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白銀の死神編
第111話 - 好戦的
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サイクスの最大量は超能力者各個体の潜在能力によって決められる。その後、成長を経て身体が許容するサイクスの"器"が限界に達した時にサイクスは最大値となる。
その例外が覚醒者で第一覚醒でサイクスの潜在能力が大幅に増大する。更に希少な例として第二覚醒を終えて第三覚醒を迎える際にサイクスの最大量の上限が開放される。
一般的に年齢を重ねることでヒトの身体機能は低下していくものの、サイクス量は変化しない。その代わりに一度に扱うことの出来るサイクス量が減少し、出力が減退することで超能力者は程度に差があれど弱体化していく。
「(やはり仁先生の動きが昔に比べてキレが無い)」
鈴村は襲いかかる死体の人形を相手にしながら仁がJOKERの超能力によって不意を突かれてオフィスデスクに衝突している方へと注意を向ける。
「(仁先生が全盛期……いや、15年ほど前でもあそこまでキレは悪くないはず……! 加えて久しぶりの命を賭けた戦闘。少しお身体への負担が大きいか?)」
鈴村はPUPPETEERが操作する4体の死体を体術で弾き飛ばした後に背後へと跳躍して距離を取る。
「(相変わらずサイクスのコントロールは素晴らしいな。恐らくもう少し時間が経てば動きのキレは良化するだろうが……)」
鈴村は仁のサイクスの扱い方に感嘆した後、正面に立ちはだかるPUPPETEERに視線を移し、レンズで様子を伺う。
*****
「JESTERは良いさ。俺の場合は欠陥品だと扱い難いんだよ。出来れば何人か生かしてて欲しかったんだけど」
「アハハ。確かに」
※第108話 「挑発」参照
*****
「(奴らの会話からしてこいつの超能力は死体を操作する以外にもあるはず。察するに人間を強制的に操作する超能力か。現在、死体を操っているように糸状のサイクスで操る類のものだと予想出来る。操作されている者の超能力を自由に引き出せるのかどうかで厄介さが変わるな)」
鈴村圭吾は基本的に人命救助・戦術補助・情報収集に長けており非戦闘要員である。しかし、その超能力の応用力から戦闘においても十二分に力を発揮する。
「(場所がここで良かったな。建物の至る所に銃器が用意されている)」
––––"人命救助"
鈴村は那由他ビル内からコンバットナイフ2本を召喚。その2本をPUPPETEERが操作する死体に向けて投げ付ける。2体の額に刺さるも動きを止めることなくそのまま鈴村に突き進む。その様子を見て鈴村は少しだけ笑う。
「(頭を潰すだけでは止まらないか)」
––––面白い
鈴村は拳銃を召喚し、操作されている死体に向けて発砲する。サイクスが込められた銃弾は威力を増して頭部を直撃し、貫通する。それでも動き続ける死体を見て更に発砲を続ける。放たれた銃弾は2体の心臓を貫通、残りの2体に接続する糸状サイクスを直撃する。
瞬間、PUPPETEERが操作していた死体4体が事切れる。
「(心臓の破壊または糸状サイクスを攻撃すれば動きが止まるな……。そして操作されている死体には2種類存在する)」
PUPPETEERの"死の舞踊"によって操作される死体にはサイクスを纏っていない個体とPUPPETEERのサイクスを纏った個体が存在する。これは生前、非超能力者であったか、超能力者であったかに起因する。
サイクスが生成される仕組みとしてまず心臓でフィジクスが生成され、それが扁桃体に到達することで初めてサイクスは生成される。
超能力者は死後、心停止によってサイクスの元となるフィジクスの生成が停止するため、サイクスそのものが消滅する。
しかし、PUPPETEERの"死の舞踊"は左手の指先から伸びる糸状のサイクスを死体の心臓部分に接続することでフィジクスを無理やり復活させ、糸に含まれるPUPPETEERのサイクスと一時的に呼応して死体全体にサイクスが行き渡ることを可能としている。
「(非超能力者の死体はサイクスを纏っていない分、攻撃力は大したことがない。超能力者の死体は奴のサイクスを纏っているために攻撃力が高い)」
PUPPETEERの各指から1本ずつ糸状のサイクスが死体1体ずつに繋がれていることを鈴村は確認する。
「(奴が一気に操ることが出来る死体は指の数、つまりは5体が最大。単純な命令しかできないのか、単純な打撃攻撃と陽動が行われるのみ。迅速に詰んでみせる)」
非戦闘要員である鈴村が戦闘において力を発揮する理由はもう1つある。
––––彼は見た目やその冷静さとは裏腹に好戦的である
「(生きている者を操作する可能性も考慮する必要はあるが、今の状況で俺が操作されるほどの隙を作るなどほぼ有り得ない)」
鈴村はサイクスを纏っていない個体に関してはほぼ無視し、サイクスを纏った死体に対して"人命救助"で呼び出したナイフや拳銃で正確に胸を撃ち抜く。
非戦闘要員は基本的に受け身の戦闘を好む。徳田花の戦闘スタイルは正にその典型で、相手の出方を見てそこから最適解を見出して優位に闘う。
しかしながら鈴村は標的に対して積極的に関与する。彼のサイクスの基本性能の高さがそれを可能とし、攻勢に出ながら持ち前の分析力で相手を圧倒する。故に早期決着が多い。
「一直線に俺の所へ来たね」
PUPPETEERの呟きに対して反応を示さずに鈴村は蹴りを見舞う。PUPPETEERはそれを防御しながらも少し背後に吹き飛ばされる。
––––"超常現象"
予め呼び出した椅子や机に対して鈴村は"超常現象"でPUPPETEERの四方から攻撃する。
––––"生者の行進"
PUPPETEERの右手の指先から1本の糸状サイクスが伸び、上空を飛んでいたギフテッドのノスリを捕らえ、鈴村に向かって一直線に襲いかかる。
「生きたものも操作できるのは予測済みだ」
鈴村はノスリをほぼ見ずに心臓に接続しているであろう糸状サイクスにナイフを投げ付ける。そのまま手にコンバットナイフを持ってPUPPETEERに襲いかかり、PUPPETEERの左肩を攻撃する。
「!?」
無視していた非超能力者の死体が突然サイクスを纏って鈴村に右の拳で殴りかかる。鈴村は不意を突かれたものの余裕を持ってそれを防御、再び態勢を戻そうと試みる。
「(後天性超能力者か!)」
後天性超能力者とは生成されたフィジクスが扁桃体へと到達しないことでサイクスが発生しない個体である。
PUPPETEERの超能力《ちから》によって無理やり刺激されてサイクスが発現、それによって攻撃力が増す。
PUPPETEERは糸状のサイクスが死体と接続した時点でその個体が"潜在的"後天性超能力者かどうかを知ることができ、サイクスを発現させるタイミングも彼の好きなタイミングで発現させることができる。
その時、上空から黒い影が鈴村の左肩を突き刺す。
「!?」
先ほど鈴村が投げ付けたナイフで糸を断ち切ったはずのノスリが鈴村を強襲する。
PUPPETEERの指先から伸びる糸状のサイクスがノスリの脳に接続されているのを鈴村は確認し、軽く舌打ちする。
「俺の左手は死者の心臓を、右手は生者の脳を司る」
その例外が覚醒者で第一覚醒でサイクスの潜在能力が大幅に増大する。更に希少な例として第二覚醒を終えて第三覚醒を迎える際にサイクスの最大量の上限が開放される。
一般的に年齢を重ねることでヒトの身体機能は低下していくものの、サイクス量は変化しない。その代わりに一度に扱うことの出来るサイクス量が減少し、出力が減退することで超能力者は程度に差があれど弱体化していく。
「(やはり仁先生の動きが昔に比べてキレが無い)」
鈴村は襲いかかる死体の人形を相手にしながら仁がJOKERの超能力によって不意を突かれてオフィスデスクに衝突している方へと注意を向ける。
「(仁先生が全盛期……いや、15年ほど前でもあそこまでキレは悪くないはず……! 加えて久しぶりの命を賭けた戦闘。少しお身体への負担が大きいか?)」
鈴村はPUPPETEERが操作する4体の死体を体術で弾き飛ばした後に背後へと跳躍して距離を取る。
「(相変わらずサイクスのコントロールは素晴らしいな。恐らくもう少し時間が経てば動きのキレは良化するだろうが……)」
鈴村は仁のサイクスの扱い方に感嘆した後、正面に立ちはだかるPUPPETEERに視線を移し、レンズで様子を伺う。
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「JESTERは良いさ。俺の場合は欠陥品だと扱い難いんだよ。出来れば何人か生かしてて欲しかったんだけど」
「アハハ。確かに」
※第108話 「挑発」参照
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「(奴らの会話からしてこいつの超能力は死体を操作する以外にもあるはず。察するに人間を強制的に操作する超能力か。現在、死体を操っているように糸状のサイクスで操る類のものだと予想出来る。操作されている者の超能力を自由に引き出せるのかどうかで厄介さが変わるな)」
鈴村圭吾は基本的に人命救助・戦術補助・情報収集に長けており非戦闘要員である。しかし、その超能力の応用力から戦闘においても十二分に力を発揮する。
「(場所がここで良かったな。建物の至る所に銃器が用意されている)」
––––"人命救助"
鈴村は那由他ビル内からコンバットナイフ2本を召喚。その2本をPUPPETEERが操作する死体に向けて投げ付ける。2体の額に刺さるも動きを止めることなくそのまま鈴村に突き進む。その様子を見て鈴村は少しだけ笑う。
「(頭を潰すだけでは止まらないか)」
––––面白い
鈴村は拳銃を召喚し、操作されている死体に向けて発砲する。サイクスが込められた銃弾は威力を増して頭部を直撃し、貫通する。それでも動き続ける死体を見て更に発砲を続ける。放たれた銃弾は2体の心臓を貫通、残りの2体に接続する糸状サイクスを直撃する。
瞬間、PUPPETEERが操作していた死体4体が事切れる。
「(心臓の破壊または糸状サイクスを攻撃すれば動きが止まるな……。そして操作されている死体には2種類存在する)」
PUPPETEERの"死の舞踊"によって操作される死体にはサイクスを纏っていない個体とPUPPETEERのサイクスを纏った個体が存在する。これは生前、非超能力者であったか、超能力者であったかに起因する。
サイクスが生成される仕組みとしてまず心臓でフィジクスが生成され、それが扁桃体に到達することで初めてサイクスは生成される。
超能力者は死後、心停止によってサイクスの元となるフィジクスの生成が停止するため、サイクスそのものが消滅する。
しかし、PUPPETEERの"死の舞踊"は左手の指先から伸びる糸状のサイクスを死体の心臓部分に接続することでフィジクスを無理やり復活させ、糸に含まれるPUPPETEERのサイクスと一時的に呼応して死体全体にサイクスが行き渡ることを可能としている。
「(非超能力者の死体はサイクスを纏っていない分、攻撃力は大したことがない。超能力者の死体は奴のサイクスを纏っているために攻撃力が高い)」
PUPPETEERの各指から1本ずつ糸状のサイクスが死体1体ずつに繋がれていることを鈴村は確認する。
「(奴が一気に操ることが出来る死体は指の数、つまりは5体が最大。単純な命令しかできないのか、単純な打撃攻撃と陽動が行われるのみ。迅速に詰んでみせる)」
非戦闘要員である鈴村が戦闘において力を発揮する理由はもう1つある。
––––彼は見た目やその冷静さとは裏腹に好戦的である
「(生きている者を操作する可能性も考慮する必要はあるが、今の状況で俺が操作されるほどの隙を作るなどほぼ有り得ない)」
鈴村はサイクスを纏っていない個体に関してはほぼ無視し、サイクスを纏った死体に対して"人命救助"で呼び出したナイフや拳銃で正確に胸を撃ち抜く。
非戦闘要員は基本的に受け身の戦闘を好む。徳田花の戦闘スタイルは正にその典型で、相手の出方を見てそこから最適解を見出して優位に闘う。
しかしながら鈴村は標的に対して積極的に関与する。彼のサイクスの基本性能の高さがそれを可能とし、攻勢に出ながら持ち前の分析力で相手を圧倒する。故に早期決着が多い。
「一直線に俺の所へ来たね」
PUPPETEERの呟きに対して反応を示さずに鈴村は蹴りを見舞う。PUPPETEERはそれを防御しながらも少し背後に吹き飛ばされる。
––––"超常現象"
予め呼び出した椅子や机に対して鈴村は"超常現象"でPUPPETEERの四方から攻撃する。
––––"生者の行進"
PUPPETEERの右手の指先から1本の糸状サイクスが伸び、上空を飛んでいたギフテッドのノスリを捕らえ、鈴村に向かって一直線に襲いかかる。
「生きたものも操作できるのは予測済みだ」
鈴村はノスリをほぼ見ずに心臓に接続しているであろう糸状サイクスにナイフを投げ付ける。そのまま手にコンバットナイフを持ってPUPPETEERに襲いかかり、PUPPETEERの左肩を攻撃する。
「!?」
無視していた非超能力者の死体が突然サイクスを纏って鈴村に右の拳で殴りかかる。鈴村は不意を突かれたものの余裕を持ってそれを防御、再び態勢を戻そうと試みる。
「(後天性超能力者か!)」
後天性超能力者とは生成されたフィジクスが扁桃体へと到達しないことでサイクスが発生しない個体である。
PUPPETEERの超能力《ちから》によって無理やり刺激されてサイクスが発現、それによって攻撃力が増す。
PUPPETEERは糸状のサイクスが死体と接続した時点でその個体が"潜在的"後天性超能力者かどうかを知ることができ、サイクスを発現させるタイミングも彼の好きなタイミングで発現させることができる。
その時、上空から黒い影が鈴村の左肩を突き刺す。
「!?」
先ほど鈴村が投げ付けたナイフで糸を断ち切ったはずのノスリが鈴村を強襲する。
PUPPETEERの指先から伸びる糸状のサイクスがノスリの脳に接続されているのを鈴村は確認し、軽く舌打ちする。
「俺の左手は死者の心臓を、右手は生者の脳を司る」
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