て吹き出しながら
ルシアンが答えた。

「ふふ、今度の学園祭を利用して保護者として学園に来るって。そこで処理するって言ってたよ」

「処理ってナニ?言い方が怖い~!やっぱり学園が血で染まルゥ~!」

ワクワクした表情のメロディを見て笑い、ルシアンはカメリアとノアに言った。

「でもその学園祭、マフレイン先輩が大人しくしているとは思えないんだ。多分、お祭りモードな学園の雰囲気の中で接触してくると思う。当日は生徒会執行部の仕事もあって忙しいけど、カメリア先輩はなるべく僕かノア、そしてメロディちゃんと一緒にいてください」

「わ、わかった」

カメリアが緊張した面持ちでこくこくと頷くとノアが威勢よく立ち上がる。

「よっしゃ!マフレインめぇ!望む所だ!かかって来やがれ!」

「そうヨ!間者がナニヨ!なんてボコボコにしてにしてやればイイのヨ!」

「間者と患者!さすがおネェサマ!冴えてます!」

「オーホッホッホ!」

「メロディちゃん、この頃ダジャレにも手を出すようになったんだね……」

「シモトークとダジャレか、すげぇな大魔神は」

そう言ってルシアンとノアは紅茶を飲み、それぞれメロディが用意した茶菓子に手を伸ばした。
奇しくも二人は同じ菓子を取ろうとして、若干早かったルシアンの手をノアが菓子ごと掴む形になってしまう。

「あっ!わ、悪いルシっ……!」

「ううんいいよ。はは、同じものを取ろうとしたんだね。この菓子、美味しいよね」

「あ、あぁ……そうだな」

不躾に手を掴む形となってしまったのに屈託なく笑うルシアンを見て、また胸がトゥンクしてしまうノアであった。

こうして、今日の報告会もまた賑やかに時間が過ぎていくのである。




───────────────────


くどいようですが、ノアくんは新たな扉を開く事はありません☆

しおりを挟む
感想 3,302

あなたにおすすめの小説

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。

しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。 だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

嘘つきな婚約者を愛する方法

キムラましゅろう
恋愛
わたしの婚約者は嘘つきです。 本当はわたしの事を愛していないのに愛していると囁きます。 でもわたしは平気。だってそんな彼を愛する方法を知っているから。 それはね、わたしが彼の分まで愛して愛して愛しまくる事!! だって昔から大好きなんだもん! 諦めていた初恋をなんとか叶えようとするヒロインが奮闘する物語です。 いつもながらの完全ご都合主義。 ノーリアリティノークオリティなお話です。 誤字脱字も大変多く、ご自身の脳内で「多分こうだろう」と変換して頂きながら読む事になると神のお告げが出ている作品です。 菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。 作者はモトサヤハピエン至上主義者です。 何がなんでもモトサヤハピエンに持って行く作風となります。 あ、合わないなと思われた方は回れ右をお勧めいたします。 ※性別に関わるセンシティブな内容があります。地雷の方は全力で回れ右をお願い申し上げます。 小説家になろうさんでも投稿します。

【完結】王子は聖女と結婚するらしい。私が聖女であることは一生知らないままで

雪野原よる
恋愛
「聖女と結婚するんだ」──私の婚約者だった王子は、そう言って私を追い払った。でも、その「聖女」、私のことなのだけど。  ※王国は滅びます。

そう言うと思ってた

mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。 ※いつものように視点がバラバラします。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

やり直し令嬢は本当にやり直す

お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

妻の私は旦那様の愛人の一人だった

アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。 そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。 貴方は酷い人よ。 羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。 私は生きる屍。 貴方は悪魔よ! 一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定ゆるいです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。