ゴーストスロッター

クランキー

文字の大きさ
上 下
76 / 138
【第4章】

■第76話 : 進路相談

しおりを挟む
広瀬の将来についてのビジョンを聞き、やや滅入ってしまった優司。

広瀬は、その様子を敏感に察知していた。
おそらく、自分の発言が優司の求めていた答えとは違っていたのだろう、と。

しかし、このままこの話をここでやめても解決はない、やるならとことんまでやらないとスッキリはできないだろうと考え、将来どうする?といったこの話を続行することにした広瀬。

「で……夏目はこの先どうしようと思ってんの?」

「え……? 俺……?」

「うん」

「…………」

あからさまに困惑する優司。
今の優司にとって一番困る質問なのだから無理もない。

しかし、ここは変に小賢しく答えず、素直に思っていることを話してみることにした。

広瀬なら、何か答えをくれるんじゃないだろうかという淡い期待にかけて。

「……実は、すっごい迷っててさ。
 今のままスロ勝負を続けるか、日高たちと一緒にツルんで打ち回るか、普通に社会に戻るか……」

「なるほどねぇ」

「俺としては、どうしてもスロ勝負を続けていきたいんだ。
 もちろん、ずっとなんて出来ないことはわかってる。
 だから、あと2回、あと2回だけどうしても勝負をしたいんだよ!」

「2回?」

「うん、2回っていうか、正確には特定の二人と」

「特定の二人……?」

「そうなんだ。
 この街で最強とされてる残りのスロッター、乾と神崎、この二人とどうしてもやり合いたいんだ!」

「乾と、神崎……」

「でも、日高とか真鍋はやたら止めてきてさ。『勝負しても負けるからやめとけ!』って。
 それで、彼らとはちょっとうまくいかなくなってて……」

「へぇ、うまくいってないんだ、彼らと。
 意外だなぁ、凄く理解し合ってる仲に見えたのに」

「うん。まあ、結構デリケートな問題でさ……」

「……」

「で、スロ勝負については広瀬君はどう思う?
 俺、やっぱり乾とか神崎とかとの勝負、ヤメといた方がいいのかな?」

「えっ? お、俺にそれを聞くの……?」

「あ……ゴ、ゴメン。
 でも、もう俺、誰に聞いていいのかわかんなくって……」

「そっか。うん、まあいいけどさぁ」

「……」

「まあでも、勝負したいんならすればいいんじゃない?
 負けたって命取られるわけじゃないんだし、それでスッキリするならさ、いっそパーッと勝負してみればいいと思うよ」

この言葉を聞いた瞬間、みるみるうちに笑顔になっていく優司。

「や、やっぱりそうだよねっ? そう思うよねっ?」

「うん、まあ……。少なくとも俺はね」

「そっか! いやぁ、良かったよ、広瀬君に相談してみて!
 さっきも言った通り、日高とか真鍋とか、他のみんなもあんまり良い顔しなくてさ! 乾や神崎と勝負することに。俺がいくら勝負したいって主張してもダメなんだ」

「……」

「でも、こうやって俺がやろうと思ってることを認めてくれる人がいて、なんか凄く救われたよっ! ホント嬉しい!」

今まで否定され続けてきた自分の主張。
それが、ここで初めて肯定された。
それも、一目置いている、いや、それ以上の存在である広瀬から。

しかし、浮かれる優司を尻目に、広瀬は真顔で淡々と話し出した。

「いや、でも勘違いしないでくれよ夏目。
 俺はあくまで部外者だからこんな無責任なこと言えてる、ってのもあるんだからさ。
 日高とか真鍋は、多分責任感じてるんだと思うよ? ずっと間近で接してて、一緒にやってきたような感覚もあるんだろうし。
 彼ら、勝負の応援とかサポートとかもしてきたんだろ? ここまで夏目がスロ勝負にハマっちゃうとは思わないでさ」

「う、うん……まあ……」

「そういう意味では、あの二人の言葉の方がより親身な言葉だよ。
 俺はただ、夏目がそこまで勝負にこだわるんなら、どうせあと2回くらいなら納得いくまでやってみれば?って思っただけでさ。
 その後のこととかも深くは考えてないわけだし」

「……そっか。
 うん、でもいいんだ。否定されなかっただけでも。なんか勇気が湧いたよ」

「うーん……。それもなんか違う気がするけど……。
 俺の言ってる意味、ちゃんとわかってるか?」

「大丈夫! わかってるって!」

「……ま、いっか。
 どっちにしろ、よく考えて行動した方がいいよ?
 特に、日高とか真鍋が言ってることの意味をよく理解してさ」

「うん、わかった。 いろいろありがとう!」

(夏目の奴、本当にわかってんのかな……?)

妙に嬉しそうな優司の顔を見ているうちに、水を差すのもなんだか悪い気がして、やや疑問を感じつつもそのまま流してしまった広瀬。

スロ勝負など娯楽の範囲だろう、というのが広瀬の認識なので、優司の良い気分をぶち壊してでも話を続けようとすることはないと判断したのだ。



「ところでさ、今日の本題って何だったの?」

入店時から気になっていたことを、ここにきてようやく聞いてみた広瀬。

優司は、思い出したかのように勢いよく喋りだした。

「あ! そうそう、ごめん、話が前後して……。
 今日来てもらった理由なんだけど……明後日に、またスロ勝負をしなくちゃならなくなったんだ」

「おお、相手決まったんだ?」

「決まったというか……」

「ん?」

「ちなみにさっき、あと2回スロ勝負できればいい、って言ったけど、実はそれも危ないんだよね」

「ちょっと話が見えないんだけど」

「あ、ご、ごめん。
 かいつまんで説明すると……なんだか妙なヤツに絡まれちゃってさ。
 俺の昔の彼女を盾に、『この勝負、わざと負けないとこの女が大変なことになる』みたいな脅しをかけられてるんだ」

「……」

「そいつはヒモみたいな……っていうか凄腕のヒモで、その女の子は完璧にその男に心を奪われてて……
 で、俺がそいつにわざと負けないと、俺の前の彼女は大変なことになっちゃうんだ。
 具体的に言うと、風俗に無理矢理、みたいな……」

「……」

「さすがにそんな状況じゃ勝つわけにもいかないから、負けてやるしかないかな、って思ってて。
 で、その時に相手のヤツが『立会人を用意しろ』って言ってきたから、その役目を広瀬君にお願いできたら、と思って。
 さっき話した通り、日高とか真鍋とはちょっと折り合い悪くて、頼みづらい状況だから」

「なるほどね」

話の流れをなんとなく理解し、考え込む広瀬。

その様子を黙って見つめている優司。
説明不足だったかな?と不安になりながら。

1分ほど黙り込んだ後、不意に広瀬が口を開いた。

「ちなみにさ、その男の名前って何?」 

「え……?」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...