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【第4章】
■第72話 : キング オブ クズ
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「よぉ大将、話し合いはどうだったよ?」
ニタニタといやらし薄ら笑いを浮かべながら、飯島と入れ替わるように鴻上が喫茶店から出てきた。
「……ああ、お前の言ったとおりだったよ。
確かにお前と付き合ってて、しかもお前がヒモだってことまでご承知だったよ」
「だから言ったろ?
俺は18の時からこの道一本で5年も生きてんだぜ。ナメてもらっちゃ困るな。
女を手玉に取るのなんてお手の物なんだよ」
「……じゃあ、話は終わったね。俺は帰るよ」
「あん? 何言ってんだ?」
「何を言ってるも何も、そのままの意味だよ。
もう勝手にしてくれよ。飯島も、これ以上俺に関わって欲しくないみたいだし」
「へぇ~。
じゃあ、あの女がこのまま堕ちるところまで堕ちてってもいいんだ?
冷たいねぇ、昔の彼女だってのに」
「関係ないよ。
飯島から助けを求めてきてるならまだしも、そういうわけじゃないんだし。
むしろ邪魔者扱いされてるんだからさ」
「ふーん……。
まあ、そう言い張るなら別にいいけどよ」
「言い張るとかじゃないだろ? 事実、そうなんだから」
もう交渉には応じない、といった強い態度に出る優司に対し、軽くため息をついた後、鴻上がゆっくりと口を開く。
「まあ、俺がこんなこと言うのもなんなんだけども……」
「ん?」
「由香のやつ、結構最近までお前のこと気にかけてたみたいだぜ。
まあ、それを俺が強引に捻じ曲げてやったんだけどよ」
「バカか? そんな作り話にコロコロ騙されるわけないだろ」
「そう思いたいならいいけどよ。
まあ、考えてもみろよ。
さっきから、俺の言うことに一つでも嘘があったか?
俺は、女には嘘八百を並び立てるけどよ、男にはいちいち嘘なんざつかねぇ主義だ」
「そ、そんなことわかんないだろ……? 俺との勝負を成立させるためなら、嘘だってつくだろうし……」
「そもそもよ、夏目が原因で別れたんだろ?
大学行くとかほざいてたくせにスロにハマって、全然勉強しなかったらしいじゃん。
で、医者の道を踏み外しそうになってるお前を、あの女が必死で食い止めようとしてたのに、一向に聞き入れ
なかったんだってな?」
「飯島が、そんなことまで話したのか……?」
「ああ。アイツは話したがらなかったけど、俺があの手この手で聞き出したんだよ。
そりゃフラれるよな。せっかく必死で心配してくれてたのによ」
「……」
「そんなお前に対しても、最初は健気にかばってたぜ?
まあ、そこは俺の弁舌でひっくり返してやったけど」
「お前……とことんクズだな……」
「へっ! なんとでも言えよ」
「……」
「今はあんな風に俺しか見えなくなってるけど、それはすべて俺がそういうふうに躾けたからだ。
言わば、マインドコントロールされてるようなもんだな。
自分で言うのもなんだけどよ」
「……」
「そんなアイツを見捨てんのか?
大体俺は、お前とのスロ勝負に勝つ為だけにあの女を利用したんだぜ?
アイツにはなんら非はねぇ。ただ利用されただけなんだからな。お前のせいで。
それを平気で見捨てられるってんなら、話はそれまでだけどな」
「本当に汚ないヤツだなお前は……。
ここまで腐ったヤツとは初めて会ったよ……」
「もういいよ、そういう恨み言はさ。面倒くせぇだけだって」
優司は、ただただ絶句するばかりだった。
無意識に思い出したのは、八尾のこと。
しかしあの八尾に対してでも、ここまで嫌な気分にはならなかった。
鴻上に対して沸き上がってくるのは、憎たらしいなどといったまともな感情ではなく、もはや別の次元の感情。
この男と会話をしているということだけで、吐き気をもよおすような絶望感が襲ってくる。
「で、どうすんだよ夏目?
勝負を受けずにとっとと帰っちまうか?
俺はそれでも全然構わねぇぜ」
「……」
「さっさと決めろよな! 俺も忙しいんだからよ?」
奥歯を噛みしめ、ただただ鴻上を睨む優司。
「なんだ?
そんな顔してねぇでよ、早くどっちにするか言えって。
今決めねぇんなら、勝負はナシってことにするからな?」
「お前……こんなことしてまで勝って、それで満足なのか?」
「ああ、満足だね。
俺は勝てりゃあなんでもいい。
大体よ、まともにぶつかったってお前に勝てるわけねぇんだし」
「つくづく最低な野郎だな……」
「もういいっての、そういう言葉は。
今までの人生で散々言われてきたから、今更なんとも思わねぇよ。
そんなんでグラつかせようとしても無駄だぜ?」
「……」
「はぁ……じゃあいいや。
勝負すんのがイヤだってんなら、もうこの話は終わりな。
あとは、あの女が今後どうなるか楽しみにしてろよ。
つい最近までお前の心配をしてくれてたようなありがたい女が、どうやって堕ちていくのかをな。
じゃあな!」
そう言ってクルリと背を向け、そのまま飯島のいる喫茶店へと戻っていく鴻上。
「……待てよ!」
優司は、そんな鴻上を思わず呼び止めた。
ニタニタといやらし薄ら笑いを浮かべながら、飯島と入れ替わるように鴻上が喫茶店から出てきた。
「……ああ、お前の言ったとおりだったよ。
確かにお前と付き合ってて、しかもお前がヒモだってことまでご承知だったよ」
「だから言ったろ?
俺は18の時からこの道一本で5年も生きてんだぜ。ナメてもらっちゃ困るな。
女を手玉に取るのなんてお手の物なんだよ」
「……じゃあ、話は終わったね。俺は帰るよ」
「あん? 何言ってんだ?」
「何を言ってるも何も、そのままの意味だよ。
もう勝手にしてくれよ。飯島も、これ以上俺に関わって欲しくないみたいだし」
「へぇ~。
じゃあ、あの女がこのまま堕ちるところまで堕ちてってもいいんだ?
冷たいねぇ、昔の彼女だってのに」
「関係ないよ。
飯島から助けを求めてきてるならまだしも、そういうわけじゃないんだし。
むしろ邪魔者扱いされてるんだからさ」
「ふーん……。
まあ、そう言い張るなら別にいいけどよ」
「言い張るとかじゃないだろ? 事実、そうなんだから」
もう交渉には応じない、といった強い態度に出る優司に対し、軽くため息をついた後、鴻上がゆっくりと口を開く。
「まあ、俺がこんなこと言うのもなんなんだけども……」
「ん?」
「由香のやつ、結構最近までお前のこと気にかけてたみたいだぜ。
まあ、それを俺が強引に捻じ曲げてやったんだけどよ」
「バカか? そんな作り話にコロコロ騙されるわけないだろ」
「そう思いたいならいいけどよ。
まあ、考えてもみろよ。
さっきから、俺の言うことに一つでも嘘があったか?
俺は、女には嘘八百を並び立てるけどよ、男にはいちいち嘘なんざつかねぇ主義だ」
「そ、そんなことわかんないだろ……? 俺との勝負を成立させるためなら、嘘だってつくだろうし……」
「そもそもよ、夏目が原因で別れたんだろ?
大学行くとかほざいてたくせにスロにハマって、全然勉強しなかったらしいじゃん。
で、医者の道を踏み外しそうになってるお前を、あの女が必死で食い止めようとしてたのに、一向に聞き入れ
なかったんだってな?」
「飯島が、そんなことまで話したのか……?」
「ああ。アイツは話したがらなかったけど、俺があの手この手で聞き出したんだよ。
そりゃフラれるよな。せっかく必死で心配してくれてたのによ」
「……」
「そんなお前に対しても、最初は健気にかばってたぜ?
まあ、そこは俺の弁舌でひっくり返してやったけど」
「お前……とことんクズだな……」
「へっ! なんとでも言えよ」
「……」
「今はあんな風に俺しか見えなくなってるけど、それはすべて俺がそういうふうに躾けたからだ。
言わば、マインドコントロールされてるようなもんだな。
自分で言うのもなんだけどよ」
「……」
「そんなアイツを見捨てんのか?
大体俺は、お前とのスロ勝負に勝つ為だけにあの女を利用したんだぜ?
アイツにはなんら非はねぇ。ただ利用されただけなんだからな。お前のせいで。
それを平気で見捨てられるってんなら、話はそれまでだけどな」
「本当に汚ないヤツだなお前は……。
ここまで腐ったヤツとは初めて会ったよ……」
「もういいよ、そういう恨み言はさ。面倒くせぇだけだって」
優司は、ただただ絶句するばかりだった。
無意識に思い出したのは、八尾のこと。
しかしあの八尾に対してでも、ここまで嫌な気分にはならなかった。
鴻上に対して沸き上がってくるのは、憎たらしいなどといったまともな感情ではなく、もはや別の次元の感情。
この男と会話をしているということだけで、吐き気をもよおすような絶望感が襲ってくる。
「で、どうすんだよ夏目?
勝負を受けずにとっとと帰っちまうか?
俺はそれでも全然構わねぇぜ」
「……」
「さっさと決めろよな! 俺も忙しいんだからよ?」
奥歯を噛みしめ、ただただ鴻上を睨む優司。
「なんだ?
そんな顔してねぇでよ、早くどっちにするか言えって。
今決めねぇんなら、勝負はナシってことにするからな?」
「お前……こんなことしてまで勝って、それで満足なのか?」
「ああ、満足だね。
俺は勝てりゃあなんでもいい。
大体よ、まともにぶつかったってお前に勝てるわけねぇんだし」
「つくづく最低な野郎だな……」
「もういいっての、そういう言葉は。
今までの人生で散々言われてきたから、今更なんとも思わねぇよ。
そんなんでグラつかせようとしても無駄だぜ?」
「……」
「はぁ……じゃあいいや。
勝負すんのがイヤだってんなら、もうこの話は終わりな。
あとは、あの女が今後どうなるか楽しみにしてろよ。
つい最近までお前の心配をしてくれてたようなありがたい女が、どうやって堕ちていくのかをな。
じゃあな!」
そう言ってクルリと背を向け、そのまま飯島のいる喫茶店へと戻っていく鴻上。
「……待てよ!」
優司は、そんな鴻上を思わず呼び止めた。
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