ゴーストスロッター

クランキー

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【第2章】

■第16話 : 真鍋遼介

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ゲキアツである、設定5・6確定の花火百景を回し始めて約5時間。

(……閉店まで残り10分か。
 この1000円で最後にしよう。
 まさか、こんな時間でまだ再投資させられるなんて……)

結局、何も変わる事はなかった。

優司は優司。
人智を越えたヒキ弱は健在だったのだ。

稼動5時間、総回転数3600G、投資35000円、回収ゼロ。
これが、今日の優司の戦績だった。

(やっぱダメなのか……
 まあ、なんとなくわかっちゃいたけど)

もはやこういう展開になっても、イラつく気にもなれなかった。
優司にとっては、こういう展開が日常なのだ。

イラつきはしないが、やはりショックは受けた。
自分はスロでまともに勝つことはできないんだ、ということを再認識させれらたのだから。

今さっき投資した1000円分のコインを使いきり、ボーっとしながら席を立ち、そのまま出口へ向かってフラフラ歩き出すと、

「イテッ!」

店内の喧騒に負けないほどの大声が、優司の耳に飛び込んできた。

同時に、優司は違和感を感じた。
どうやら、近くにいた4人組の男のうちの一人の足を踏んでしまったようだ。

「あ! す、すみません!
 ついボーっとしてて……」

「いってぇなぁ……」

謝ったのにも関わらず、足を踏まれた男はまだ不愉快そうにしている。

「だ、だから謝ってるじゃないですか。
 ホントすみません」

「……まあいいや。さっさと行けよ」

(なんだよコイツ……
 こっちは素直に謝ってんのにさ)

相手の横柄な態度にやや苛立ちを覚えたものの、一応自分が悪いんだし、と無理矢理自分を納得させ、そのまま店の外に出ようとした。

その時だった。

「あッ!」

足を踏まれた男の連れの中の一人が、突然叫んだ。

「どっかで見たと思ったら、コイツあれですよ。例の、日高とスロでやりあったっていう……」

「何だと? コイツがか?」

「間違いないですよ。
 この前居酒屋で、日高たちとこの男が飲んでるとこをバッチリ見たんで」

「おい! ちょっと待て!」

せっかく厄介なやりとりから抜け出せたと思うも、すぐさま捕まってしまった。

「お前、本当に光平と勝負して勝ったヤツか?」

「光平……?」

「日高光平だよ! 本当にお前なのか?」

(ああ、そういえば日高って、光平っていう名前だったな。
 ってことは、コイツは日高の友達か何かかな?)」

最近頻繁に会うようになったとはいえ、下の名前というのはなかなか覚えられないものだ。

「ああ、そうですよ。
 キミは日高の友達?
 それだったら、ここでこんな口論するようなことはないと思うんだけど」

優司のこの言葉に、顔を真っ赤にしながら男は大声を出した。

「あっ? そんなこと一言も言ってねぇだろうが!
 余計なこと言わねえで、聞かれたことにだけ答えろ!
 お前は本当に、日高光平と勝負して勝った『夏目優司』なんだな?」

「だ、だからそうだって言ってるじゃないですか……」

「よぉし、ちょっと外に出ようぜ」

優司は強引に腕を掴まれ、ホールの外へと連れ出された。



「こんなに早く会えるとは思ってなかったぜ。嬉しいよ、ほんと」

店から少し離れた裏通りへ出るやいなや、不敵な笑いを浮かべながら話す男。
優司は、男4人に囲まれていた。

「とりあえず名乗っておくよ。
 俺は真鍋ってんだ。真鍋遼介まなべりょうすけ。よろしくな」

「……で、その真鍋君が俺に何の用なの?」

「お前、あの光平に設定読みのスロ勝負して勝ったんだってな?」

「まあ……一応」

「そんな謙遜すんなよ。
 あれだけスロバカなあいつに勝つってのはなかなかのモンだぜ?」

「そりゃどうも……」

「でさ、そのついでと言っちゃなんだけど、俺とも勝負してくんないか?」

「えっ?」

「『え?』じゃねぇだろ!
 光平相手にやったことと同じ事をすりゃいいだけだよ。
 30万円を賭けて、俺と設定読みで勝負してくれりゃいいんだ。簡単だろ?」

「…………」

真鍋の言葉を受けて黙りこくる優司。

「深く考えることねぇよ。
 そんな勝負仕掛けるくらいだから、自分の設定読みに自信があるんだろ?
 あんな『エース』みたいなヌルい店で勝負して勝ったって、なんの自慢にもならねぇぜ?」

「別に、自慢するつもりで勝負したわけじゃないよ。
 いろいろと事情があったからね」

「まあそんなことはいいからよ、とにかく俺とも勝負しようぜ!
 もちろん、仇討ちとかそんなダルいことじゃねぇからさ。
 ただ、光平に勝ったお前と勝負したいだけなんだよ。いいだろ?」

「…………」

再び貝になる優司。
優司には、この男が何を目的として自分にスロ勝負を吹っかけてきてるのかがわからなかった。

ただ刺激に飢えているだけなのか、それとも日高に勝ったことに何か問題があるのか。

「あのさ、日高と真鍋君との関係はなんなの?
 少なくとも、まったくの他人じゃないんでしょ?」

「……まあな。まったくの他人ってわけじゃねぇな。
 そのへんのところは光平から詳しく聞けよ。
 とりあえず今は、勝負を受けるかどうかだけ返事をしてくれ」

当然、優司としてはこんな勝負を受けたくはない。

日高との勝負はやむを得ずやった感があるが、この男と勝負することには何もメリットがないのだから。
日高とは、「ただ現金が欲しい」という理由で勝負したわけではない。

しかし真鍋の様子を見る限りでは、ここで『やりたくない』とは言えるような雰囲気でもなかった。

おそらく、『勝負する』という言葉を口にしない限り、この場から解放してくれないだろう。

「……イヤだって言っても聞いてくれないんでしょ?」

「おお! よくわかってんじゃん!
 俺は、こうと決めたらその通りに行動しないと気が済まないタチでね。
 まあいいじゃん? 俺とだったら、より一層、勝負のやりがいがあると思うぜ。
 まあ、イヤだっつったら殴ってでもやらせるけどね」

「…………」

「で、どうする? やるか?」

「……目的はなんなの?」

「あん?
 そんなモン決まってんじゃん。光平に勝ったヤツに勝てば、俺はその上をいく男ってことになるだろ?
 おまけに金まで手に入る。言うことないじゃん」

「そんなに日高に恨みがあるの?」

「だから、そのへんはアイツに聞けって!
 とにかく、勝負するよな?」

人気ひとけのない場所で男4人に囲まれている状況、そして真鍋の強引さ。
もはや、断れるような状況ではなかった。 
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