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【第5章(最終章)】
■第137話 : ブリッジ
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(いてて……
あれ……? こ、ここは……?)
目を覚ますと、見知らぬ部屋のベッドの上にいた。
(あれ……? 俺、なんでこんなところに……)
優司は、自分が置かれている状況を全く把握できずにいた。
ぼーっとしたままあたりをキョロキョロ見渡していると、廊下の方からがやがやとした声が聞こえてきた。
なんとなく聞いたことのある声が。
ドアの方を見ていると、そのドアがすっと開いた。
「あれ……? もう起きてんじゃん?
今意識あるんだよな、夏目?」
今部屋に入ってきた男たち、それは、日高と真鍋だった。
◇◇◇◇◇◇
優司は、見舞いに来た日高と真鍋から、事の顛末を聞かされた。
藤田に刺され、救急車で運ばれ即入院となったこと。
日高のグループにいる人間の知り合いが、優司が刺された現場にたまたま居合わせたため、日高が連絡を受けすぐにこの病院へ駆けつけることができたこと。
自分が丸1日意識を失っていたこと。
幸いにも重要な器官は刺されなかったが、少しずれていれば危なかったこと。
そして、すぐに藤田が捕まったこと、などなど。
日高は、挨拶もそこそこに、矢継ぎ早にこれらのことを優司に説明した。
「そうなんだ……。俺、一歩間違ってたらやばかったんだ……」
ようやく状況を把握し、改めて戦慄を覚えた優司。
日高が返答する。
「いや、でも結局刺された場所がよかったから、命に別条はないし、わりと早く退院できるってさ。刺された場所がよかったってのも変な言い方だけど。
うまいこと急所を避けてたし、そもそもそんなに深く刺さってなかったらしいからね」
そう言いながら、にこりと笑う日高。
「とにかく、しばらくは安静にしとけ、だってさ。夏目もいろいろあったし、ここらでゆっくりするのは悪いことじゃないだろ」
「うん、まあ……。確かにそうかも。
……で、あの……その……ここ最近は迷惑ばっかりかけて……本当にごめん!」
痛む体に鞭を入れ、精一杯大きな声で謝罪する優司。
土屋たちに加担し、その結果この街を荒らすことになってしまったことを詫びた。
「お、おい……。急にどうしたんだよ?」
おとなしく見守っていた真鍋も入ってくる。
「そうだよ! お前が謝ることなんてないだろ? 土屋んとこでいいようにされて苦しんでたお前がさ。
むしろ、変な誤解をしてた俺らこそ悪かっただろ」
「違うよ……。俺がパチスロ勝負なんてもんに変にこだわりすぎたから、こんなにややこしい事態になったんだ。俺のガキっぽさが災いしたんだよ」
優司の弱気な発言に、日高が答える。
「どうしたんだよ夏目? らしくないじゃんよ。入院で心が弱ったか?
なんにせよ、もう何も気にする必要はないんだよ。全部終わったんだ。また、今までみたいにツルんでさ、自由気ままに打ちまわろうぜ!」
優司は、無言ながらも嬉しそうに微笑んだ。
日高もニコリと返した後、すぐに神妙な顔つきに変わった。
「で、パチスロ勝負の結果については……神崎から聞いたよ。あと、その後の警察沙汰のことも。
土屋たちの件については、これで解決だな。あいつらもあれだけいろいろやらかしたんだ。ちゃんと償ってもらわないと」
「うん……」
「パチスロ勝負は……残念だったな。さすがに神崎は厳しかったか?」
「ああ。日高たちの言うとおりだった。全然ダメだったよ、俺なんか。完全に俺が間違ってた。それについても本当に申し訳なかったよ。客観的に冷静な意見をくれてたのに、なんか俺一人アツくなっちゃって……」
「しょうがないって。あれだけ勝ち続ければ、人間誰しも冷静さを失うもんだよ。
もういいじゃん。それも終わったことだ。
それに、もうパチスロ勝負とは縁を切るんだろ?」
「ああ、もうやらないよ。ようやく卒業だ」
ここで真鍋が口を挟んできた。
「お! ようやく大人になれたか夏目?
てっきり、『まだ乾が残ってる!』とか言い出すのかと思ってたら」
「か、勘弁してよ……。さすがにそこまでバカじゃないよ俺も。もう充分懲りたよ」
「大体、乾に勝負を申し込もうと思ったところで無理だけどな」
「え?」
「乾のヤツ、今外国にいるらしいぜ」
「そ、そうなの?」
「ああ。なんか絵の勉強のために、つい最近留学したとかって話だ。なあ光平?」
「うん。まあ、小耳にはさんだ程度の話だからどこまで本当かわからないけどね。とにかく、まともにスロを打ったりはしてない、ってことは確かだ」
「や、やっぱりそうだったんだ……。ほとんどスロは打ってないとは聞いてたけど。それなのに俺、あんなに必死こいて勝負仕掛けようとして探し回ってたなんて……」
思わず苦笑いを浮かべる優司。
そんな優司の肩にそっと手を置く真鍋。
「まあ気にすんなよ。人生いろいろあるって! 元気出せ!」
「あ、ああ……。そ、そうだね!」
今度は日高が入ってくる。
「そうそう、あとさ、御子神さんにもちゃんとお礼を言っとけよ夏目? あの人のおかげで神崎も動いてくれたわけだし、俺達も事情がわかったんだ。いろいろ気にかけてくれてたらしいぜ?」
「おう! そうだぞ夏目?
大体な、あんな美人がなんでお前なんかにこんなに優しいんだぁ? くそ!」
「お、落ち着けよ遼介……。密かに憧れてたのは知ってるけどさぁ」
「べ、別に憧れてまではいねぇって!」
「はいはい。そうですよね。わかりました」
「おい、敬語やめろ! バカにしてんのかっ?」
「いちいちデカい声出すなって!」
「お前がそういうこと言うからだろ?」
途端に大声でやり合いだす二人。
(こ、ここ病院なんだけどな……。挙句俺は、今さっきようやく目を覚ましたところだってのに。
……でも、なんでかな。妙に落ち着く)
延々と続く日高と真鍋のやりとりを、笑みをこぼしながら眺める優司だった。
あれ……? こ、ここは……?)
目を覚ますと、見知らぬ部屋のベッドの上にいた。
(あれ……? 俺、なんでこんなところに……)
優司は、自分が置かれている状況を全く把握できずにいた。
ぼーっとしたままあたりをキョロキョロ見渡していると、廊下の方からがやがやとした声が聞こえてきた。
なんとなく聞いたことのある声が。
ドアの方を見ていると、そのドアがすっと開いた。
「あれ……? もう起きてんじゃん?
今意識あるんだよな、夏目?」
今部屋に入ってきた男たち、それは、日高と真鍋だった。
◇◇◇◇◇◇
優司は、見舞いに来た日高と真鍋から、事の顛末を聞かされた。
藤田に刺され、救急車で運ばれ即入院となったこと。
日高のグループにいる人間の知り合いが、優司が刺された現場にたまたま居合わせたため、日高が連絡を受けすぐにこの病院へ駆けつけることができたこと。
自分が丸1日意識を失っていたこと。
幸いにも重要な器官は刺されなかったが、少しずれていれば危なかったこと。
そして、すぐに藤田が捕まったこと、などなど。
日高は、挨拶もそこそこに、矢継ぎ早にこれらのことを優司に説明した。
「そうなんだ……。俺、一歩間違ってたらやばかったんだ……」
ようやく状況を把握し、改めて戦慄を覚えた優司。
日高が返答する。
「いや、でも結局刺された場所がよかったから、命に別条はないし、わりと早く退院できるってさ。刺された場所がよかったってのも変な言い方だけど。
うまいこと急所を避けてたし、そもそもそんなに深く刺さってなかったらしいからね」
そう言いながら、にこりと笑う日高。
「とにかく、しばらくは安静にしとけ、だってさ。夏目もいろいろあったし、ここらでゆっくりするのは悪いことじゃないだろ」
「うん、まあ……。確かにそうかも。
……で、あの……その……ここ最近は迷惑ばっかりかけて……本当にごめん!」
痛む体に鞭を入れ、精一杯大きな声で謝罪する優司。
土屋たちに加担し、その結果この街を荒らすことになってしまったことを詫びた。
「お、おい……。急にどうしたんだよ?」
おとなしく見守っていた真鍋も入ってくる。
「そうだよ! お前が謝ることなんてないだろ? 土屋んとこでいいようにされて苦しんでたお前がさ。
むしろ、変な誤解をしてた俺らこそ悪かっただろ」
「違うよ……。俺がパチスロ勝負なんてもんに変にこだわりすぎたから、こんなにややこしい事態になったんだ。俺のガキっぽさが災いしたんだよ」
優司の弱気な発言に、日高が答える。
「どうしたんだよ夏目? らしくないじゃんよ。入院で心が弱ったか?
なんにせよ、もう何も気にする必要はないんだよ。全部終わったんだ。また、今までみたいにツルんでさ、自由気ままに打ちまわろうぜ!」
優司は、無言ながらも嬉しそうに微笑んだ。
日高もニコリと返した後、すぐに神妙な顔つきに変わった。
「で、パチスロ勝負の結果については……神崎から聞いたよ。あと、その後の警察沙汰のことも。
土屋たちの件については、これで解決だな。あいつらもあれだけいろいろやらかしたんだ。ちゃんと償ってもらわないと」
「うん……」
「パチスロ勝負は……残念だったな。さすがに神崎は厳しかったか?」
「ああ。日高たちの言うとおりだった。全然ダメだったよ、俺なんか。完全に俺が間違ってた。それについても本当に申し訳なかったよ。客観的に冷静な意見をくれてたのに、なんか俺一人アツくなっちゃって……」
「しょうがないって。あれだけ勝ち続ければ、人間誰しも冷静さを失うもんだよ。
もういいじゃん。それも終わったことだ。
それに、もうパチスロ勝負とは縁を切るんだろ?」
「ああ、もうやらないよ。ようやく卒業だ」
ここで真鍋が口を挟んできた。
「お! ようやく大人になれたか夏目?
てっきり、『まだ乾が残ってる!』とか言い出すのかと思ってたら」
「か、勘弁してよ……。さすがにそこまでバカじゃないよ俺も。もう充分懲りたよ」
「大体、乾に勝負を申し込もうと思ったところで無理だけどな」
「え?」
「乾のヤツ、今外国にいるらしいぜ」
「そ、そうなの?」
「ああ。なんか絵の勉強のために、つい最近留学したとかって話だ。なあ光平?」
「うん。まあ、小耳にはさんだ程度の話だからどこまで本当かわからないけどね。とにかく、まともにスロを打ったりはしてない、ってことは確かだ」
「や、やっぱりそうだったんだ……。ほとんどスロは打ってないとは聞いてたけど。それなのに俺、あんなに必死こいて勝負仕掛けようとして探し回ってたなんて……」
思わず苦笑いを浮かべる優司。
そんな優司の肩にそっと手を置く真鍋。
「まあ気にすんなよ。人生いろいろあるって! 元気出せ!」
「あ、ああ……。そ、そうだね!」
今度は日高が入ってくる。
「そうそう、あとさ、御子神さんにもちゃんとお礼を言っとけよ夏目? あの人のおかげで神崎も動いてくれたわけだし、俺達も事情がわかったんだ。いろいろ気にかけてくれてたらしいぜ?」
「おう! そうだぞ夏目?
大体な、あんな美人がなんでお前なんかにこんなに優しいんだぁ? くそ!」
「お、落ち着けよ遼介……。密かに憧れてたのは知ってるけどさぁ」
「べ、別に憧れてまではいねぇって!」
「はいはい。そうですよね。わかりました」
「おい、敬語やめろ! バカにしてんのかっ?」
「いちいちデカい声出すなって!」
「お前がそういうこと言うからだろ?」
途端に大声でやり合いだす二人。
(こ、ここ病院なんだけどな……。挙句俺は、今さっきようやく目を覚ましたところだってのに。
……でも、なんでかな。妙に落ち着く)
延々と続く日高と真鍋のやりとりを、笑みをこぼしながら眺める優司だった。
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