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政府からの手紙編
第12話 - その後
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「その後、瑞希ちゃんの様子は?」
休暇を取り、月島宅へ寄った坂口は愛香に瑞希の様子を尋ねた。
「怪我の方は幸いにも致命傷が無くてすぐに退院できたの。けど……」
「精神的な面ね」
「そうなの……」
菜々美の逮捕から既に2週間が過ぎようとしていた。
身体的なダメージはほぼ回復したが、7歳からの幼馴染みの本性を目の当たりにし、死闘を繰り広げたことへの精神的ショックはとても重いものとなった。
「玲奈、上野の様子は? 知ってる?」
「ほぼ何も話していないそうよ」
「そう……」
*****
「松下《まつした》 隆志《たかし》について知りたいことがあったら会いに来てね、お・ね・え・ちゃ・ん♡」
*****
菜々美の最後の言葉が脳裏から離れない。
「松下隆志のことね?」
「えぇ……」
"松下隆志"
この名を愛香は4年前の悲惨な事件以来、忘れたことは一度もなかった。
既に両親を殺害した実行犯は既に逮捕している。その名は"川田《かわだ》 洋《よう》。愛香の超能力・"2人でお茶を"により両親の最期の風景を共有、川田の痕跡を見つけ、そのまま逮捕へと至った。
元々、超能力者ではなかった川田だが松下隆志の存在を仄めかし彼の超能力によって自分は開花され、彼の指示によって実行へと至った。そして川田は獄中で謎の死を遂げた。自殺の痕跡は無く、何者かの超能力ではないかとされているが方法などは明らかになっていない。
超能力を有していない者にサイクスを発生させ、更に固有の超能力まで発現させる。この様な事例はこれまでに無い。
タイプ的には特異型超能力である可能性が高いが、こういった類の超能力の場合、既に超能力を扱える者の超能力《ちから》を強化することが一般的だ。
未だ松下隆志の足取りは掴めていない。
何故、菜々美が彼について知っているのか。謎は多い。
「解禁されたら面会するんでしょ?」
「もちろん」
「素直に話せば良いけど」
#####
瑞希はベッドの上でぼーっと天井を眺めていた。
「とんでも無いことになっちゃったな……」
菜々美との思い出に耽《ふけ》る。
思い浮かぶ顔は全て笑顔で溢れた美しいもので埋め尽くされる。しばらくそういった思い出に浸った後、恐ろしい笑顔で近付いてキスしてきた菜々美の顔が思い出され、少し顔を赤らめつつも震えてしまう。
「怖かったな……」
その時、瑞希の超能力によって具現化されたp-Phoneが出現し、マスコットキャラのピボットが話しかける。
「瑞希、少しは落ち着いたかい?」
手を下顎に当てながら話しかけてくるピボットの方を目を細めながら振り向く。
「あなた……私の意思に反して勝手に出てくるの?」
ピボットは少し溜息をついて返答する。
「勝手にだなんて心外だなぁ。ボクらサイクスは人間の意思と深く関わっているっていのは知っているよね? ボクが勝手に出現した様に見えて瑞希、キミは深層心理ではボクを求めていたんだよ」
「そうかしら?」
「そうだよ。まぁ正確には話し相手が欲しかったんじゃないかな?」
「確かに……」そう小さく呟いた瑞希はピボットを見据える。
「ねぇ……ピボット」
ピボットが美しい金色の瞳を大きく見開いて応答した。
「どうしたの?」
「私、あれで良かったのかな?」
「瑞希、あれ以外に方法は無かったと思うよ。そうじゃなきゃキミは"病みつき幸せ生活"で彼女に支配されるようになっていたよ」
「それはそうなんだけど……」
「頭では分かってるけどっていうニンゲンがよく陥るやつだね」
「感情と深い関わりがあるのに感情が分からないのね」
「アハハ。とっても皮肉が効いてるね。ボクは感情に反応するだけであって感情そのものではなくて瑞希のサイクスだからね」
ふうっと息を吐いた瑞希は小さく呟いた。
「なっちゃんともっと違うように接するべきだったのかなぁ……」
「それでも周りから見ればキミたちは素晴らしい関係性だったし、当人たちにとってもベストなものだったと思うよ」
「うーん……」
「でもね、瑞希、キミの周りは菜々美だけじゃないでしょ? お姉さんだって学校のクラスメイトだって大切な人は沢山いるはずだよ」
「口が上手いのね」
瑞希はそう悪態をつきながらもピボットの言っていることが正しく、また自分が救われていることにも気付いた。
サイクスは人の意思に深く関わりを持っている。現在《いま》ピボットが私にかけている言葉も実は自分の深層心理で自分が望んでいる言葉を代弁しているだけなのかもしれない。
それでも今の瑞希にとって心が救われる言葉であることには変わりはない。
「素直に言葉を受け取るのも良いのかもね」
「それで良いんだよ」
ピボットは瑞希に向けてサムズアップし笑顔を向ける。
それを見て瑞希はニッコリと笑ってみせた。
「瑞希、キミはやっぱり笑顔の方が可愛いよ」
「それも私が言って欲しい言葉なのかな?」
「いやいや、これはボクの本心だよ」
何とも言えない感情を持ちながら瑞希はピボットに話しかけた。
「ピボちゃん」
「ピボちゃんって……」っと少し照れながらピボットは返事をした。
「なぁに?」
「そう言えば私、まだあなたのことやこのp-Phoneのこと、超能力のことを
詳しく聞いてなかったわ」
「そう言えばそうだね」
欠伸《あくび》をしながらピボットは答える。
「教えてよ。あなたたちの事。もっと詳しく」
「勿論だよ!」
ピボットは目を輝かせて瑞希の方を向き、笑顔を向けて自慢気に言った。
「キミの超能力《ちから》は凄いんだから! 驚くよ!」
休暇を取り、月島宅へ寄った坂口は愛香に瑞希の様子を尋ねた。
「怪我の方は幸いにも致命傷が無くてすぐに退院できたの。けど……」
「精神的な面ね」
「そうなの……」
菜々美の逮捕から既に2週間が過ぎようとしていた。
身体的なダメージはほぼ回復したが、7歳からの幼馴染みの本性を目の当たりにし、死闘を繰り広げたことへの精神的ショックはとても重いものとなった。
「玲奈、上野の様子は? 知ってる?」
「ほぼ何も話していないそうよ」
「そう……」
*****
「松下《まつした》 隆志《たかし》について知りたいことがあったら会いに来てね、お・ね・え・ちゃ・ん♡」
*****
菜々美の最後の言葉が脳裏から離れない。
「松下隆志のことね?」
「えぇ……」
"松下隆志"
この名を愛香は4年前の悲惨な事件以来、忘れたことは一度もなかった。
既に両親を殺害した実行犯は既に逮捕している。その名は"川田《かわだ》 洋《よう》。愛香の超能力・"2人でお茶を"により両親の最期の風景を共有、川田の痕跡を見つけ、そのまま逮捕へと至った。
元々、超能力者ではなかった川田だが松下隆志の存在を仄めかし彼の超能力によって自分は開花され、彼の指示によって実行へと至った。そして川田は獄中で謎の死を遂げた。自殺の痕跡は無く、何者かの超能力ではないかとされているが方法などは明らかになっていない。
超能力を有していない者にサイクスを発生させ、更に固有の超能力まで発現させる。この様な事例はこれまでに無い。
タイプ的には特異型超能力である可能性が高いが、こういった類の超能力の場合、既に超能力を扱える者の超能力《ちから》を強化することが一般的だ。
未だ松下隆志の足取りは掴めていない。
何故、菜々美が彼について知っているのか。謎は多い。
「解禁されたら面会するんでしょ?」
「もちろん」
「素直に話せば良いけど」
#####
瑞希はベッドの上でぼーっと天井を眺めていた。
「とんでも無いことになっちゃったな……」
菜々美との思い出に耽《ふけ》る。
思い浮かぶ顔は全て笑顔で溢れた美しいもので埋め尽くされる。しばらくそういった思い出に浸った後、恐ろしい笑顔で近付いてキスしてきた菜々美の顔が思い出され、少し顔を赤らめつつも震えてしまう。
「怖かったな……」
その時、瑞希の超能力によって具現化されたp-Phoneが出現し、マスコットキャラのピボットが話しかける。
「瑞希、少しは落ち着いたかい?」
手を下顎に当てながら話しかけてくるピボットの方を目を細めながら振り向く。
「あなた……私の意思に反して勝手に出てくるの?」
ピボットは少し溜息をついて返答する。
「勝手にだなんて心外だなぁ。ボクらサイクスは人間の意思と深く関わっているっていのは知っているよね? ボクが勝手に出現した様に見えて瑞希、キミは深層心理ではボクを求めていたんだよ」
「そうかしら?」
「そうだよ。まぁ正確には話し相手が欲しかったんじゃないかな?」
「確かに……」そう小さく呟いた瑞希はピボットを見据える。
「ねぇ……ピボット」
ピボットが美しい金色の瞳を大きく見開いて応答した。
「どうしたの?」
「私、あれで良かったのかな?」
「瑞希、あれ以外に方法は無かったと思うよ。そうじゃなきゃキミは"病みつき幸せ生活"で彼女に支配されるようになっていたよ」
「それはそうなんだけど……」
「頭では分かってるけどっていうニンゲンがよく陥るやつだね」
「感情と深い関わりがあるのに感情が分からないのね」
「アハハ。とっても皮肉が効いてるね。ボクは感情に反応するだけであって感情そのものではなくて瑞希のサイクスだからね」
ふうっと息を吐いた瑞希は小さく呟いた。
「なっちゃんともっと違うように接するべきだったのかなぁ……」
「それでも周りから見ればキミたちは素晴らしい関係性だったし、当人たちにとってもベストなものだったと思うよ」
「うーん……」
「でもね、瑞希、キミの周りは菜々美だけじゃないでしょ? お姉さんだって学校のクラスメイトだって大切な人は沢山いるはずだよ」
「口が上手いのね」
瑞希はそう悪態をつきながらもピボットの言っていることが正しく、また自分が救われていることにも気付いた。
サイクスは人の意思に深く関わりを持っている。現在《いま》ピボットが私にかけている言葉も実は自分の深層心理で自分が望んでいる言葉を代弁しているだけなのかもしれない。
それでも今の瑞希にとって心が救われる言葉であることには変わりはない。
「素直に言葉を受け取るのも良いのかもね」
「それで良いんだよ」
ピボットは瑞希に向けてサムズアップし笑顔を向ける。
それを見て瑞希はニッコリと笑ってみせた。
「瑞希、キミはやっぱり笑顔の方が可愛いよ」
「それも私が言って欲しい言葉なのかな?」
「いやいや、これはボクの本心だよ」
何とも言えない感情を持ちながら瑞希はピボットに話しかけた。
「ピボちゃん」
「ピボちゃんって……」っと少し照れながらピボットは返事をした。
「なぁに?」
「そう言えば私、まだあなたのことやこのp-Phoneのこと、超能力のことを
詳しく聞いてなかったわ」
「そう言えばそうだね」
欠伸《あくび》をしながらピボットは答える。
「教えてよ。あなたたちの事。もっと詳しく」
「勿論だよ!」
ピボットは目を輝かせて瑞希の方を向き、笑顔を向けて自慢気に言った。
「キミの超能力《ちから》は凄いんだから! 驚くよ!」
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