ゴーストスロッター

クランキー

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【第2章】

■第15話 : 食っていくための道、模索

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(あれ……?
 俺、なんでこんなトコにいるんだろう……)

気付くと、そこは見慣れない街並み。
状況がわからず、優司はただキョロキョロと周囲を見渡した。

その時だった。

「優司君!」

背後から、懐かしい声が聞こえた。

「……え? ゆ、由香ゆか……?」

そこにいたのは、優司が初めてまともに交際した相手、飯島由香。
優司の告白がきっかけで、高校2年の冬から付き合い始め、約8ヶ月付き合った後に別れた女だった。

「な、なんでこんなとこに………? つうか、ここはどこなんだ……?」

「そんなことはどうでもいいじゃない。
 それより、私は話があってここに来たの」

「話……?」

「うん……」

顔を赤らめながらうつむく飯島由香。
その様子を見て、どんどん期待と興奮の度合いが高まる優司。

それもそのはず、別れた時、優司はまだ未練タラタラだったのだ。
なんなら、今でも「できればヨリを戻したい」とすら考えていた。



優司は、美形とまではいかないものの、決して悪くはない容姿の持ち主。
その上、勉強・運動と何をやらせても卒なくこなせるので、決してモテない方の人間ではなかった。

しかし、なんでもそこそこ上手くこなせてしまう反面、「これだけは人に負けない」というものがなかった。

要は器用貧乏。
一見なんでもできるように見えるが、裏を返せば強烈な強み・魅力を持たないということにもなる。

こんな優司に、女の子も最初こそ好印象を持つが、しばらくするとなんとなく飽きられてしまう。
今までも、何度か軽く付き合ったことはあるが、由香とのように半年以上も付き合ったのは初めてのことだった。

では、そんな彼女とどうして別れてしまったのか?

それは、優司が「大学へ行く」と口では言いながらも、全く勉強しようとせず、由香との遊びやパチスロに没頭していたからだった。

奇しくも、由香と付き合った直後に覚えてしまったパチスロ。

覚えたての頃の優司は、今現在悩まされているような病的なヒキ弱はなく、高設定に座ればしっかりと勝てていたため、パチスロへののめり込み方は激しかった。

基本的に、言動と行動が一致しない男を好む女は少ない。
「大学に進学する」と言っているのに、全く勉強せずにスロばかり打っているようでは、愛想をつかされて当然なのだ。



何かを期待させるような由香の態度を見て、たまらず自分から話を切り出す優司。

「話って……
 もしかして、俺ともう一度、みたいなことがあったり……?」

「……うん」

早鐘を打つ心臓。紅潮する顔。
首のあたりがゾワゾワっとし、自然と顔がニヤけてしまう。

「ほ、ほんとにっ?」

「……うん。やっぱり私、優司君じゃなきゃダメみたい」



◇◇◇◇◇◇



(……だよな。やっぱそうだよな。分かっちゃいたけどさ)

朝目覚めるとそこは、最近常宿となっているマンガ喫茶。
さっきまでの出来事が、すべて夢だったと気づくのにそう時間はかからなかった。

(せめて夢ぐらいは楽しい方がいいなんて言うけど、あれは嘘だな。
 逆に虚しいよ……)

見た夢が楽しければ楽しいほど、覚めた時がつらい。

(ま、いいや。
 今の俺にはなんの関係もないことだ)

ズルズルと余計なことを考えていても虚しいだけ。
もはや、居場所すら分からない元彼女のことを考えてもしょうがないこと。

優司は、すぐに割り切った。

(そっか。昨日も日高たちと飲んで泥酔したんだっけ。
 結局何時頃寝たんだろう。
 ……って、そんなことより、早くこの先どうするか決めないと)

自分は今後どうしていくべきなのか。
このことについて散々悩んでみてはいるが、一向に答えは出なかった。

(せっかく細かいホールデータをまとめたノートもあるんだし、やっぱりもう1回だけまともにスロで食おうとしてみようかな。
 この間の日高との勝負で北斗の6を打った時も、ショボかったとはいえ一応プラス収支にできたわけだし)

確かに、一応はプラスになっていた。
たったのプラス4000円だが……



◇◇◇◇◇◇



日も暮れだした頃、優司はあるホールへと入っていった。

しばらくホール内をウロウロしていると、なんと偶然にも『設定5・6確定』の札がついた花火百景が目の前で空き台になった。
履歴的にも、完全に高設定の挙動を示していた。

当然、迷わず座る優司。

(よくこんな台が空いてたな!
 こんなあっさりと百景の5・6確定台が取れるなんて……本当にツイてる!設定5でも、機械割は124.2%だぞ。
 これはもしや……流れが変わったんじゃないか? 普通に勝てるんじゃないか?)

自然と笑みがこぼれる。

(よくよく考えてみると、俺って『ヒキ弱』って部分を除けばそこそこ運がいい方なんだよな。何事に対しても。
 家を出るまでは経済的に恵まれてる環境だったし、受験も苦労したことないし。
 今だって、サクっと百景の5・6に座れたりしたし。
 なんでヒキだけはダメになっちゃったんだろう……?)

ふと湧き出る疑問。

だが、この疑問を解くようなヒントはどこにもなかった。
こればっかりは、まさに『神のみぞ知る』というような問題なのだから。

(まあいいや。今はそんなことはどうでもいい。
 とりあえずはこの百景で運試しだ!
 閉店まで5時間もないけど、百景の5・6なら5時間近く回せれば充分!)

演出などフルキャンセルで、とにかく回転数を稼ぐことに集中しながら回す優司。

すると、投資わずか5000円で見事BIGを手にすることに成功。

(よし! 俺にしてはかなり早い喰い付きだ!
 目標は閉店までに2000枚!
 多くは望まない、2000枚あれば充分だ!)
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