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【第4章】
■第86話 : 次なる展開
しおりを挟む「なんなのよっ! なんなのこれっ! どういうことっ?」
馴れ合いの雰囲気が流れだしたところで、飯島が突如大声を出した。
飯島にとっては何も解決していないので、これは当然のこととも言える。
その気持ちを汲み、神妙な面持ちで御子神が声をかける。
「ごめんね由香ちゃん。
ふざけるくらいの方が少しは気が紛れるかと思ったけど……そんなわけないわよね。
でもね、大声を出したくなる気持ちもわかるけど、まずは現実を受け止めて。
あなたは騙されてたの。あの鴻上って男に。
でも、それを悲観しちゃダメ。それを言い出したら、ユミとかは救われないでしょ?
あなたよりも、もっとひどい状況で捨てられたんだから」
「う……ううう……」
飯島の目からは大粒の涙がこぼれている。
認めたくない気持ちはあるが、現実を突きつけられ、もはや認めざるを得ない状況になっていた。
「落ち込んでるヒマがあったら、まずは夏目優司君に感謝することね。
彼が身を挺して救おうとしてくれたからこそ、事実がわかったんだから。
このままほっとかれたら、ユミたちと同じ運命を辿っていたのよ? わかる?」
「……」
飯島は、無言のまま、自然と顔を優司の方へと向けた。何かを訴えるように。
「優司君……」
「……」
「ご、ごめんなさい……」
飯島の謝罪を受けて、優司がぶっきら棒に答える。
「……いいって。何も気にすることはないよ。俺の自己満足でやったことだし」
「で、でも……」
「いいから!
……俺は、最後に義理を果たしたかっただけだよ。前に世話になったしね。
目標を失って迷走しまくってた俺に対して、あれだけ真剣に向き合ってくれたのは飯島だけだった。
その恩義を返しただけだよ」
「優司君……」
それから、しばらくの沈黙が続いた。
周囲の者たちも、一様に口を噤んでいた。
気まずい沈黙が1分ほど続いた後、優司が口を開く。
「……もう行きなよ。
で、それで終わりだ。もう会うこともないから」
「……」
「早く行ってくれって。
……あと、これからは絶対に鴻上みたいなヤツに引っ掛かるなよ」
「……うん。
本当にごめんね。いろいろと……」
「……」
「あの……」
何かを言おうとして、口ごもる飯島
その様子を黙って見守る優司。
しかし、自分には何も言う資格がない、とばかりにかぶりを振り、飯島は言葉を呑み込んだ。
「……ううん、なんでもない」
「……」
「もう行くね。本当にごめんなさい」
「……ああ、もういいよ。終わったことだし」
「うん……。それじゃあね」
そう言って、最後に優司の顔を見ながらニコリと笑った後、足早にこの場を立ち去っていった。
その去り行く後姿を、寂しげな目をしながら黙って見送る優司。
(3年ぶりの再会が、こんな形じゃなかったら……)
◇◇◇◇◇◇
「止めなくていいの?」
おとなしく状況を見守っていた一同だったが、ここで御子神が優司に問いかけた。
「何がですか?」
「このまま行かせちゃうと、もうそう簡単には連絡取れなくなるよ? それでもいいの?」
「いいも何も、もうしょうがないでしょ。別に未練もないし」
「そうかな? 私には、未練たっぷりに見えるけど。優司君の方がね」
みるみる表情が険しくなっていく優司。
「うるさいな! 御子神さんには関係ないことだろっ?
いちいち割り込んでくん――」
「だからやめろって!」
再び広瀬が止めに入る。
「アツくなるなって。
気持ちは分かるけど、御子神さんは助けてくれたんだぜ?」
「そ、そうだけど……」
「とにかくさ、これで無事解決したんだろ?
あんだけお前を苦しめてた問題が、ようやくなくなったわけじゃん?」
「まあ……ね。」
「でしょ? そのことについて、まずは素直に喜ぼうぜ」
「うん、まぁ……。
そっか、そうだね!
広瀬君にも凄いお世話になったし。
あと……御子神さん、本当に助かりました。ありがとうございました!」
「別にそれはいいんだけど……。
おせっかいついでにもう一つ言うと、お金は良かったの?」
「お金……?
お金って何のこ……あっ!」
「ど、どうした夏目?」
「勝負の賭け金…………30万……」
「あぁッ!
そ、そうだ!
これ、一応スロ勝負だったんじゃん?
普通に30万賭けてたんだよなっ?」
「……でも、いいや。こんなの、勝負じゃなかったし」
「へ……?」
「こんなのに勝ったも負けたもないでしょ。
これで鴻上が二度と俺らの前に現れない、ってだけで充分だよ」
「ま、まあ……そんなもんかぁ」
腑に落ちたような落ちていないような、複雑な顔で宙へ視線をやる広瀬。
その横で御子神が、へぇ、と呟いた。
「随分と心が広いのね」
「……」
「心広いついでに、今度は私からちょっとしたお願いがあるんだけど聞いてくれる?」
「お願い……? 俺に……?」
「そう、優司君に。ちょっと話があるの」
先ほどまでは、どこかにこやかで柔和な雰囲気だった御子神だが、いつの間にかピリっとした空気を纏っていた。
馴れ合いの雰囲気が流れだしたところで、飯島が突如大声を出した。
飯島にとっては何も解決していないので、これは当然のこととも言える。
その気持ちを汲み、神妙な面持ちで御子神が声をかける。
「ごめんね由香ちゃん。
ふざけるくらいの方が少しは気が紛れるかと思ったけど……そんなわけないわよね。
でもね、大声を出したくなる気持ちもわかるけど、まずは現実を受け止めて。
あなたは騙されてたの。あの鴻上って男に。
でも、それを悲観しちゃダメ。それを言い出したら、ユミとかは救われないでしょ?
あなたよりも、もっとひどい状況で捨てられたんだから」
「う……ううう……」
飯島の目からは大粒の涙がこぼれている。
認めたくない気持ちはあるが、現実を突きつけられ、もはや認めざるを得ない状況になっていた。
「落ち込んでるヒマがあったら、まずは夏目優司君に感謝することね。
彼が身を挺して救おうとしてくれたからこそ、事実がわかったんだから。
このままほっとかれたら、ユミたちと同じ運命を辿っていたのよ? わかる?」
「……」
飯島は、無言のまま、自然と顔を優司の方へと向けた。何かを訴えるように。
「優司君……」
「……」
「ご、ごめんなさい……」
飯島の謝罪を受けて、優司がぶっきら棒に答える。
「……いいって。何も気にすることはないよ。俺の自己満足でやったことだし」
「で、でも……」
「いいから!
……俺は、最後に義理を果たしたかっただけだよ。前に世話になったしね。
目標を失って迷走しまくってた俺に対して、あれだけ真剣に向き合ってくれたのは飯島だけだった。
その恩義を返しただけだよ」
「優司君……」
それから、しばらくの沈黙が続いた。
周囲の者たちも、一様に口を噤んでいた。
気まずい沈黙が1分ほど続いた後、優司が口を開く。
「……もう行きなよ。
で、それで終わりだ。もう会うこともないから」
「……」
「早く行ってくれって。
……あと、これからは絶対に鴻上みたいなヤツに引っ掛かるなよ」
「……うん。
本当にごめんね。いろいろと……」
「……」
「あの……」
何かを言おうとして、口ごもる飯島
その様子を黙って見守る優司。
しかし、自分には何も言う資格がない、とばかりにかぶりを振り、飯島は言葉を呑み込んだ。
「……ううん、なんでもない」
「……」
「もう行くね。本当にごめんなさい」
「……ああ、もういいよ。終わったことだし」
「うん……。それじゃあね」
そう言って、最後に優司の顔を見ながらニコリと笑った後、足早にこの場を立ち去っていった。
その去り行く後姿を、寂しげな目をしながら黙って見送る優司。
(3年ぶりの再会が、こんな形じゃなかったら……)
◇◇◇◇◇◇
「止めなくていいの?」
おとなしく状況を見守っていた一同だったが、ここで御子神が優司に問いかけた。
「何がですか?」
「このまま行かせちゃうと、もうそう簡単には連絡取れなくなるよ? それでもいいの?」
「いいも何も、もうしょうがないでしょ。別に未練もないし」
「そうかな? 私には、未練たっぷりに見えるけど。優司君の方がね」
みるみる表情が険しくなっていく優司。
「うるさいな! 御子神さんには関係ないことだろっ?
いちいち割り込んでくん――」
「だからやめろって!」
再び広瀬が止めに入る。
「アツくなるなって。
気持ちは分かるけど、御子神さんは助けてくれたんだぜ?」
「そ、そうだけど……」
「とにかくさ、これで無事解決したんだろ?
あんだけお前を苦しめてた問題が、ようやくなくなったわけじゃん?」
「まあ……ね。」
「でしょ? そのことについて、まずは素直に喜ぼうぜ」
「うん、まぁ……。
そっか、そうだね!
広瀬君にも凄いお世話になったし。
あと……御子神さん、本当に助かりました。ありがとうございました!」
「別にそれはいいんだけど……。
おせっかいついでにもう一つ言うと、お金は良かったの?」
「お金……?
お金って何のこ……あっ!」
「ど、どうした夏目?」
「勝負の賭け金…………30万……」
「あぁッ!
そ、そうだ!
これ、一応スロ勝負だったんじゃん?
普通に30万賭けてたんだよなっ?」
「……でも、いいや。こんなの、勝負じゃなかったし」
「へ……?」
「こんなのに勝ったも負けたもないでしょ。
これで鴻上が二度と俺らの前に現れない、ってだけで充分だよ」
「ま、まあ……そんなもんかぁ」
腑に落ちたような落ちていないような、複雑な顔で宙へ視線をやる広瀬。
その横で御子神が、へぇ、と呟いた。
「随分と心が広いのね」
「……」
「心広いついでに、今度は私からちょっとしたお願いがあるんだけど聞いてくれる?」
「お願い……? 俺に……?」
「そう、優司君に。ちょっと話があるの」
先ほどまでは、どこかにこやかで柔和な雰囲気だった御子神だが、いつの間にかピリっとした空気を纏っていた。
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