ゴーストスロッター

クランキー

文字の大きさ
上 下
56 / 138
【第3章】

■第56話 : 佳境

しおりを挟む
勝負ホール『ベガス』の主任である近藤との話を終え、ホールへ戻り、早速吉宗のシマをのぞきに行く八尾。

するとそこには、近藤の言う通り、確かに吉宗のシマに優司の姿があった。
しかも、いきなりBIGを引いている。

近藤から送られてきた吉宗のシマの設定表を思い出しながら、八尾が優越感に浸る。

(ふん、他愛もねぇな。
 これで決まりだ。まんまと6の台に座ってやがる。
 ……それにしても、設定6とはいえ、引くのがはえーなぁ。
 さすがは天下のヒキ弱スロッター夏目優司だな。出しちゃいけない勝負では出しまくるってか。ククク……)

再び自分が打っている巨人の星へと戻り、携帯でインターネットへと繋ぐ。

スロの機種情報がまとめられているサイトへ飛び、巨人と吉宗の機械割を比較した。

(なるほど、巨人の設定2の機械割が97.2%で、吉宗の設定1が94.4%か。
 吉宗は一発が怖かったから避けてたけど、今俺が打ってる巨人とじゃ3%近く機械割が違うんだな。
 それなら、さすがに移動だ。連チャンして焦ってる夏目の姿も見たいしな!)

下皿にある数百枚のコインを箱に入れ、それを持って吉宗のシマへ移動する八尾。

不思議そうな顔をしながら、その後を追う日高。

時刻は15:30……。



◇◇◇◇◇◇



「おっす! 俺もこのシマでお世話になるぜ~」

吉宗のシマで台を確保し、無駄に優司に絡みにきた八尾。

「……お前も吉宗にきたんだ。あの巨人の星、せっかく順調にヘコんでたのにな」

「いやぁ、やっぱもっとガッツリとヘコまないとよ!
 最後は、吉宗で直接対決といきますか!
 まあ、とりあえず出玉没収おめでとう!」

八尾が、優司に向けて手を出す。
だが優司はその手を無視し、台に目を向けたまま冷淡に言い放つ。

「どうも。まあ、お互い頑張ろうよ」

八尾は、まったく気にしない。

「おうよ! せっかく出玉も没収してもらえたしな! よかったね~夏目君!」

「ああ。助かったよ。」

「……」

優司ももう、いい加減安っぽい挑発には乗らないようになっていた。
それを悟り、さっさと自分の席へ戻る八尾。

(ちっ、つまらねぇ……)

八尾は、早速プレイを開始し、巨人から持ってきた400~500枚ほどのコインを吉宗に投入し始めた。

(まあいいさ。今は勝手に余裕かましてりゃいい。後でたっぷりと吼え面かかせてやる)

そして思考は、自然と勝った後のことへと移行していく。

(あとは、負けが確定した時に夏目と日高がどう出てくるか、が問題だな。素直に負けを認めるか、店と繋がるのはさすがに汚いとでもほざいてくるか……。
 ま、なんて言ってこようと関係ねぇけどな。
 これはケンカなんだ。汚えも何もねぇ。最低限の法律だけ守ってりゃいい。
 この勝負は、あの紙に書いてあることこそが法律だ。あの紙に書いてなきゃ、何してもOK。こんなのは常識だ。買収がおかしいなんて言うヤツの方がズレてる。あいつらもわかってると思うけどな)

改めて、自分の正当性を頭の中で固める八尾。

(なんにせよ、後は時間が過ぎてくれるのを待つだけだ。閉店時間が待ち遠しいぜ)



◇◇◇◇◇◇



「広瀬さぁん! どこ行くんですか?」

伊藤が走り寄ってくる。

伊藤。
優司の7戦目の勝負相手で、広瀬のグループの2番手的存在の男。

この男が広瀬に泣きついたことで、広瀬はやむなく優司と勝負することになった。

「よぅ、伊藤。
 今日はちょっと用事があるからさ、先にあがるよ」

「あれ? まだ夜の10時半ですよ? 閉店まであと30分もあるのに。
 ストック機打ってるならまだしも、今日の広瀬さん、ゴージャグの6ツモってましたよね。
 ノーマルAタイプの6なら、閉店までタコ粘りが基本なんじゃないんですか?」

「うん。本来はそうなんだけど、今日は、閉店まで打ってると間に合いそうにないからさ」

「え……? どっか行くんですか……?」

「ちょっくら、『ベガス』に行ってくるよ」

「え? 『ベガス』?
 …………あッ、今日ってもしかして…………」

「まあ、いろいろ思うところあってさ。他のヤツには言うなよ、面倒だから」

「……了解っす」

ニコっと笑い、そのままスタスタと歩き去る広瀬。

歩き去る広瀬の姿を黙って見送る伊藤。

(そうか。今日って、確か八尾と夏目の……。
 でも、なんで広瀬さんが……)
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...