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番外編②後編 - GOLEM / SHADOW編
番外編②-19 – 歯車
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「1つ聞きたい」
"八方美人"の銃口を床に倒れこんでいるSHADOWに向けながら藤村が尋ねる。
「お前たちは一体何を考えている? 4年前の事件から忽然と姿を消し、何故また動きを活発化させた?」
SHADOWは藤村の質問を聞いて笑いながら答える。
「今回、俺たちが見つかったのはアンタらが『DEED』を潰したからだろ? 偶然さ」
それでも納得した顔をしていない藤村を見てSHADOWは再び笑みを浮かべて話を再開する。
「ハハハ。暇潰しだよ。分かってるだろう?」
藤村はその一言を聞いて眉間に皺を寄せながら尋ねる。
「暇潰しでうちの連中を殺したってのか?」
「そりゃあ、襲われたらこっちだってやるさ。正当防衛だろう?」
藤村の脳裏にSHADOWの影によって貫かれて無残な姿で横たわっていた同僚の捜査官の顔が浮かぶ。その後「そもそも……」と話し始める。
「何故わざわざ姿を現した? 無視してりゃ良かっただろ。お前らほどの実力者ならまた別の場所に移れば良かったはずだ。これもお得意の暇潰しか? 俺との差が理解できないほど未熟でもあるまい」
SHADOWは藤村の発言に対して「何かムカつくなぁ」と呟き、その後、「まぁ正しいけど」と言い直す。
「……月島姉妹か?」
藤村が少しだけ間を空けてから『月島』というワードを出す。その言葉を聞いてSHADOWは堪えていた笑いが収まらなくなって激しく笑い始める。
「アハハハハハハハ!!!」
藤村は不愉快そうな表情を浮かべ、それを見てSHADOWは弁解するように笑いながら告げる。
「いや~参った、参った。月島姉妹ね、皆んな大好きだね~。特に妹の方。まだまだ幼い子に対して相当な入れ込みようだよ」
一頻り笑った後にSHADOWは少し声のトーンを下げて話を始める。
「それこそ暇潰しさ。あんな女の子、楽しい世界を創るための一要素にしか過ぎない。だけど極上のオモチャ。遊び相手。それに成り得る潜在能力。彼女が実りある成長を遂げられるように見守ってあげてるんだよ」
「見守るなんて優しいモンじゃないように思えるがな、お前らの固執の仕方を見てると。先日の第三地区高校での騒動然り」
SHADOWはニヤリと笑う。
「はは。1つ1つが重要なピースなのさ。また大きな出来事が起こるんじゃない? 今あの子、福岡にいるんだろう?」
藤村はSHADOWの言葉を聞いて数日前に愛香が妹が初めて友人と県外に1人で外泊しに行くとして少しソワソワしていた様子を思い出した。
「心当たりあるだろ? 予定ではそれで面白いことが起こる予定だけど」
藤村の身体から徐々にサイクスが溢れ出してくる。
「お前らみたいなのを束ねる存在。MAESTROってのは一体何なんだ? お前らは1人である程度自由が利くはずだ。わざわざ何故従う?」
SHADOWはまたしても大声を上げて笑う。
「ハハハハ! そこから間違ってるのさ。別に俺たちはMAESTROに付き従ってる訳じゃあない。ただ、面白いからさッ! 彼が考える世界が……ッ! 証拠に俺たちは全員揃っての行動が4年前から無いだろ?」
「結果的に自身の身が危険になってもか? 今のお前みたいにな」
藤村の"八方美人"を握る力がより一層強くなる。
「そもそもその辺の感覚がお前らとは違うのさ。俺は1つの歯車みたいなものさ。道中なくても良い歯車。だけど動くことで別のギミックを創り出すんだ。創造する過程で犠牲となるなら喜んで犠牲になるよ。例え最後に何が起こるのかを見ることができなかったとしてもね」
藤村は話を聞いた後に大きく息をついた後にSHADOWを真っ直ぐに睨みながら告げる。
「どうせ碌でもねーこと考えてんだろ。虫酸が走るぜ。後の詳しい話は署で付き合ってやるよ。そこで好きなだけ話な」
そう言って藤村は"八方美人"を構えたまま左手で手錠と超能力を抑え込む異不錠を内ポケットから取り出そうと動かす。
––––"深淵の入り口"
SHADOWの"深淵の入り口"は他人の影を操作することはできない。しかし、先に花と対峙した時のようにSHADOWの影が相手の影と触れ合っているとき、相手の動きを止めることができる。
この超能力はどちらかと言えば阻害に近く、動きを止められている相手はサイクスを込めることで抵抗が可能である。
故に藤村との戦闘で殆どのサイクスを消費したSHADOWが藤村の圧倒的なサイクスを前に動きを封じることは不可能。しかし、藤村の気を一瞬背かせることには成功する。
––––ズズズ……
超能力者が死に至る直前、強い思いが"思念"となって死体に宿り、目的を果たすまで死後動き続ける現象がある。(この"思念"が怨みであった場合、"怨念"と呼称される)
SHADOWの強い"思念"がある特殊な効果をSHADOWにもたらす。
––––自殺が完了するまで藤村の動きを止めろ
SHADOWは舌を噛み切って自殺を試みる。その際、藤村が全力で止めることを容易に想像していたためにこの強い思いをサイクスに込めることで"思念"の発想の転換を是とした。
「(コイツ……ッッ!)」
舌を噛み切ろうとするSHADOWを目の前にして身動きが取れずただただそれを見ていることしかできない自分に苛立ちを覚える。
「ゴフッッッ!!!」
SHADOWは舌の根元を完全に噛み切って大量に吐血しながら藤村をみて笑う。その笑みが藤村を更に苛立たせる。
「クソがッ! これで満足か? 出て来いよ!」
––––"赤いミサ"
藤村の咆哮の後、突如としてその空間にピッコロの音色が鳴り響き、死に至ったSHADOWが首を下に向けながら動き出して直立し、若干宙に浮く。
そして藤村の眼前には不協の十二音 第1音・MOONが現れる。
"八方美人"の銃口を床に倒れこんでいるSHADOWに向けながら藤村が尋ねる。
「お前たちは一体何を考えている? 4年前の事件から忽然と姿を消し、何故また動きを活発化させた?」
SHADOWは藤村の質問を聞いて笑いながら答える。
「今回、俺たちが見つかったのはアンタらが『DEED』を潰したからだろ? 偶然さ」
それでも納得した顔をしていない藤村を見てSHADOWは再び笑みを浮かべて話を再開する。
「ハハハ。暇潰しだよ。分かってるだろう?」
藤村はその一言を聞いて眉間に皺を寄せながら尋ねる。
「暇潰しでうちの連中を殺したってのか?」
「そりゃあ、襲われたらこっちだってやるさ。正当防衛だろう?」
藤村の脳裏にSHADOWの影によって貫かれて無残な姿で横たわっていた同僚の捜査官の顔が浮かぶ。その後「そもそも……」と話し始める。
「何故わざわざ姿を現した? 無視してりゃ良かっただろ。お前らほどの実力者ならまた別の場所に移れば良かったはずだ。これもお得意の暇潰しか? 俺との差が理解できないほど未熟でもあるまい」
SHADOWは藤村の発言に対して「何かムカつくなぁ」と呟き、その後、「まぁ正しいけど」と言い直す。
「……月島姉妹か?」
藤村が少しだけ間を空けてから『月島』というワードを出す。その言葉を聞いてSHADOWは堪えていた笑いが収まらなくなって激しく笑い始める。
「アハハハハハハハ!!!」
藤村は不愉快そうな表情を浮かべ、それを見てSHADOWは弁解するように笑いながら告げる。
「いや~参った、参った。月島姉妹ね、皆んな大好きだね~。特に妹の方。まだまだ幼い子に対して相当な入れ込みようだよ」
一頻り笑った後にSHADOWは少し声のトーンを下げて話を始める。
「それこそ暇潰しさ。あんな女の子、楽しい世界を創るための一要素にしか過ぎない。だけど極上のオモチャ。遊び相手。それに成り得る潜在能力。彼女が実りある成長を遂げられるように見守ってあげてるんだよ」
「見守るなんて優しいモンじゃないように思えるがな、お前らの固執の仕方を見てると。先日の第三地区高校での騒動然り」
SHADOWはニヤリと笑う。
「はは。1つ1つが重要なピースなのさ。また大きな出来事が起こるんじゃない? 今あの子、福岡にいるんだろう?」
藤村はSHADOWの言葉を聞いて数日前に愛香が妹が初めて友人と県外に1人で外泊しに行くとして少しソワソワしていた様子を思い出した。
「心当たりあるだろ? 予定ではそれで面白いことが起こる予定だけど」
藤村の身体から徐々にサイクスが溢れ出してくる。
「お前らみたいなのを束ねる存在。MAESTROってのは一体何なんだ? お前らは1人である程度自由が利くはずだ。わざわざ何故従う?」
SHADOWはまたしても大声を上げて笑う。
「ハハハハ! そこから間違ってるのさ。別に俺たちはMAESTROに付き従ってる訳じゃあない。ただ、面白いからさッ! 彼が考える世界が……ッ! 証拠に俺たちは全員揃っての行動が4年前から無いだろ?」
「結果的に自身の身が危険になってもか? 今のお前みたいにな」
藤村の"八方美人"を握る力がより一層強くなる。
「そもそもその辺の感覚がお前らとは違うのさ。俺は1つの歯車みたいなものさ。道中なくても良い歯車。だけど動くことで別のギミックを創り出すんだ。創造する過程で犠牲となるなら喜んで犠牲になるよ。例え最後に何が起こるのかを見ることができなかったとしてもね」
藤村は話を聞いた後に大きく息をついた後にSHADOWを真っ直ぐに睨みながら告げる。
「どうせ碌でもねーこと考えてんだろ。虫酸が走るぜ。後の詳しい話は署で付き合ってやるよ。そこで好きなだけ話な」
そう言って藤村は"八方美人"を構えたまま左手で手錠と超能力を抑え込む異不錠を内ポケットから取り出そうと動かす。
––––"深淵の入り口"
SHADOWの"深淵の入り口"は他人の影を操作することはできない。しかし、先に花と対峙した時のようにSHADOWの影が相手の影と触れ合っているとき、相手の動きを止めることができる。
この超能力はどちらかと言えば阻害に近く、動きを止められている相手はサイクスを込めることで抵抗が可能である。
故に藤村との戦闘で殆どのサイクスを消費したSHADOWが藤村の圧倒的なサイクスを前に動きを封じることは不可能。しかし、藤村の気を一瞬背かせることには成功する。
––––ズズズ……
超能力者が死に至る直前、強い思いが"思念"となって死体に宿り、目的を果たすまで死後動き続ける現象がある。(この"思念"が怨みであった場合、"怨念"と呼称される)
SHADOWの強い"思念"がある特殊な効果をSHADOWにもたらす。
––––自殺が完了するまで藤村の動きを止めろ
SHADOWは舌を噛み切って自殺を試みる。その際、藤村が全力で止めることを容易に想像していたためにこの強い思いをサイクスに込めることで"思念"の発想の転換を是とした。
「(コイツ……ッッ!)」
舌を噛み切ろうとするSHADOWを目の前にして身動きが取れずただただそれを見ていることしかできない自分に苛立ちを覚える。
「ゴフッッッ!!!」
SHADOWは舌の根元を完全に噛み切って大量に吐血しながら藤村をみて笑う。その笑みが藤村を更に苛立たせる。
「クソがッ! これで満足か? 出て来いよ!」
––––"赤いミサ"
藤村の咆哮の後、突如としてその空間にピッコロの音色が鳴り響き、死に至ったSHADOWが首を下に向けながら動き出して直立し、若干宙に浮く。
そして藤村の眼前には不協の十二音 第1音・MOONが現れる。
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