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覚醒編
第6話 - 宝探し
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瑞希は高校を出ていつものように通学路を歩き、東京都第3地区4番駅へと向かっていた。
「(あ、4番駅地下街に新しく出来たっていうパフェ食べに行こっかな)」
東京都第3地区は計15の駅がある。
それぞれの駅には地下街が広がり、人々はフードコートやアパレル店、スイーツ店など多岐に亘る店鋪を楽しむことができる。
15の地下街の中でも4番駅地下街は最も規模が広く、女子高生にとってはファッションやスイーツの流行の中心である。
「月島さんヤッホー。あれ? ななちゃん一緒じゃないの?」
瑞希のクラスメイトである西条 綾子と他クラスの女子2人が10日程前に新しくオープンしたスイーツ店"Lulu"に入店するところだった。
「うん、なっちゃん今日はおじいちゃんのお見舞い行ったよ」
「そうなんだ。良かったら一緒にどう?」
「もちろん」
西条は店員に人数を伝え、瑞希を含めた4人で奥のテーブルへと向かった。
「こちら1年5組の林 成美ちゃんと遠藤 恭子ちゃん。中学校一緒だったんだ」
髪の毛を二つ結びにして眼鏡をかけて知的そうな雰囲気のある林とウルフカット気味にした活発そうな遠藤は2人とも笑顔で「よろしく」と瑞希に声をかける。
「よろしくねー。初めまして、月島瑞希です」
と瑞希も愛想よく返す。
「知ってるよー。月島さん有名だもん」
「月島さんと上野さんの2人目立つもんね」
「あはは。月島さん、この2人月島さんとななちゃんのファンなんだよ」
瑞希は本来少し人見知りなところがあるが、同じクラスメイトで仲の良い西条に人の良さげな林と遠藤が相手だったため比較的リラックスして会話を続けることができた。
4人はそれぞれ注文したパフェを食べながら今日の体力測定テストについての話題に及ぶ。
「体力測定テストキツかった~」
「サイクス使えるなら楽なのに生身の測定だからキツイんだよねぇ」
「私バレないようにちょっと使ったよー」
「てか上野さん、50m走で日本記録出してなかった?」
「あー、あれ超能力使ったんだよ」
「上野さんってとんでもない超能力使いそう……」
「そう言えば私もななちゃんの超能力知らないや」
「んー、簡単に言うと注射打ったら運動神経良くなるんだよ。なっちゃん元から運動神経良いから本気出したらとんでもない記録になるんだよ」
「ってことはあの日本記録もまだまだってこと?」
「ぜーんぜん。注射の量調整しながら使ってたよ」
「あはは。ななちゃん小狡いなー」
瑞希は他の生徒たちも隠れてサイクスを使っていたことを知り、自分も使えば良かったと少しだけ後悔した。
「そう言えば今日珍しく徳田先生、帰りのHRいなかったね」
「あ、確かに。毎日いたのにねー」
「そっか、徳田先生って2人の副担任だもんね。毎日HRいたの?」
「うん。いたよ。今日はいなかったけどね」
その日の全授業が終わると各クラスは帰りのHRを行う。その際、副担任はクラスによっては参加していない時もある。
「月島さんどうしたの?」
瑞希の少し浮かない顔を見た林が尋ねる。
「んーん。そう言えば徳田先生、体力測定テストの後に見てないなって」
「あー確かに。でも今日体力測定テストで潰れてサイクス学なかったもんね~」
「徳田先生、今日はいつも午前中で授業終わるって言ってたはずだよ」
「体力測定テストで疲れて有給取って帰っちゃったんじゃない?」
「なるほど~」
4人はパフェを食べ終え、お互いの連絡先を交換し、少し談笑をした後に別れを告げた。
「月島さん、ありがとね~。また明日ー」
「うん、ありがとう、楽しかったよ!」
駅へ向かおうとした時、愛香から電話がかかってきた。
「もしもしー、お姉ちゃん? どうしたの?」
「みず、あんたまだ学校いる?」
「んーん、駅チカだよ。お友達とパフェ食べてた」
「あぁ、そうなの。遅くならないようにしなさいよ」
「え? それだけ?」
「もう帰ってるなら良いの。じゃあね」
「うん、バイバイ」
瑞希は電話を切った後、胸に支える得体の知れない何かを自分が感じ取っていることに気付いた。
「(これまで必ず放課後まで学校に残っていたのに帰りのHRに参加しなかった。確かに遠藤さんの言っていた通り徳田先生は体力測定テストの後に疲れて有給を取って帰ったかもしれない。でも先生は警察の人だから普通の人より体力はあると思うんだけど……偶然? 考え過ぎ? でも何だか変な感じする……)」
何故気持ち悪さを感じるのか。それは瑞希が菜々美の左腕に付着した徳田の残留サイクスを見たからだ。本来手に触れる程度であれば微量の残留サイクスしか付着しない。が、あの量は明らかに意図して付着させたものだった。
「(何かのサイン……? 徳田先生が身動きを取れない状態で偶然通りがかったなっちゃんにサイクスを付着させたとか……? そうだとしたらマズい状況? )」
「(それにこのことは只の勘だけど……なっちゃんにも何か危険が迫ってる気がする……)」
瑞希の足は自然と学校へと向かっていた。
#####
「(この辺だっけ。最後に徳田先生と話したところ)」
部活動が終わり、グラウンドの整備が始められる中、瑞希は50m走を測定したトラックの近くに立った。
––––"あなたの存在証明"
「(あった)」
徳田の残留サイクスを見つけた後、瑞希は目にサイクスを集中させた。
––––"宝探し"
瑞希は大勢の生徒や教師の残留サイクスの中から徳田の残留サイクスを強調表示させた。
「(どこに続いてるんだろ……)」
瑞希は校庭を離れ体育館裏へと歩いて行った。
「(ここで途切れてる……)」
少し見回した後、瑞希は菜々美の残留サイクスを見つけた。
「(なっちゃんの!? 今度はなっちゃんの追いかけるか……)」
瑞希は菜々美の残留サイクスを追い、東京第三地区高等学校・旧校舎へとたどり着いた。そこは何だか物々しい雰囲気を纏っていた。
「(何だか怖い……)」
*****
「良い? 瑞希。絶対に1人で危ないことなんてしちゃダメよ。ちゃんとお姉ちゃんに伝えること!」
「うん、分かったー」
「お姉ちゃんと約束ね」
「うん!」
*****
「(でもなっちゃんと先生……危ない目に遭ってるかもしれないし……)」
瑞希は少し躊躇したが徳田、特に幼ななじみの菜々美の身に危険が及んでいるかもしれないという不安や焦りから旧校舎へ入ることを決心した。
「行こう」
そう呟いて瑞希は旧校舎の闇へと消えていった。
「(あ、4番駅地下街に新しく出来たっていうパフェ食べに行こっかな)」
東京都第3地区は計15の駅がある。
それぞれの駅には地下街が広がり、人々はフードコートやアパレル店、スイーツ店など多岐に亘る店鋪を楽しむことができる。
15の地下街の中でも4番駅地下街は最も規模が広く、女子高生にとってはファッションやスイーツの流行の中心である。
「月島さんヤッホー。あれ? ななちゃん一緒じゃないの?」
瑞希のクラスメイトである西条 綾子と他クラスの女子2人が10日程前に新しくオープンしたスイーツ店"Lulu"に入店するところだった。
「うん、なっちゃん今日はおじいちゃんのお見舞い行ったよ」
「そうなんだ。良かったら一緒にどう?」
「もちろん」
西条は店員に人数を伝え、瑞希を含めた4人で奥のテーブルへと向かった。
「こちら1年5組の林 成美ちゃんと遠藤 恭子ちゃん。中学校一緒だったんだ」
髪の毛を二つ結びにして眼鏡をかけて知的そうな雰囲気のある林とウルフカット気味にした活発そうな遠藤は2人とも笑顔で「よろしく」と瑞希に声をかける。
「よろしくねー。初めまして、月島瑞希です」
と瑞希も愛想よく返す。
「知ってるよー。月島さん有名だもん」
「月島さんと上野さんの2人目立つもんね」
「あはは。月島さん、この2人月島さんとななちゃんのファンなんだよ」
瑞希は本来少し人見知りなところがあるが、同じクラスメイトで仲の良い西条に人の良さげな林と遠藤が相手だったため比較的リラックスして会話を続けることができた。
4人はそれぞれ注文したパフェを食べながら今日の体力測定テストについての話題に及ぶ。
「体力測定テストキツかった~」
「サイクス使えるなら楽なのに生身の測定だからキツイんだよねぇ」
「私バレないようにちょっと使ったよー」
「てか上野さん、50m走で日本記録出してなかった?」
「あー、あれ超能力使ったんだよ」
「上野さんってとんでもない超能力使いそう……」
「そう言えば私もななちゃんの超能力知らないや」
「んー、簡単に言うと注射打ったら運動神経良くなるんだよ。なっちゃん元から運動神経良いから本気出したらとんでもない記録になるんだよ」
「ってことはあの日本記録もまだまだってこと?」
「ぜーんぜん。注射の量調整しながら使ってたよ」
「あはは。ななちゃん小狡いなー」
瑞希は他の生徒たちも隠れてサイクスを使っていたことを知り、自分も使えば良かったと少しだけ後悔した。
「そう言えば今日珍しく徳田先生、帰りのHRいなかったね」
「あ、確かに。毎日いたのにねー」
「そっか、徳田先生って2人の副担任だもんね。毎日HRいたの?」
「うん。いたよ。今日はいなかったけどね」
その日の全授業が終わると各クラスは帰りのHRを行う。その際、副担任はクラスによっては参加していない時もある。
「月島さんどうしたの?」
瑞希の少し浮かない顔を見た林が尋ねる。
「んーん。そう言えば徳田先生、体力測定テストの後に見てないなって」
「あー確かに。でも今日体力測定テストで潰れてサイクス学なかったもんね~」
「徳田先生、今日はいつも午前中で授業終わるって言ってたはずだよ」
「体力測定テストで疲れて有給取って帰っちゃったんじゃない?」
「なるほど~」
4人はパフェを食べ終え、お互いの連絡先を交換し、少し談笑をした後に別れを告げた。
「月島さん、ありがとね~。また明日ー」
「うん、ありがとう、楽しかったよ!」
駅へ向かおうとした時、愛香から電話がかかってきた。
「もしもしー、お姉ちゃん? どうしたの?」
「みず、あんたまだ学校いる?」
「んーん、駅チカだよ。お友達とパフェ食べてた」
「あぁ、そうなの。遅くならないようにしなさいよ」
「え? それだけ?」
「もう帰ってるなら良いの。じゃあね」
「うん、バイバイ」
瑞希は電話を切った後、胸に支える得体の知れない何かを自分が感じ取っていることに気付いた。
「(これまで必ず放課後まで学校に残っていたのに帰りのHRに参加しなかった。確かに遠藤さんの言っていた通り徳田先生は体力測定テストの後に疲れて有給を取って帰ったかもしれない。でも先生は警察の人だから普通の人より体力はあると思うんだけど……偶然? 考え過ぎ? でも何だか変な感じする……)」
何故気持ち悪さを感じるのか。それは瑞希が菜々美の左腕に付着した徳田の残留サイクスを見たからだ。本来手に触れる程度であれば微量の残留サイクスしか付着しない。が、あの量は明らかに意図して付着させたものだった。
「(何かのサイン……? 徳田先生が身動きを取れない状態で偶然通りがかったなっちゃんにサイクスを付着させたとか……? そうだとしたらマズい状況? )」
「(それにこのことは只の勘だけど……なっちゃんにも何か危険が迫ってる気がする……)」
瑞希の足は自然と学校へと向かっていた。
#####
「(この辺だっけ。最後に徳田先生と話したところ)」
部活動が終わり、グラウンドの整備が始められる中、瑞希は50m走を測定したトラックの近くに立った。
––––"あなたの存在証明"
「(あった)」
徳田の残留サイクスを見つけた後、瑞希は目にサイクスを集中させた。
––––"宝探し"
瑞希は大勢の生徒や教師の残留サイクスの中から徳田の残留サイクスを強調表示させた。
「(どこに続いてるんだろ……)」
瑞希は校庭を離れ体育館裏へと歩いて行った。
「(ここで途切れてる……)」
少し見回した後、瑞希は菜々美の残留サイクスを見つけた。
「(なっちゃんの!? 今度はなっちゃんの追いかけるか……)」
瑞希は菜々美の残留サイクスを追い、東京第三地区高等学校・旧校舎へとたどり着いた。そこは何だか物々しい雰囲気を纏っていた。
「(何だか怖い……)」
*****
「良い? 瑞希。絶対に1人で危ないことなんてしちゃダメよ。ちゃんとお姉ちゃんに伝えること!」
「うん、分かったー」
「お姉ちゃんと約束ね」
「うん!」
*****
「(でもなっちゃんと先生……危ない目に遭ってるかもしれないし……)」
瑞希は少し躊躇したが徳田、特に幼ななじみの菜々美の身に危険が及んでいるかもしれないという不安や焦りから旧校舎へ入ることを決心した。
「行こう」
そう呟いて瑞希は旧校舎の闇へと消えていった。
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