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番外編②後編 - GOLEM / SHADOW編
番外編②-21 – 経歴
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杉本と鶴川の2人は内倉祥一郎の自宅に到着し、マンション管理人に事情を説明してロック解錠のための特殊IDパスコードを警察手帳タブレットに付与、入室する。
「一見、普通の家ですね。どこか出かけているんでしょうか」
鶴川はそう言って玄関口を通ってリビングへと向かう。
「えぇ、特段怪しい点は今のところ無いように思われます」
杉本も鶴川の感想に賛同し、リビングを見渡す。内倉は今年47歳になる独身男性でこの自宅には4年前から住んでいる。綺麗に整頓されたリビングは清潔感に溢れ、住人の几帳面さが見受けられる。
「(4年前。20階建ての最上階。月島瑞希さんのクラス担任。彼女のことを身近で見られる者。僕の中で引っ掛かるものが多かったので最優先に来ましたが……。このまま杞憂に終わるでしょうか?)」
杉本は一通りリビングを見た後に書斎へと入り、先に様子を見ていた鶴川に話しかける。
「そちらはどうですか? 鶴川くん」
鶴川は内倉の書斎に入って直ぐの所にある、見る者の目を引く大きな本棚を眺めながら答える。
「今のところ特に気になるところはありませんね。この大きな本棚にあるのも殆どが授業に使いそうな教材ばかりですし。至って真面目な教師って感じです」
現代の書籍はデータ化されたものが殆どで、その"書籍タブレット"が販売される。それは薄型化されて収容しやすくなっている。鶴川は念のために参考書を手にとって本の表紙とその内容が合致しているのかを確認し、問題が無いことを伝える。
「いや~見事なまでな本棚ですね。本の数も種類も実に豊富です。書籍タブレットだけでなく、データ化不可能な昔の紙書籍まで大量に……。確か内倉先生の担当科目は生物分野でしたね。1年生には総合科学を担当しているようですが。それと専門ではないようですが、サイクス学の授業を行うこともあるとか。徳田さんが高校を離れてから少しの間だけ担当していたようですからね」
杉本は過去の受け持ったクラスであろう生徒たちの写真が纏められたアルバムタブレットに目を移す。
「どうやら内倉先生は生徒さんたちのことを大事にされていたようですねぇ。綺麗に纏められています」
杉本は丁寧にアルバムを捲っていき、1年毎に纏めて並べられたアルバムを遡っていく。ここで杉本はある疑問に辿り着く。
「(ここまでが4年前……。これより前のものはどこへ……?)」
杉本は他の教材を眺めている鶴川の方を見て他のアルバムがないかを確かめる。
「鶴川くん、これ以前のクラスアルバムのようなものを探してもらえますか? 4年前より前のものです!」
鶴川はその指示に従って2人はアルバムを探し始める。
「杉本さん、見ている限り見つからないっすね。内倉は確かここに4年前に越してきたんですよね? その時に処分してしまったんじゃないすか?」
「ここまで丁寧に1年1年纏めているような几帳面な方が? 生徒1人1人を大切に思っているような印象を僕には受けますが」
杉本はそう言った後に内倉の経歴を思い返す。
「26歳から教員として働き始めて今年で21年目で第三地区高等学校へ赴任して4年目……。それ以前……それ以前の経歴は!?」
杉本は慌てて携帯を取り出して愛香に連絡を入れる。
「はい、月島です。杉本さん何か分かりましたか?」
「月島さん! 内倉さんの経歴は分かりますか!?」
「え、えぇ」
杉本の勢いに若干押されながら愛香が答える。
「内倉さんは何年前から第三地区高校に赴任していますか?」
「4年前です」
「彼が教員になったのは?」
「21年前です」
「それでは、彼は第三地区高校に赴任する前は一体どこで勤務していましたか?」
「……」
ここで愛香が沈黙する。
愛香に特殊完全記憶能力が備わっていることは警察内部でも知られている。その愛香が確認した情報に関して答えが滞ることは有り得ない。
「やはり月島さんも答えられませんか。管理委員会、教育委員会など考えられる機関全てに連絡、内倉祥一郎の教員履歴を早急に調べて下さい。僕たちは大きな見落としをしているかもしれません」
「分かりました!」
愛香はそう言うと携帯を切った。
「(一体なぜ? なぜここまで誰も疑問に思わなかった……? 僕だけでなく月島さんまでも疑問に思わなかったなど……。ただの偶然か?)」
「杉本さん」
杉本が思考する間に鶴川が突然話しかける。
「どうしましたか? 鶴川くん」
「この机、見てみて下さい」
杉本は言われた通りに鶴川が指す、書斎の最奥にある机に目をやる。
「凹んでいますね」
––––ズズズズ
鶴川はサイクスを纏い、杉本に告げる。
「一応確認しますか?」
「お願いします」
––––"モノの物語"
鶴川亘の物質刺激型超能力。サイクスによって傷付けられた部分に触れることでその物体がいつ傷付けられたものなのか、超能力者のタイプ、更にその時の超能力者の感情を鶴川は簡単ではあるものの直感的に理解する。
「どうですか?」
目を閉じてサイクスを感じ取っている鶴川を見ながら杉本が尋ねる。
「身体刺激超能力者によるものですね。そして3日前のものです。感情は……、焦りと困惑。そして若干の怒り……を感じ取れます」
鶴川はそこでまた沈黙し、眉間に皺を寄せながら自分の言葉を整理する。杉本はそれを静かに見守る。
「この怒りや困惑は自分に対するものだと思います」
「自分に対するもの……ですか……」
杉本は鶴川の言葉を復唱した後に考え込む。
「(横手の証言ではGOLEMは子供を巻き込んでいたことに特に怒りを感じていたらしい。それがキッカケで契約を反故にしたと。それだけで自身をコントロールできなくなるほどに……そんなリスクを? 十二音のような強者が?)」
杉本はもう一度、部屋の入り口にある本棚の前に歩み寄って4年分のアルバムを眺める。
「(自分への怒り、困惑……。何か、何か最後のピースがあるのでは?)」
杉本はアルバム4冊を引っ張り出して1ページずつ丁寧にスワイプさせて1枚1枚の写真を観察していく。
「これは……!」
数分が経って杉本は声を上げる。それと同時に杉本の携帯の着信音が鳴る。
「一見、普通の家ですね。どこか出かけているんでしょうか」
鶴川はそう言って玄関口を通ってリビングへと向かう。
「えぇ、特段怪しい点は今のところ無いように思われます」
杉本も鶴川の感想に賛同し、リビングを見渡す。内倉は今年47歳になる独身男性でこの自宅には4年前から住んでいる。綺麗に整頓されたリビングは清潔感に溢れ、住人の几帳面さが見受けられる。
「(4年前。20階建ての最上階。月島瑞希さんのクラス担任。彼女のことを身近で見られる者。僕の中で引っ掛かるものが多かったので最優先に来ましたが……。このまま杞憂に終わるでしょうか?)」
杉本は一通りリビングを見た後に書斎へと入り、先に様子を見ていた鶴川に話しかける。
「そちらはどうですか? 鶴川くん」
鶴川は内倉の書斎に入って直ぐの所にある、見る者の目を引く大きな本棚を眺めながら答える。
「今のところ特に気になるところはありませんね。この大きな本棚にあるのも殆どが授業に使いそうな教材ばかりですし。至って真面目な教師って感じです」
現代の書籍はデータ化されたものが殆どで、その"書籍タブレット"が販売される。それは薄型化されて収容しやすくなっている。鶴川は念のために参考書を手にとって本の表紙とその内容が合致しているのかを確認し、問題が無いことを伝える。
「いや~見事なまでな本棚ですね。本の数も種類も実に豊富です。書籍タブレットだけでなく、データ化不可能な昔の紙書籍まで大量に……。確か内倉先生の担当科目は生物分野でしたね。1年生には総合科学を担当しているようですが。それと専門ではないようですが、サイクス学の授業を行うこともあるとか。徳田さんが高校を離れてから少しの間だけ担当していたようですからね」
杉本は過去の受け持ったクラスであろう生徒たちの写真が纏められたアルバムタブレットに目を移す。
「どうやら内倉先生は生徒さんたちのことを大事にされていたようですねぇ。綺麗に纏められています」
杉本は丁寧にアルバムを捲っていき、1年毎に纏めて並べられたアルバムを遡っていく。ここで杉本はある疑問に辿り着く。
「(ここまでが4年前……。これより前のものはどこへ……?)」
杉本は他の教材を眺めている鶴川の方を見て他のアルバムがないかを確かめる。
「鶴川くん、これ以前のクラスアルバムのようなものを探してもらえますか? 4年前より前のものです!」
鶴川はその指示に従って2人はアルバムを探し始める。
「杉本さん、見ている限り見つからないっすね。内倉は確かここに4年前に越してきたんですよね? その時に処分してしまったんじゃないすか?」
「ここまで丁寧に1年1年纏めているような几帳面な方が? 生徒1人1人を大切に思っているような印象を僕には受けますが」
杉本はそう言った後に内倉の経歴を思い返す。
「26歳から教員として働き始めて今年で21年目で第三地区高等学校へ赴任して4年目……。それ以前……それ以前の経歴は!?」
杉本は慌てて携帯を取り出して愛香に連絡を入れる。
「はい、月島です。杉本さん何か分かりましたか?」
「月島さん! 内倉さんの経歴は分かりますか!?」
「え、えぇ」
杉本の勢いに若干押されながら愛香が答える。
「内倉さんは何年前から第三地区高校に赴任していますか?」
「4年前です」
「彼が教員になったのは?」
「21年前です」
「それでは、彼は第三地区高校に赴任する前は一体どこで勤務していましたか?」
「……」
ここで愛香が沈黙する。
愛香に特殊完全記憶能力が備わっていることは警察内部でも知られている。その愛香が確認した情報に関して答えが滞ることは有り得ない。
「やはり月島さんも答えられませんか。管理委員会、教育委員会など考えられる機関全てに連絡、内倉祥一郎の教員履歴を早急に調べて下さい。僕たちは大きな見落としをしているかもしれません」
「分かりました!」
愛香はそう言うと携帯を切った。
「(一体なぜ? なぜここまで誰も疑問に思わなかった……? 僕だけでなく月島さんまでも疑問に思わなかったなど……。ただの偶然か?)」
「杉本さん」
杉本が思考する間に鶴川が突然話しかける。
「どうしましたか? 鶴川くん」
「この机、見てみて下さい」
杉本は言われた通りに鶴川が指す、書斎の最奥にある机に目をやる。
「凹んでいますね」
––––ズズズズ
鶴川はサイクスを纏い、杉本に告げる。
「一応確認しますか?」
「お願いします」
––––"モノの物語"
鶴川亘の物質刺激型超能力。サイクスによって傷付けられた部分に触れることでその物体がいつ傷付けられたものなのか、超能力者のタイプ、更にその時の超能力者の感情を鶴川は簡単ではあるものの直感的に理解する。
「どうですか?」
目を閉じてサイクスを感じ取っている鶴川を見ながら杉本が尋ねる。
「身体刺激超能力者によるものですね。そして3日前のものです。感情は……、焦りと困惑。そして若干の怒り……を感じ取れます」
鶴川はそこでまた沈黙し、眉間に皺を寄せながら自分の言葉を整理する。杉本はそれを静かに見守る。
「この怒りや困惑は自分に対するものだと思います」
「自分に対するもの……ですか……」
杉本は鶴川の言葉を復唱した後に考え込む。
「(横手の証言ではGOLEMは子供を巻き込んでいたことに特に怒りを感じていたらしい。それがキッカケで契約を反故にしたと。それだけで自身をコントロールできなくなるほどに……そんなリスクを? 十二音のような強者が?)」
杉本はもう一度、部屋の入り口にある本棚の前に歩み寄って4年分のアルバムを眺める。
「(自分への怒り、困惑……。何か、何か最後のピースがあるのでは?)」
杉本はアルバム4冊を引っ張り出して1ページずつ丁寧にスワイプさせて1枚1枚の写真を観察していく。
「これは……!」
数分が経って杉本は声を上げる。それと同時に杉本の携帯の着信音が鳴る。
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