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ゾンビの坩堝【3】
ゾンビの坩堝(30)
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「へへっ」ジャイ公は、人なつっこく笑った。「ご指導のお手伝い、しておきました」
「ああ、ご苦労さん」
気安い口調に、にやっとするジャイ公……その足下では、ノラが甲板の魚みたいに身もだえしていた。
「うっせえわっ!」
ジャイ公が脇腹を蹴ると潰れた悲鳴がし、自分は縮み上がった。げらげら笑うミッチー……指導員は苦笑をこもらせ、101号室まで運ぶようにと指示した。
101号室?――
指導員が先に立ち、ジャイ公が右足首をつかんで引きずっていく。その後ろからミッチーたちがぞろぞろ……追おうとした自分はつんのめり、がくっと膝をついた。思うように足が動かない……手すりにすがり、立ち上がって壁伝いにずるずると……マール、マール、マール、マール……何度も足がもつれ、脱げかける黒いサンダル……歩幅が狭くスローモーな、前後左右にふらつく葬列に似た流れは北通路と東通路がぶつかるところを左折し、北東の行き止まりのそば……148号室とはちょうど反対側の部屋の前で止まって、黒グローブの手が力を入れて取っ手を引く。開いたその室内にジャイ公が引きずっていき、手ぶらで出てくると、指導員は片引き戸を閉めて施錠し、病衣姿の青い一群に向き直った。
「お前たちも気を付けろよ、こんなところに入れられないように」
さすがに息の上がったジャイ公以下、素直に頭を下げる一同……指導員はストライプ柄の間、壁によりかかった自分の前を通ってエレベーターに消えてしまい、また空っぽなまなざし、ぽっかりとした口になったゾンビたちはばらけ、ジャイ公もミッチーと帰っていく……独り残された自分は手すりにつかまり、おぼつかない足を動かして、閉ざされた101号室を見つめた。ここは、いわゆる懲罰房なのか……マール、マール、マール……徳念にかき消されているのか、中からはわめき声も何も聞こえてこない。一体、室内はどうなっているのだろう……じりじりと頭が溶け出し、かすんでいく片引き戸……自分はまた壁にもたれかかって、はあ、とあえいだ。
悪いのは、お前だろ……――
自分は、きびすを返した。次第に足取りが戻ってきて、手すりから離れられるようになる。やたらと臭く、ノイズがなくなった部屋で寝床に潜り、その肌寒さに身を縮めて自分は暗い熱をこもらせた。これは、指導……しつけ……これくらいやらなきゃ、分からないんだ……――
「ああ、ご苦労さん」
気安い口調に、にやっとするジャイ公……その足下では、ノラが甲板の魚みたいに身もだえしていた。
「うっせえわっ!」
ジャイ公が脇腹を蹴ると潰れた悲鳴がし、自分は縮み上がった。げらげら笑うミッチー……指導員は苦笑をこもらせ、101号室まで運ぶようにと指示した。
101号室?――
指導員が先に立ち、ジャイ公が右足首をつかんで引きずっていく。その後ろからミッチーたちがぞろぞろ……追おうとした自分はつんのめり、がくっと膝をついた。思うように足が動かない……手すりにすがり、立ち上がって壁伝いにずるずると……マール、マール、マール、マール……何度も足がもつれ、脱げかける黒いサンダル……歩幅が狭くスローモーな、前後左右にふらつく葬列に似た流れは北通路と東通路がぶつかるところを左折し、北東の行き止まりのそば……148号室とはちょうど反対側の部屋の前で止まって、黒グローブの手が力を入れて取っ手を引く。開いたその室内にジャイ公が引きずっていき、手ぶらで出てくると、指導員は片引き戸を閉めて施錠し、病衣姿の青い一群に向き直った。
「お前たちも気を付けろよ、こんなところに入れられないように」
さすがに息の上がったジャイ公以下、素直に頭を下げる一同……指導員はストライプ柄の間、壁によりかかった自分の前を通ってエレベーターに消えてしまい、また空っぽなまなざし、ぽっかりとした口になったゾンビたちはばらけ、ジャイ公もミッチーと帰っていく……独り残された自分は手すりにつかまり、おぼつかない足を動かして、閉ざされた101号室を見つめた。ここは、いわゆる懲罰房なのか……マール、マール、マール……徳念にかき消されているのか、中からはわめき声も何も聞こえてこない。一体、室内はどうなっているのだろう……じりじりと頭が溶け出し、かすんでいく片引き戸……自分はまた壁にもたれかかって、はあ、とあえいだ。
悪いのは、お前だろ……――
自分は、きびすを返した。次第に足取りが戻ってきて、手すりから離れられるようになる。やたらと臭く、ノイズがなくなった部屋で寝床に潜り、その肌寒さに身を縮めて自分は暗い熱をこもらせた。これは、指導……しつけ……これくらいやらなきゃ、分からないんだ……――
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