だから言ったのに! 〜婚約者は予言持ち〜

キムラましゅろう

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番外編

愛妾、だと……?

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ジュリとアルジノンが
結婚式で濃厚な誓いの口付けを
交わしてから早2ヶ月。


ジュリは早くも懐妊した。


そりゃそうだ。

初夜からほとんど毎晩、
アルジノンに抱き潰されているのだから。


タバサを始め
ジュリの侍女連合の女性陣に
アルジノンはもはやケダモノと認識されている。


とはいえやはり国の慶事だ。

安定期近くなるまで公表はされないが、

喜ばしい事である事には変わらない。


懐妊の報せを受けた
アルジノンは泣いて喜んだ。

そしてその瞬間から
超過保護で神経質な王太子が爆誕した。



ジュリが階段を登り降りしようものなら
たちまちどこからか飛んで来て、
わざわざ姫抱っこして登ったり降りたりするし、


転んだらどうするのだと言いながら
廊下を歩いたり、部屋を移動するのにも姫抱っこで運ばれる。


もはや靴を履いて地に足を着けることも許してもらえない。


まぁ悪阻で食べられないと知り、
自ら厨房に立って滋養のあるスープを作ろうとしてくれた時はジュリの胸がじんわり温まったが。
(もちろん余計に体を壊すと、早々に厨房を追い出されていたが)


そんなこんなで月日はあっという間に過ぎ
ジュリが安定期を迎えたのを機に、
大々的に王太子妃の懐妊が公表された。


王太子の妃に対する溺愛ぶりは
もはや国民の誰もが知るところなので、

結婚早々の懐妊に国民たちも
思わず吹き出してしまったという。


しかし安定期に入っても
相変わらず悪阻が酷くて何も食べれない日がある。
悪阻は妊娠初期だけだと思っていたジュリは落胆したが、
人によっては出産まで悪阻が続く者もいると聞き、仕方ないなと諦めた。 


この頃では少し下腹部がふっくらしてきたように思う。


悪阻は辛いが
そんな変化を感じるのもまた喜びのひとつだ。


ジュリの子どもと遊べるのが楽しみで待ちきれないイグリードが毎日城に押し掛けて来る。
その相手をしながらジュリは幸せな妊婦生活を送っていた。


が、そんな中、
その幸せな妊婦生活に水を差す噂が城内に出回り始めた。



“そろそろ王太子が愛妾を迎えるそうだ”

という噂が。

 

〈は?愛妾?〉



どういう事かとジュリが聞けば、
タバサは眉間に深いシワを刻みながら答えてくれた。

なんでも、
王室には妃の妊娠中に王、もしくは王子に夜のお相手をする愛妾を用意する慣いがあるのだとか。


ほほう……


まぁ……確かに自分はまだお相手出来ないものね。

アレほどの精力を見せつけたアルジノンが妊娠中、出産後しばらくといった期間の中、
禁欲生活など無理だろう……とはジュリも思う。

思うが、
じゃあしょうがないですね、なんて聞き分けのいい妃になれる自信がない。


アルジノンが他の女に触れるなんて想像しただけで奴を絞め殺したくなる。


目から光が消えたまま悶々と考えるジュリに、タバサは言った。

「そういう慣例からくる根も葉もない噂ですよ。だいたい、ジュリ様命のあの殿下が他の女に目を向けるわけがないです」

タバサの優しい言葉が嬉しい。

ジュリは心配かけまいと
努めて明るく振る舞った。


「そうね!とりあえずジノン様がわたしに了承も得ずに愛妾を迎えるとは考えられないわね。愛する旦那さまなんだから信じなくっちゃ!」

「そうですよ」

「そうよね」


そんな風にタバサと話していたというのに。



それから暫くして
アルジノンの行動が
日に日に怪しくなっていった。



このところ毎日、

執務が終わったらどこかへ行くのだ。


夜遅くに帰って来ては、

夫婦の寝室ではなく執務室の横の仮眠室で寝ているという。



………これは、もしかしてもしかする?



アルジノンもオトコだ、

侍従たちにお膳立てをされたら

据え膳食っちゃう場合もあり得るのでは?


しかもヘタレチキンだから、

据え膳食っちゃった事がジュリにバレるのを恐れて逃げ回っちゃってたりするのでは?


オリビア姫の時を思い出し、

ジュリは確信した。



アルジノンヤツは何かを隠し、

そしてわたしから逃げ回っている……と。

















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