TRACKER

セラム

文字の大きさ
上 下
66 / 172
夏休み後編

第64話 - 高品質衣料製作(オードリー)

しおりを挟む
––––"高品質衣料製作オードリー"!

 由里子は瑞希、結衣、綾子が家に到着した際に彼女のサイクスで読み取ったスタイルのデータ、元々有している萌と志乃のデータからデザインをタブレットに描き始める。

「(まずは萌ちゃん! 152cmと小柄ながら5人の中で最も胸のサイズが大きい。勿論、それをメインに魅せるのも良いけどあざとく見えてしまったり、見ようによっては太く見えてしまったりする……。コルセットやビスチェタイプにしてフリルを付けてガーリーな印象を与える……。なるほど)」

 由里子のサイクスは対象者 (モデル) のスタイルを分析後、そのモデルに合ったタイプの服を提案してくれる。由里子は自らの意見も加味しつつデザインし、それに即して自ら描く。
 タブレットの周りにカラーホイールを模したホログラムが現れる。色に関してはいくつかの候補がサイクスより提案されそこから選択することも出来る。
 
 描き終わったデザインは画面からホログラムとして浮き上がり、その後由里子の黄色いサイクス (由里子は物質生成型超能力者である) に包まれ実物が生成される。

「すっご、直ぐに出来上がった」

 綾子がその素早い作業に目を丸くする。飽くまでサイクスはモデルのスタイルや用途に合わせてデザインを提案し、出来上がった作品を物質として生成するため、自分のイメージとの融合や描く早さなどの実際の作業スピードは由里子の実力に委ねられており、彼女のクリエイティブさは賞賛に値する。

「可愛い!!!」

 出来上がった数種類の水着を両手に持って広げながら萌が興奮した声を上げる。

「さぁ、どんどんいくわよ!!」

 由里子も息込んで分析データ、サイクスからの提案からそれぞれのベストな水着をデザインし始める。

「完全にお仕事モードなっちゃったよ、お母さん……」

 志乃が熱心に取り組み始めた由里子の様子を見ながら姉の芽衣に囁く。

「母さん妥協を許さないからね。まぁでもデザイン性なんかは間違いないよ。加えて世界の"大木由里子"から作ってもらえて女の子たちも喜ぶでしょ」

 次々と出来上がる水着に盛り上がっている萌、結衣、綾子、瑞希の4人を見ながら話す。「まぁね」と志乃は言いながら4人の輪の中へと戻る。

「さぁ! 月島さんの番よ!」

 由里子がそう言うと、3人は「おー!!」と歓声を上げる。

「(凄い、サイクスからの提案の量がとんでもなく多い! ここから私のアイデアも融合させると……楽しみだわ!)」

 由里子の作業により一層熱がこもる。

「(流石に高校1年っていうのと月島さんのシャイな性格を考えると布面積が小さいのは避けるか……志乃にも怒られるし……。オフショルダーやワンショルダーなんかも似合うだろうし、ハイネックビキニにすることで健康的なイメージと少しセクシーな印象も与えられてバランスが良い……。色はシックにして大人っぽいイメージにしても良いし、敢えてガーリーに仕上げるのも面白い。楽しいわねぇ)」

 由里子は様々なデザインを作り上げて瑞希にも手渡す。

「うわぁ!! めちゃくちゃ可愛い!!」

 瑞希の目はキラキラしており、受け取った水着を嬉しそうに眺める。志乃も含めて5人はそれぞれ自分たちの水着を見せ合いながら騒いでいる。

「(あはは……。JKのキャピキャピ空間が溢れ返ってる……。私もまだ大学2年生なんだけど差を感じるわ……)」

 芽衣は5人の様子を眺めながらエネルギッシュさに感嘆する。

「ほら、芽衣のも作るわよ」

 不意を突かれた芽衣は言葉を失う。

「えっ」
「あんたも行くでしょ? 福岡。どうせ暇なんだし」

 由里子はそう言って芽衣の水着も製作し始めた。
 
 芽衣は由里子が自身に福岡旅行での5人のお守りをさせる魂胆が垣間見えて一瞬テンションが下がるが、それでも美しい風景の下、綺麗なホテルに泊まりつつ海で遊べて福岡の街を楽しめることを考えれば良いか、と考え直す。

「そこのお嬢ちゃんたちと違って大人なのよろ~」

 そう言って芽衣は自室へと入って行った。

#####

 由里子は水着だけでなくいくつかの夏服も用意し、4人にプレゼントした。

「こうなったら品評会だね!」

 萌は高らかに宣言し、全員に着替えを催促する。

「いや良いけど流石にここでは着替えたくないよ」
「え? 女子しかいないけど」

 綾子の訴えに対して萌はけろっと返す。

「向こうに衣装室が何室かあるからそこでそれぞれ着替えよう」

 志乃はそう提案し、萌が若干悔しそうにしているのを横目に全員衣装室へと移動する。

「(衣装室まであってすごいなぁ……。しかもいっぱいあるし)」

 瑞希は志乃の家の設備の多さに改めて感心しながら着る水着を選ぶ。

「(海行く時って大体Tシャツにショーパンだからビキニって恥ずかしいけど……まぁ皆んな着てるからいっか)」

 そう思いながらシンプルな黒いビキニを選んで着替える。瑞希は鏡の前で自分の姿を映しながら嬉しそうに見ている。その黒い布は、対照的な瑞希の色白な肌をより一層際立たせる。瑞希は長さが膝くらいまであるピンク色を基調とした花柄のグラデーションパレオを合わせる。

 5人は携帯のメッセージでタイミングを計り、同時に衣装室から出た。

「何で!?!?」

 瑞希以外の4人は由里子が最後に作っていた夏服を着ており、水着を着ているのは瑞希のみだったのだ。
 瑞希はその場にしゃがみ込み両手で肌を隠そうとする。

「え、あ。普通に洋服だと思っちゃった」
「私も」

 笑いを堪えながら4人がそう言い、萌は瑞希の近くに寄って同じようにしゃがみ込み肩を撫でながら「似合ってて可愛いよ」と笑いながら告げる。
 瑞希は顔を真っ赤にしながら衣装室に戻り、元の洋服へと着替えを済ませて逃げようとするが4人にからかわれる。

 その様子を由里子は微笑ましく見つめつつ、携帯に入ったメッセージを見て5人に告げる。

「さ、準備出来たわね。福岡に行きましょうか」

 瑞希は半べそをかきながら由里子の方を向き、頷いた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...