ゴーストスロッター

クランキー

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【第1章】

■第2話 : 1円もかけずに確実にパチスロで勝つ方法

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パチスロで1円もかけずに稼ぐ方法として優司が考えついた策。
それは、実際に今の優司が実践していることだった。

その内容とは……

■近隣にあるホールを何十店舗もグルグルと回る

■目立たないように気をつけながら落ちてるコインを拾う

■これを同一ホールに対し、朝・夕方・閉店間際と3回行う

■コインを拾いつつ、朝・夕方・閉店間際の客付や店のクセなどを細かくチェックしてノートにまとめる

■客層のチェックも怠らない

これらのことを念頭において行動することだった。

拾ったコインは、店別で管理。
そして、換金すれば千円になる枚数(等価店ならば50枚)に達した時点でジェットカウンターに流す。

これが、まともに高設定を打っても勝てず、ホームレスにまで身を落とした優司が編み出した必勝法だった。
パチスロで確実に勝つ方法というよりは、ホールにおいて絶対マイナスにならない方法と言った方が正しいだろう。

当然違法行為であり、立ち回りなどと呼べるシロモノではないのだが。

もちろん、いくら気をつけているとはいえ、店員のチェックに遭い換金できない場合もあった。



そして優司は、電車賃を節約するために1駅くらいの距離ならば平気で歩いて移動していた。

なにしろ、金はないがヒマだけはたっぷりあるのだから。



これが、優司の現在の生活である。
こんな生活が、既に3ヶ月ほど続いている。

しかし、当然こんな生活に満足しているわけではなく、一刻も早く抜け出したいと願っていた。

こういった生活に耐えられているのは、優司に【ある作戦】があったから。
今の惨めな生活から抜け出すための、優司にとっては唯一無二の作戦が……

その作戦を実行するために、今の屈辱的な生活をグッと我慢しているのだ。



◇◇◇◇◇◇



(よし、久々金も手に入ったし、まずはメシを食いに行くか)

換金を終え、無事1000円札を手にした優司は、換金所のある裏通りから表通りへと戻ってきた。

時刻は18:30過ぎ。
そろそろ本格的な夏を迎えるとはいえ、すでに辺りはやや薄暗くなり始めていた。

こんな生活ゆえ、日々満足に食事をとれない優司。
常に空腹を抱えている状態。

なので、こうして現金を手に出来た日は、真っ先に食事に行くのが習慣となっていた。
食事に行くといっても、コンビニやファーストフードに限られているのだが。

(たまには肉でも食おうかな。よし、牛丼屋へ行こう!)

空腹のあまりグーグーと鳴っている腹をさすりながら、舌なめずりをする。
それから、勢いよく近くの牛丼屋へと向かった。



店に入り食券機とのにらめっこが始まる。

(さて、何を食おうかな。
 牛丼の大盛り……はさすがに金銭的に厳しいし、並盛りでいっか。
 あとは、久々のメシだし、栄養とるためにも生卵もつけてみたりしようかな)

もう一度財布の中身を確認してみた。
全部で1248円。

(……やっぱ無理だな。牛丼だけでいいや)

先々のことを考え、やむなく50円の生卵を断念し、280円の牛丼並盛だけにしておいた。

(さて、食ったらもう1回ホール回って、その後銭湯行かないとな。2日ぶりだし)

ここで、「?」と思われる方も多いだろう。
風呂に金を使うなら、食事に金をかけた方がいいのでは、と。

しかも、ホームレスの身で、たかが2日間風呂に入っていないだけなのに風呂を優先するのはおかしいのでは
ないか、と。

しかし、これには優司なりの考えがあった。

『人は、身なりさえきちんとしていればホームレスかどうかなんてわからない。
 もしホームレスなのがバレたら、店員の目につくようになってしまって、今やっているコイン拾いが出来なくなってしまうかもしれない。
 よって、食事代を削ってでも身なりを整えることを優先した方がよい』

こう考えていたのだ。
こんな境遇になってしまったとはいえ、優司なりになんとか適応していこうと必死だった。

「お待たせいたしました」

注文した牛丼が優司のもとに届いた。

自分の中で、張りつめていたものが一気にほぐれていく。
周りを気にすることも忘れ、ひたすらその食事にがっついた。

(うめぇ……最高だっ……)

ここ3ヶ月間、楽しみはこの瞬間しかなかった。




約10分後、食事を終え牛丼屋をあとにする優司。

そして、ふぅ、っとため息をついてから、軽く拳を握りながら表情を引き締めた。

(よし……。いよいよ明日は『あの計画』を実行するぞ。
 もう待てない。もうこんな生活、耐えられない……」

寝床としている公園へ向かいながら、そう心に誓う優司だった。
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