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【第4章】
■第68話 : 女
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「ゆ、優司君……? だよね……?」
不意に話しかけてきた、男連れの若い女。
いまいち状況が飲みこめない優司は、足を止めて女の顔をじっと見つめていた。
連れの男は、無表情のまま突っ立っているだけ。
だが次の瞬間、何かを思い出したかのようにみるみる優司の表情が変わっていった。
「……い、い、い、飯島ッ?」
激しく狼狽する優司。
女に向かって指をさしながら、口をぱくぱくとさせている。
「やっぱり優司君だ……!
久しぶりだね! どうしたの、こんなところでっ?」
「え……あ、あの……」
「元気にしてた?
今って何してるの? 学生?」
矢継ぎ早に質問をぶつけてくる。
もはや女の方に動揺した素振りはない。
「学生……。う、うん……。まあ、そんなとこかな」
たいした理由もなく、咄嗟に嘘をついてしまう優司。
「へぇ、そうなんだぁ。
じゃあ、あの後大学行ったんだね?」
「いや、まあ、い、いろいろだよ!」
「……?」
「そ、そんなことよりさぁ、飯島は今何してんの?
……って、あ、ゴメン! き、聞くまでもなくデートだよなぁ?
あ、ち、違う、何してるってのはその、今何してるかとかじゃなくて、その、仕事とか……」
周りから見ていて恥ずかしくなるほどの焦り方をさらす優司。
この女性は、優司の高校時代の彼女である『飯島由香』だった。
付き合っていた8ヶ月間、優司は心底惚れきっていた。
しかし、残念ながらフラれて終わってしまったのだが。
完全に体勢を立て直し、もはや平常時と変わらない冷静さを取り戻している飯島由香。
逆に、未だ冷静さのカケラも見当たらない優司。
「それにしても本当に久しぶりね!
まさか、こんなところでいきなり会うなんて……
あ、そういえば勉強の方はどう? 無事、医者にはなれそう?」
「え……?」
「あ、愚問か!
大学行ってるってことは、無事医学部に通ってるってことだもんね?
悔しいな~、私があれだけ頑張って説得しても聞いてくれなかったのに」
ひたすらあたふたしていただけの優司だったが、この質問で急に冷めた顔になっていった。
「あれ……?
ごめん、聞いちゃいけなかった?」
「いや……大丈夫だよ。
まあ、そこらへんはうまいこと適当にやってるよ。
まだ修行中ってことでさ」
「そうなんだ。いろいろ大変そうね。
でも、そりゃそうよね! お医者さんなんて、誰にでもなれる職業じゃないし。
昔は、優司君のとこみたいに開業医やってる親なんてかっこいいと思ったけど、今思うと結構プレッシャーかもね。
優司君、一人っ子だし、後継がなきゃって思いで大変だっただろうし」
「……」
「ん? どうしたの?」
「……いや、なんでもないよ!
それよりさ飯島、今デート中なんだろ? ほら、そこの彼にも悪いじゃん!
また今度ゆっくり話そうよ!」
「え? ああ……。
そっか、そうだね! じゃあ、また今度ゆっくり!」
飯島は、そう言って笑顔で男の方へ振り返った。
すると、今まで黙って様子を見ていた男が話に入ってきた。
「別に俺のことはいいんだけどね。
それよりさ、優司……君だっけ?
今の話からすると、医者の卵なんだって?
それならちょっと話したいことがあるんだけど、もしよかったら少しだけいいかな?」
それまで、ただ黙って話を聞いていた飯島由香の彼氏と思しき男。
ここで急に、優司にコンタクトを取ってきた。
その男は、長身長髪で痩せ型、首や腕にはアクセサリー類を大量に纏っていた。
優司が好かないタイプの代表格のような格好だった。
しかし、話しかけてこられたからには無視するわけにもいかない。
「え? 俺に話……?」
「うん、そんなに長引かないからさ。頼むよ優司君。」
「……まあ、別にいいけど」
なんで俺が……と思いつつも、つい承諾してしまった。
いきなりのモトカノとの遭遇による動揺がまだ収まっていなかったというのも作用していた。
「ありがとう! 助かるよ!
じゃあ、ちょっとこっちに来て。
由香、お前はそこの喫茶店で待ってて。すぐ行くから」
「ええ~? なんで私は居ちゃいけないの?」
「いや、ちょっとさ、医学関連で相談したいことがあるんだよ。
俺の友達で医大目指してるヤツがいて、それについてちょこっとね。
お前にはつまんない話だしさ。
な、頼むよ。おとなしく待っててくれって!」
「え~……? もう、しょうがないなぁ!
じゃあ一人でおとなしく待ってる代わりに、チョコパフェ頼んどいていい?
健自君のオゴリで!
たまにはオゴってよね~」
「ったく……わかったよ!
じゃあ、それでいいから、ちゃんと待っててくれよな!」
「はぁ~い! じゃあ行ってきま~す!」
男の言うことに素直に従い、近くの喫茶店へと向かう飯島。
「ふぅ、やれやれ……。
さてと、じゃあそこの公園にでも行こうか、夏目優司君」
「ああ、わかっ…………え? あれ? い、今、俺のフルネームを……?」
男は優司の言葉を無視し、スタスタと黙って公園の方に歩いていった。
不意に話しかけてきた、男連れの若い女。
いまいち状況が飲みこめない優司は、足を止めて女の顔をじっと見つめていた。
連れの男は、無表情のまま突っ立っているだけ。
だが次の瞬間、何かを思い出したかのようにみるみる優司の表情が変わっていった。
「……い、い、い、飯島ッ?」
激しく狼狽する優司。
女に向かって指をさしながら、口をぱくぱくとさせている。
「やっぱり優司君だ……!
久しぶりだね! どうしたの、こんなところでっ?」
「え……あ、あの……」
「元気にしてた?
今って何してるの? 学生?」
矢継ぎ早に質問をぶつけてくる。
もはや女の方に動揺した素振りはない。
「学生……。う、うん……。まあ、そんなとこかな」
たいした理由もなく、咄嗟に嘘をついてしまう優司。
「へぇ、そうなんだぁ。
じゃあ、あの後大学行ったんだね?」
「いや、まあ、い、いろいろだよ!」
「……?」
「そ、そんなことよりさぁ、飯島は今何してんの?
……って、あ、ゴメン! き、聞くまでもなくデートだよなぁ?
あ、ち、違う、何してるってのはその、今何してるかとかじゃなくて、その、仕事とか……」
周りから見ていて恥ずかしくなるほどの焦り方をさらす優司。
この女性は、優司の高校時代の彼女である『飯島由香』だった。
付き合っていた8ヶ月間、優司は心底惚れきっていた。
しかし、残念ながらフラれて終わってしまったのだが。
完全に体勢を立て直し、もはや平常時と変わらない冷静さを取り戻している飯島由香。
逆に、未だ冷静さのカケラも見当たらない優司。
「それにしても本当に久しぶりね!
まさか、こんなところでいきなり会うなんて……
あ、そういえば勉強の方はどう? 無事、医者にはなれそう?」
「え……?」
「あ、愚問か!
大学行ってるってことは、無事医学部に通ってるってことだもんね?
悔しいな~、私があれだけ頑張って説得しても聞いてくれなかったのに」
ひたすらあたふたしていただけの優司だったが、この質問で急に冷めた顔になっていった。
「あれ……?
ごめん、聞いちゃいけなかった?」
「いや……大丈夫だよ。
まあ、そこらへんはうまいこと適当にやってるよ。
まだ修行中ってことでさ」
「そうなんだ。いろいろ大変そうね。
でも、そりゃそうよね! お医者さんなんて、誰にでもなれる職業じゃないし。
昔は、優司君のとこみたいに開業医やってる親なんてかっこいいと思ったけど、今思うと結構プレッシャーかもね。
優司君、一人っ子だし、後継がなきゃって思いで大変だっただろうし」
「……」
「ん? どうしたの?」
「……いや、なんでもないよ!
それよりさ飯島、今デート中なんだろ? ほら、そこの彼にも悪いじゃん!
また今度ゆっくり話そうよ!」
「え? ああ……。
そっか、そうだね! じゃあ、また今度ゆっくり!」
飯島は、そう言って笑顔で男の方へ振り返った。
すると、今まで黙って様子を見ていた男が話に入ってきた。
「別に俺のことはいいんだけどね。
それよりさ、優司……君だっけ?
今の話からすると、医者の卵なんだって?
それならちょっと話したいことがあるんだけど、もしよかったら少しだけいいかな?」
それまで、ただ黙って話を聞いていた飯島由香の彼氏と思しき男。
ここで急に、優司にコンタクトを取ってきた。
その男は、長身長髪で痩せ型、首や腕にはアクセサリー類を大量に纏っていた。
優司が好かないタイプの代表格のような格好だった。
しかし、話しかけてこられたからには無視するわけにもいかない。
「え? 俺に話……?」
「うん、そんなに長引かないからさ。頼むよ優司君。」
「……まあ、別にいいけど」
なんで俺が……と思いつつも、つい承諾してしまった。
いきなりのモトカノとの遭遇による動揺がまだ収まっていなかったというのも作用していた。
「ありがとう! 助かるよ!
じゃあ、ちょっとこっちに来て。
由香、お前はそこの喫茶店で待ってて。すぐ行くから」
「ええ~? なんで私は居ちゃいけないの?」
「いや、ちょっとさ、医学関連で相談したいことがあるんだよ。
俺の友達で医大目指してるヤツがいて、それについてちょこっとね。
お前にはつまんない話だしさ。
な、頼むよ。おとなしく待っててくれって!」
「え~……? もう、しょうがないなぁ!
じゃあ一人でおとなしく待ってる代わりに、チョコパフェ頼んどいていい?
健自君のオゴリで!
たまにはオゴってよね~」
「ったく……わかったよ!
じゃあ、それでいいから、ちゃんと待っててくれよな!」
「はぁ~い! じゃあ行ってきま~す!」
男の言うことに素直に従い、近くの喫茶店へと向かう飯島。
「ふぅ、やれやれ……。
さてと、じゃあそこの公園にでも行こうか、夏目優司君」
「ああ、わかっ…………え? あれ? い、今、俺のフルネームを……?」
男は優司の言葉を無視し、スタスタと黙って公園の方に歩いていった。
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