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サイクスの効率化編

第18話 - アウター・サイクスとインナー・サイクス

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「2人は今日、超能力を使わないで過ごしたわね? その時サイクスはどうなっていたか分かる?」

 2人は少し考えた後、瑞希が小さな声で言った。

「超能力者の身体の周りには常にサイクスが流れているとは思うけど……実際私たちは今、超能力を使ってない状態なわけだし」
「その通り。じゃあ改めてお互い今の状態を見て詳しく説明してみて」

 瑞希と和人は向き合ってお互いのサイクスを確認し合う。

「和人くん、サイクスが身体の周りを常に立ち込めてる」
「瑞希も。それにあらゆる方向に伸びて行ってる感じかなそれで……」

「外側に蒸発していってる感じ……?」

 2人は同時に言った。
 花はニッコリとして頷いた。

「じゃあ今度は私のを観察してみようか」

 そう言われると2人は花の肉体の周りのサイクスを見つめた。

「あれ? 何か先生のちょっと違う」
「どう違うか説明してみて?」
「なんて言うか、先生のは常に一定にサイクスが流れてて……」
「先生の身体の周りに沿っている感じ……?」

 瑞希と和人のサイクスはアメーバ状の形に広がって蒸発していくが、花のサイクスは常に一定に花の身体を型取っている。

「大体そんなところよ。これはアウター・サイクスと言われる技術でサイクスを肉体の周りに留まらせて無駄な消費を抑えるものよ」
「無駄な消費を抑えるって言うか、先生は完全に0じゃなかった?」

 瑞希がすかさず花に疑問を投げかける。

「そうね。訓練すれば限りなく0に抑えることが出来る。けど、完全に0にすることは不可能よ」
「じゃあどうやって徳田先生は消費を全くの0にしたんですか?」

 和人も質問する。
 2人が次々と疑問を呈して来る様子を見て花が新たな技術を見せる。

「じゃあ今度はこれを見て」

 そう言うと花の肉体にみなぎっていたサイクスが完全に無くなる。

「!?」

 瑞希と和人は驚き目を丸くする。

「ふふ。ビックリした? 今のこの状態はインナー・サイクスと呼ばれるものよ」
「インナー・サイクス……サイクスを体内に留める感じ?」
「そう! サイクス全てを体内に留めて自然消費を完全に抑え、更に消費したサイクスの回復を促すの。普段、サイクスはどの様にして回復してるか分かるわよね?」
「えっと……睡眠時とか精神的に落ち着いていたり、身体を休めていたりする時ですよね」
「その通り。でもそれって安定しないわよね? 特に最後の項目。また、回復量も一定じゃないしね」

 「確かに」と2人は頷く。人間はその日の睡眠の質や量、休息の質によってサイクスの回復量が変わる。これを一定にすることは至難の業である。

「そこでインナー・サイクスを使うことでサイクスを完全回復し、それを維持することが出来るのよ」

 一通り説明した後、花が両手をパンッと叩き指示を出す。

「さぁ、2人にはこれから1時間、普段の状態のままで過ごしてもらうわ」
「これからそのアウター・サイクスやインナー・サイクスのやり方を習うんじゃないんですか」
「まぁまぁ焦らない、焦らない。今、私たちにはピボットっていう便利なマスコットがいるわけだから、2人が1時間でサイクスをどの程度消費するのかを正確に測りたいのよ」

 瑞希は34PB、和人は146PBでのスタートだ。2人は高校生活の話に花を咲かせるなど適当に時間を潰した。

「(優秀ね……2人とも考える力がしっかりついてる。そしてこういう指示を出されるとどうしても意識してサイクスが反応してしまうものだけど普段通りに過ごせてる。精神的にも安定している証拠ね。特に和人の方。彼は素質がある。この最初の訓練、彼の方が向いているのかも)」


––––1時間後


「1時間が経過したわ。さぁ、2人ともどうかしら」

 瑞希と和人はピボットに現在のサイクス量を尋ねた。

「瑞希が31.3PB。和人が145.4PBだね。ちなみに花はアウター・サイクスを解除して109.1PBだね」
「と言うことは1時間で瑞希は2.7PB、和人は0.6PBの消費ね。大体瑞希は1時間で2.5PB、和人は0.5PBってところね。2人の1時間当たりのサイクス消費は5倍差があるってことね」

 瑞希が小さく呟く。

「結構差があるんだね」
「サイクスの自然消費が少ないのも1つの才能よ。そして直面する環境によってその消費は大きく変動する。危険な状況を前にすると自然消費が10倍以上に跳ね上がったりするものよ。もちろん個人差があるけどね」

 ピボットが口を挟む

「僕が周りを観察した限り、大体平均は1.0ってところだね。瑞希の高校の中では瑞希の自然消費はトップレベルに多いよ。逆にこれまで見てきた中で和人は最も少ないね」
「和人くん凄い!」

 瑞希が感嘆の声を上げる。

「一般的にサイクスの自然消費が多い程、アウター・サイクスは難しくなるのよ」

 ケケケとピボットが笑う。

「先生、まずはどうすれば良いの?」

 瑞希は目を輝かせながら聞く。

「それじゃあ2人とも、目を閉じて自分のサイクスを意識して」

 言われた通りに2人は目を閉じる。

「サイクスを身体の周りに留めるイメージを持ちながら構えてみて。なるべく自然体で!」

 2人は自然体でサイクスを意識する。

「そのままサイクスが自分の身体の一部であるように意識して! 外に逃さないように!」

 しばらくしてサイクスが2人の肉体の周りを一定に流れ始める。

「(素晴らしい……! 2人ともサイクスのイメージを完璧に掴み、一回の指示でマスターし始めている……! 特に和人。彼はまるで昔から知っていたかのよう。瑞希も素晴らしい出来だけど恐らくこれまで扱ってきたサイクス量の違いに戸惑いを感じてるわね)」

「和人、そのイメージを持ったまま続けて。瑞希は一旦解いて良いわよ」

 和人はそのままの態勢で目を開け、アウター・サイクスを続ける。
 一方の瑞希は表情に疲れが見える。

「和人くん凄い……」

 息を切らしながら瑞希が呟く。

「和人はアウター・サイクスを常に続けて日常を過ごして。疲れたら一旦解除してまた始めること」

 和人は静かに頷く。

「瑞希はこれから毎日常にp-Phoneを出した状態で過ごして50PBの状態に慣れること。それに慣れたらp-Phoneを出した状態でアウター・サイクス。そして1日2時間、p-Phoneを出していない状態でアウター・サイクスをすること」
「はい」
「200PBの状態でのアウター・サイクスと50PBの時とでは感覚が違って疲れるかもしれないから無理はしないこと。良いわね?」
「分かりました」

 花は頷いた後、

「2人とも来週、同じ時間にここへ来てちょうだい。瑞希は3日後に1回来てちょうだい。2人ともアウター・サイクスを解除した回数を1日毎に記録すること」

 2人は頷き、本格的にサイクスの訓練がスタートした。

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