ゴーストスロッター

クランキー

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【第2章】

■第25話 : 優司の自信

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勝負開始から4時間が経過した14:00。

黙々と打ち続けていた優司のもとへ、真鍋がやってきた。
自分の出玉の様子を見に来たのだろう。

優司の頭上にあるドル箱はカラで、下皿には十数枚のコイン。
いまだに現金投資中だった。

それがわかったからか、真鍋がにんまりしながら話しかけてきた。

「よぉ、調子悪いみたいだな。まだ投資中じゃねぇか。
 だから言ったのによ。旧台コーナーは危険だって」

しかし優司は、特に焦ってはいなかった。

「いや、別に調子悪くもないよ。
 むしろ、俺的には今んとこいい感じだし」

「え? そ、そうなのか?
 ……あッ! もしかして、BIG中のベル出現率か?
 そういえば設定差があったんだよな?」

サンダーVは、BIG中のベル出現率に設定差が設けられていて、高設定ほどハズレが少なく、ベルの出現率が高い。

とはいえ、2~3回のBIGで判別できるようなものではなく、最低でも10回程度はBIGを引かなければ参考にできるようなデータは集まらない。

問い掛けに反応せず淡々と打ち続けていると、真鍋は優司の頭上にあるデータ機器を勝手にいじりながら履歴をチェックし始めた。

「総回転数2500GでBIG7回のREG6回か。
 とても設定6には見えないけどな。それどころか、ボーナス出現率は設定1以下だ」

「俺のヒキだから参考にはならないよ」

「へっ、究極のヒキ弱ってやつか。
 そんなこと、ホントにありえるのかよ。
 設定6に座っても負け続けるなんて神業だぜ?」

うるさい奴だ、とうんざりしながら、下皿のコインがなくなったので1000円札をサンドに投入する。

すると真鍋は、なぜか優司の隣りの席に座った。

不意に隣りに座ってきた真鍋に対し、やや身構える優司。

「……なあ、夏目。一つ聞いてもいいか?」

先ほどまでのふてぶてしい態度とは打って変わって、やけに元気のない声を出した。

意外に思いながら、おそるおそる優司が返事をする。

「きゅ、急に何……?」

「……あのさあ、例えば、あくまで例えばだけどよ、友達と何かで勝負して負けたとするだろ? で、負けた奴が卑屈になっちまったとして、勝った方は負けた奴のことをどう思うんかな?」

優司は、瞬時に察した。
日高とのことを言っているんだな、と。

だが、あえてそのことは黙っておくことにした。

「……さあ。友達っていってもいろいろあるからね。
 知り合って数週間の友達もいれば、ガキの頃からの友達もいるし。
 でも、長い付き合いの友達とかだったら、いちいちそんなことで嫌ったり憎んだりはしないんじゃないの?」

「……」

真鍋は、しばらく黙り込んだ後に、再び口を開いた。

「まあいいや。
 仮にそれで仲が悪くなったとする。
 でも、その原因は勝負に負けたことにあるんだから、もう1回勝負して勝てば、関係を修復できると思わないか?」

(もしや……)

ピンときた。
不思議に思っていたことが、優司の中で一気に解決へと向かっていった。
なぜ真鍋はここまで執拗に自分との勝負を迫ってきたのか。
その謎がだいぶわかってきたのだ。

日高に勝った自分。
そんな自分に真鍋が勝てば、再び日高と対等になることができ、日高と元の関係に戻るきっかけを掴めるかもしれないと考えているのだろう、と。

今まではてっきり、自分との勝負に勝って日高の鼻を明かしてやろうとしているのだと思っていた。
ところがそうではなく、逆に元の友人関係に戻りたがっているのだとわかり、少し驚きを感じた。

しかし優司は、何かに気付いた様子などおくびにも出さず、無表情のまま返答した。

「なんとも言えないな。そういう状況になったことがないから」

「そっか。わかった。
 ……なんでもねぇ。今のはさっさと忘れろ」

「……」

「よし、じゃあ勝負の続きだ!
 いまんとこ、俺の台はかなり6濃厚だぜ。まだ1回も600G越えのハマリがないからな!」

ボンバーパワフルの場合、設定6ならば極端に600G越えのハマリが少ない。
丸1日打っても、2~3回くらいしかないのだ。

うまくいけば、1度も600以上ハマらずに終わることもある。

「へぇ、そうなんだ。6濃厚か。そりゃ良かったね。
 だけどさ、日高もそうやって最初は余裕だったよ。でも、最期には形勢逆転して、俺が勝った。
 だから、あんまりいい気にならない方がいいよ」

「ふん。言ってろよ。
 今回はどう考えても俺の勝ちだ。
 ボンパワは、俺以外ガンガン600G越えてんだぜ?
 俺の台は間違いなく6だ!」

そう言い捨てて、自分の席へ戻っていく真鍋。

だがその言葉を聞いても、優司には一切焦りが生まれなかった。

(仮に真鍋の台が6だったとしても、俺に負けはない。
 俺のサンダーは、ほぼ間違いなく6なんだから)

台の側面部分を見つつ、自分の負けがないことを再確認した。 
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