妻と夫と元妻と

キムラましゅろう

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夫対元妻

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「シグルド……今何か音が聞こえなかった?……」

仄暗い寝室の中で、わたしは夫にそう告げた。

「………放っとけ……」

シグルドは一言それだけを言って、再びわたしの体にその大きくて温かな手を這わせた……




◇◇◇◇◇



「おい、出歯亀とは悪趣味だな」


俺は庭先の木からぶら下がるメラニーを睨め付けた。

「いやぁ~だって気になるじゃない?別れた元亭主がどんな風にオンナを抱くのかさ?」

「お前……最低だな」

「最低なのはどっちよ!部屋に防御魔法なんて掛けちゃってさ!しかもこんな念糸の網で雁字搦めにして木からぶら下げるオマケ付きなんて!」

「本当は一瞬で体の上と下がサヨナラする術を掛けてやりたかったんだけどな、そんな事をしたらアシュリの大事な下宿が汚れるだろ」

「うわ~…暴力反対~」

少しも悪びれる様子もないメラニーに、俺は問う。

「お前、ここへ来たホントの目的はなんだ?メシ付きだからというのは嘘だろ、正直に答えろ」

「え~この念糸を解いてくれたら話してもいいカナ~」

「……嘘だな。じゃあ別にいい」

メラニーが語尾に気持ち悪いイントネーションを付ける時は相手を小馬鹿にしてけむに巻こうとしている時だ。

子どもの頃からそれで散々煮え湯を飲まされきた。

昔から何も変わっちゃいない、性根の腐った性格。
その存在全てに唾棄したくなる。

一時でも同じ姓を名乗ったのが忌々しい。

踵を返して下宿ウチの中に入ろうとした俺にメラニーが言ってくる。


「ちょーっとぉ?シグルドさんっ?え?降ろしてくれないの?」

俺はシレ~っと答えてやった。

「えーなんで?最高に無様で笑えるのに?白骨化するまでそこに居て下さーい」

「嘘よね?冗談よね?可愛い元妻にそんな仕打ちしないわよね~?」

「だって可愛いなんて思った事ねぇもん」

「嘘ばっかり!ちょっ…シグふがっ」

俺は物質転移でメラニーの口に庭に干してあった雑巾を突っ込んで猿轡してやった。

どうせ捕縛している念糸は時間が経てば消えるようにしてある。

朝起きてあんなメラニーの姿を見たら、アシュリがビックリするだろうからな。
突然念糸が消えて木から落ちて大怪我でもすりゃあいい。


それにしても覗き行為をしようとはほとほと見下げ果てたヤツだ……

そういえば自分がオトコとところを俺に見せて喜ぶようなヤツだった。

その時はままのアイツらを街のど真ん中に強制転移してやったが……

大騒ぎにならなかったのはメラニーが瞬時に自分一人だけ転移して逃げたからだ。
哀れな相手のオトコはで放置されたらしいけど。

それでもメラニーと別れなかったんだからそいつも相当イカれてる。


「ホントに……どいつもこいつも……」


ーースタングレイ。魔力を持たない平民と結婚するなんてお前、この国にどれほどの損失を与えているか理解しているのか?


国王に言われた言葉が脳裏に浮かぶ。


ーー今からでも遅くない。同じく高魔力保持者の女性と婚姻を結び直せ。良いではないか、元の妻と復縁すれば。

「くそっ……」

人の感情も、人生も無視した無責任な言葉。

魔力の高い国民を増やす事がそんなに重要な事なのか。



「……ふざけんなよ」













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