TRACKER

セラム

文字の大きさ
上 下
154 / 172
番外編②後編 - GOLEM / SHADOW編

番外編②-17 – 八方美人 (トランスフォーマー)

しおりを挟む
「俺はこの"八方美人トランスフォーマー"を、使用する特殊弾薬によって様々な形態に変形させる物質生成型超能力者だ」

 藤村はSHADOWの影を使った攻撃を軽く躱しつつ"八方美人トランスフォーマー"をSHADOWに見せびらかしながら説明する。

「それと、どの形態であっても俺のサイクスを込めた弾丸を放つことが出来る」

 そう言って藤村は"八方美人トランスフォーマー"にサイクスを込めて1発、SHADOWの影に向かって撃ち放ち、それは跡形も無く消滅する。サイクス弾は勢いそのままに会場の端まで届き、壁を砕く。

「あ~ぁ。壊れちまった。いまいち力加減が分からねー」

 藤村は"八方美人トランスフォーマー"の銃口を眺めて少し面倒くさそうな表情で呟く。

「余裕のつもりか? 自分の超能力についてペラペラと……!」

 藤村はSHADOWの言葉に対して何の反応も示さず"八方美人トランスフォーマー"の銃身に軽く触れた後に説明を付け足す。

「例えばこいつは任意の6箇所に次元の穴を開けてそこを通れるようにする。そして俺は触れた部分から自由に繋げた次元の穴へと移動できる」

 SHADOWのイライラした反応を見て藤村はニッと笑った後にその場から大きく跳躍し、影を躱しつつそのまま客席の暗闇の中へ紛れ込む。

「気でも狂った? 暗闇の中は俺のテリトリーだよ」

 SHADOWはそう言うとサイクスを纏って藤村に攻撃を仕掛ける。

––––"影波かげなみ"……!

 客席の影部分が波打ち始め、それが徐々に侵攻して藤村へと襲いかかる。

「おっと」

 藤村は影の大波に押し出されて空中に投げ出される。SHADOWはそれを確認すると地面に両手を着く。

––––"影剣山かげけんざん"

 地面の影が盛り上がり、そこから無数の鋭い針型の影が藤村に向かって一直線に襲いかかる。

––––"次元開通弾ディメンション・ドア"

 藤村は空中で左手を広げ、そこから次元の穴が開かれる。"影剣山《かげけんざん》"が藤村に到達する前に藤村は次元の穴の中へと入り込み、次元の穴は消滅する。

「なっ……!」

 姿を消した藤村に対してSHADOWは行方を追う。

「別に触れたものに"大気"が含まれてないとは言ってないぜ」

 藤村は再びステージ中央へと移動し、余裕の表情でSHADOWに告げる。

「お前の超能力は大体理解した」

 藤村はそう言うと床を見つめながら話を続ける。

「お前の影には範囲がある。大体1辺60cm程度の正方形か? そこから影が襲いかかってくる……。今の波のような攻撃も針のような攻撃もその正方形からそれぞれ影が伸びて融合するイメージ。有効範囲外に出た影からその集合体から離脱していき、新たな影が加わる感じだな」

 SHADOWは藤村の言葉を静かに聞く。

 SHADOWの影を操る超能力・"深淵の入り口ブラック・フォレスト"は藤村の言う通り適用範囲が存在する。高さに関しても6mという制限があるもののSHADOWがサイクスを込めることでその高さを調整することが可能となっている。

「それにこれも条件か?」

 藤村はステージ上の照明を眺めながらSHADOWに尋ねる。

「部屋全体を暗闇にすりゃあ良いのにそうしないってことは……条件だな。部屋の一部に明かりを施しておかなければならない。範囲は分からんがな」

 藤村の推測通り、SHADOWの"深淵の入り口ブラック・フォレスト"を発動している部屋には照明を作り出しておく必要がある。その照明の範囲はサイクスを込めて有効高度を6mよりも高くした分だけ広がる。
 D–3ビル地下4階のホールは高さ約18m、そのために必要な照明の範囲は丁度、中央のステージの範囲ほどであった。

「照明を壊せば良いんだろうが、まぁ何か対策はあるんだろう?」

 SHADOWは沈黙を貫くものの藤村は肯定と捉えた。

「俺も"八方美人トランスフォーマー"は、さっき説明した基本形状ともう1つの形状だけを使って闘うよ」

 藤村の持つリボルバー型装飾銃が黄色いサイクスで包まれる。
 
 "八方美人トランスフォーマー"は変化してスライドが先端までない、"ワルサー"のような形状のハンドガンが形成されそれを2丁持つ。

「この形状は特殊でね、2丁使うんだ。この右手に持ってる方は"別れ話リパルシヴ・ストーリー"、こっちの左手のは"引き合う2人アトラクティヴ・ストーリー"。銃弾を当てることで引き合う力と反発し合う力を付与する。更に……」

 藤村はそれぞれの銃を撃ち、その銃弾がその場に停滞し、サイクスが球型に広がる。

「こうしてトラップ型として設置することも可能だ。その球は割れたり割れずに弾かれたり。こっちの仕組みは上手いこと自分で解明してみてくれ。青と赤で色の違いがあるから分かり易いと思うぜ。ちなみに"次元開通弾ディメンション・ドア"に変えた場合はこのトラップ型の弾はそのまま残すことも可能だからよろしく」

 そう言うとSHADOWの目の前から藤村は消える。

––––パリンッ

 会場の照明は全て消され、暗闇に呑まれる。

「(チッ)」

 SHADOWは舌打ちをした後に手の平から紫色に輝くサイクス10個を持ち、それを会場の至るところに投げ出す。

 部屋の照明がなくなった場合、SHADOWは自らのサイクスを使って明かりを作り出すことが可能で、それを使用することで"深淵の入り口ディメンション・ドア"を発動することができるようになる。

「!?」

 SHADOWの明かりによって照らされた瞬間、既に会場には赤い球と青い球が大量に浮遊している。

「(もう既にトラップを仕掛けている!?)」

 赤い球がSHADOWに触れるとその球に弾かれる。その背後にあった青い球に触れた瞬間、その青い球は弾け飛び、SHADOWは少しだけ吹き飛ばされる。

「(何だこれ、面倒くさいな!?)」

––––ヒュォッ

 その瞬間、藤村の右拳がSHADOWの仮面に直撃し、仮面が破壊される。仮面の中からは褐色の肌の30代くらいの男性が顔を見せる。

 血が混じった唾液を口からペッと吐いているSHADOWを見ながら藤村はニヤッと笑い、「とっとと終わらせるぞ」と呟き圧倒的なサイクスを纏った。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

処理中です...