69 / 138
【第4章】
■第69話 : 事態急変
しおりを挟む
(さっきまで俺がヘコみ倒してた公園か……。
こんなにすぐに戻ってくるとはね。
……いや、そんなことよりコイツだ。なんで俺のフルネームを知ってるんだ……?
何者なんだよ……。
偶然飯島から聞いてたのか……?
でも、前の彼氏のフルネームなんて、いちいち今の彼氏に言ったりするもんだろうか)
男の後ろを黙って歩きながら、必死に謎解きにかかる。
しかし、いくら考えても答えが出ない。
むしろ、謎は膨らむばかり。
そうこうしているうちに、公園に設置されているベンチ付近に到着し、その場で男が立ち止まった。
そして、クルリと振り返り、優司に向かって話し出した。
「いきなり悪かったな、夏目優司君」
「……あのさぁ、まず一つ聞いていい?」
「ん? 名前のこと?」
「そう。なんで俺の名前を知ってんの?」
「簡単だよ。前々から夏目君のことは知ってたからさ。
スロ勝負11連勝なんて凄いねぇ!」
「……なるほど。そっち絡みね。
ってことは、当然医者がどうのこうのっては関係ないんだよね?」
「うん。さすが察しがいいねぇ。
そういう洞察力がなきゃ、あんなバカみたいな連勝は築けないってか?」
「……いいからさっさと用件を言ってくれよ」
途端に不愉快になる優司。
もともと、飯島と会った時点からこの男のことは気に食わなかった。
容姿や身なりもそうだが、単純にこの男が、今でも少し心に引っ掛かっているモトカノの彼氏として登場したからだ。
要は、軽い嫉妬心からである。
併せて、この騙まし討ちのような呼び出し方にも腹が立ち、堂々と態度を変えてしまった。
「そんな顔すんなって!
アンタにとっちゃ良い話だぜ?」
「……」
「スロ勝負の相手探し、停滞してるんだってな?
そこでよ、俺が相手になってやろうと思ってさ。
な? いい話だろ?」
ヘラヘラしながらのスロ勝負依頼。
こういう輩にロクなのがいないことは、経験から身に染みてわかっている。
「何を企んでんだ?
どうせ、まともに勝負しようなんて思ってないんだろ?」
「おいおい~。
なんでそうなっちゃうかなぁ。
アタマっから人を悪者にすんのはよくないぜ~?」
「……」
「まあ、実際悪者なんだけどさ。ヘヘヘッ!」
大きくため息をついた後、優司は踵を返し、迷わずその場を立ち去ろうとした。
「お、おい! どこ行くんだよ?」
「帰るんだよ。
お前みたいな不愉快なヤツの相手はしてらんないし。
俺は忙しいんだ。じゃあな!」
腹立たしいのはこの男のことだけではなかった。
こんな男と、かつての彼女だった女が付き合っていることに言いようのない不愉快さを感じたのだ。
男が止めようとするのを振り切り、黙って公園の出口へ向かう優司。
だが、男は引き下がらなかった。
「おい、待てって言ってんだろ?
お前な、これは勝負の『依頼』じゃねぇんだぞ! 何のためにあの女を連れてきたと思ってんだ!」
この言葉に反応し、つい足を止めて振り返る優司。
「な、何言ってんだお前……?」
「まあ聞けよ夏目、お前にとっても損な話じゃねぇかもよ?」
「……」
不本意ながら、素直に引き返せる状況ではなくなってしまった。
やむなく、再び男と向き合う形になる優司。
「ふぅ、ったく。
そんな焦んなよ、メンドくせーなぁ。
ほら、立ち話もダリぃから、さっきのベンチ座ろうぜ?」
「……」
とりあえず、黙って男の言うことに従うことにした。
こんなにすぐに戻ってくるとはね。
……いや、そんなことよりコイツだ。なんで俺のフルネームを知ってるんだ……?
何者なんだよ……。
偶然飯島から聞いてたのか……?
でも、前の彼氏のフルネームなんて、いちいち今の彼氏に言ったりするもんだろうか)
男の後ろを黙って歩きながら、必死に謎解きにかかる。
しかし、いくら考えても答えが出ない。
むしろ、謎は膨らむばかり。
そうこうしているうちに、公園に設置されているベンチ付近に到着し、その場で男が立ち止まった。
そして、クルリと振り返り、優司に向かって話し出した。
「いきなり悪かったな、夏目優司君」
「……あのさぁ、まず一つ聞いていい?」
「ん? 名前のこと?」
「そう。なんで俺の名前を知ってんの?」
「簡単だよ。前々から夏目君のことは知ってたからさ。
スロ勝負11連勝なんて凄いねぇ!」
「……なるほど。そっち絡みね。
ってことは、当然医者がどうのこうのっては関係ないんだよね?」
「うん。さすが察しがいいねぇ。
そういう洞察力がなきゃ、あんなバカみたいな連勝は築けないってか?」
「……いいからさっさと用件を言ってくれよ」
途端に不愉快になる優司。
もともと、飯島と会った時点からこの男のことは気に食わなかった。
容姿や身なりもそうだが、単純にこの男が、今でも少し心に引っ掛かっているモトカノの彼氏として登場したからだ。
要は、軽い嫉妬心からである。
併せて、この騙まし討ちのような呼び出し方にも腹が立ち、堂々と態度を変えてしまった。
「そんな顔すんなって!
アンタにとっちゃ良い話だぜ?」
「……」
「スロ勝負の相手探し、停滞してるんだってな?
そこでよ、俺が相手になってやろうと思ってさ。
な? いい話だろ?」
ヘラヘラしながらのスロ勝負依頼。
こういう輩にロクなのがいないことは、経験から身に染みてわかっている。
「何を企んでんだ?
どうせ、まともに勝負しようなんて思ってないんだろ?」
「おいおい~。
なんでそうなっちゃうかなぁ。
アタマっから人を悪者にすんのはよくないぜ~?」
「……」
「まあ、実際悪者なんだけどさ。ヘヘヘッ!」
大きくため息をついた後、優司は踵を返し、迷わずその場を立ち去ろうとした。
「お、おい! どこ行くんだよ?」
「帰るんだよ。
お前みたいな不愉快なヤツの相手はしてらんないし。
俺は忙しいんだ。じゃあな!」
腹立たしいのはこの男のことだけではなかった。
こんな男と、かつての彼女だった女が付き合っていることに言いようのない不愉快さを感じたのだ。
男が止めようとするのを振り切り、黙って公園の出口へ向かう優司。
だが、男は引き下がらなかった。
「おい、待てって言ってんだろ?
お前な、これは勝負の『依頼』じゃねぇんだぞ! 何のためにあの女を連れてきたと思ってんだ!」
この言葉に反応し、つい足を止めて振り返る優司。
「な、何言ってんだお前……?」
「まあ聞けよ夏目、お前にとっても損な話じゃねぇかもよ?」
「……」
不本意ながら、素直に引き返せる状況ではなくなってしまった。
やむなく、再び男と向き合う形になる優司。
「ふぅ、ったく。
そんな焦んなよ、メンドくせーなぁ。
ほら、立ち話もダリぃから、さっきのベンチ座ろうぜ?」
「……」
とりあえず、黙って男の言うことに従うことにした。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる