ゴーストスロッター

クランキー

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【第5章(最終章)】

■第128話 : 予定の詭弁

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「伊達さん、今回の勝負って勝てるんですかね…? 珍しく自信なさそうでしたよ神崎さん」

『ミラクル』の近くにあるファミレスにて時間を潰している伊達・サトル・ノブの3人。
それぞれ注文した料理を食べている最中、不意にサトルが伊達に向かって質問をした。



『ミラクル』が開店してからしばらくした後、「一人で集中したいから」と神崎から告げられ、ホールを離れた伊達とサトルとノブ。

なんとなく落ち着かない3人は、近くのホールで乱れ打ちをしたりゲーセンで時間を潰したりしていた。

しかし、ある程度時間が経つと3人とも特にやることもなくなり、自然と集まり出した。

そして、「早ければ15:00にも設定発表があることだし、今のうちから準備しておこう」ということになり、『ミラクル』の近くのファミレスで遅めの昼食をとりながら待つことにしたのだった。

現在、時刻は14:00。



サトルの質問に、迷いなく答える伊達。

「あいつはいつもああなんだよ。自信があっても、あえて無さそうなフリをする。そういう奴なんだよ」

伊達慎也は、小学校から神崎と友人同士で、お互い23歳になった今でもその関係は続いている。

サトルとノブは、神崎がグループを組んで活動し始めてからすぐに加わった初期メンバー。
二人とも、神崎の能力や生き様、考え方などに惹かれている。

「そういうもんなんですかね。神崎さんほどの人なら、もっと自信を持って『俺が負けるわけない』くらいのことを言って欲しいのに」

伊達の返答に、ちょっと物足りなさを覚え愚痴るサトル。

すかさず伊達が返す。

「秘めたる自信、ってやつだよ。
 大体、そういう我の強さは敵を作る要因の一つだぞ? 今の真佐雄は、特にそういうのを嫌うからな。別にいい子ちゃんでいたいってんじゃなくて、不必要に相手を不快にしたりトラブリを招いたりしたくないだけだ。真佐雄がそういう人間だからこそ、お前らを始め多くの人間がついてくるんだろ?」

「まあ……そう言われれば、確かにそうかもしれないです。いくら能力があろうと、傍若無人なタイプだったら付いていかなかったかも」

「だろ? そういうところをよくわかってるんだよ、あいつは。だから、いくら自信があろうとそれは自分の中でだけ持っていればいい、ってふうに考えてるんだよ」

「な、なるほど」

「とにかく……今はただ、あいつを信じるしかない。無事勝ってくれることを祈るのみだ。土屋にこの街を荒らされないためにも」

ノブとサトルの二人は、伊達の言葉に静かに頷いた。



◇◇◇◇◇◇



「何をニヤニヤしてんだよ光平?」

『エース』の前で、自販機で買ったカフェオレを飲みながらガードレールに腰掛けていた日高。
表情の綻びを抑えきれない様子で宙を見つめていたところ、不意に真鍋に声をかけられた。

「おう、遼介か」

「どうしたんだ? 何かいいことでもあったのか?」

「別に……なんでもないよ」

含みがある言い方をした日高。

「あ~? なんか気になる言い方するじゃんよ。
 あっ! さては、今打ってるお前の北斗、6なんだろ? もう6を確信しちまったんだろ?」

「まだ昼の2時じゃんよ。そう簡単に北斗で6を確信できるかよ」

「そ、そうか……。じゃ、なんなんだよ?」

「だからなんでもないって。 
 ……うし、休憩終わりだ! ブン回すぜ~!」

「お、おい待てよ光平! まだ話は終わってねぇだろっ?」

「遼介ものんびりしてる場合じゃないぞ? こんな時間にのこのこ来てんだから、少しは焦ってホールに駆け込むくらいしろっての。
 んじゃ、そういうわけでまた後でな!」

「なんか気持ち悪いぞ? 何なんだよぉ~!」

そのまま二人は、『エース』の中へと入っていった。



◇◇◇◇◇◇



「そろそろ様子を見に行かなくていいのか? もう3時になるぜ? あそこは、昼3時から夜10時の間のどこかで設定発表されるんだろ?」

丸島が土屋に聞いた。

「いいよ、ほっといて。終わりゃ電話が来るだろ。夏目にはそう言ってあるし。このままこのゲーセンで時間潰してりゃいいよ」

1階フロアにある麻雀ゲーム台にて、丸島と並んでゲームに興じる土屋。
柿崎は、2階フロアにあるコインゲームで時間を潰している。

「でもよ、勝負結果によっちゃあ俺達はこの街から出て行かなくちゃいけないんだぜ? 勝負が今どうなってるかくらい気になるだろ。
 まあ、あの夏目が負けるとは思えないから、最終的には大丈夫だろうけどさ」

「いや、わからねぇぞ丸島。なにしろ相手はあの神崎だ。あいつだって充分バケモノじみてる。楽観なんてできねぇ」

「じゃ、じゃあなおさらだろ? こんなとこでボケーっとしてる場合じゃ――」

「バーカ、大丈夫だよ。結果夏目が負けようが、俺達にはなんにも関係ねぇ」

「え……?」

「賭けたことをよく思い出せ。勝った方がこの街に残り、負けた方はこの街から出ていく、だろ?」

「ああ、そうだけど……」

「で、今勝負してるのは誰だ?」

「あっ……」

「そうだ。夏目だ。万が一夏目が負けたら、あいつをこの街から強制的に追い出すよ。力づくでな。
 まあ、さすがにそれだけじゃ連中も納得いかねぇってゴネだすかもしれないから、金も多少渡すさ。
 でも、それだけだ。どういう結果になろうと俺達はこの街から出て行かない」

「おお~! なるほどなぁ。さすが土屋だぜ。悪い奴だな!」

「へっ、こんな約束、いちいち細かく守ってる奴がマヌケなんだ。何度か『負けたら俺達が出てく』ってことは言っちまってるけど、なぁに、そんなのはすっとぼけちまえばいいんだ。あくまで夏目自身の責任でやった勝負、って方向に無理矢理持ってく。
 その時はちゃんと合わせろよな丸島。あと、柿崎にも伝えとけ」

「オッケー。どっちに転んでも、俺達に被害はないってことか」

「夏目っつー設定推測人がいなくなるのは痛いけど、まあここまでこの街に根付ければ、あとは手ごろな腕の立つ人間を何人か調達して、みっちり働かせればなんとかなるだろ」

「だな!
 よし、これで心配事がなくなったぜ! おっしゃ、アガるぞぉ! 役満ツモっちゃるっ!」

「へっ、現金な奴だなお前も!」

麻雀ゲームコーナーに、二人の高笑いが響いた。 
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