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四話
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家の中に入り、畳の客間で琴森さまと待っていると父が緑茶を煎れて持ってきてくれた。
「父さま、すみません。俺がすれば」
「いや、大丈夫だ」
父は冷たくそう言うと俺と琴森様と自分の前に湯呑みを置いた。
「あの、父さま。質問してもよろしいでしょうか?」
「なんだ」
湯呑みで緑茶を飲んでいる父に俺は質問をした。
「何故俺は呼び出されたのでしょうか……?」
そう質問すると父は湯呑みを置いてこう言った。
「時雨。お前は今フリーだったよな?」
「……はい?」
「恋人や結婚を約束した人はいるのか?」
「……いませんが」
「琴森さんがな、お前と番になりたいんだそうだ」
「番?」
番になりたいってことは、琴森さまは──アルファ?
思わず身構えてしまう。アルファには、良い思い出がない。
「時雨さん、お願いします。僕と番になって下さい」
「──お断りします」
俺はそれだけ言うと立ち上がり、客間から出て行った。帰ろうと思い玄関へ向かうと嫌なことしか思い出さない実家の階段が視界に入った。
階段の前で立ち止まっていると玄関から女性の甲高い笑い声が聞こえてきた。
ヤバい、あの人が帰ってきてしまった。
急いで玄関へ向かうと玄関には異母兄の五百扇千幸と千幸の実母で俺の異母である五百扇美香が立っていた。
「あら、穀潰しがどうしてここにいるのかしら?」
笑っていた表情から一転、嫌悪を露わにした表情や眼差しで俺を見てきた。
「お父さまに呼び出されたので参りました。もう帰ります」
顔を俯かせながらそう言うと美香さんは鼻で笑った。
「ええ、ええ。お帰りなさいな、ここにあなたの居場所はないんですから」
「……はい」
俺は二人の横をすり抜けるように家を出ようとすると千幸兄さまが俺にだけ聞こえるようにこう言った。
『──じゃあな、劣等種のオメガ』
「父さま、すみません。俺がすれば」
「いや、大丈夫だ」
父は冷たくそう言うと俺と琴森様と自分の前に湯呑みを置いた。
「あの、父さま。質問してもよろしいでしょうか?」
「なんだ」
湯呑みで緑茶を飲んでいる父に俺は質問をした。
「何故俺は呼び出されたのでしょうか……?」
そう質問すると父は湯呑みを置いてこう言った。
「時雨。お前は今フリーだったよな?」
「……はい?」
「恋人や結婚を約束した人はいるのか?」
「……いませんが」
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「番?」
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思わず身構えてしまう。アルファには、良い思い出がない。
「時雨さん、お願いします。僕と番になって下さい」
「──お断りします」
俺はそれだけ言うと立ち上がり、客間から出て行った。帰ろうと思い玄関へ向かうと嫌なことしか思い出さない実家の階段が視界に入った。
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ヤバい、あの人が帰ってきてしまった。
急いで玄関へ向かうと玄関には異母兄の五百扇千幸と千幸の実母で俺の異母である五百扇美香が立っていた。
「あら、穀潰しがどうしてここにいるのかしら?」
笑っていた表情から一転、嫌悪を露わにした表情や眼差しで俺を見てきた。
「お父さまに呼び出されたので参りました。もう帰ります」
顔を俯かせながらそう言うと美香さんは鼻で笑った。
「ええ、ええ。お帰りなさいな、ここにあなたの居場所はないんですから」
「……はい」
俺は二人の横をすり抜けるように家を出ようとすると千幸兄さまが俺にだけ聞こえるようにこう言った。
『──じゃあな、劣等種のオメガ』
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