ゴーストスロッター

クランキー

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【第4章】

■第66話 : やめられない

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「へぇ、昨日、日高君たちとそんなことがあったんスか」

「ああ。
 あいつら、とにかく勝負すんなの一点張りでさ。
 話になんないからそのまま店を出てやったよ」

「……」

小島は、昨日の日高たちとの諍いの詳細を聞き、悲しそうな顔をしながらうつむいた。

それに気付き、慌ててフォローに入る優司。

「わ、悪かったよ小島……。
 ちょっとダークなトーンで話しすぎたな。
 もちろん、あの二人に対して本気でムカついたりしてるわけじゃないんだよ。
 なんだかんだで、俺のことを心配して言ってくれてるのはわかるしさ」

途端に明るい表情へと変わる小島。

「そ、そうッスよ!
 あの二人だって、もちろん夏目君にトップ獲ってもらいたいはずなんです!
 でも、やっぱりリスキーだし、それだったらこのままみんなで楽しくスロってた方がいいじゃないッスか!」

「……そうだな」

「でしょ?
 よかったぁ~、やっぱ夏目君は夏目君だ!
 最後はわかってくれるんスもんね!」

「ああ。悪かったよ。
 とりあえずは和気あいあいとやってくのもいいかもね」

「おお~っ! そうッスよ! まさにそうッス!
 スロ勝負は一旦やめて、皆でワイワイやりましょうよ!
 いやぁ、ホント良かった~! 日高さんたちも喜びますよ!」

「…………」



◇◇◇◇◇◇



23:00。

小島と別れ、一人マンガ喫茶へと向かう優司。

(……悪いな小島。
 でも、あの場でいくら言っても無駄だし、お前にも悲しい思いさせるしな)

言うまでもなく、優司はスロ勝負をやめることに対し納得などしていなかった。

あくまで方便として小島に合わせただけ。

(もう駄目なんだよ……
 ここまできたら、いくとこまでいかないと気が済まないんだ……)

悲愴な覚悟を滲ませる。

(でも、負けたらタダじゃ済まないのもわかってる。
 きっと、しばらくは誰とも会いたくなくなるだろうな。
 いや、しばらくどころか下手したら……
 なんなんだろう、この感情……。味わったことのない気持ちだ。
 スロ勝負始めた頃は、負けることにここまでビビってはいなかった。
 負けたって、これでスロ勝負終わりだな、くらいにしか思わなかったはずだ
 それなのに…………)

自分の中に芽生えだしている不思議な感情に戸惑う。

「勝負」とは、「負けること」よりも、「勝ち続けること」の方が遥かに負荷がかかるもの。
このことに薄々優司は気付きだしていた。

(とにかく、ここで引き下がることはできない。
 明日は乾を探しにいこう。
 それで、勝負を吹っかけてやるんだ)

軽く体が震えている。

できれば優司も、こんな神経を張り詰める勝負はやめたい。
それが本心なのだ。

しかし、やめられない。
別に無理矢理勝負なんてしなくてもよいと頭ではわかっているのに、やらなければ気が済まない。

理屈では、「もうこれ以上スロ勝負にこだわっても仕方がない、仲間たちと楽しくスロっていく方がいいに決まっている」とわかりつつも、この数ヶ月間ライフワークとしてきたスロ勝負生活をいきなりやめてしまうことに漠然とした不安・抵抗感があるのだ。

とにかく勝負しなければ気が済まない。
勝負できないまでも、勝負に向けて動いていないと気が済まない。
そんな心境だった。

自分のこの感情が奇異なものであると感じつつも、引き下がることがどうしてもできなかった。

(とりあえず早く寝なくちゃ。
 明日は乾を探すために歩き回ることになりそうだし。
 話によると、神出鬼没なヤツらしいからな……)
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