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【第1章】
■第4話 : 灯る希望
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翌朝、優司は待ち合わせの時刻である朝9時にホールへ到着した。
開店待ちをしている人間がすでに5人ほど。
そして、その中にしっかりと藤田も並んでいた。
(よかった……
唯一の不安は、藤田が心変わりしたり、寝坊とかして来ないことだったからな)
最大の懸念点が解消されたことにより、安堵の表情を浮かべる優司。
藤田の方も優司を発見し、にこやかに話しかけてきた。
「おーい! 夏目君! こっちこっち!」
「やあ、早いね。絶対俺の方が早く着くと思ったのに」
「だって北斗の6が打てるんだろ? もう楽しみで楽しみでよ!」
(こいつ……俺が台番言う前から、もう北斗打つ気でいやがる。
パチスロっつったら北斗しか頭にないのか……?
しかも、設定6に座れるもんだと確信してるし)
パチスロ北斗の拳。
言わずと知れた、パチスロ史上最大のセールスを誇るモンスターマシンで、多くのスロッターを虜にし、中毒者を量産した。
そんな台の最高設定が打てる可能性が高いと思い込んでいるのだから、藤田が興奮するのも無理はない。
しかし優司は、藤田がはしゃいでいる様子を目の当たりにし、どこか不愉快な気持ちになった。
最初に会話を交わした時から、藤田に対してあまり良いイメージは持っていなかったからだ。
立ち居振る舞いや、甘い誘いと見るやあっさりと赤の他人を信用するその浅はかさなどに、嫌悪感を抱いていたのだ。
今も、現時点では設定読みの実力があるのかどうかもわからない優司の読みを完全に信じ込んでいる。
この単純さに、つい呆れてしまった。
とはいえ、こういう単純さや浅はかさがなければこの計画はすんなり進まなかった、という側面もある。
藤田に断わられたら、また別の人材を探さなければならなかったのだから。
そう考えると、藤田の性格に救われたとも思える。
微妙な感情を抱きつつも、藤田の性格のおかげで順調に計画が進んでいるし、もともと北斗の6を打たせるつもりだったので、気にしないようにして話を続けた。
「うん。もちろん北斗を打ってもらうよ。当然、設定6ね。この店で6ツモるなんて、俺にとってはなんでもないことだよ」
「おお~! 言うねぇ! 俺にはさっぱりわかんねぇんだけどな。――んで、台番は?」
「……ちょっと耳貸して」
周りに聞こえないよう、小声で狙い台を告げる優司。
「なるほど。わかった! 俺はその台を押さえて、ただ1日ブン回してればいいんでしょ?」
「そう。設定6であることはまず間違いないと思うから、いちいちレア小役数えたりBB後の高確移行を数えたりしなくていいよ。かなり自信あるから。設定判別なんてする時間があるなら、その分ブン回しちゃってよ」
確証を得るためには、できれば設定判別もした方がよいことは優司もわかっていた。
いくら読みに自信があるとはいえ、100%ではないのだから。
しかしこの男の性格を考えると、細かい作業はあまりさせない方がいいとの判断であえてこう言った。
「了解! それじゃ、台を取ったら何も考えずにブン回すよ!」
「ああ、頼むよ」
「じゃあ後は俺の方でやっとくから、どっかで適当に時間潰してていいぜ。気になるようなら、ちょこちょこ様子見に来てもいいけどよ」
上から目線に軽くカチンときた優司だが、黙って頷いた後、その場から静かに立ち去った。
ここからの優司の行動パターンとしては、いつもならホールを徘徊してコインを拾い、ついでに各ホールの情報を集めにかかるところだが、さすがに今日はそんな気分になれなかった。
この徘徊生活を始めてから、財布の中身が5000円を超えることなどまずありえなかったのに、この勝負で藤田がそこそこのプラスを出してくれれば、久々の1万円札を手にできるかもしれないのだ。しかも何枚も。
今の優司にとって、1万円を越える金は夢のような大金だ
(1万円札か…。久しく見てないなぁ。金が入ったら何をしよう?)
あてもなく歩きながら、ついついニヤけてしまう。
(まずはメシだな。腹いっぱいメシが食いたい! 牛丼に生卵かけてガッつきたい!
くぅ~! たまんないね!
……って、スケールが小さいなぁ、俺。せめてファミレスくらいは目指さないとね!
ああ~、早く夜がこないかな。
夜の10時には打ち終わるとして、遅くとも11時頃には豪勢なメシにありつけてるはずだ。
う~ん、楽しみすぎる!)
ここで得る金などまだまだ通過点に過ぎない、と考えていた優司だが、今の時点ではそんな考えは吹き飛んでいた。
まるで、1万円札を数枚手にすることが最終目標であるかのように。
(藤田、か……
あの悪ぶってる感じが鼻につくし、いろいろ気に食わない奴だけど、今日ばかりは頼りになるな。
あいつが北斗の6を打てば、まず負けないはずだ。
頼むぞ藤田……)
開店待ちをしている人間がすでに5人ほど。
そして、その中にしっかりと藤田も並んでいた。
(よかった……
唯一の不安は、藤田が心変わりしたり、寝坊とかして来ないことだったからな)
最大の懸念点が解消されたことにより、安堵の表情を浮かべる優司。
藤田の方も優司を発見し、にこやかに話しかけてきた。
「おーい! 夏目君! こっちこっち!」
「やあ、早いね。絶対俺の方が早く着くと思ったのに」
「だって北斗の6が打てるんだろ? もう楽しみで楽しみでよ!」
(こいつ……俺が台番言う前から、もう北斗打つ気でいやがる。
パチスロっつったら北斗しか頭にないのか……?
しかも、設定6に座れるもんだと確信してるし)
パチスロ北斗の拳。
言わずと知れた、パチスロ史上最大のセールスを誇るモンスターマシンで、多くのスロッターを虜にし、中毒者を量産した。
そんな台の最高設定が打てる可能性が高いと思い込んでいるのだから、藤田が興奮するのも無理はない。
しかし優司は、藤田がはしゃいでいる様子を目の当たりにし、どこか不愉快な気持ちになった。
最初に会話を交わした時から、藤田に対してあまり良いイメージは持っていなかったからだ。
立ち居振る舞いや、甘い誘いと見るやあっさりと赤の他人を信用するその浅はかさなどに、嫌悪感を抱いていたのだ。
今も、現時点では設定読みの実力があるのかどうかもわからない優司の読みを完全に信じ込んでいる。
この単純さに、つい呆れてしまった。
とはいえ、こういう単純さや浅はかさがなければこの計画はすんなり進まなかった、という側面もある。
藤田に断わられたら、また別の人材を探さなければならなかったのだから。
そう考えると、藤田の性格に救われたとも思える。
微妙な感情を抱きつつも、藤田の性格のおかげで順調に計画が進んでいるし、もともと北斗の6を打たせるつもりだったので、気にしないようにして話を続けた。
「うん。もちろん北斗を打ってもらうよ。当然、設定6ね。この店で6ツモるなんて、俺にとってはなんでもないことだよ」
「おお~! 言うねぇ! 俺にはさっぱりわかんねぇんだけどな。――んで、台番は?」
「……ちょっと耳貸して」
周りに聞こえないよう、小声で狙い台を告げる優司。
「なるほど。わかった! 俺はその台を押さえて、ただ1日ブン回してればいいんでしょ?」
「そう。設定6であることはまず間違いないと思うから、いちいちレア小役数えたりBB後の高確移行を数えたりしなくていいよ。かなり自信あるから。設定判別なんてする時間があるなら、その分ブン回しちゃってよ」
確証を得るためには、できれば設定判別もした方がよいことは優司もわかっていた。
いくら読みに自信があるとはいえ、100%ではないのだから。
しかしこの男の性格を考えると、細かい作業はあまりさせない方がいいとの判断であえてこう言った。
「了解! それじゃ、台を取ったら何も考えずにブン回すよ!」
「ああ、頼むよ」
「じゃあ後は俺の方でやっとくから、どっかで適当に時間潰してていいぜ。気になるようなら、ちょこちょこ様子見に来てもいいけどよ」
上から目線に軽くカチンときた優司だが、黙って頷いた後、その場から静かに立ち去った。
ここからの優司の行動パターンとしては、いつもならホールを徘徊してコインを拾い、ついでに各ホールの情報を集めにかかるところだが、さすがに今日はそんな気分になれなかった。
この徘徊生活を始めてから、財布の中身が5000円を超えることなどまずありえなかったのに、この勝負で藤田がそこそこのプラスを出してくれれば、久々の1万円札を手にできるかもしれないのだ。しかも何枚も。
今の優司にとって、1万円を越える金は夢のような大金だ
(1万円札か…。久しく見てないなぁ。金が入ったら何をしよう?)
あてもなく歩きながら、ついついニヤけてしまう。
(まずはメシだな。腹いっぱいメシが食いたい! 牛丼に生卵かけてガッつきたい!
くぅ~! たまんないね!
……って、スケールが小さいなぁ、俺。せめてファミレスくらいは目指さないとね!
ああ~、早く夜がこないかな。
夜の10時には打ち終わるとして、遅くとも11時頃には豪勢なメシにありつけてるはずだ。
う~ん、楽しみすぎる!)
ここで得る金などまだまだ通過点に過ぎない、と考えていた優司だが、今の時点ではそんな考えは吹き飛んでいた。
まるで、1万円札を数枚手にすることが最終目標であるかのように。
(藤田、か……
あの悪ぶってる感じが鼻につくし、いろいろ気に食わない奴だけど、今日ばかりは頼りになるな。
あいつが北斗の6を打てば、まず負けないはずだ。
頼むぞ藤田……)
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