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番外編②前編 - DEED編
番外編②-3 – 警護
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藤村、杉本、鶴川の3人は杉本の希望通り『DEED』による麻薬オークションで拘束された者たちに話を聞くことを決めた。
「今回のオークション、DEEDの上層部を捕らえることはできたのですか?」
杉本は自身の前方を歩いている藤村に尋ねる。
「あぁ、リーダーの松村を始めとして殆どの幹部を捕まえた。後は参加してた客で有名芸能人なんかも身柄を拘束してある」
鶴川が口を挟む。
「そいつらに付いてた警護ってのはどうだったんすか?」
「まぁDEEDの上の連中は超能力者が多いから自分で自分の身を守るって感じか。ただそういう連中でも警護に駆り出されてた。それに……」
藤村が意味深に言葉を切ったために杉本は「それに?」とやや焦れたように聞く。
「参加してた別組織の連中や金持ち連中は自前の警護を用意していたみたいだが、若手芸能人なんかはDEEDの下っ端、もしくは警護がゼロだったんだ」
「それはおかしいですねぇ」
杉本の応答に対して鶴川も反応する。
「さっき杉本さんが言ってたように警備が杜撰ってことっすよね?」
杉本は鶴川の方に目をやって少し笑って答える。
「その通り。僕には何だか行き当たりばったりのように見受けられます。予定が突然変わって苦肉の策を講じたかのような……」
「まぁこれから分かるさ」
藤村は1人の男を見つけ、彼は杉本と鶴川の2人に話しかける。
「初めまして、組織犯罪対策部の狩野です」
3人は狩野に対してそれぞれ自分の名前と所属を伝えた後に握手を交わす。
「石川部長に取り調べの相談をしたら狩野さんに会うように言われたんだが、何か方法でも? 殆ど病院送りにしちまってるけど……」
藤村は少しバツが悪そうな顔で話す。藤村は杉本から取り調べをできるか尋ねられた際に「勿論」と答えたものの、DEEDのメンバー、特に超能力者に関しては殆どを自身が1人で病院送りにしてしまっていたことを思い出し、少し気がかりに思っていた。
「えぇ、お話は伺っております。ただ……くれぐれも企業秘密でお願いしますよ」
狩野の身体から青色のサイクスが溢れ出す。藤村は「なるほどね」と言いつつ少し気がかりな様子で杉本をチラッと見る。杉本はそれに気付いて目を閉じて微かに首を左右に振り、「大丈夫だ」というように静かにアクションを返す。
取り調べにおいて警察組織は被疑者に対して超能力を使用することが禁じられている。しかし、実際には警察側もあらゆる手を講じて抜け道を利用している。
そんな中で杉本は正義感が非常に強い人物でこうした規則は遵守する性格であると藤村は理解していた。
「"取り調べ"ではなく、僕は"お話を聞きたい"と言っただけですから」
杉本の笑顔を見て藤村は少し笑う。
「(どうやら勘違いだな。正義感が強いが故に手段を選ばない……。勿論、規則の中でだが……)」
狩野も微かに笑い、話を始める。
「私の超能力・"脳内取調室"は気絶した者、且つ私のサイクスを刻まれた者の精神を強制的に私の精神世界に作られた部屋に召喚し、取り調べを行える超能力です。1回のセッションで行える時間は30分で3人。時間配分は自由に設定できます」
「それは私のような非超能力者は取り調べ側で利用できるのですか?」
「えぇ。勿論。ですがその場合、私の立ち会いが必要となるので私を含めて3人しか"脳内取調室"には入室できません」
杉本は「なるほど」と感心し、藤村の方に向き直る。
「それでは私と鶴川くんで行きますがよろしいですか、課長?」
その言葉に対して藤村は「おう」と承諾し、同時に鶴川が驚いて杉本に尋ねる。
「課長と杉本さんが行くんじゃないんですか!?」
杉本はにこやかに鶴川の方を向いて告げる。
「当たり前じゃないですか。君はもう僕の立派な相棒なのですから」
鶴川はその答えを聞いて「はい!」と力を込めて返事をする。その表情は晴れやかなもので誰が見ても嬉しさに溢れていた。
「メンバーは決まったようなので注意事項を少し」
狩野は3人の会話が一通り終わった後に説明を付け加える。
「30分経つと強制的に終了し、次のセッション発動まで2時間必要になります。また、被疑者が目を覚ました時点でそのセッション自体が強制終了されます。それと……」
狩野は藤村の方を向く。
「セッション中、僕らは無防備な状態になります。藤村課長に守ってもらわねばなりません。もしも取り調べを終了させたい時は私の身体にサイクスを流し込んで下さい。それで私たちは帰って来られます」
「任せときな」
藤村は間髪入れずに返答する。杉本が「1つ質問、よろしいですか?」と狩野に話しかける。
「精神世界ということですが、被疑者の方々はこちらの問いかけに対して素直に答えるのでしょうか?」
狩野は思い出したかのように返答する。
「そうでした! これはあくまで相手の精神を呼び出すもの。対応としては普通の取り調べと同じだとお考え下さい。そして双方サイクスを使用できませんのでご注意を」
「承知いたしました。それでは誰を選ぶかですねぇ」
杉本の言葉を聞いて狩野は6人の写真を用意して見せる。
「この6人はDEEDの中でも重要人物として我々がマークしていた者たちです。この男がリーダーの松村 我流風。それでこの男が2番手ですね。名取 九郎。あとは……」
と狩野は写真の者たちの説明を始める。杉本は一通り眺めた後に狩野に尋ねる。
「芸能人の方で捕まっている方はいらっしゃいますか?」
狩野は少し不思議そうな顔をしながら話す。
「逮捕はしています。しかし、気絶して捕まっているのは……天草英理子ですかね。子役からいた有名女優です。藤村課長の戦闘の際に巻き込まれて気絶していますね」
藤村は「その説明いるか?」と言いながらライターの蓋で遊び始める。
「OK。それと先ほどの6人のうち、主に現場に赴いて交渉をするような者はいますか?」
「それだと……横手イルマ。ドイツ人と日本人のハーフです。この男がDEEDでは最も戦闘力が高く、また、交渉も任せられるほどに頭もキレる男でした。実質この男が政治的な部分は仕切っていたようです」
杉本はフムと頷いた後に狩野に告げる。
「天草英理子さんと横手イルマさんのお2人に、この順でお話しましょう」
狩野と鶴川は意外そうな表情を浮かべ、藤村は「なるほどな」と呟く。杉本はその後に説明を加える。
「先ほど藤村課長とのお話でも出ましたが、芸能人の方々の警護が手薄であったこと、その辺りのことをご本人に聞いてみたいと思いまして。それとこれは僕の感覚ですが、予定が狂って行き当たりばったりになってしまった……という気がします。そうしますと何かしらの交渉決裂があったのではないかと考えました。その辺りをDEEDで実際に交渉ごとに着手している者のお話を聞きたかったのです。先に天草さんの方からオークションでの状況を聞き出し、横手さんにこのことをお尋ねしてみましょう」
杉本は2人に丁寧に説明した後に狩野に合図を送ると狩野も頷き、超能力を発動した。
––––"脳内取調室"!!
「今回のオークション、DEEDの上層部を捕らえることはできたのですか?」
杉本は自身の前方を歩いている藤村に尋ねる。
「あぁ、リーダーの松村を始めとして殆どの幹部を捕まえた。後は参加してた客で有名芸能人なんかも身柄を拘束してある」
鶴川が口を挟む。
「そいつらに付いてた警護ってのはどうだったんすか?」
「まぁDEEDの上の連中は超能力者が多いから自分で自分の身を守るって感じか。ただそういう連中でも警護に駆り出されてた。それに……」
藤村が意味深に言葉を切ったために杉本は「それに?」とやや焦れたように聞く。
「参加してた別組織の連中や金持ち連中は自前の警護を用意していたみたいだが、若手芸能人なんかはDEEDの下っ端、もしくは警護がゼロだったんだ」
「それはおかしいですねぇ」
杉本の応答に対して鶴川も反応する。
「さっき杉本さんが言ってたように警備が杜撰ってことっすよね?」
杉本は鶴川の方に目をやって少し笑って答える。
「その通り。僕には何だか行き当たりばったりのように見受けられます。予定が突然変わって苦肉の策を講じたかのような……」
「まぁこれから分かるさ」
藤村は1人の男を見つけ、彼は杉本と鶴川の2人に話しかける。
「初めまして、組織犯罪対策部の狩野です」
3人は狩野に対してそれぞれ自分の名前と所属を伝えた後に握手を交わす。
「石川部長に取り調べの相談をしたら狩野さんに会うように言われたんだが、何か方法でも? 殆ど病院送りにしちまってるけど……」
藤村は少しバツが悪そうな顔で話す。藤村は杉本から取り調べをできるか尋ねられた際に「勿論」と答えたものの、DEEDのメンバー、特に超能力者に関しては殆どを自身が1人で病院送りにしてしまっていたことを思い出し、少し気がかりに思っていた。
「えぇ、お話は伺っております。ただ……くれぐれも企業秘密でお願いしますよ」
狩野の身体から青色のサイクスが溢れ出す。藤村は「なるほどね」と言いつつ少し気がかりな様子で杉本をチラッと見る。杉本はそれに気付いて目を閉じて微かに首を左右に振り、「大丈夫だ」というように静かにアクションを返す。
取り調べにおいて警察組織は被疑者に対して超能力を使用することが禁じられている。しかし、実際には警察側もあらゆる手を講じて抜け道を利用している。
そんな中で杉本は正義感が非常に強い人物でこうした規則は遵守する性格であると藤村は理解していた。
「"取り調べ"ではなく、僕は"お話を聞きたい"と言っただけですから」
杉本の笑顔を見て藤村は少し笑う。
「(どうやら勘違いだな。正義感が強いが故に手段を選ばない……。勿論、規則の中でだが……)」
狩野も微かに笑い、話を始める。
「私の超能力・"脳内取調室"は気絶した者、且つ私のサイクスを刻まれた者の精神を強制的に私の精神世界に作られた部屋に召喚し、取り調べを行える超能力です。1回のセッションで行える時間は30分で3人。時間配分は自由に設定できます」
「それは私のような非超能力者は取り調べ側で利用できるのですか?」
「えぇ。勿論。ですがその場合、私の立ち会いが必要となるので私を含めて3人しか"脳内取調室"には入室できません」
杉本は「なるほど」と感心し、藤村の方に向き直る。
「それでは私と鶴川くんで行きますがよろしいですか、課長?」
その言葉に対して藤村は「おう」と承諾し、同時に鶴川が驚いて杉本に尋ねる。
「課長と杉本さんが行くんじゃないんですか!?」
杉本はにこやかに鶴川の方を向いて告げる。
「当たり前じゃないですか。君はもう僕の立派な相棒なのですから」
鶴川はその答えを聞いて「はい!」と力を込めて返事をする。その表情は晴れやかなもので誰が見ても嬉しさに溢れていた。
「メンバーは決まったようなので注意事項を少し」
狩野は3人の会話が一通り終わった後に説明を付け加える。
「30分経つと強制的に終了し、次のセッション発動まで2時間必要になります。また、被疑者が目を覚ました時点でそのセッション自体が強制終了されます。それと……」
狩野は藤村の方を向く。
「セッション中、僕らは無防備な状態になります。藤村課長に守ってもらわねばなりません。もしも取り調べを終了させたい時は私の身体にサイクスを流し込んで下さい。それで私たちは帰って来られます」
「任せときな」
藤村は間髪入れずに返答する。杉本が「1つ質問、よろしいですか?」と狩野に話しかける。
「精神世界ということですが、被疑者の方々はこちらの問いかけに対して素直に答えるのでしょうか?」
狩野は思い出したかのように返答する。
「そうでした! これはあくまで相手の精神を呼び出すもの。対応としては普通の取り調べと同じだとお考え下さい。そして双方サイクスを使用できませんのでご注意を」
「承知いたしました。それでは誰を選ぶかですねぇ」
杉本の言葉を聞いて狩野は6人の写真を用意して見せる。
「この6人はDEEDの中でも重要人物として我々がマークしていた者たちです。この男がリーダーの松村 我流風。それでこの男が2番手ですね。名取 九郎。あとは……」
と狩野は写真の者たちの説明を始める。杉本は一通り眺めた後に狩野に尋ねる。
「芸能人の方で捕まっている方はいらっしゃいますか?」
狩野は少し不思議そうな顔をしながら話す。
「逮捕はしています。しかし、気絶して捕まっているのは……天草英理子ですかね。子役からいた有名女優です。藤村課長の戦闘の際に巻き込まれて気絶していますね」
藤村は「その説明いるか?」と言いながらライターの蓋で遊び始める。
「OK。それと先ほどの6人のうち、主に現場に赴いて交渉をするような者はいますか?」
「それだと……横手イルマ。ドイツ人と日本人のハーフです。この男がDEEDでは最も戦闘力が高く、また、交渉も任せられるほどに頭もキレる男でした。実質この男が政治的な部分は仕切っていたようです」
杉本はフムと頷いた後に狩野に告げる。
「天草英理子さんと横手イルマさんのお2人に、この順でお話しましょう」
狩野と鶴川は意外そうな表情を浮かべ、藤村は「なるほどな」と呟く。杉本はその後に説明を加える。
「先ほど藤村課長とのお話でも出ましたが、芸能人の方々の警護が手薄であったこと、その辺りのことをご本人に聞いてみたいと思いまして。それとこれは僕の感覚ですが、予定が狂って行き当たりばったりになってしまった……という気がします。そうしますと何かしらの交渉決裂があったのではないかと考えました。その辺りをDEEDで実際に交渉ごとに着手している者のお話を聞きたかったのです。先に天草さんの方からオークションでの状況を聞き出し、横手さんにこのことをお尋ねしてみましょう」
杉本は2人に丁寧に説明した後に狩野に合図を送ると狩野も頷き、超能力を発動した。
––––"脳内取調室"!!
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