月見里さん家の十人兄妹

冰彗

文字の大きさ
上 下
5 / 6
一章

四話

しおりを挟む
両親が仕事に向かってしまい一時間が経った。三夜と千夜は見知らぬ人々に戸惑っているのかソファに座って庇い合うように抱きついていた。

キッチンでその様子を見ていた家事担当の詠と詩は三夜たちに見つからないよう物陰にしゃがみこんでコソコソと内緒話をしていた。

「夕飯どうする?三夜たちの好きなものにする?」
「そうするのが良いんだろうけど、どうやって聞くのさ」
「普通に聞けばいいじゃん」
「そうなんだけどさぁ……」

詠と詩、この双子は人見知りではないのだが一時間前に会ったばかりの弟と妹にどう接していいのか分からずにいた。弟はたくさんいるので三夜に接するのはまだ良いのだが妹は今までいた事がないのでどう接すれば良いのか分からない。

三夜も三夜で弟たちにはいないタイプのようなのでどう接していいのかも分からない。前途多難というやつである。

双子がそんな会話をしている事など分からない千夜は新しい家にやってきてソワソワしていた。千夜自身、人見知りでもなんでもないが大きい人ばかりなので多少驚いたところはある。だが人見知りがある三夜とは違い、千夜は人と接するのは好きな方だ。

「にぃに、おにーちゃんたちとおはなちしてきてもいい?」

千夜は三夜に問い掛けてみる事にした。すると三夜は少し悩んだような表情を浮かべるも可愛い妹の頼みならと思い「いいよ」と了承した。

了承を貰った千夜はふにゃっと微笑みを浮かべると双子のいるキッチンに入っていった。

千夜がキッチンに入ってきた事に気付いた詠は千夜の方を見て目線を合わせる為にしゃがみこんだ。

「千夜、どうしたの?」
「たんけん!」
「そっか、探検してるのか」

元気よく言った千夜を見て詠はクスッと微笑みをこぼし、詩はケラケラと楽しそうに笑っていた。

「あ、そうだ」

詩は何かを思い出したような表情を浮かべると千夜に近付きしゃがんだ。

「千夜、好きな食べ物ある?夜ご飯に作ろうと思うんだけど」
「すきなたべもの~?」

詩の問い掛けを聞き千夜はきょとんとした表情を浮かべて首を傾げていた。

少し悩んだ様子をしていた千夜だったが何かを思い付いたような表情を浮かべた。

「あれすき!えとね、ホットケーキ!」
「千夜は甘いのが好きなんだね。それはデザートに作ろうかな。三夜が好きな食べ物って何か分かる?」
「にぃにのすきなの?ハンバーグ!」

三夜の好きな食べ物を千夜から聞いた詩と詠はクスクスと笑みをこぼした。好きな食べ物が琥珀とほたると同じだったからだ。

「よし、じゃあ夜ご飯はハンバーグ。デザートにホットケーキにしよっか」

詠は千夜と目線を合わせてしゃがむとそう言った。すると千夜はとても嬉しそうな笑みを浮かべ。

「うんっ!」

と可愛らしく返事をした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

処理中です...