だから言ったのに! 〜婚約者は予言持ち〜

キムラましゅろう

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第三章

わたくしの事(オリビア目線)

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わたくしの国は

とても小さくて弱くて貧しい。

それでも産出出来る岩塩のおかげでなんとかやっていた。

でも30年前
東方の国が塩の精製に成功し安価な塩が市場に出回りはじめて輸出量が激減したのと、酷い干ばつが我が国を襲い、一気に国力が低下した。

大公家の至宝を秘密裏に売却したりしてなんとか凌いでいたが、もはや国庫は尽きかけ国自体の存亡が怪しい。

そんな中、父である前大公が亡くなり、財政がひっ迫する中でそれでも出来うる限りの国葬を営んだ。

各国との繋がりの要だった父を失い、兄も大臣たちも打つ手なしと頭を抱えたその時、わたしくしは最後の手段を思いついた。

わたくしは生まれた時に
大賢者イグリードに授けられた予言とやらを持っている。

今までは他国に関する予言などに興味はなく、名乗り出るつもりがなかった。

何故わたくしが他国のために動かなくてはならないのよ。

そう思っていたけれど
逆にこれを利用しない手はないのではないかしらと思いついた。


予言を呈する相手は
大国ハイラムの王太子。

予言者であると王太子に告げ、
それをきっかけに懐に入りこみ、上手くいけば王太子妃の座を掴めるかもしれない。

そうすれば
夫となった王太子に甘えて縋って、我が大公国を援助させる事が出来る。

餌にした岩塩の税率も元に戻させるつもり。



すでに風変わりな婚約者がいるらしいけど、
相手はただの辺境伯令嬢と聞く。
所詮一貴族の娘にすぎない者と王族のわたくしとでは比べるまでもない。
必ずわたくしに乗り換えるでしょう。


その為にはまずは王太子に会う算段をつけなくては。

まずは岩塩の税率を餌に交換臨時大使の申し出をした。

そして今まで国交の無かった国同士の交流を図るためと銘打ち、わたくし自ら臨時大使となって王太子の懐に入り込む事に成功した。


国境付近まで迎えに来たハイラムの王太子を見た瞬間、
わたくしは神に感謝した。

夫にと望んだ男が信じられないくらい美しかったから。

これならわたくしと並んでも遜色ないでしょう。

どうせなら見目のよい男と暮らしたいもの。


合流してわりとすぐの段階で
わたくしはこっそりと王太子に自分がイグリードの予言者であると告げた。

その時の王太子の驚きようは凄かったわ。

信じられないような顔でわたくしを見、

かなり焦った様子でこの事は多言無用にと請われた。


何か理由があるらしい。


わたくしはそれもまた利用する事にした。

わたくしに対して弱みがある王太子は
わたくしの願いをなんでも聞いてくれる。

保養地のライリーで暫く過ごしたいと言うと予定を変えてまで許してくれたし、

慣れない他国で心細いからと言えば、常に付き添ってくれた。
……見張られている気がしなくもないけれど。

食事も公務も、そして大使としての勉強も全て王太子を側に居させた。


企ては功を奏して
王太子は婚約者と過ごす時間が無くなり、やがて王太子の心変わりの噂が流れ始めた。

いえ、実際にもう心変わりをしているのではないかしら。

それなのに彼は何を気にしてる?

何を恐れているの?

わたくしを婚約者に会わせたくないようだし。

ああ、自分の心変わりの為に
わたくしが婚約者に責められないようとの配慮なのかもしれない。

側近のセオドアとかいう男に何か報告させているらしいけど、
別段何かするわけでもない。

だから気にしても仕方ないわね。


それより
あとはイグリードの予言を
どうするかよね。

わたくしが授かった予言の内容はよくわからないもの。

これを告げて何の意味が?と大賢者に問い正したくなる。

そのまま正直に伝えようか、

それとも我が国が有利なように内容を変えるか。

さあどうしようかしら。

まだわたくしの地位が確定しているわけではないから、後者かしらね。

わたくしが運命の相手だという予言にしよう。


でもいつ告げたらいいのかしら?

タイミングは重要。

チャンスを活かすも殺すもタイミング次第。


だって大国ハイラムの王太子妃、絶対にしくじりたくない。

我が国を救う為、
可哀想だけどあのジュリとか言う女には退場して貰うわ。

まずはわたくしと王太子の間に
何か決定的なものがあると匂わさなければならない。

まぁいずれ本当にそうなるのだから構わないわね。


さぁ、どうする?

まずは王太子に視察旅行に行きたいと
おねだりしてみようか。


きっと王太子は
快く了承するに違いないわ。












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