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アルステラの娘
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「シグルド……!」
シグルドの魔力を辿って、ようやく姿を見つける事が出来たわたしは、思わず彼の胸に飛び込んでいた。
涙が溢れて止まらない。
無事でいてくれて良かった……
シグルドの胸に顔を寄せ、彼の鼓動を耳にして、その安堵から更に涙が溢れ出る。
シグルドはわたしをゆっくりと引き離し、信じられないといった顔をしてわたしを見つめた。
「アシュリ……どうしてここへ……ここに来てはダメだっ、すぐに逃げてくれっ……」
わたしはただ首を横に振る。
あなたを置いて逃げれる訳がない。
あなたと離れて、あなたを失って生きてゆける訳がない。
わたしは泣きながらシグルドに訴えた。
「シグルドっ……アレに手を出してはダメっ……わたしには分かる……アレは全てを消し去って、全ても無にしても決して消えない代物よ……だってアレは虚無の塊なのだからっ、元々何も無いモノは消えたり無くなったりはしないっ……」
わたしがその言葉を告げた時、師団長さんの声が聞こえた。
「アシュリさんっ!?何故こんな所へっ!?危ない、早く逃げなさいっ!!」
師団長さんがそう叫ぶのを聞いていた、側で蹲っていた男の人が目を見開いてわたしを見た。
「アシュリ……?ではそなたがスタングレイの妻かっ……?」
それに対して、シグルドは何も答えずにただわたしだけを見つめていた。
師団長さんが男の人に言う。
「……然様でございます。この女性がシグルド=スタングレイの奥方です……」
「そんな者がこんな時に何用かっ!!」
八つ当たりなのか、男の人はヒステリックな声を上げてわたしに怒鳴った。
この人が国王陛下なのね……
だけどシグルドがわたしの腕を掴んで体を反転させて立ち位置を変えた。
彼が国王陛下に背を向ける形で立ち、わたしを向こうから見えないようにした。
「アシュリ……キミが言いたい事は分かっている。でもアレは俺たちに任せて。お願いだから早く逃げてくれ……!」
シグルドの言葉に、わたしはただ首を振り続ける。
「いやよ。あなたを犠牲にして生き延びて、そこに何が残るというの?」
「俺はキミが生きていてくれる、それだけでいい」
「わたしだってシグルドには生きていて欲しいもの……!」
「アシュリ」
いつになく硬く毅然とした声で、シグルドはわたしの名を呼んだ。
そして言い聞かせる様に告げる。
「ダメだ。今すぐここから出て行くんだ……頼むっ」
「いや……シグルドっ……いや、いやっ……」
わたしは一心に首を振り、シグルドに縋り付いた。
絶対に離れない、その思いを込めて。
絶対に引かない、その決意を込めて。
「アシュリ、ダメだ。絶対にダメだ」
だけどシグルドも引いてはくれない。
「キミの出自は決して明かしてはいけない。キミを救い出してくれた人の恩に報いる為にも、そして何よりキミの為に」
「っ!……シグルド……気付いていたの……?」
わたしが目を見開いてシグルドの顔を見ると、
彼は自嘲するように答えた。
「術の完成間近になって、その魔力の波動がキミの“気”にとても良く似ている事に気付いたんだ。情けないだろ?特級魔術師である前に、あんなにキミの事ばかり見ていたのに今まで気付かなかったなんて」
「違うわ、あなたは悪くないわ。わたしが隠して騙していたんだもの……」
「騙されたなんて思ってないよ。俺の魔力を奪われた事なんて一度も無いし。上手く隠せているなと感心したんだ。自分の魔力を相殺し続けて、魔力無しを装ってるなんて素晴らしく巧みな方法だよ。それは恩人だと言っていた人から?」
わたしは頷いた。
自分の能力を使って自分の魔力を消して自分を隠す。
この方法はタルバートおじさんが考えたものだ。
なかなか上手くコントロールが出来なかったけど、訓練を積んで出来るようになった。
これが出来るようになって、わたしは外出も出来るようになったし、普通の娘のように暮らす事が出来た。
……でももうそれもお終い。
「シグルド。わたしはあなたを守る為ならなんでもするわ、どんな事でもする。たとえこの先どんな人生になろうと」
「俺だって同じ事を思ってる。キミはアシュリだ。下宿屋“変人の魔窟”の大家で俺の妻。そのままでいて欲しい。それを守る為なら何でもするつもりだ」
「わたしだってそうしたい……でもダメ。あなたを失ったらもう一人で生きてはいけないもの……」
「俺にキミを強制転移させるつもり?」
「……させないわ。何をしても全て“無効化”するもの」
「……!」
脅しの様に告げなければならない事に胸苦しさを感じる。
でもどうしても引き下がる訳にはいかなかった。
これ以上シグルドに止められる前に、わたしは国王陛下や師団長さんに告げた。
今度は皆に聞こえる大きな声で。
「わたしが……十一年前に失踪した魔術師ガロム=アルステラの娘です。でも本当の名はもう忘れてしまいましたが……」
「……は?」「なん……だって……?」
二人や、周りにいた魔術師達が呆然とした様子でわたしを見た。
「アシュリ!ダメだっ」
シグルドが後ろからわたしを抱き寄せる。
彼は小さく震えていた。
わたしはそれに構わず続ける。
「アルステラの娘の髪色、皆さんはご存知ですか?」
わたしの問いかけに、年嵩の魔術師の一人が答えた。
「あ、あぁ……特殊な天啓持ちは皆、その髪色で生まれてくるからな……その髪色は……「白」」
最後に言葉を重ねてわたしは言った。
そして魔術で色を変えていた髪色を、本来の色に戻した。
「……!?」
みるみる銀色に近い白い髪色に戻るわたしを見て、シグルドが、ここにいた皆が息を呑んだのが聞こえた。
「これで信じて頂けましたか?たとえ信じて貰えなくても関係ないですが……」
「ア、ア、アルステラの……娘?」
「アルステラの亡くし子……ようやく見つけたぞっ……!」
驚愕に目を見開く者、言葉を失う者、熱に浮かされるように言葉を呟く者と、皆一様に狼狽えていた。
シグルドがわたしを抱きしめる腕の力を強くした。
「あの暴走する魔力の処理は、わたしがします……その代わり約束して下さい。もう二度、こんなバカ事は引き起こさないと……」
わたしのその言葉を受け、国王陛下が掠れた声で答えた。好奇な目をわたしに向けながら。
「も、もちろんだっ……そなたが手に入るなら、紛い物の術などどうでもよい、二度と手は出すまいっ……」
「それから、わたしがアルステラの娘であった事は夫は知りませんでした、わたしの周りにいる人達もです。どうか彼らに一切の咎が及ばない事を約束して下さい」
喜色満面でわたしを見ながら、国王陛下はその場でコクコクと頷いた。
わたしの耳元でシグルドが呟く。
「アシュリ……ダメだ、ダメだ……」
シグルド。
ごめんなさい。
でももうこうするしかないの。
あなたを、そしてなんの罪も関係もない人達を救うには……
わたしはこの場にいる人間全員に告げた。
「少し離れていて下さい。一箇所に集まって、身を低くしていて下さい」
一人、また一人とわたしの指示通りに動き、一箇所に固まった。
「シグルドも……」
わたしがそう促すと、シグルドはわたしの横に並び、ぎゅっと手を繋いで来た。
「俺は側にいる」
「でも……」
「俺の言う事を聞かなかった妻のお願いは聞かない」
わたしの手を握るシグルドの手に力がこもる。
「どんな時でも側に居る。どんな結果になっても、決して側から離れない」
「シグルド……」
「アシュリの……全てを無にする能力を使って、あの球体を消すんだね?」
わたしは黙ったまま頷いた。
その肯定を受け、シグルドがわたしに言う。
「アシュリ。どうしても止めても無駄だというのなら、一つだけ頼みを聞いて欲しい」
「なあに……?」
「キミの能力を使ってあの球体を消すと同時に、ここに居る者の記憶も全て消し去ってくれ」
「………え?」
シグルドの魔力を辿って、ようやく姿を見つける事が出来たわたしは、思わず彼の胸に飛び込んでいた。
涙が溢れて止まらない。
無事でいてくれて良かった……
シグルドの胸に顔を寄せ、彼の鼓動を耳にして、その安堵から更に涙が溢れ出る。
シグルドはわたしをゆっくりと引き離し、信じられないといった顔をしてわたしを見つめた。
「アシュリ……どうしてここへ……ここに来てはダメだっ、すぐに逃げてくれっ……」
わたしはただ首を横に振る。
あなたを置いて逃げれる訳がない。
あなたと離れて、あなたを失って生きてゆける訳がない。
わたしは泣きながらシグルドに訴えた。
「シグルドっ……アレに手を出してはダメっ……わたしには分かる……アレは全てを消し去って、全ても無にしても決して消えない代物よ……だってアレは虚無の塊なのだからっ、元々何も無いモノは消えたり無くなったりはしないっ……」
わたしがその言葉を告げた時、師団長さんの声が聞こえた。
「アシュリさんっ!?何故こんな所へっ!?危ない、早く逃げなさいっ!!」
師団長さんがそう叫ぶのを聞いていた、側で蹲っていた男の人が目を見開いてわたしを見た。
「アシュリ……?ではそなたがスタングレイの妻かっ……?」
それに対して、シグルドは何も答えずにただわたしだけを見つめていた。
師団長さんが男の人に言う。
「……然様でございます。この女性がシグルド=スタングレイの奥方です……」
「そんな者がこんな時に何用かっ!!」
八つ当たりなのか、男の人はヒステリックな声を上げてわたしに怒鳴った。
この人が国王陛下なのね……
だけどシグルドがわたしの腕を掴んで体を反転させて立ち位置を変えた。
彼が国王陛下に背を向ける形で立ち、わたしを向こうから見えないようにした。
「アシュリ……キミが言いたい事は分かっている。でもアレは俺たちに任せて。お願いだから早く逃げてくれ……!」
シグルドの言葉に、わたしはただ首を振り続ける。
「いやよ。あなたを犠牲にして生き延びて、そこに何が残るというの?」
「俺はキミが生きていてくれる、それだけでいい」
「わたしだってシグルドには生きていて欲しいもの……!」
「アシュリ」
いつになく硬く毅然とした声で、シグルドはわたしの名を呼んだ。
そして言い聞かせる様に告げる。
「ダメだ。今すぐここから出て行くんだ……頼むっ」
「いや……シグルドっ……いや、いやっ……」
わたしは一心に首を振り、シグルドに縋り付いた。
絶対に離れない、その思いを込めて。
絶対に引かない、その決意を込めて。
「アシュリ、ダメだ。絶対にダメだ」
だけどシグルドも引いてはくれない。
「キミの出自は決して明かしてはいけない。キミを救い出してくれた人の恩に報いる為にも、そして何よりキミの為に」
「っ!……シグルド……気付いていたの……?」
わたしが目を見開いてシグルドの顔を見ると、
彼は自嘲するように答えた。
「術の完成間近になって、その魔力の波動がキミの“気”にとても良く似ている事に気付いたんだ。情けないだろ?特級魔術師である前に、あんなにキミの事ばかり見ていたのに今まで気付かなかったなんて」
「違うわ、あなたは悪くないわ。わたしが隠して騙していたんだもの……」
「騙されたなんて思ってないよ。俺の魔力を奪われた事なんて一度も無いし。上手く隠せているなと感心したんだ。自分の魔力を相殺し続けて、魔力無しを装ってるなんて素晴らしく巧みな方法だよ。それは恩人だと言っていた人から?」
わたしは頷いた。
自分の能力を使って自分の魔力を消して自分を隠す。
この方法はタルバートおじさんが考えたものだ。
なかなか上手くコントロールが出来なかったけど、訓練を積んで出来るようになった。
これが出来るようになって、わたしは外出も出来るようになったし、普通の娘のように暮らす事が出来た。
……でももうそれもお終い。
「シグルド。わたしはあなたを守る為ならなんでもするわ、どんな事でもする。たとえこの先どんな人生になろうと」
「俺だって同じ事を思ってる。キミはアシュリだ。下宿屋“変人の魔窟”の大家で俺の妻。そのままでいて欲しい。それを守る為なら何でもするつもりだ」
「わたしだってそうしたい……でもダメ。あなたを失ったらもう一人で生きてはいけないもの……」
「俺にキミを強制転移させるつもり?」
「……させないわ。何をしても全て“無効化”するもの」
「……!」
脅しの様に告げなければならない事に胸苦しさを感じる。
でもどうしても引き下がる訳にはいかなかった。
これ以上シグルドに止められる前に、わたしは国王陛下や師団長さんに告げた。
今度は皆に聞こえる大きな声で。
「わたしが……十一年前に失踪した魔術師ガロム=アルステラの娘です。でも本当の名はもう忘れてしまいましたが……」
「……は?」「なん……だって……?」
二人や、周りにいた魔術師達が呆然とした様子でわたしを見た。
「アシュリ!ダメだっ」
シグルドが後ろからわたしを抱き寄せる。
彼は小さく震えていた。
わたしはそれに構わず続ける。
「アルステラの娘の髪色、皆さんはご存知ですか?」
わたしの問いかけに、年嵩の魔術師の一人が答えた。
「あ、あぁ……特殊な天啓持ちは皆、その髪色で生まれてくるからな……その髪色は……「白」」
最後に言葉を重ねてわたしは言った。
そして魔術で色を変えていた髪色を、本来の色に戻した。
「……!?」
みるみる銀色に近い白い髪色に戻るわたしを見て、シグルドが、ここにいた皆が息を呑んだのが聞こえた。
「これで信じて頂けましたか?たとえ信じて貰えなくても関係ないですが……」
「ア、ア、アルステラの……娘?」
「アルステラの亡くし子……ようやく見つけたぞっ……!」
驚愕に目を見開く者、言葉を失う者、熱に浮かされるように言葉を呟く者と、皆一様に狼狽えていた。
シグルドがわたしを抱きしめる腕の力を強くした。
「あの暴走する魔力の処理は、わたしがします……その代わり約束して下さい。もう二度、こんなバカ事は引き起こさないと……」
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「も、もちろんだっ……そなたが手に入るなら、紛い物の術などどうでもよい、二度と手は出すまいっ……」
「それから、わたしがアルステラの娘であった事は夫は知りませんでした、わたしの周りにいる人達もです。どうか彼らに一切の咎が及ばない事を約束して下さい」
喜色満面でわたしを見ながら、国王陛下はその場でコクコクと頷いた。
わたしの耳元でシグルドが呟く。
「アシュリ……ダメだ、ダメだ……」
シグルド。
ごめんなさい。
でももうこうするしかないの。
あなたを、そしてなんの罪も関係もない人達を救うには……
わたしはこの場にいる人間全員に告げた。
「少し離れていて下さい。一箇所に集まって、身を低くしていて下さい」
一人、また一人とわたしの指示通りに動き、一箇所に固まった。
「シグルドも……」
わたしがそう促すと、シグルドはわたしの横に並び、ぎゅっと手を繋いで来た。
「俺は側にいる」
「でも……」
「俺の言う事を聞かなかった妻のお願いは聞かない」
わたしの手を握るシグルドの手に力がこもる。
「どんな時でも側に居る。どんな結果になっても、決して側から離れない」
「シグルド……」
「アシュリの……全てを無にする能力を使って、あの球体を消すんだね?」
わたしは黙ったまま頷いた。
その肯定を受け、シグルドがわたしに言う。
「アシュリ。どうしても止めても無駄だというのなら、一つだけ頼みを聞いて欲しい」
「なあに……?」
「キミの能力を使ってあの球体を消すと同時に、ここに居る者の記憶も全て消し去ってくれ」
「………え?」
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