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【第5章(最終章)】
■第114話 : 迎合
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翌朝、いつもマンガ喫茶にて目覚める優司。
(今日は大晦日か……。まあ、俺にはなんの関係もないけど。
ただただ『神崎との勝負の時を待つ』だけの一日だ)
昨日、御子神が喫茶店から出て行った後、すぐに携帯に連絡が入った。
柿崎からだった。
どこにいるのかを聞かれ、それを告げると、10分ほどで見慣れた男達3人がやってきた。
いつも優司に張り付いている男達だ。
この男達は、「何か用事があったらこいつらに言いつけてくれ」といって柿崎が優司に付けた男達。
つまり、名目上は優司の子分のようなもの。
しかし、実際は違うであろうということは優司にもわかっていた。
おそらく、自分が勝手な行動を取らないように見張っているのだろう、と。
が、御子神の話を聞いてからは、ただ優司に勝手な行動を取らせないためだけではなく、日高たちが近づいてきたり、街の人間から土屋が過去にどういうことをしてきたのかということを迂闊に知られないようにするために付けられているのだと悟った。
だが、それがわかったからといって今更どうすることもできず、素直にその男達をそばに置いた。
そして、また一日中ホールを渡り歩いてひたすらデータを取り続け、夜にはそのデータを元に、各ホールごとに設定6が入るであろう台番を土屋にメールした。
そして、またいつもの朝を迎えている。
2004年12月31日。
大晦日だが、優司にとってはなんら変わり映えしないいつもの『一日』でしかなかった。
◇◇◇◇◇◇
18:00。
いつも通り屈強そうな3人の男に張り付かれながら、各ホールを歩き回っている優司。
すると、ポケットの中の携帯が振動を始めた。
「もしもし」
「おう、俺だよ、土屋だ」
「ああ、土屋君……」
「お前、今から時間あるか?」
「うん。大丈夫だけど」
「よっしゃ! 忘年会やるぞ忘年会!
心配するな、俺のオゴリだよ! お前も来いよな!
場所は、前も行った『げんた』だ。あそこの酒とメシは美味いだろ?」
「……まあ、そうだね」
「よし、じゃあ来いよ! 19:00から始めるから。
データ取りが中途半端でもいいからちゃんと時間通り来いよな!
今日のデータ取りが不十分だったってことで、明日の設定予測がちょっとくらい狂ってもいいからさ。
また明日っからバリバリやればいいんだよ。な!」
「……わかった。行くよ」
相変わらず勝手なことを、と怒りを覚えたが、素直に従うことにした。
もう優司には、このまま土屋に従って、神崎との勝負を成立させてもらうしか選択肢がなかった。
まずは、絶対に神崎との勝負を成立させること。
これが優司の中の鉄の掟だった。
神崎と勝負して勝てば、また元通りの生活を手に入れられるというプランが優司の中で出来上がっていたのだ。
昨日の一件から、御子神が真実を知っているということがわかった。
それならば、まずはきっちりと神崎とスロ勝負を行ない、それに勝つ。
そして、その場で土屋に絶縁を叩きつけ、すぐに日高たちのところへ向かう。
当然日高は、「スロ勝負をしたい」という自分のエゴと金に走り、土屋などという人間と組んだことを非難する。
しかし、自分は土屋という人間がどんな人間かを知らずに組んでいたことを告白する。
神崎に勝って戻ってきている以上、「勝てないからやめろ」と頑なに止め続けてきた日高たちにとっては、優司を軽んじていたことに対して申し訳ない気持ちもあるはず。
よって、自分の釈明をきっと受け入れてくれるはずだと考えていた。
仮に「本当に土屋がどういう人間か知らなかったのか?」と疑われても、御子神が真実を知っているので、いざとなれば同席してもらって真実を話してもらえばよい。
御子神の言うことならば、誰も疑わないはず。
昨日は御子神に頼ることを拒否した優司だが、この程度ならば特別頼っているということはなく、ただ事情を知っている唯一の人間だからやむなく同席してもらった、ということになる。
これならば、自分のプライドも傷つかないし、道理が通る。
以上が、昨日の夜に必死で考えた優司のシナリオだった。
しかし、プランが立ったのにさほど吹っ切れず依然テンションが低いのは、神崎との勝負がいつになるかは結局不明のままだから。
土屋が自分を引き留めるため、神崎との勝負など成立させる気もないのに「もうすぐだ」と言っている可能性もある。
よって、いまいちスッキリできないでいた。
優司としては、なんとしてでも神崎との勝負を成立させてくれないと困る。
ゆえに、優司のやるべき最優先の仕事は、神崎の件についての本当の進捗具合を探ることだった。
素直に忘年会の誘いを受けた狙いはここにもあった。
◇◇◇◇◇◇
「おっす! やっと来たか! 10分遅刻だぞ夏目~!」
『げんた』にて。
既に忘年会は始まっていた。
メンバーは、土屋・丸島・吉田・柿崎、そして優司。
土屋が「幹部」と呼ぶ5人だった。
「おし、俺の隣り座れ。
ほら、ほら! まずはビールでいいだろ?」
「ああ、ビールで大丈夫」
「よっしゃ! じゃあ改めて乾杯しようぜ!
ほら、お前らも全員グラスを持てよ!」
土屋の促しに従い、全員ビールの入ったグラスを持ち上げた。
それを確認した後、土屋が大声で音頭を取った。
「それでは~! 偉大なる設定推測人夏目優司を称えて~! 乾杯っ!」
「乾杯~~!」
丸島と柿崎が大声で続き、グラスを勢いよくぶつけ合った。
吉田も控えめにグラスをぶつけていた。
(結局これも……演技なんだよな。こういう時は調子よく褒め称えてくるけど……)
内心うんざりするも、それが表に出ないよう必死で堪えた。
そこからは、他愛もない雑談が開始され、主に土屋と丸島と柿崎だけで盛り上がっていた。
(今日は大晦日か……。まあ、俺にはなんの関係もないけど。
ただただ『神崎との勝負の時を待つ』だけの一日だ)
昨日、御子神が喫茶店から出て行った後、すぐに携帯に連絡が入った。
柿崎からだった。
どこにいるのかを聞かれ、それを告げると、10分ほどで見慣れた男達3人がやってきた。
いつも優司に張り付いている男達だ。
この男達は、「何か用事があったらこいつらに言いつけてくれ」といって柿崎が優司に付けた男達。
つまり、名目上は優司の子分のようなもの。
しかし、実際は違うであろうということは優司にもわかっていた。
おそらく、自分が勝手な行動を取らないように見張っているのだろう、と。
が、御子神の話を聞いてからは、ただ優司に勝手な行動を取らせないためだけではなく、日高たちが近づいてきたり、街の人間から土屋が過去にどういうことをしてきたのかということを迂闊に知られないようにするために付けられているのだと悟った。
だが、それがわかったからといって今更どうすることもできず、素直にその男達をそばに置いた。
そして、また一日中ホールを渡り歩いてひたすらデータを取り続け、夜にはそのデータを元に、各ホールごとに設定6が入るであろう台番を土屋にメールした。
そして、またいつもの朝を迎えている。
2004年12月31日。
大晦日だが、優司にとってはなんら変わり映えしないいつもの『一日』でしかなかった。
◇◇◇◇◇◇
18:00。
いつも通り屈強そうな3人の男に張り付かれながら、各ホールを歩き回っている優司。
すると、ポケットの中の携帯が振動を始めた。
「もしもし」
「おう、俺だよ、土屋だ」
「ああ、土屋君……」
「お前、今から時間あるか?」
「うん。大丈夫だけど」
「よっしゃ! 忘年会やるぞ忘年会!
心配するな、俺のオゴリだよ! お前も来いよな!
場所は、前も行った『げんた』だ。あそこの酒とメシは美味いだろ?」
「……まあ、そうだね」
「よし、じゃあ来いよ! 19:00から始めるから。
データ取りが中途半端でもいいからちゃんと時間通り来いよな!
今日のデータ取りが不十分だったってことで、明日の設定予測がちょっとくらい狂ってもいいからさ。
また明日っからバリバリやればいいんだよ。な!」
「……わかった。行くよ」
相変わらず勝手なことを、と怒りを覚えたが、素直に従うことにした。
もう優司には、このまま土屋に従って、神崎との勝負を成立させてもらうしか選択肢がなかった。
まずは、絶対に神崎との勝負を成立させること。
これが優司の中の鉄の掟だった。
神崎と勝負して勝てば、また元通りの生活を手に入れられるというプランが優司の中で出来上がっていたのだ。
昨日の一件から、御子神が真実を知っているということがわかった。
それならば、まずはきっちりと神崎とスロ勝負を行ない、それに勝つ。
そして、その場で土屋に絶縁を叩きつけ、すぐに日高たちのところへ向かう。
当然日高は、「スロ勝負をしたい」という自分のエゴと金に走り、土屋などという人間と組んだことを非難する。
しかし、自分は土屋という人間がどんな人間かを知らずに組んでいたことを告白する。
神崎に勝って戻ってきている以上、「勝てないからやめろ」と頑なに止め続けてきた日高たちにとっては、優司を軽んじていたことに対して申し訳ない気持ちもあるはず。
よって、自分の釈明をきっと受け入れてくれるはずだと考えていた。
仮に「本当に土屋がどういう人間か知らなかったのか?」と疑われても、御子神が真実を知っているので、いざとなれば同席してもらって真実を話してもらえばよい。
御子神の言うことならば、誰も疑わないはず。
昨日は御子神に頼ることを拒否した優司だが、この程度ならば特別頼っているということはなく、ただ事情を知っている唯一の人間だからやむなく同席してもらった、ということになる。
これならば、自分のプライドも傷つかないし、道理が通る。
以上が、昨日の夜に必死で考えた優司のシナリオだった。
しかし、プランが立ったのにさほど吹っ切れず依然テンションが低いのは、神崎との勝負がいつになるかは結局不明のままだから。
土屋が自分を引き留めるため、神崎との勝負など成立させる気もないのに「もうすぐだ」と言っている可能性もある。
よって、いまいちスッキリできないでいた。
優司としては、なんとしてでも神崎との勝負を成立させてくれないと困る。
ゆえに、優司のやるべき最優先の仕事は、神崎の件についての本当の進捗具合を探ることだった。
素直に忘年会の誘いを受けた狙いはここにもあった。
◇◇◇◇◇◇
「おっす! やっと来たか! 10分遅刻だぞ夏目~!」
『げんた』にて。
既に忘年会は始まっていた。
メンバーは、土屋・丸島・吉田・柿崎、そして優司。
土屋が「幹部」と呼ぶ5人だった。
「おし、俺の隣り座れ。
ほら、ほら! まずはビールでいいだろ?」
「ああ、ビールで大丈夫」
「よっしゃ! じゃあ改めて乾杯しようぜ!
ほら、お前らも全員グラスを持てよ!」
土屋の促しに従い、全員ビールの入ったグラスを持ち上げた。
それを確認した後、土屋が大声で音頭を取った。
「それでは~! 偉大なる設定推測人夏目優司を称えて~! 乾杯っ!」
「乾杯~~!」
丸島と柿崎が大声で続き、グラスを勢いよくぶつけ合った。
吉田も控えめにグラスをぶつけていた。
(結局これも……演技なんだよな。こういう時は調子よく褒め称えてくるけど……)
内心うんざりするも、それが表に出ないよう必死で堪えた。
そこからは、他愛もない雑談が開始され、主に土屋と丸島と柿崎だけで盛り上がっていた。
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