ゴーストスロッター

クランキー

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【第3章】

■第33話 : パチスロ勝負、次の相手は……①

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「で、小島が話そうとしてたことってなんなの?」

グダグダになっている会話の中に割って入り、優司が小島に水を向けた。

待ってましたとばかりに小島が喋りだす。

「そう! それなんスけど、やべぇ~ッスよ駅前の『ベガス』!
 あのホール、マジ厳しすぎ!
 ちょっとゴールドXで変則押しやってたら、速攻注意されて出玉没収されちゃいましたよ……。
 今度やったら出禁とかも言われたし」

小島の言葉に、日高が意外そうな声を出す。

「へぇ~、あそこのゴールドXってまだ対策されてねーんだ?
 もうとっくに全国的に対策部品が配られてるはずなのにな。
 そもそも、対策版のゴールドXRが今は主流なのによ」

「そうなんスよ!
 理由はよく知らないんスけど、なぜかそのまま置いてあるんですよね。
 しかもまだ攻略法が使えちゃうし。
 で、なんだか懐かしさもあって攻略法を使ってみたんスけど、30分くらいやったとこで主任みたいのが来て、出玉没収ッスよ!
 ったく、だったらさっさとXRに替えろってのに!」

「まあ、名物的なモンにしようとでも思ってそのままにしてんのかもな。
 ほとんど『XR』なのに、ウチだけ『X』ですよ、みたいな。
 もしそうだとしたら、かなりズレた感覚だけど。
 そんなモン、誰も重宝がらねぇっての」



当時、ゴールドXという機種に実際に通用した攻略法。
2003年7月中旬頃に、インターネットで爆発的に広まったものである。

攻略法の内容は、ある一定の手順を踏むことにより地味にコインが増え続ける、というもの。

丸一日行えば、5000枚(等価交換ならば10万円)以上のコインを獲得できたのだ。

ただし、変則押しのペナルティにより、PGG・SGGなどのボーナスの権利はすべて放棄することになる。 

この攻略法は、ネット上に出回ってからわずか二日ほどで終わった。 
シマ閉鎖 or 店員張り付きにより、一切攻略法が使えなくなったのだ。



話は戻る。



「まあ、落ち着きなよ小島」優司が諭すように言う。「今更そんな古臭い攻略法を使おうとした方が悪いんだよ。
 大体、没収されたコインなんてタカが知れてるだろ?
 普通に立ち回って勝ちなって」

「うーん……そりゃそうッスけど……」

「まあいいじゃねえか!
 夏目も来たことだし、そろそろ『あの話』をしようぜ」

日高が小島の話をさえぎり、本題に入ろうとする。

その言葉を聞いた優司は、今までの弛緩した気分がピリリと引き締まった。

「……俺の勝負相手のことだよね?」

「ああ、やっと決まったぜ。
 小島が見つけてきてくれたよ。
 思ったよりも日数かかったよなぁ。すぐ決まると思ってたんだけど、結局3日かかったもんな」

「ホント、気が気じゃなかったよ。
 もし決まらなかったどうしようと思ってさ……。
 相手がいなくちゃ、話にならないしね」

「まあ、気持ちはわかるけどな。
 でも、焦ってもしょうがないんだし、今後はもっとのんびり行こうぜ!
 そうじゃなきゃ、せっかく自由なスロ生活をやってる意味がないだろ?
 こんなこと、限られた期間しかできないんだしさ。
 社会に出て働き出すまで、せめてこの時間を満喫しようぜ!」

「……まあ、そうなんだけどさ。
 とにかく、勝負相手が決まって一安心だよ! 」

「でも夏目君、相手が決まっただけでそんなに安心してる場合じゃないんじゃないッスか?
 負けたら30万ッスよ?
 勝負なんて水物なんだし……」

優司がすぐに切り返す。

「わかってるよ。でも、勝負しなきゃ金は増えないだろ?
 このまま何も動きがなかったらジリ貧なんだ。
 だったら、まずは勝負相手が決まってくれないと困るじゃん」

「ま、まあ確かに……」

「それに、俺は負ける気なんてしないしね。設定読みなら俺が勝つよ。
 大体、負けたら即引退なんだから、やられるわけにもいかないしさ」

自信たっぷりに言い放つ優司。

「夏目君のウデは信用してるッスけど……」

「まあいいじゃん小島!
 それで、俺の勝負相手はどんな感じなの?」

「あ、それなんスけど、次の相手は……」

優司の問いに小島が答えようとするも、日高が口をはさむ。

「ちょっと待った。
 それは後でゆっくりと小島から聞きな。
 先に、いろいろと話しておきたいことがあるんだ。
 俺の中での今日のメインの話はこれだから」

そう言って、ポケットから折り畳まれた地図のようなものを取り出す日高。

「この街でスロ勝負してく、って決めたなら、今以上にこの街について詳しく知っておく必要がある。
 ちょっと前にこの街について説明した時は、なんだか興味なさそうに聞いてやがったしな」

「……ちょっと前に説明した?」

「ああ。お前が遼介と勝負する前だよ。
 軽く話したろ?
 乾とか神崎とかの話」

「……ああ! なんかあったね、そういえば。
 そっかぁ、興味なさそうにしてるのバレてたのか。ははは……」

「バレバレだよ」

日高は、呆れたように笑った。
バツが悪そうに頭を掻いた後、ぺこりと頭を下げる優司。

「わ、悪かったよ……。
 でも、今回は真剣に聞くから! いろいろ教えてよ!」

「ハッ! 現金なヤツだな」

日高は、再び呆れたように笑った。
しかし、それでいてどこか楽しそうでもあった。
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