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第四章
バルクとローガン
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「お父さま!?何故ここに?」
ジュリは呆気に取られていたアルジノンの隙をついて腕から逃れ、
父の元へ駆け寄った。
「少しぶりだな、ジュリ。城に戻ってからも元気そうで何よりだ」
そう言って父は大きな手で
ジュリの頭を撫でてくれる。
緊張や不安やショック、
様々な感情で硬くなっていたジュリの心が柔らかく解れてゆくのを感じた。
「お父さま……」
ジュリは心地よさからそっと目を閉じた。
泣いていた名残が一粒だけ眦から溢れ落ちる。
それを見た父が言ってくれた。
「大丈夫だジュリ、
何も心配はいらないよ。大丈夫だ」
その親子のやりとりに
イグリードの声が割って入った。
「ちょっと~!キミを招待した覚えはないよ、ローガン」
「招待されないからおかしいと思って来たんだよ、バルク」
ん?
ローガン?バルク?
お互いファーストネーム呼び?
やけに親しそうではないか?
ジュリは父に尋ねた。
「あのぉ……もしかしてお二人はお知り合い……?」
不貞腐れてそっぽを向いたイグリードに代わり、父が説明をしてくれた。
「この男はなジュリ、暇つぶしと称して、30年前に国境騎士団で騎士に成りすましてランバード領内で暮らしていた事があるんだ」
「えぇ!?騎士に、成りすます!?」
「その時の理由はなんか騎士ってカッコいいな☆と思ったからだと。いつの間にか他の騎士に紛れてしれ~っと国境を守ってたんだ。当時10歳の子どもだった俺はまさか相手が大賢者とも知らずに、迂闊にも懐いてしまった」
「迂闊ってなんだよ~」
イグリードが更に拗ねる。
「ジュリ、この男は確かに永く生きてるし、魔術と精霊力両方を使える凄い力を持っている。だけどな、結局は魔術師とも精霊使いとも言えない中~途半端な存在で、苦し紛れに自分の事を“大賢者”なんて呼んだ、ただのイタイ奴なんだぞ」
「ちょっと!ヒドイよローガン!昔はあんなに可愛かったのに!僕、すんごいキミの事可愛がったよね?」
「ああ。大概の悪知恵と悪い遊びはお前から教わった」
「楽しかったよね~♪」
「まさかの親父さんの登場とはな」
「ジノン様……」
その二人のやり取りを見て呆気に取られているジュリの真後ろにいつの間にアルジノンが来ていた。
後ろから腹部に片手を回され、
ガッチリとホールドされる。
「ジュリ、絶対に逃さんぞ」
「後にして」
「はい」
ジュリは改めて父に尋ねた。
「それでどうしてお父さまはこちらに?」
「3人目の予言持ちとしての仕事をしに来た」
「「「「えっ!?」」」」
それを聞き、
イグリードが焦りながら言う。
「もう!予言は失敗したんだから3人目は要らないんだよ!だから呼ばなかったのに」
「何が予言だ。ただの伝言ゲームだろ」
「違うよ!ヒドイよ!」
ジュリは言い合いになりそうな二人の間に慌てて割って入った。
「ちょっと待って、お、お父さまが3人目!?」
「予言を告げるのが3人目というだけで、正しく言えば私が最初の一人だよ」
「ええっ!?」
もう………なにがなんだか……
理解が追いつかない。
頭から煙が出そうなジュリの代わりに
アルジノンが話の続きを促した。
「最初の一人とは?」
「そのままの意味ですよ殿下、殿下とジュリとオリビア姫、3人が生まれる前から私は彼に予言を頼まれていたんです」
「3人目の予言持ちも当然同い年だと思っていた……」
「僕、そんな事はひと言も言ってないよ☆」
イグリードのその言葉を父は無視して説明を続けた。
「いつかこの国に王子が生まれたら、王子とその他あと二人くらいに予言を渡して、“ある事”を決めたいから協力してくれと言われたのです。まさか自分の娘がその予言持ちの一人に選ばれるなんて考えもしなかったですが……」
そう言って父はイグリードを睨め付ける。
「親子二人で予言持ちっていうのも面白いかなぁって……☆」
「何が面白いだ。そのおかげで大切な娘を王子に取られて、わずか10歳で手放す羽目になったんだぞ。どれほどお前を殴ってやりたいと思っことか……」
「うわっゴメンってば、殴らないでよ!?暴力反対!」
「俺は謝らんぞ。むしろそれについてだけはバルク=イグリード、貴様に感謝してやる」
「……」
3人の男のやり取りに
自然と目が半目になるジュリ。
(まぁ父は別だけど)
つまり、
父はイグリードとは既知の中で、
3人目だけど最初の予言持ちで、
ジュリが失敗した事によって予言を呈する事が出来なくなって、
それでも心配だからわざわざジェスロまで足を運んでくれた……
というわけか。
そうか、つまり……
「お父さま大好きっ」
そう言ってジュリは父に抱きついた。
父も驚いたようだがすぐに抱きしめ返してくれる。
父に抱きしめて貰えるなんて何年ぶりだろう。
幼い頃に戻ったようで心地よかった。
「「あー!」」
ドヤ顔で満面の笑みをたたえるランバード辺境伯と、
抱きしめ合う親子を妬み嫉みの目で見る王太子と大賢者。
なんだこれはなんのカオスだ。
タバサは話を戻すために
手を一度叩いて場を引き締めた。
パンッ
「はい、皆さま!これでは一向に話が終わりませんよ!それで?不躾で申し訳ございませんがランバード伯、予言の内容をお聞きしてもよろしいのでしょうか?」
「タバサ……鉄の心を持つ女……」
隣でセオドアが尊敬の眼差しを向けている。
それを聞き、
父はチラリとイグリードを方を見やった。
イグリードは首を横に振る。
「私が託された予言はな……「ちょっと!ローガン!言っていいなんて言ってないよ!」
父の声にイグリードが被せてくる。
「うるさい、もういいだろう。もう暇つぶしとしては十分楽しめただろう」
「暇つぶしなんてヒドイ!僕は真剣だったんだ!」
「いくら“大賢者サマ”でも世界を破滅させるなんて無理だよな?」
「………」
「「「「……え?」」」」
ちょっ……は?
え?イグリードさん!?
今までの発言って全てハッタリだったの!?
皆が目を見開いて愕然とイグリードを見た。
「……いやね、もう疲れたのもホントだよ?世界を壊したいくらい嫌になったのも、でもまぁ…ホントに世界を壊しちゃったら精霊達にも神サマにも怒られちゃうよね☆」
「イ、イ、イグリードぉぉ……!?」
ジュリもアルジノンもタバサもセオドアさえも拳を握りしめてわなわなと震えた。
「あは☆なんかヤバそう、ハイお帰りはあちら!」
「えっ!?あ、またこの感覚!?
ちょっと!イグリード!狡いわよ!」
と思った次の瞬間には
拠点にしていたホテルの、
ジュリが使用している部屋に居た。
アルジノンも父もタバサもセオドアもみんな一緒だ。
飛ばされた。
逃げられた。
〈きっと今からまた13丁目小高い山の上1ー1に行っても会えないんだろうなぁ〉
でもこれは……
セーフという事でいいの……か?
アルジノンと一緒に帰っても
いいという事なのか?
考え込むジュリに父の声が届いた。
「まったくアイツは……都合が悪くなるとすぐに逃げを打つ。昔からそうだ。騎士のフリをしていた時もその正体が大賢者だとバレそうになった途端に消えた。色んな意味で掴みどころのない奴なのは全然変わらないな」
呆れながらもそう言う父の顔は
どこか安堵しているようなそんな優しげな顔だった。
そしてわたし達に告げる。
「三つ目の予言、バルクは必要無くなったと言っていたが、本当はこう言われていたんだ。全てが終わった後、例えどんな結果になろうとも必ず告げてくれと。あ、ちなみにこれは予言でもなんでもない、ただのメッセージだ。あの野郎、色々と含みを持たせるのが好きだからな」
「必ず?」
「どんな結果になろうとも?」
ゴホン、と一つ咳をして
父はイグリードの最初だけど最後の、
一つ目だけど3つ目の、
予言じゃなくて実はメッセージを、
わたし達に告げてくれた。
「『なんだかんだと色々言ったけど、
僕の言ったことなんて全部無視していいよ。
皆、自分の信じた心の鍵を使って未来へと進むように。そして面白くてより良い世界を作ってネ☆』だとさ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
作者のひとり言
結局はイグリードによる
伝言ゲーム&恋愛×人間模様のドラマ鑑賞、
という壮大(?)な暇つぶしだった…という事ですね。
ジュリさん、アルジノンさん、
そしてその他諸々の皆さん、お疲れ様でした。
あと2話で完結予定です。
その後、番外編も投稿予定です。
最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
あと、宣伝で申し訳ないですが、
短編を投稿しました。
タイトルは
「わたしは知っている」です。
他に好きな人がいる夫のために別れたいのに別れられない妻の話です。
何を考えてるのかわからない夫にイライラしながら書いております☆
よろしければそちらもお読みいただければ嬉しいです。
ジュリは呆気に取られていたアルジノンの隙をついて腕から逃れ、
父の元へ駆け寄った。
「少しぶりだな、ジュリ。城に戻ってからも元気そうで何よりだ」
そう言って父は大きな手で
ジュリの頭を撫でてくれる。
緊張や不安やショック、
様々な感情で硬くなっていたジュリの心が柔らかく解れてゆくのを感じた。
「お父さま……」
ジュリは心地よさからそっと目を閉じた。
泣いていた名残が一粒だけ眦から溢れ落ちる。
それを見た父が言ってくれた。
「大丈夫だジュリ、
何も心配はいらないよ。大丈夫だ」
その親子のやりとりに
イグリードの声が割って入った。
「ちょっと~!キミを招待した覚えはないよ、ローガン」
「招待されないからおかしいと思って来たんだよ、バルク」
ん?
ローガン?バルク?
お互いファーストネーム呼び?
やけに親しそうではないか?
ジュリは父に尋ねた。
「あのぉ……もしかしてお二人はお知り合い……?」
不貞腐れてそっぽを向いたイグリードに代わり、父が説明をしてくれた。
「この男はなジュリ、暇つぶしと称して、30年前に国境騎士団で騎士に成りすましてランバード領内で暮らしていた事があるんだ」
「えぇ!?騎士に、成りすます!?」
「その時の理由はなんか騎士ってカッコいいな☆と思ったからだと。いつの間にか他の騎士に紛れてしれ~っと国境を守ってたんだ。当時10歳の子どもだった俺はまさか相手が大賢者とも知らずに、迂闊にも懐いてしまった」
「迂闊ってなんだよ~」
イグリードが更に拗ねる。
「ジュリ、この男は確かに永く生きてるし、魔術と精霊力両方を使える凄い力を持っている。だけどな、結局は魔術師とも精霊使いとも言えない中~途半端な存在で、苦し紛れに自分の事を“大賢者”なんて呼んだ、ただのイタイ奴なんだぞ」
「ちょっと!ヒドイよローガン!昔はあんなに可愛かったのに!僕、すんごいキミの事可愛がったよね?」
「ああ。大概の悪知恵と悪い遊びはお前から教わった」
「楽しかったよね~♪」
「まさかの親父さんの登場とはな」
「ジノン様……」
その二人のやり取りを見て呆気に取られているジュリの真後ろにいつの間にアルジノンが来ていた。
後ろから腹部に片手を回され、
ガッチリとホールドされる。
「ジュリ、絶対に逃さんぞ」
「後にして」
「はい」
ジュリは改めて父に尋ねた。
「それでどうしてお父さまはこちらに?」
「3人目の予言持ちとしての仕事をしに来た」
「「「「えっ!?」」」」
それを聞き、
イグリードが焦りながら言う。
「もう!予言は失敗したんだから3人目は要らないんだよ!だから呼ばなかったのに」
「何が予言だ。ただの伝言ゲームだろ」
「違うよ!ヒドイよ!」
ジュリは言い合いになりそうな二人の間に慌てて割って入った。
「ちょっと待って、お、お父さまが3人目!?」
「予言を告げるのが3人目というだけで、正しく言えば私が最初の一人だよ」
「ええっ!?」
もう………なにがなんだか……
理解が追いつかない。
頭から煙が出そうなジュリの代わりに
アルジノンが話の続きを促した。
「最初の一人とは?」
「そのままの意味ですよ殿下、殿下とジュリとオリビア姫、3人が生まれる前から私は彼に予言を頼まれていたんです」
「3人目の予言持ちも当然同い年だと思っていた……」
「僕、そんな事はひと言も言ってないよ☆」
イグリードのその言葉を父は無視して説明を続けた。
「いつかこの国に王子が生まれたら、王子とその他あと二人くらいに予言を渡して、“ある事”を決めたいから協力してくれと言われたのです。まさか自分の娘がその予言持ちの一人に選ばれるなんて考えもしなかったですが……」
そう言って父はイグリードを睨め付ける。
「親子二人で予言持ちっていうのも面白いかなぁって……☆」
「何が面白いだ。そのおかげで大切な娘を王子に取られて、わずか10歳で手放す羽目になったんだぞ。どれほどお前を殴ってやりたいと思っことか……」
「うわっゴメンってば、殴らないでよ!?暴力反対!」
「俺は謝らんぞ。むしろそれについてだけはバルク=イグリード、貴様に感謝してやる」
「……」
3人の男のやり取りに
自然と目が半目になるジュリ。
(まぁ父は別だけど)
つまり、
父はイグリードとは既知の中で、
3人目だけど最初の予言持ちで、
ジュリが失敗した事によって予言を呈する事が出来なくなって、
それでも心配だからわざわざジェスロまで足を運んでくれた……
というわけか。
そうか、つまり……
「お父さま大好きっ」
そう言ってジュリは父に抱きついた。
父も驚いたようだがすぐに抱きしめ返してくれる。
父に抱きしめて貰えるなんて何年ぶりだろう。
幼い頃に戻ったようで心地よかった。
「「あー!」」
ドヤ顔で満面の笑みをたたえるランバード辺境伯と、
抱きしめ合う親子を妬み嫉みの目で見る王太子と大賢者。
なんだこれはなんのカオスだ。
タバサは話を戻すために
手を一度叩いて場を引き締めた。
パンッ
「はい、皆さま!これでは一向に話が終わりませんよ!それで?不躾で申し訳ございませんがランバード伯、予言の内容をお聞きしてもよろしいのでしょうか?」
「タバサ……鉄の心を持つ女……」
隣でセオドアが尊敬の眼差しを向けている。
それを聞き、
父はチラリとイグリードを方を見やった。
イグリードは首を横に振る。
「私が託された予言はな……「ちょっと!ローガン!言っていいなんて言ってないよ!」
父の声にイグリードが被せてくる。
「うるさい、もういいだろう。もう暇つぶしとしては十分楽しめただろう」
「暇つぶしなんてヒドイ!僕は真剣だったんだ!」
「いくら“大賢者サマ”でも世界を破滅させるなんて無理だよな?」
「………」
「「「「……え?」」」」
ちょっ……は?
え?イグリードさん!?
今までの発言って全てハッタリだったの!?
皆が目を見開いて愕然とイグリードを見た。
「……いやね、もう疲れたのもホントだよ?世界を壊したいくらい嫌になったのも、でもまぁ…ホントに世界を壊しちゃったら精霊達にも神サマにも怒られちゃうよね☆」
「イ、イ、イグリードぉぉ……!?」
ジュリもアルジノンもタバサもセオドアさえも拳を握りしめてわなわなと震えた。
「あは☆なんかヤバそう、ハイお帰りはあちら!」
「えっ!?あ、またこの感覚!?
ちょっと!イグリード!狡いわよ!」
と思った次の瞬間には
拠点にしていたホテルの、
ジュリが使用している部屋に居た。
アルジノンも父もタバサもセオドアもみんな一緒だ。
飛ばされた。
逃げられた。
〈きっと今からまた13丁目小高い山の上1ー1に行っても会えないんだろうなぁ〉
でもこれは……
セーフという事でいいの……か?
アルジノンと一緒に帰っても
いいという事なのか?
考え込むジュリに父の声が届いた。
「まったくアイツは……都合が悪くなるとすぐに逃げを打つ。昔からそうだ。騎士のフリをしていた時もその正体が大賢者だとバレそうになった途端に消えた。色んな意味で掴みどころのない奴なのは全然変わらないな」
呆れながらもそう言う父の顔は
どこか安堵しているようなそんな優しげな顔だった。
そしてわたし達に告げる。
「三つ目の予言、バルクは必要無くなったと言っていたが、本当はこう言われていたんだ。全てが終わった後、例えどんな結果になろうとも必ず告げてくれと。あ、ちなみにこれは予言でもなんでもない、ただのメッセージだ。あの野郎、色々と含みを持たせるのが好きだからな」
「必ず?」
「どんな結果になろうとも?」
ゴホン、と一つ咳をして
父はイグリードの最初だけど最後の、
一つ目だけど3つ目の、
予言じゃなくて実はメッセージを、
わたし達に告げてくれた。
「『なんだかんだと色々言ったけど、
僕の言ったことなんて全部無視していいよ。
皆、自分の信じた心の鍵を使って未来へと進むように。そして面白くてより良い世界を作ってネ☆』だとさ」
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作者のひとり言
結局はイグリードによる
伝言ゲーム&恋愛×人間模様のドラマ鑑賞、
という壮大(?)な暇つぶしだった…という事ですね。
ジュリさん、アルジノンさん、
そしてその他諸々の皆さん、お疲れ様でした。
あと2話で完結予定です。
その後、番外編も投稿予定です。
最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
あと、宣伝で申し訳ないですが、
短編を投稿しました。
タイトルは
「わたしは知っている」です。
他に好きな人がいる夫のために別れたいのに別れられない妻の話です。
何を考えてるのかわからない夫にイライラしながら書いております☆
よろしければそちらもお読みいただければ嬉しいです。
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