ゴーストスロッター

クランキー

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【第4章】

■第71話 : 募る虚しさ

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喫茶店の入り口付近で佇んでいる優司の前に、飯島が一人で現れた。

「どうしたの優司君? 話って何?」

店内を覗き込むようにしながら優司が言う。

「鴻上は?」

「中で待ってるってさ。私一人で行けって言われたんだけど、何かあったの?」

「いや、その……」

どう切り出していいかわからずに口ごもる。

「ひ、久しぶりだよな、ホント!」

「ん……? そ、そうだね」

優司の目的がわからない飯島は、首を傾げながら、困ったように返答した。

「……で、話って何?」

「あ、ああ……」

少し間を取った後、優司は意を決して本題に入った。

「あ、あのさ! 飯島、本当に鴻上のことを好きなのか……?」

「え?」

「……」

「ど、どうしたの優司君……? なんでそんなことをいきなり……」

「いいから答えてくれよ。どうなんだ?」

「……もちろん好きよ。だから付き合ってるんでしょ。
 なんでそんな当たり前のことを聞くの?」

「…………」

「あの……さ。
 もし考えすぎだったら悪いんだけど、私はもう優司君のこと、なんとも思ってないから。
 だから、そういう話はちょっと……」

「はっ?
 ち、違う! 違うって!
 そういう意味じゃなくて……」

「……じゃあどういう意味?」

「そ、それはその……あの……」

「……?」

「あー! もう面倒くさいッ!
 こうなったらはっきり言うけどさ! 鴻上の野郎がどんな人間かは知ってるのかっ?」

「どんな人間って……普通の人でしょ?」

「普通……?
 飯島、お前はあいつを養ってんじゃないのか?」

「え……」

「あいつはそう言ってたぞ。『俺はヒモだ!』って」

「……まあ、そういうことになるかもね。彼の家賃も服代も飲食代も、一応全部私が受け持ってるし」

堂々と言い切った飯島に対し、失望の表情を浮かべる優司。

心のどこかでは『違う』と信じていたのに、本人の口からはっきりと肯定されてしまい、受け入れざるを得なくなった。

「そうか……本当だったのか……。
 でもさ、飯島はそれで本当にいいの? ただ利用されてるだけなんだぜ?」

「そんな言い方はやめて!
 何も知らないクセに……
 健自だって、その分いろいろと私の為に尽くしてくれるんだよ?
 凄い大事にしてくれるし。
 優司君と付き合ってた頃となんて、比較にならないくらいよ!」

「そ、そりゃ、あいつは商売でやってんだから、いくらだって優しくするに決まってんじゃん!
 あいつにとっては、ヒモってのは仕事だぞっ? そんなことくらい理解しろってっ!」

「うるさいわね! もうほっといてよ! アンタには関係ないでしょっ?」

「えっ……?」

「何よ。本当のことじゃん。無関係のアンタがしゃしゃり出てこないでよね」

飯島由香の浅はかさに対し、怒りのあまり、顔を真っ赤にしながら拳を握りしめ震えていた優司だが、最後の言葉で急激に冷静になっていった。

「……ああ、そうだな。そうだったよな。俺と飯島はもう無関係なんだよな。
 そんな俺がしゃしゃり出てくることないよな。
 お前がどうなろうと……風俗に叩き売られようと関係ないもんな」

「え? 風俗……? 何言ってるの……?」

「別に。
 でも、いつか俺の言ってた意味がわかる時がくるよ」

「……」

「もう行けって。
 で、さっさと鴻上を呼んできてくれ。じゃあな」

「なんなのよ……」

ぶつぶつと不平を言いながら、その場を立ち去る飯島。

その姿を黙って見送りながら、優司は言い知れぬ虚しさを感じていた。

(なんなんだよ……。俺は何やってんだ……。
 守ろうとしてる女から『しゃしゃり出てくるな』とか言われて、それで勝手にヘコんで……。
 クソッ! なんで俺がこんなに悩まなきゃいけないんだ……!
 もういい! あんな女、ほっとけばいいんだッ!)
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