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政府からの手紙編

第14話 - 休学明け

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 瑞希は1階のリビングへ向かった。
 テーブルには愛香、玲奈、翔子の3人が着き、談笑をしていた。

「瑞希ちゃん、大丈夫?」

 瑞希にいち早く気付いた玲奈が瑞希を気にかける。

「玲奈さん、心配かけてごめんなさい。やっぱりまだ辛いけど……」
「そうよね。ゆっくりで良いから前に進もうね」

 瑞希は3人に自身の超能力を説明するためにp-Phoneを生成した。

「瑞希、これは……?」

 愛香がp-Phoneとその画面に映っているピボットを不思議そうに眺めながら尋ねた。

「やぁ、ボクの名前はピボット。じゃあ、これからボクのことを説明するよ」

 それからピボットは3人にp-Phoneと瑞希の超能力について説明を始めた。

「……とんでもない超能力ちからね……」
「えぇ……それに代償もとても大きい」

「(これは……典型的なFrom型超能力……!)」

 阿部は瑞希の超能力について考察を始める。 

「(更に瑞希ちゃんのサイクス、ピボットには明確な意思がある。更に超能力の名前まで決めて……!)」

 ピボットのように意思を明確に表明する超能力は非常に稀である。この場合、瑞希の潜在意識を汲み取りつつ意見を発することが多い。これは意思とサイクスがより深い関係を構築していることを示し、瑞希は自身の力を最大限発揮し易いことを表す。

 また、一般的に超能力の名前を付けることで使用する意思を明確に示し、超能力の精度を上げる。これは『意思とサイクスは密接に関係する』という定説に沿っている。
 その超能力名を瑞希のサイクスであるピボットが名付けたことでサイクスの意思が色濃く反映されており、より強力な超能力となる。

「(サイクスの意思と超能力者の意思の融合。練度を上げれば恐ろしい超能力になる……!)」

 3人は瑞希の超能力の強大さとその発動条件の複雑さに息を飲む。

「とりあえずこの事、上には報告しないといけないわね」
「そうね。上の懸念点は瑞希ちゃんの超能力の事だったから。それで花さんをわざわざ学校に派遣していたわけだし」
「あ、やっぱり私の監視が目的だったんだ」

 瑞希が2人の会話に口を挟む。

「そうよ、愛香、そろそろ瑞希ちゃんの目のことも伝えないと。残留サイクスを見られるだけじゃなくて個々人のサイクスの特徴まで分類できること」
「そうね……もう隠しきれないし」
「お取り込み中のところ申し訳ないけど、ボクのもう1つの便利能力の説明をして良いかい?」

 そこにピボットが更なる説明をし始めた。

「3人のお姉さんたち、1人ずつ携帯を片手に持ちながらp-Phoneに手をかざしてサイクスを流し込んでみて」

 愛香、玲奈、翔子の3人は片手に携帯を持ちながら順にp-Phoneに手をかざし、自身のサイクスを流し込んだ。

––––月島愛香のAddressアドレスContactコンタクト に保存しますか?

「YES」

––––坂口玲奈のAddressアドレスContactコンタクト に保存しますか?

「YES」

––––阿部翔子のAddressアドレスContactコンタクト に保存しますか?

「YES」

 一通りのやり取りが終わった後、3人の携帯が一瞬光った。すると愛香の携帯画面にピボットが現れた。

「ピボちゃん!?」

 瑞希は少し驚いた声を上げた。他の3人も同様である。

「あはは。驚いた? 別に3人が瑞希の超能力を使えるなんてトンデモないことが起こるなんてことはないよ。Contactコンタクトに登録された超能力者の携帯画面にボクが現れてメッセンジャーの役割が出来るようになるんだ」

 「便利ねぇ……」と玲奈が呟く。感心している玲奈を尻目に愛香がピボットに尋ねた。

「ピボちゃん、その場合、瑞希のサイクス消費量はどうなるの?」
「聞かれると思ったよ。最初に1PBが消費されて15分毎に1PBずつ消費されていくよ。そしてこのサイクスは瑞希の50PBから消費されるわけじゃなくて、複写コピーした超能力の使用に使われる50PBから消費されるから安心してね」
「そこは意外と良心的なのね」
「これに関しては瑞希の目の力が大きいんだけどね」

 その時、ピボットが思い出したかのように手を叩いた。

「そうだ、瑞希。これはとっても重要なことなんだけど」
「何、ピボちゃん」
「残念ながら後天性超能力者の超能力ちから複写コピーすることは出来ないんだ」
「……って言うことは」
「そう、愛香の超能力を複写コピーする事は出来ない」

 瑞希は頷いた後にピボットに尋ねた。

「他にこの超能力ちからに関して説明はあるの?」
「ボクからは以上だ。改めてよろしくね、瑞希。それから皆んなも」

 そう言ってピボットは4人に向かってウインクした。


#####


 世間を震撼させた事件があってから今日で2週間が経った。そしてその真犯人が私のクラスメイトの女生徒でそれを止めたのが幼馴染みの女生徒だったと言う。
 2人は特別教育機関で教育を受けた優等生で学校全体のマドンナだというのだから驚きだ。

「今日は月島さん来るのかなぁ……」

 西条綾子は隣の席とその後ろの席を眺めながら小さく呟いた。

 事件があるまで2人は男女問わず憧れの的だった。超能力者の中でもサイクスの扱いに優れ、それ以外の項目でも優秀だったのだから当たり前だ。
 しかし、事件後生徒たちは憧れの対象として正しいのか疑念を抱いた。そのうちの1人が10人ほど人間を殺害していたのだから。
 瑞希も例外ではない。そんな殺人鬼を1人で止めた。本来なら賞賛されるべき事だが大概の生徒はその力に恐怖を抱いた。

「(月島さんのことまで恐怖の対象にするなんて絶対に間違ってる)」

 西条は瑞希が菜々美を止めたその日に一緒にLuluに行き、パフェを食べた時のことを思い出していた。

「(あんな可愛らしくて良い子、皆んなが不安に思うことなんてないわ)」

 その時、教室の扉が開いた。そこには皆が認める程の美しい女生徒が入って来た。月島瑞希だ。
 クラスの視線が一気に月島瑞希へと注がれた。
 瑞希はそんな視線を一切気にせず自分の席へと向かった。そして自分の後ろの席をチラッと見た後、鞄を置いて席に着いた。

「あの、月島さ……」

 西条が瑞希に声をかけ終わるか終わらないかで瑞希がニコッとして西条に話しかけた。

「西条さん、この間行ったお店のパフェ美味しかったよね! もし良かったらう1回一緒に行こうよ!」

 西条は予想外の瑞希の明るさに驚きを隠せなかったが、笑顔で答えた。

「うん! 行こ!」

 その様子を見たクラスメイトは少し安心したのかいつもの日常が流れ始めた。
 こっそりと具現化されていたp-Phoneの画面でピボットが瑞希に向かってニッコリと微笑みかけていた。


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