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第一章
辺境伯令嬢 シュ・ジュリ=ランバード ②
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ジュリの生家、
ランバード家が治める領地は国境に面する国防の要所だ。
国境騎士団と呼ばれる第二騎士団を有し、
建国以来、一度も他国からの侵攻どころか
山賊や野党など、この国の国民に害なす者はその爪先ですら、国土を踏ませる事はなかった。
代々ランバード家の当主が国境騎士団の団長を務めるのが慣いであり、もちろん現当主であるジュリの父も団長を勤める歴戦の猛者であった……という事はなく、
どちらかというと武術は苦手で、戦術や戦略など知略面で団を率いていた。
そんな説明の仕方をすると、ジュリの故郷がとても凄い所のように印象付ける事が出来るが、
まぁ要は国境のど田舎である。
そんな辺境のど田舎で育ったジュリは
貴族令嬢とは名ばかりの超おてんば娘であった。
そのジュリは今生まれてから一度も出た事が無かった領地を離れ、城から来た迎えの馬車に乗り、王都を目指している。
先日迎えた誕生日に予言持ちのアザが顕現した事を告げると父は、
「そうか……まさか当家から出るとはなぁ……」
と言い、王宮へ報せを出した。
王子誕生の直前に夢に現れた大賢者イグリードに
王子と三人の予言者の存在を告げられた王は、
王子の誕生と共に国中に御布令を出した。
『3名の予言者が見つかり次第、速やかに王宮へ報せること』
その御布令が出て早10年、
初めて見つかった予言者である。
普通、王の謁見が叶うまでにはそれなりの日数を要する。
にも関わらず、報せを出してからたった1週間で謁見が許されるという異例の事態が起きた。
当然慌てたのがジュリの両親で、
普段、野猿のように領地を駆け回るジュリがドレスの一枚も持っているはずもなく、慌てて急拵えで用意したドレスを着せ、
慌てて王家の馬車に乗り、慌てて王城の門をくぐった。
たとえ普段は野生児でもとりあえずは貴族令嬢。
マナーや一般的な教養などは一応身につけさせているジュリだが、
下準備も何もなくいきなり王族に会わせるなど 正気の沙汰ではないと、
父のランバード辺境伯は内心冷や汗ものだった。
何も起きなければいいが……
娘のジュリは良くも悪くも正義感の塊なのだ。
正騎士たちに囲まれて育ったせいか曲がった事が大嫌いで、正しいと思った事を貫き通す質だった。
そんな娘が
あの王子と会う……
血の雨が降る未来しか見えない……
〈これは俺でも予言出来るぞ絶対にただで済むとは思えない……〉
ランバード伯は隣に楚々と佇む娘を見た。
黙っていれば妻に似て儚げな少女に見える。
だが父は知っている。
その折れそうな細腕で高さ7メートルを超える木を難なく登り、
華奢な足は騎士たちのロードワークにも
余裕で着いていけるほどの健脚であることを。
〈どうか、どうか無事に謁見が終わりますように……〉
結局、最後は神頼みしか出来ない父であった。
その時、
王の入来を告げる先ぶれがあった。
「ハイラム王国国王、
ハイラム=オ=ディル=ダグラス陛下、
王太子、
ハイラム=オ=ジル=アルジノン殿下、
御入来!!」
ランバード家が治める領地は国境に面する国防の要所だ。
国境騎士団と呼ばれる第二騎士団を有し、
建国以来、一度も他国からの侵攻どころか
山賊や野党など、この国の国民に害なす者はその爪先ですら、国土を踏ませる事はなかった。
代々ランバード家の当主が国境騎士団の団長を務めるのが慣いであり、もちろん現当主であるジュリの父も団長を勤める歴戦の猛者であった……という事はなく、
どちらかというと武術は苦手で、戦術や戦略など知略面で団を率いていた。
そんな説明の仕方をすると、ジュリの故郷がとても凄い所のように印象付ける事が出来るが、
まぁ要は国境のど田舎である。
そんな辺境のど田舎で育ったジュリは
貴族令嬢とは名ばかりの超おてんば娘であった。
そのジュリは今生まれてから一度も出た事が無かった領地を離れ、城から来た迎えの馬車に乗り、王都を目指している。
先日迎えた誕生日に予言持ちのアザが顕現した事を告げると父は、
「そうか……まさか当家から出るとはなぁ……」
と言い、王宮へ報せを出した。
王子誕生の直前に夢に現れた大賢者イグリードに
王子と三人の予言者の存在を告げられた王は、
王子の誕生と共に国中に御布令を出した。
『3名の予言者が見つかり次第、速やかに王宮へ報せること』
その御布令が出て早10年、
初めて見つかった予言者である。
普通、王の謁見が叶うまでにはそれなりの日数を要する。
にも関わらず、報せを出してからたった1週間で謁見が許されるという異例の事態が起きた。
当然慌てたのがジュリの両親で、
普段、野猿のように領地を駆け回るジュリがドレスの一枚も持っているはずもなく、慌てて急拵えで用意したドレスを着せ、
慌てて王家の馬車に乗り、慌てて王城の門をくぐった。
たとえ普段は野生児でもとりあえずは貴族令嬢。
マナーや一般的な教養などは一応身につけさせているジュリだが、
下準備も何もなくいきなり王族に会わせるなど 正気の沙汰ではないと、
父のランバード辺境伯は内心冷や汗ものだった。
何も起きなければいいが……
娘のジュリは良くも悪くも正義感の塊なのだ。
正騎士たちに囲まれて育ったせいか曲がった事が大嫌いで、正しいと思った事を貫き通す質だった。
そんな娘が
あの王子と会う……
血の雨が降る未来しか見えない……
〈これは俺でも予言出来るぞ絶対にただで済むとは思えない……〉
ランバード伯は隣に楚々と佇む娘を見た。
黙っていれば妻に似て儚げな少女に見える。
だが父は知っている。
その折れそうな細腕で高さ7メートルを超える木を難なく登り、
華奢な足は騎士たちのロードワークにも
余裕で着いていけるほどの健脚であることを。
〈どうか、どうか無事に謁見が終わりますように……〉
結局、最後は神頼みしか出来ない父であった。
その時、
王の入来を告げる先ぶれがあった。
「ハイラム王国国王、
ハイラム=オ=ディル=ダグラス陛下、
王太子、
ハイラム=オ=ジル=アルジノン殿下、
御入来!!」
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