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サイクスの効率化編
第21話 - サイクスの感覚
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「始め!」
瑞希の初訓練から2週間が経ち、東京第三地区高等学校では中間試験初日を迎えている。試験中であってもアウター・サイクスを維持したまま臨んでいる。緊張感と別の集中力を要求される中での持続力を求められる。
「(ふぅ……疲労感が凄いな……まだ2科目が始まったところなのに。今日は数学、英語、基礎科学。旧主要5科目 (社会は少し苦手だけど)とサイクス学の座学は良しとして力をあまり入れてない副教科とアウター・サイクスを維持しつつサイクスの操作を要求されるサイクス学・実技が少し不安だな……)」
瑞希は現在、50PBの状態で約2時間、200PBの状態で3-4時間、アウター・サイクスの維持を可能にするまでに成長した。しかし、それは本人のコンディションがベストの状態の時であってその時間は変動する。
一方で和人は既にアウター・サイクスをマスターしている。あとは試験での緊張感でもそれを維持出来るかに焦点が当てられている。
いずれにせよ2人の成長速度は予想を遥かに超えており、特に和人はこれまでの超能力者の中でもトップに君臨する程の効率的なサイクスの使用者となれる潜在能力を秘めている。また、武術を幼い頃から学んでいる和人は既に本格的な体術の訓練を中間試験後には開始する予定である。
「(……ふぅ。最後の問題はこんな感じかな)」
瑞希は英語の最終問題である自由英作文を書き終え、少し伸びをしようとしたところで監督の教師から終わりの合図がかかる。
「はい、そこまで。回答入力をやめて下さい」
試験官はホログラムに何やら入力し、各生徒の回答データを試験官の持つデバイスに自動送信させる。
「(嘘!? もう終わり? 見直しの時間取れないくらい解くのに時間かかっちゃうなんて……疲れが溜まり具合が普段と比べものにならない)」
アウター・サイクスを実行しながらの試験にいつもとの大きな違いを感じ驚愕する。
「(数学、英語それぞれ60分でその間の休み時間が10分。まだ2時間と少しなのに……)」
瑞希は試験中に気が散ったり、カンニング防止の為にp-Phoneを発動していない。つまり、200PBの状態で臨んでいる。
「(学校の試験程度の緊張でこんなに差が出てくるとなると更なる極限状態だと30分も保たないかもしれない)」
#####
瑞希は中間試験の全日程を終了した。不安視していたサイクス学・実技では2日目の1限目であったことから比較的体力が残っている状態で受けることが出来た為、余裕でこなすことが可能であった。
「瑞希、どうだった?」
欠伸をしながら綾子が瑞希に尋ねる。
「うーん、まぁまぁかな。疲れちゃった」
「流石に3日間はキツいよね……次はクラスマッチかぁ。明日から練習だね」
瑞希はそこでクラスマッチの存在を思い出した。流石に練習には参加しないとまずいので訓練の開始時間をずらしてもらおうと考えながら綾子と会話を交わし、自宅へと向かった。
#####
「OK。2人とも2週間でかなり成長したわね。瑞希はもう少し精度をあげる必要があるけど今の段階では上出来よ。和人は完璧ね」
サイクス第二研究所の訓練室で花が2人に告げる。本心から素直に2人を賞賛した。
「2人ともアウター・サイクスの練習はしつつ、次のインナー・サイクスに移るわよ」
そう言って花は肉体から溢れているサイクスを全て身体の内側に留めた。
「基本的にアウター・サイクスを始めた時と同じで自分のサイクスをしっかりと感じてそれを全て身体に留めるイメージよ」
花の言葉に耳を傾けながら2人は目を閉じてサイクスを感じる。
「(これが私のサイクス……)」
瑞希はサイクスをしっかりと感じ取る。この2週間、通常時とp-Phone発動時の切り替えを何度もしてきたのである程度の違いを感じ、慣れることが出来てきた。
「(でも何だか少し違う……)」
"ある程度"の違いを感じられるようにはなったが決定的な"何か"が足りない。高級料理店の料理を真似しようにも何かが足りない。それは調味料の違いなのか、素材の違いなのか。そういった感覚に近いものである。1つのキッカケで劇的に変わる。その感覚はあるものの瑞希は完全には掴みきれていなかった。
「瑞希、まだ微弱なサイクスが身体から漏れ出ているわよ。抑え込もうと力を入れない。あくまでも自然に」
「はい」
瑞希の集中が若干乱れる。自然体を意識すればするほどサイクスが暴れ始める。
「(そもそもp-Phoneを出している状態だとそこに大半をリソースを割いている状態、通常時にはその膨大なサイクスを抑え込むという多大なストレスがかかる。極端に違う2つの状態を15歳の女の子が一気にコントロールしようとしている。しかもキッカケを掴む手前まで来ている)」
花は和人の方を向いてその目を疑った。
サイクスを完全に体内に抑え込んでいる。和人はそのまま目を開き、花を真っ直ぐに見つめた。
「素晴らしい」
思わず花が声を漏らす。
和人は少し微笑み、
「サイクスが自分の中で回復しているのが分かります。まるでサイクスの臓器が新しく出来た見たい」
和人は既にインナー・サイクスを自分のものにしてしまった。
一方の瑞希は数分間出来たかと思うと直ぐに暴発してしまう。まだサイクスを完全に支配出来ていないのは一目瞭然であるが必死に掴み取ろうとしている。
「いいえ。2人とも予想以上の出来よ」
自然消費することから分かるように基本的にサイクスは体外へと放出されようという力が働く。この力はサイクスの量に比例し、2人は大量のサイクスを持つ為この力が一般的な超能力者よりも大きく働く。
この事とサイクスを抑え込む場所の距離がアウター・サイクスよりも長い為にインナー・サイクスの方がより難しいとされる。
「和人はその技術を常に出来るようにする事と切り替えを素早く出来るようにする事に集中しましょう。そして体術の訓練も始めましょう。新しいサイクスの技術は瑞希がもう少し出来るようになってからね」
「はい」
膝に両手をつき、肩で息をする瑞希に花は優しく話しかける。
「あなたも素晴らしいわ。普通、初挑戦でインナー・サイクスは形すら出来ないものよ。瑞希はゆっくりで良いからサイクスの感覚をより正確に掴んで練習をしましょうね」
「はい」
疲れ切ってはいるもののしっかりと瑞希は返事をした。
––––瑞希が返事をしたほぼ同時刻、新たな後天性超能力者が第3地区に出現した。
瑞希の初訓練から2週間が経ち、東京第三地区高等学校では中間試験初日を迎えている。試験中であってもアウター・サイクスを維持したまま臨んでいる。緊張感と別の集中力を要求される中での持続力を求められる。
「(ふぅ……疲労感が凄いな……まだ2科目が始まったところなのに。今日は数学、英語、基礎科学。旧主要5科目 (社会は少し苦手だけど)とサイクス学の座学は良しとして力をあまり入れてない副教科とアウター・サイクスを維持しつつサイクスの操作を要求されるサイクス学・実技が少し不安だな……)」
瑞希は現在、50PBの状態で約2時間、200PBの状態で3-4時間、アウター・サイクスの維持を可能にするまでに成長した。しかし、それは本人のコンディションがベストの状態の時であってその時間は変動する。
一方で和人は既にアウター・サイクスをマスターしている。あとは試験での緊張感でもそれを維持出来るかに焦点が当てられている。
いずれにせよ2人の成長速度は予想を遥かに超えており、特に和人はこれまでの超能力者の中でもトップに君臨する程の効率的なサイクスの使用者となれる潜在能力を秘めている。また、武術を幼い頃から学んでいる和人は既に本格的な体術の訓練を中間試験後には開始する予定である。
「(……ふぅ。最後の問題はこんな感じかな)」
瑞希は英語の最終問題である自由英作文を書き終え、少し伸びをしようとしたところで監督の教師から終わりの合図がかかる。
「はい、そこまで。回答入力をやめて下さい」
試験官はホログラムに何やら入力し、各生徒の回答データを試験官の持つデバイスに自動送信させる。
「(嘘!? もう終わり? 見直しの時間取れないくらい解くのに時間かかっちゃうなんて……疲れが溜まり具合が普段と比べものにならない)」
アウター・サイクスを実行しながらの試験にいつもとの大きな違いを感じ驚愕する。
「(数学、英語それぞれ60分でその間の休み時間が10分。まだ2時間と少しなのに……)」
瑞希は試験中に気が散ったり、カンニング防止の為にp-Phoneを発動していない。つまり、200PBの状態で臨んでいる。
「(学校の試験程度の緊張でこんなに差が出てくるとなると更なる極限状態だと30分も保たないかもしれない)」
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瑞希は中間試験の全日程を終了した。不安視していたサイクス学・実技では2日目の1限目であったことから比較的体力が残っている状態で受けることが出来た為、余裕でこなすことが可能であった。
「瑞希、どうだった?」
欠伸をしながら綾子が瑞希に尋ねる。
「うーん、まぁまぁかな。疲れちゃった」
「流石に3日間はキツいよね……次はクラスマッチかぁ。明日から練習だね」
瑞希はそこでクラスマッチの存在を思い出した。流石に練習には参加しないとまずいので訓練の開始時間をずらしてもらおうと考えながら綾子と会話を交わし、自宅へと向かった。
#####
「OK。2人とも2週間でかなり成長したわね。瑞希はもう少し精度をあげる必要があるけど今の段階では上出来よ。和人は完璧ね」
サイクス第二研究所の訓練室で花が2人に告げる。本心から素直に2人を賞賛した。
「2人ともアウター・サイクスの練習はしつつ、次のインナー・サイクスに移るわよ」
そう言って花は肉体から溢れているサイクスを全て身体の内側に留めた。
「基本的にアウター・サイクスを始めた時と同じで自分のサイクスをしっかりと感じてそれを全て身体に留めるイメージよ」
花の言葉に耳を傾けながら2人は目を閉じてサイクスを感じる。
「(これが私のサイクス……)」
瑞希はサイクスをしっかりと感じ取る。この2週間、通常時とp-Phone発動時の切り替えを何度もしてきたのである程度の違いを感じ、慣れることが出来てきた。
「(でも何だか少し違う……)」
"ある程度"の違いを感じられるようにはなったが決定的な"何か"が足りない。高級料理店の料理を真似しようにも何かが足りない。それは調味料の違いなのか、素材の違いなのか。そういった感覚に近いものである。1つのキッカケで劇的に変わる。その感覚はあるものの瑞希は完全には掴みきれていなかった。
「瑞希、まだ微弱なサイクスが身体から漏れ出ているわよ。抑え込もうと力を入れない。あくまでも自然に」
「はい」
瑞希の集中が若干乱れる。自然体を意識すればするほどサイクスが暴れ始める。
「(そもそもp-Phoneを出している状態だとそこに大半をリソースを割いている状態、通常時にはその膨大なサイクスを抑え込むという多大なストレスがかかる。極端に違う2つの状態を15歳の女の子が一気にコントロールしようとしている。しかもキッカケを掴む手前まで来ている)」
花は和人の方を向いてその目を疑った。
サイクスを完全に体内に抑え込んでいる。和人はそのまま目を開き、花を真っ直ぐに見つめた。
「素晴らしい」
思わず花が声を漏らす。
和人は少し微笑み、
「サイクスが自分の中で回復しているのが分かります。まるでサイクスの臓器が新しく出来た見たい」
和人は既にインナー・サイクスを自分のものにしてしまった。
一方の瑞希は数分間出来たかと思うと直ぐに暴発してしまう。まだサイクスを完全に支配出来ていないのは一目瞭然であるが必死に掴み取ろうとしている。
「いいえ。2人とも予想以上の出来よ」
自然消費することから分かるように基本的にサイクスは体外へと放出されようという力が働く。この力はサイクスの量に比例し、2人は大量のサイクスを持つ為この力が一般的な超能力者よりも大きく働く。
この事とサイクスを抑え込む場所の距離がアウター・サイクスよりも長い為にインナー・サイクスの方がより難しいとされる。
「和人はその技術を常に出来るようにする事と切り替えを素早く出来るようにする事に集中しましょう。そして体術の訓練も始めましょう。新しいサイクスの技術は瑞希がもう少し出来るようになってからね」
「はい」
膝に両手をつき、肩で息をする瑞希に花は優しく話しかける。
「あなたも素晴らしいわ。普通、初挑戦でインナー・サイクスは形すら出来ないものよ。瑞希はゆっくりで良いからサイクスの感覚をより正確に掴んで練習をしましょうね」
「はい」
疲れ切ってはいるもののしっかりと瑞希は返事をした。
––––瑞希が返事をしたほぼ同時刻、新たな後天性超能力者が第3地区に出現した。
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